第十話 死ぬために生きる冒険者の始まり
男は恐怖した。現世では他者に傷をつけられ、死ぬかもしれないなんて経験はなかったから。
男は安堵した。この世界で死のうとする自分を生き長らえさせるスキルが、自分を救ってくれたから。
男は後悔した。あんなに願っていたのに、予想外の出来事で死にそうになると自分が狼狽するなんて思っていなかったから。
それでも、それでも・・・それでもそれでもそれでもそれでもそれでもそれでもそれでもそれでもそれでもそれでもそれでもそれでもそれでもそれでもそれでもそれでもそれでもそれでもそれでもそれでも
男の死にたいという気持ちが霞むことはなかったのだ。
だからこそ男は心から悲しんでいた。魔物からは駄目でも人からならという希望も、他人から与えられた傷でさえも死ぬことが出来なかったから。
「おめェ・・・何者だよォ・・・」
我に返る、近くには地に落ち空を飛ぶ力を失った右腕。
状況から考えてどうやら俺はライフイズペインの発動を見られたらしい。
斬れたと思った腕が生えているのだ、怖がるのも無理はない。
笑顔で接してくれたミリーナが怯えてるのを見て、流石に心が傷んだ。
「ステータスオープン、多分・・・このスキルの効果です。」
Lv6 ナイ
年齢 8
ライフ 18/18
攻撃 14
防御 14
魔法攻撃 0
魔法防御 12
素早さ 13
運 8
スキル一覧
・闇の精霊王からの贈り物『ライフイズペイン』
※括弧内は本人のみ閲覧できます。
関所で公開を求められたのだから、きっとステータスは身分証のような物なんだろう。そう仮説をたて何者だという質問の答えとする。
「なるほどなァ、名前も年齢も偽造はしてねェ。さっきの気持ち悪ィカラクリの種もなんとなくは察した。」
「はい、質問には答えました。なのでこちらから一つ教えて欲しいことがあります。」
「なんだァ?教えてやるよォ、内容次第ってのが頭につくのがわかってんならなァ。」
敵意を向けられているのがハッキリとわかる。これは会話ではない。
交渉だ。
ならばなればこそ、こちらは八歳という立場を存分に活かしてこの死を許さないクソッタレスキルについて聞いてやる。
「精霊王からの贈り物ってのは一体なんですか?」
「それ自体は凄ェ名誉なことなんだぜェ、あのロイも俺の知ってる限りで三つ持ってやがる。普通の奴ってのはよォ、精霊の加護だったり、精霊の導きとかのランクが低い物って言ったら精霊に失礼だが持ってることは多いんだァ。」
「つまり、スキルの中ではかなり高いランクということですか?」
「ったりめぇよォ・・・おめえほんとに何も知らねぇみてえだな。精霊王のスキルでも三段階に分けられるんだァ。その中で最上位なのが贈り物、何か特別な技術だったり志だったりを極めた凄ェ奴だけが持ってるもんなんだァ。」
「なら」
「だからなんで8歳の若造が持ってるのかも分からねェ、しかも闇の精霊王なんてとびっきりのやべぇ奴しか持ってねぇようなもんをなァ・・・」
いくつか言葉を交わし、どうやら敵ではないことを理解してもらえたらしい。
それにわかったこともある。
与えられたスキルがスキルなら与えられる者もそれなりの奴でしかないということだろう。
っとそうだ、有耶無耶になったが実力を見るという話はどうなったのだろうか。
「あの、アンガスさん・・・」
「なんだァ?まだ聞きてェことがあんのかよォ。」
「いや、そうではなくて冒険者になるための実力ってのはどうなりましたか?何も出来ず負けてしまったので・・・」
「あァー・・・だがなァ・・・肝心のミリーナがブルっちまってるというか怖くてノビてんだよなァ・・・」
「・・・すみません。」
「とりあえず一番下のクラスグリーンからにしとくかァ。」
「いいんですか・・・?」
「あァ、はじめっから誰でも冒険者になれんだよォ。ただ命がかかってるからなァ、依頼を任せるにしても実力分からなきゃどうしようもねぇって事でのテストだったんだァ・・・」
「もしかしてそれを・・・」
「ぶち壊してくれたなァ・・・腕、大丈夫なのかよォ・・・」
「ええ、不思議なことに大丈夫です。」
そう言ってガッツポーズをしてみせる。それを見て目を見開いたかと思うと、険しい顔でいたアンガスが噴き出した。
「ガッハッハッ、ロイが気に入るのもわかるぜェ。ナイ、お前なかなかいい根性してやがるなァ!よし、うちのギルドは冒険者用の宿舎もある。依頼を終えても帰る場所がないんじゃ大変だろォ!しばらくはそこで寝泊まりしなァ!」
どうやらお眼鏡に叶ったらしい。この先依頼を受けていけば数々の魔物等にも出会う機会は増えるだろう。いずれ死ぬことを夢みてしばらくは冒険者として生きていくことにしよう。
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