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俺はドMに目覚めない   作者: 幸運を殺す者
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第三十八話 愛の行方と巨人の真の姿

頭の中にあるのはただただ疑問だった。

この胸の中の少女は、なぜ自分を庇ったのか。

あそこで庇わず、そのまま逃げていればこの少女はきっと逃げることが出来ていたはずだ。

そして、庇われずともこの体は呪いのようなスキルによって死ぬ事は出来ない。

つまり、言ってはなんだがこの献身的な行為は無駄でしかないのだ。

この少女も潰される瞬間を見たはずだ。

それでも生きている人間を庇うなんてことは、意味が無いことは分かっていたはずなのだ。

なのになんでだ?


「なんでだ・・・?」


その疑問はそのまま言葉となって送り出される。

ヘレナは力なく笑い一言だけ言葉を紡いだ。


「す・・・き・・・・・・」


すき?ただそれだけの事で死んでしまうかもしれないのに、死ねない人間を助けたのか?

だとしたらどうかしてる。

何をする時も死ぬために行動をしてきた。


今ここにいるのだって、クラスを上げてより死にやすくするため。

ヘレナに出会い、助けたのもそのついでに過ぎない。

それだって、きっとここに違う人間が来ていたなら助けていたはずだ。

ただ真っ白のパズルのピースがハマるように、偶然居合わせただけの話。


しかも、出会ってから何日も経った訳じゃない。

それなのにここまでその感情だけで動くなんてことは、狂ってる。

言葉にして言ってやりたかった。

だが流石にそれは出来なかった。

もう長くはないはずなのに、こちらを心配させないように力なく笑い続けるその姿を見たのだ。

それを見て誰がその行動を否定できる。


気づけば少年の頬には一雫の涙が伝っていた。

少女はそれを見て顔を綻ばせる。

その時、互いの認識の違いは確かにあったのかもしれない。

少年はこの少女のために泣いた訳では決して無い。

自分があまりにもちっぽけに思え、泣いていたのだ。


しかし、それを言葉にしない限りは関係ない。

少女は、自分のために泣いてくれたのだと思った。

そう思いたかったのだ。

気づけばその体を持ち上げ、自身の唇を少年の唇に押し当てていた。

それは精一杯の愛情表現。

流石の少年も心を動かされる。

凍りついたその心を、ゆっくりと溶かすように。

結果、少年の心には激情の熱い炎が凄まじい勢いで燃え始めていた。


「私・・・せ、霊・・・・・・ス・・・・・・ル」


その口付けによって、もたらされたのかは分からない。

その言葉で、少年はステータスを開く。

そこには狂化と獣化のスキルがあった。

ハーフとはいえ、確かに精霊の血が流れている。

ヘレナはその時生まれて始めて、自身のスキルを他人に授けたのだ。

その身は半端者。決して精霊のスキルとして授けることは叶わない。

だが想いは伝わった。


「もう何も言わなくていい。もう何も心配しなくていい。ただ見ていて。」


その軽くなった体を抱き抱え、遠く離れた木の根元に背を預けるように寝かせる。

言葉を聞いたからか、それとももう既に言葉を紡ぐ力すら無かったのかは分からない。

だがヘレナがそれ以降何かを言うことは無かった。


「狂化、獣化。」


言葉に反応するようにして、胸の宝石がそれまでにない程の輝きを見せる。

その全身は赤黒い肉に変質した後、半透明の赤い結晶に覆われる。

結晶は手足にまで及び、先端は鋭く尖っている。

背中には蜘蛛の足が八本生え、その間を何重にも糸が紡がれ翼となる。

髪は異常なほどに伸び、蜘蛛の糸のように真っ白に変わる。

目は琥珀色に変わるが、中心ではまるで炎のように血液が沸騰している。


「ありがとう、ヘレナ。」


この全能感、感謝しかない。

全身を包み込む怒りは、ただ一人のために生まれた物なのだから。

だからこそ、今この瞬間だけは少女のために戦おう。


「待たせたな、木偶の坊共。死ぬ準備は出来てるか?」


挑発をしながら、ヘカトンケイル達の前に姿を現す。

それを見た時、一体は倒れながらもその百の腕で光球を構え、残りの二体も同じように光球を準備している。

瞬間、三百の光線がナイを襲った。


「もう効かねぇよ。」


胸の宝石とその瞳が共に輝く。

両腕を大きく振り、交差するように動かす。

その指からは毒がまとわりついた無数の糸が出現し、巨大な網を作り出す。

光線が網にぶつかった瞬間、網はその姿を赤い結晶へと変質させそれらを全て跳ね返す。


まさか返ってくるとは思ってもいなかった巨人達は、少なからず損害を受けることとなる。

巨人達に生まれたのは怒りだった。

矮小な存在に反撃を許したのだ、当然である。


「やっと見たか、こっちを。待ってたよ。」


特大の挑発に、巨人達の怒りが最高潮になる。

突如、少年から視線を外し二百の瞳が百の瞳と見つめ合う。

二体の巨人がまるで肩を組むようにして一体の巨人を間に挟み立ち上がる。

体は溶けだし、混ざり合う。


その姿は、巨人達の真の姿。

一体の足は再生し混ざりあったそれらは六本の足を持つ。

三つの胴体が背中合わせのようにして互いを補助し合う。

合計で百五十の頭を持ち、三百の腕を構えこちらを睨み付ける。


「気持ち悪いな・・・」


どうやら簡単には終わってくれないようだ。

無理矢理に行われる仕切り直し。

再び戦いの火蓋は切って落とされた。

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