第十九話 森の異変と思いがけない好機
お昼ということもあり、ギルド内にいる冒険者は今までに類を見ないほどに多くなっていた。
掲示板と睨めっこをする者、仲良く談笑をする者、依頼の報告をする者等色んな人が集まる中で一人配給をもらい、簡素ではあるがしっかりと味のついたスープと香ばしい肉をおかずに黙々と焼きたてのパンを食べていた時だ。
ギルドの扉が乱暴に開かれ、一目で騎士と分かる男ロイ・アレクベルクが姿を現す。
楽しげな雰囲気だったギルド内にはそれだけで緊張感が走る。
先刻までと何も変わらず黙々と食事をするのは自分以外にはいなかった。
それもそのはずだ。
王国が誇る騎士団の団長ともあろう男が明らかに焦りを浮かべた表情でギルドを見回しているからだ。
「アンガス!!いるかーっ!すぐに来てくれ!」
「ますたーはたぶん2階だと思いますよ〜。呼んできますねー。」
「ああ、わりぃ。ミリーナか、火急だ。頼む。」
それを聞いて駆け足でミリーナが二階へと上がると、数秒後には数段飛ばしでアンガスが地響きを立てながら降りてくる。
あっちっスープ零れた。
「どうしたよォ!ロイ!まさかラッシュ・ボアの時に話してた緊急事態かァ?」
「あぁ、そのまさかだ。例の森奥地から魔物の大量発生を確認した。既に王国の四方にある関所には使いの者を行かせてある。」
「1番近くの南方関所にあるうちのギルドに連絡が遅れてるってのはァ、釣れねェんじゃねぇかァ?なァ!」
どうやら目覚めた故郷の森、通称目覚めの森にて異常事態が発生したらしい。ロイの言葉に冒険者達の顔が引き締まり、息を飲む音が聞こえる。あれだけ仲が良さそうなロイとアンガスにも一触即発の空気が流れる。
「だから俺が来たんだろ?王国軍直属騎士団団長ロイ・アレクベルクより王国最大のギルドマスターであるアンガス・ボルドに協力要請だ。
内容は魔物の討伐、報酬は国から出るから安心してくれ。是非とも我等の住む国を守護するために冒険者達の力を貸してほしい。」
「へへっそこまで言われちゃよォ、燃えるじゃねぇかァ!よっしゃあ、久しぶりの共闘といこうやァ!」
そう言った後アンガスは、まるでその場の空気全てを肺に入れるような勢いで思いっきり息を吸い込み、声を荒らげる。
「昼休憩中の冒険者共ォ!!ギルドマスター権限で全冒険者強制参加の大規模討伐依頼を発注するぞォ!!!!依頼内容は発生した全ての魔物の討伐、場所は精霊の森だァ!報酬は弾むッ、成功の暁にはお前らは国を守った英雄の仲間入りだァッ!者共準備しろォ!」
「「オオオオオッッ!!!」」
どうやらあの森は精霊の森という名前だったらしい。グッバイ目覚めの森、もう呼ぶことはないだろう。
しかし魔物の大量発生、これはかなりのチャンスでは無いだろうか。
未だ毒性のある魔物等には出会っていない。即死級の物であればライフイズペインの影響を受けずに死ぬ事が出来るかもしれない。
なにより強制参加なのも最高だ。
本来なら出会うことの出来ない格上のクラスの魔物とも戦うことが出来る貴重な機会、是非とも奮戦し今回こそはしっかり死んでやろう。
食べ終わった食器を片付け、テーブルの上に零れたスープを布巾で拭き取りながら大規模討伐に対する決意を固めた。
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