第三十一話 捨てられた大地に咲く華
関所へ来た時と同じように、地図と方位磁針を手に持ちながら北へ進むと、そう時間はかからずに山脈の麓まで来た。
鉱山ということもあり、周りには木で作られた足場のような物が立っている。
空気が汚れているのが分かるほどに、うっすらと息苦しい。
足元を見ると苔が生えて砂を被ってはいるが、石畳が敷かれていてどこかへ続く道がある。
苔をナイフで切り取り納品用のバッグへと仕舞い、足で砂埃を払いながら道を進んでいく。
少し歩いたが、開けた場所にでた。
枯れた草木が生い茂っているので分かりづらいが、よく見ると気持ちが悪くなるほど規則的に石が配置されている。
石にはそれぞれ何か文字が刻まれており、手で汚れを払うと読み解くことが出来た。
「人の名前…?そうなるとここが・・・」
墓場で間違いないだろう。
確かここでは昼夜問わず声が聞こえるという話だ。
耳を澄ますと、確かに叫び声や唸り声のようなものが聞こえる。
これは来た道とは逆方向から聞こえているようだ。
墓場の奥へ進んでいけば自然と声の主が分かるだろう。
棘のある植物の蔓やあたりの植物を、適宜ナイフで切り取りバッグにしまい進んでいく。
すると、再び開けた場所に出る。
そこには先程とは雰囲気が違う建造物があった。
敷地内は石で出来た花壇に囲まれ、大理石のような綺麗な石が床に張り巡らされている。
その中心部には噴水があった。
かつては水が循環していたのだろう、掃除はされていないが水跡と汚れ方で整備されていた頃の面影が感じられる。
しかし時間の経過からか、貯まった水は緑色に染まり、たくさんの虫が中から沸いていた。
さっきまでより声がはっきりと聞こえる。
どうやら今見えてる噴水の裏側に声の主がいるようだ。
回り込んでみると、そこには何もいなかった。
声だけが地中から聞こえてくる。
近づき、確かめようとしたその時だった。
凄まじい地響きと共に、大地が揺れる。
綺麗に敷き詰められた大理石は真っ二つに割れ、土が露出し噴水は砕け散る。
するとそこから、一本の柱が飛び出してくる。
柱は意志を持つように地面に叩き付けられた。
声が更に大きくはっきりと聞こえ、無意識に耳を塞いでしまう。
我に返り倒れた柱をよく見ると、それは一本の腕だった。
まるで研磨されたかのように表面は輝き、先は五つの指のように分かれていた。
ゆっくりとその腕が持ち上がり、また地面に叩きつけられる。
その動作は、何度でも行われた。
腕の持ち主が満足するまで。
再び、声が響き渡る。
声と共にもう一本の柱が地面から飛び出した。
柱は腕と共に、その身を地面に叩きつける。
凄まじい地響きと砂煙が舞う。
気づけば地面には、まるで隕石が落ちたかのように巨大な穴が空いていた。
ふと、空を見上げた。
少年が見たのは、太陽を隠す巨大な存在がゆっくりと落ちてくる姿。
次の瞬間、少年は地に咲く華になっていた。
その場に残ったのは、咲き誇るように飛び散った肉片を踏み付けて立ち上がる巨大な人型の石像だった。
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