第二十七話 見ている人は見ている
「おいナイ!おめェ、クラス昇格の試練を受けてみる気はねぇかァ?」
精霊の森での大規模討伐依頼から一週間程の日が経ったある日、久しぶりにギルドに顔を出すとアンガスからそんなことを言われた。
なんでも大規模討伐依頼時のイビルスネークとの戦闘、そして自身のスキルの特性を理解し冷静な状況判断でクリフ達を逃がしたことが報告に上がっていたらしい。
そしてミリーナやロイからの証言もあり、クラスホワイトのブラッドスパイダーを一人で討伐したということも信憑性が高い。
それだけの実力を持つ冒険者がクラスグリーンのままだとギルド的にも体裁が悪いとのことだ。
高クラスの依頼をこなせる人物が一人でも増えて欲しい、という側面もあるのだろう。
本来依頼や討伐をこなし時間をかけてクラスを上げるところを、特例としてギルド側が試練を出しその達成状況に応じたランクに上げる。
そんな話になったからこその発言だったというわけだ。
こちらとしてもクラスが上がるなら、喜んで受けるつもりだ。
ブラッドスパイダーのような友になれる存在との出会いは、きっとクラスを上げなければなし得ない。
当然のごとく返事はYES。
試練の内容はこうだ。
「内容は王国の特定立ち入り禁止区域の探索だァ。
魔物の素材や、その地の環境が分かるような植物でもなんでも納品してくれェ!
期間は明日までを準備期間として、明後日からの一週間ってとこだァ。泊まり込みでも通いでも構わねェが泊まっちまった方が成果はあげれると思うぜェ!
それとだ、ギルドから素材を一々持ち帰らなくてもいいようにバックを貸し出してやるァ。
こいつァぶち込んだ物がギルドに転送されるようになってる優れ物なんだよォ!
認識用のタグを付けとくだけでおめェから送られてきたってのがギルド側からも分かるようになってるから安心してくれェ!
一応貴重品だから出発前日、つまり明日渡すからギルドに取り来いよォ!リーゼかミリーナに言えば貰えるはずだァ!」
さて、まあ準備と言っても特に何もないんだがな。
ちょうどこの一週間でリーゼと、なぜかミリーナまで一緒になって教えてくれたおかげでこの世界の言語については大体理解出来た。
読むことについてはもう問題は無いくらいだ。
せっかくだしそれを活かして、携帯用の食料でも買ってこよう。
ミリーナに連れ回されたおかげで、城下町のどこに何があるかくらいは自然とわかるようになっていた。
食料・・・とりあえず人間は塩があれば大抵の事はなんとかなる。調味料を売っている店を尋ねると、クリフと手を繋ぎ可愛く着飾ったリンダが買い物をしていた。
「うわっとナイかい!なんだよびっくりしたじゃないの!」
「すみません、買い物に来てました。」
「ナイなら大丈夫か、おい、このことは他の奴にいうなよ?男と男の約束だ。」
「は、はい。」
やはりこの二人はデキているんだろう。クリフに小声で口止めをされる。
まあある程度察せてはいたし、他の冒険者達も気づいていながら気づいていないフリをしてるだけだろう。
とはいえ言いふらす意味もない。
「じゃあ、お二人はごゆっくり。」
「「はは、は」」
塩を買い、少し引き攣った笑顔で手を振っている二人と分かれる。
泊まり込みのがいいと言われたくらいだ。
おそらく水は現地で確保出来るだろう。
そうなると容器のようなものが欲しいか、水筒とそれを持ち歩くリュックのようなものを買っておくことに決める。
間違えて貸し出されるバックにしまったら、水筒を納品してしまうことになってしまう。
帰っていの一番に水筒納品の薬草喰らいなんて呼ばれたら目も当てられない。予防策は貼っておくに限る。
何事もなく雑貨屋で水筒とリュックを買い、水浴び場で体を流してから宿舎に戻る。
あとはゆっくり休もう。
死に急がば休めと言うからな。言わないな、急がば回れだ。
そんな馬鹿な事を考えながら、もうすっかり馴染んできた胸を少し撫で、ベッドに横になり目を瞑った。
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