第十六話 森に潜み狩りをする者
朝であるというのにギルドには人が多く集まっており、盛り上がりを見せていた。
そして皆一様にこちらを見て、面白い奴を見るような目で見てくる。なんだろうと見回しながら入口から歩みを進めると、大きめの剣を背負った男と弓を持った女の2人組に話しかけられた。
「よっ薬草喰らい!!」
「?おはようございます。」
「昨日はおかげで臨時収入手が入ったよ、ありがとね薬草喰らい!」
「は、はぁ、よかったです。どういたしまして?」
よく分からないまま返事をすると、その2人を皮切りに数人に話しかけられた。
そしてその誰もがこう呼ぶのだ。
「薬草喰らい」
と言う名で。
「あ、ナイくん!おはよう!」
「どうもリーゼさん、おはようございます」
受付付近まで来ると、今日もリーゼは朝の担当のようだ。暇そうにしてた昨日とは違い、少し忙しそうに動いていた。
「ちょっと時間いいですか?」
「えっ、ええ、いいわよ。」
「知ってたら教えて欲しいんですけど、薬草喰らいってのは?」
「あっいやそれはね、違うのよ?うーん・・・」
「別に怒ってないですよ?気になったので。」
「あ、そうなの。あのラッシュ・ボアね、本来ならイエロー相当の魔物なの。」
「ちょっと待ってください、そのイエローってのはクラスですか?」
「あーごめんね、ナイくんがクラスグリーン、そこから依頼の達成や、魔物の討伐でブルー、イエロー、レッド、ホワイト、ブラックと上がっていくの。各色は危険度みたいなものね。」
「なるほど、もしかしたら自分より格上のラッシュ・ボアを偶然とはいえ倒したことと関係が?」
「そうね、それこそ依頼対象の薬草を食べて食べてなんとか倒したって噂になってるわよ。薬草納品の依頼に失敗するくらいには・・・」
「あぁ・・・何となく察しました。だから薬草喰らい。」
「いいじゃないのっ!かっこいいわよ?薬草喰らいさん。」
そう言ってリーゼは誤魔化すようにウィンクをして仕事に戻った。
受付嬢という仕事上、色んな冒険者と話す機会が多いからだろう。噂好きなのも無理はない。
「さてと・・・」
強くなると決めた以上、戦闘経験を積まなければならない。そして依頼を達成してクラスを上げればより強い魔物とも対峙する機会が増えるだろう。
そう考え掲示板を見る。するとある依頼書が目に止まった。
そこには複数の猿のような姿の絵が書かれていた。
依頼書を手に取り受付に行くとリーゼは他の人の対応をしていた。順番待ちをしていると意外な人物に声をかけられる。
「あーナイくんだぁ~!」
「ミリーナさん、そこは受付ですよ・・・」
「わかってるよー、あたしは冒険者兼、料理長兼、受付嬢なんだよ?」
「えぇ・・・多才ですね。すごいです。」
「でっしょおー?で、どうしたの?」
「この依頼を受けたいんです。」
「あーエイトモンキーだね。1匹見たら8匹いると思えでお馴染みの少数の群れをなす魔物だよ〜。んー討伐依頼ははじめてだよね?」
「そうですね、なにか注意することがあったり?」
「いやーそうじゃないんだけどね、はじめての人は戦闘スキルの有無を確認しないとなんだー。勝手に行かれて死なれちゃうと困っちゃうからね。」
「そういえば昨日リーゼさんから、そんな話を聞きましたね。わかりました。」
ステータスを開く。ミリーナは短剣のスキルをみてニッコリと笑う。
「おっけー、もう閉じていーよ。ありがと〜。」
「いえ、もう出発してもいいですか?」
「うん、いーよ。いってらっしゃーい。薬草喰らいっ!ふふっ」
なんとも言えない気持ちで出発する。今日は兵士に呼び止められることなく関所を越えた。
森に入ると昨日までの緊迫した空気が無いことに気づく。
ラッシュ・ボアがいなくなったからだろうか。
木陰には兎達が戯れる姿や蛇が睨み合う姿もある。ふと上を見上げれば、昨日までよりも多くの鳥達が小枝に止まり羽を休めている。
もしかしたら、これが本来のこの森の姿なのかもしれない。
しかしその平穏も、一瞬風が吹き抜けたのを最後に喧騒へと変わる。そこかしこから聞こえ出す小動物達の鳴き声。
きっとそれは危険を知らせる合図だったのだろう。
しかし同時に狩りが始まる合図でもあった。
突如波のように押し寄せる悲鳴のような叫び声。
鳥の歌は羽ばたく音へと変わり、不規則になったかと思えば重さのある何かが地に落ちた音がする。
瞬間、勝ち誇るような甲高い獣の叫びが合唱のように森に響き渡る。
気づけば自然とナイフを両手に持ち、どこから来ても対応できるよう構えている自分がいた。
両の手からは熱とはまた違う、温かさのような物をほんのりと感じ体の底から力が湧くような感覚を覚える。
きっとこれがスキルの効果なんだろう。
しかしその考えが良くなかった。意識がそこに向いたことで隙が生まれた。
つむじ風のようなものが目の前を過ぎたと思った時、痛みが訪れる。
痛覚に顔を歪めながら目にしたものは、首から上が無くなりながらも両の手にナイフを構える少年の姿。
その姿は、自分の頭が地に落ちたことを雄弁に語っていた。
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