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俺はドMに目覚めない   作者: 幸運を殺す者
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第四十七話 新たに見える道

「そこに行くのは本当にダメ。」

「ん?あぁヘレナ来たのか、なんでだ?」


峡谷を前にしてどう下っていこうかと、その場に座り込み考え込んでいた。

糸で下りるのも芸がない。

かと言って死ぬか死ねないか二つに一つと半ばヤケクソに飛び降りてみるのはさすがに風情がない。

踏み潰されて文字通り粉々にされても死ねないのだ。

風情だけでなく意味もないなと思っていたところで、背後からもうすっかり聞きなれた声に止められた。


「その先は本当に危ないから。ダメ。」

「それでもそこに行きたいと言ったら?」

「止められない。でも止める。」

「ヘレナを殺してしまうかもしれないだろ?」

「それはしないよ。ナイは無駄なことはしない。」


ここまで止められるとなおのこと行ってみたい。

しかし止める理由も少し気になってはいる。


「せめて話だけ聞いて。」

「何の話だ?」

「王国の、話。私が知ってる限り。」

「それを聞いて何の得がある?」

「多分ナイの目的に近づけると思う。」

「話してもないのに分かるわけがないだろ。」

「わかるよっ!あんなに生きてることを悲しむ顔見たことないもん!」


この少女はたった数日のやり取りで気づいたのか?

心臓が跳ね上がる音が聞こえる。

目的に近づける話…か、仕方がない。

ここは折れるべきだ、ここまで見破られたうえで餌を投げられたのだ。

それにここの世界の人間じゃない以上、情報は知っていて損は無い。


「聞くよ…ありがとうヘレナ。焦ってた。」

「うんっ!じゃあまずは昔話からする。今の王国が出来る前、一回滅ぼされる前の話。」

「えっ。」

「ナイはお子様だから知らないよね。」

「歳そんな変わらないだろ。」

「うん、私もママから聞いたんだけどね。パパはその、昔の記憶が無いというかね。」

「いやいい、それは言わなくても。」

「ありがと、昔は魔物がいなくて獣と精霊と人が助け合って暮らしてたんだ。無理矢理にとかじゃなくても愛し合う種族もいたみたい。」


なんでもヘレナの母親は獣と精霊との間に生まれたらしく、当時聖獣と言われ崇められていたようだ。

しかしそんな平和な日常も長くは続かない。


ある時悪い心を持つ人間が現れた。

純粋な人以外は人間ではない、と言い張り獣や精霊達に酷い扱いをしたらしい。

その人間に恐れをなし味方は増えていった。

結果、人の住む場所と精霊と獣で住む場所と分けることになった。

しかしそれに意を唱える種族がいた。

聖獣の中でも特に人と仲良くしていた龍の種族達。

彼らは種族全員で人の元へ向かい相談をした。

だが彼らを待っていたのは矢の雨だった。

傷つく同胞を横目に、龍種の長は人々に言い放つ。

我々には全てを滅ぼす力がある。

今一度考え直して欲しい。

人と獣と精霊とでまた仲良く出来ないのかと。


それに対し人々はこう答えた。

人以外は皆滅びてしまえばいいと。

怒った龍種はその場で同胞達を喰らいその体を黒く染めあげた。

その口から出る黒い霧は人から記憶と技術と多種族の血を奪った。

黒い霧は留まることを知らず、精霊から言葉を奪った。そして獣からは人を愛する心を奪った。

最後に龍は一声鳴くと何処か遠くへ飛び去ったらしい。

後に残されたのは何も知らぬ人々のみ。

なるほどこれは確かに滅びたと言える。


「それでね、辛うじて霧の影響を受けなかった場所があるの。それがこの峡谷の中。

今は魔物なんて言われてる存在はね、元々は愛されて生まれてきたの。その中でも血を繋いできた種族がこの峡谷の中にはいる。」

「人々への複雑な思いがあるからこそ、強く生き残ってきたやつらがいるんだな。ならなおのこと行かないといけない。」


俺の友となった魔物はきっと、ここから現れた種族だと思う。

人間の体の特徴を持つ蜘蛛、沢山の人間の頭と腕を持つ巨人。

これは獣と人、人と精霊から生まれでた種族の成れの果てではないのだろうか。

人を恨み殺そうとするその心が殺されようとする自分と惹かれあった。そんな気がする。


「やっぱり止められないんだ。」

「ごめん。」

「私と平和な明日を生きることは出来ない?」

「ごめん。本当に。」

「ううんっいいよ。でもついていくから。」

「…くるなら勝手についてこい。」

「うんっ!見届けさせて、ナイ。」


確かに彼女の言うとおり一歩前に進んだ気がする。

決して目標は変えていない。

しかし、見えていた景色が変わったように思える。

ただ闇雲に死に走るのではない。

過去を追うのだ。

それが死という目的地へと繋がる道なのだから。

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