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薄紅色の花が咲いたら  作者: 巻乃
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芽吹きー9 お披露目パーティー終了後のあれこれ。

 父様に抱っこされて、そのまま眠ってしまい、目が覚めたら翌朝だった。あー、誕生日ケーキ食べ損ねたー!残っているといいんだけど…。ん、ノックの音だ。「アザレアです。おはようございます。」「おあよーごじゃーましゅう。」あー、おはようございます。


 父様に抱き上げてもらって眠った後、昨日は色々とどうなったかの話は執事のアセボから説明があります。と、アザレアさんに言われた。今のこの(こく)だと、父様も爺様ももう王城にて仕事をする為に出かけた後で、母様は、昼過ぎにある、実家のオーキッド公爵家でのお茶会の支度で来れないと。兄様は家庭教師と勉強中であると。


 ま、兄様もまだ子供だから詳しいことも事情も知らないだろうと思うし、昨日は()()()()お披露目パーティーだったから、小さくても当事者バリバリの私に詳しく話すんだろうな。


 朝食と、食後のミルクが済んだ頃、執事のアセボが私の部屋にやって来た。私はソファーに座っているアザレアさんの隣に座っている、否、ソファーに、のっかっているだけだ。座れるほどの大きさにはなっていないから。床に敷いたラグの上で、遊び()()()話を聞くのは、キチンと話を聞く姿勢とは()()と思ったので、アザレアさんに身振り手振りで、ソファーの上にのせてもらったのであった。


 アセボが、大人の両手で球体を作った大きさの、青くて透き通った金色の粒がキラキラしているガラスの様な大玉をソファーテーブルの上に載せた。その大玉に私の手をのせるように言われ、私が首を傾げて、不思議そうな顔をすると、アセボが「説明いたします。」と大玉の説明を始めた。


「この球体は、伝えたいことがよりよく解るように作られた魔球と言います。この国の言葉が分からず、お互いに意思疎通が出来ない場合、この魔球が話し合いに使われます。もしくは、小さい子供が言いたいことを大人が理解するため、その逆に大人の言っていることを小さい子供に理解してもらうために魔球が使われます。」

「魔球を使用するにあたり、立ち合いと記録も同時に行います。悪用を防ぐためです。立ち合いは私、アザレアが行います。」

「プリムラお嬢様が手をのせましたら、この魔球の説明をして、昨日の事情も説明しようかと思っておりました。ですが、お嬢様は用心深く、賢いのですね。」アセボに褒められちゃった。

「お嬢様が手をのせると記録が始まります。お嬢様の言いたいことは、口に出さずとも代わりに魔球が音声を発して言ってくれますので、言いたいことを思い浮かべて下さい。」

 アセボの魔球の説明に納得したので、手をのせた。アセボもアザレアさんも魔球に指を1本ずつ触れさせた。


「立ち合いは私、アザレアが行います。アセボとプリムラ様と、お嬢様のお披露目パーティーの事情説明となります。それでは、宜しくお願いします。」


「プリムラお嬢様、手をのせる前に魔球の説明をいたしました。お披露目パーティーの事情説明の前に、昨日はどこまで覚えていらっしゃいますか?」

「(昨日の父様に抱っこされるまで。)」魔球、便利ーー!!

「ジェイド様とご挨拶なさる前ですか、後ですか」

「(王様と挨拶して、王子2人も挨拶しました。)」油断できないけどねー。

「ほぅ、理解されていますね。さすがです。この歳でこれほど賢いとは…。」

「(父様と王様の話は一切、聞いていません。)」寝ちゃっていたもんねーー。

「アゲラタムお嬢様と、エリシマム様の事はどうですか?」

「(兄様と2人で会場を回って、楽しかったです。付き添いのグラジオラス叔父様が嬉しそうなのも、良かったです。ワトソニアお爺様、クリナムお婆にも会えて良かったです。でも、姉様が…。)」ずっと思って、感じて、考えていたことを言わないと、姉様を助けられないと思った。私が気持ち悪いって言われても私が我慢すればいい、でも姉様の人生が不幸にならない手助けをしたい。でも、迷う…。


「アゲラタムお嬢様について思ったことをありのままに話して下さい。私達が一番知りたいのはそこなのですから。」…どうかプリムラが化け物扱いされませんように…と、祈りながら。


「(姉様のテンション高いのは母様譲りかと思ったけど、クリナムお婆様が源流だったのが分かった。ワトソニアお爺様とグラジオラス叔父様の苦労が忍ばれます。上手く言えないけど、でも、姉様は何だかわざわざテンション高く()()()()()いる気がする。だって、いつもはそこまでの事をしないでしょう。)」アセボもアザレアさんも何も言わないので続けて魔球で話す。


「(ここぞって時に何かするけど、周りは大丈夫なんだよね。何かおかしいなって、頭の隅に何か引っかかって仕方なかったの。姉様が5歳なら、周りには何かしらの被害があってしかるべきだと。大人は違和感を感じないの?ねぇ。)」2人共、無言。


「(姉様しか知らない事情がありそう。姉様は今、どうしているの?)」

「自室にて、反省中です。部屋から勝手に出られない魔法がかけてあります。今後どうするのかは今日、プリムラ様にお気持ちを聞いてから、侯爵様方が話し合うと予定しています。」

「(姉様が事情を話すか分からないから、姉様がどうしたいかの希望を聞いてあげて欲しい。私には、優しい姉様だから。お願いします。)」あぁ、やっちゃった…。涙がボロボロ零れて、しまいには泣き叫んでしまった。いつの間にか、アザレアさんに抱っこされていた。そして、そのままぐずって、昼寝してしまった。


 気付いたら、夕暮れだった。灯りの点いていない部屋の中は夕暮れの光だけで薄暗い。私がベッドの上でボーっとしていたら、ノックと共に誰かが部屋に入ってきた。


「プリムラ、気分は悪くないか?大丈夫かい?」父様だったんだ。声をかけられてから、気付くなんて…。

「あい。わーくない。」悪くないから心配しないで。人1人の人生と、自分の保身を考えるのを同列にした自分の馬鹿さ加減に泣けただけだから。


「プリムラは色々、考えてくれていたんだね。アゲィをどう思ってる?」

「ねーしゃま、しゅきっ。やーしゃしい。」姉様好き。私に優しいよ。どうして聞くの?

「……魔球の記録をみた。プリムラは神からのギフト持ちだったんだね。私達大人が、気付かず悪かった。」

 父様が私の頭をなでながら、ほほ笑んでくれた。化け物扱いされなくてよかったと、父様母様の娘で良かったと思えた。


「大人達で、もう少し対策をしてから、アゲラタムの話を聞くことにした。何があっても私とイリスの子だからね。お前が心配しなくて済むように、大人として頑張るよ。アゲィとは、これからも仲良くしてやってくれ。」そう言って父様が部屋から出ていった。入れ替わりにアザレアさんが部屋の灯りを点けながら、入ってきた。


「プリムラお嬢様、怖かったんですね。魔球越しに「私を怖がらないで」「私を嫌わないで」と伝わってきました。」アザレアさんにキュウーっと抱き着かれた。でも、嫌な感じも苦しい感じもしなくて安心出来た。ありがとう。


「ご家族の皆様がプリムラ様にお会いしたいと待っておりますが、いかがいたしますか?」


 どうしよう、まだ怖いのもあるし、不安もある。父様から聞いたばっかりの、神からのギフト持ちって何なのかも不明だし。どうしたら?アザレアさんを見上げると、「どなたなら、会いますか?」と聞いてくれた。


「マーシャクじーじ。」爺様なら大丈夫だろう。年齢もいっているし、父様より経験値も高いだろうし。

「ワトソニアお爺様とグラジオラス叔父様もいらしていますよ。」えっ、お爺様に叔父様までも。

「ワートじーじとグラジーおじしゃま。」お爺様に、不測の事態に備える騎士の叔父様なら大丈夫かな。

「アセボが魔球のあと、すぐに早伝令を王城に出したので、ストック様のご帰宅と一緒にいらっしゃったのです。イリス様はもともと、ご実家の茶会後にそのまま泊まられる予定でしたので、いらっしゃいませんが。」

「あいっ。」

「早速、呼んでまいりますので、お待ちいただけますか。」アザレアさんが呼びに行った。

「プリムラお嬢様、私がおりますので、ご安心ください。」部屋の隅に、その声の主の、執事のアセボがいた。いつ来たのか分かんなかったけど、私を見てほほ笑んでいるので嫌われていないようだ。ちょとだけ安心した。


 そんなに待たず、3人が部屋にやって来た。口火を切ったのは、マンサク爺様だった。

「私達は、ストックと一緒に魔球の記録をみた。デルフィニウムもな。まずはアゲィの事を気付いてくれて、ありがとう。プリムラのおかげだ。私達がプリムラを嫌うことはない。可愛い孫を嫌う爺がいるもんかっ!!」爺様の目のまわりが少し赤い。


「私だって、感謝こそすれ、可愛い孫は大好きだ。」ワトソニアお爺様も目のまわりが少し赤い。

「プリムラが可愛いって自慢の姪なんだよ。叔父さんの楽しみを奪わないでくれ。」叔父様はちょっと目がウルウルしてる。3人共、ありがとう。「マーシャクじーじ、しゅきっ!!ワートじーじ、しゅきっ!!グラジーおじしゃま、しゅきっ!!」大きな声でそう答える。と、マンサク爺様が横を向いて震えてる。あ、涙、出ちゃったみたい。ワトソニアお爺様は真っ赤になって「孫娘最高…」と呟いてる。グラジオラス叔父様は、赤い顔してプルプルしながら、部屋の中を右往左往してる。姪萌えか。3者3様を見たら、私が勝手に冷静になってしまった。


 3人が落ち着いたのを見計らって、アセボが父様を呼んだのか、父様が再び、部屋にきた。

「応接室に移動しましょう。プリムラ、抱っこは?」父様に聞かれて、抱っこして欲しいと両手をのばす。お爺様2人も顔を見合わせて、私の抱っこは父様に譲って、我慢したようだ。私は父様の抱っこ、大好き。父様の腕の中、抱っこされてご機嫌!!先導して歩いていたアセボが応接室の扉を開けた。


 応接室でお茶の支度をしている人がいたようだ。アセボの隣に並んで、私にお辞儀をした。まだ若い少年の様だ。黄緑色の髪に黄色い目の目付きの鋭い生真面目そうな少年だ。


「プリムラお嬢様、お披露目が終わったので、正式に紹介出来るようになりました。私のすぐ下に就いて補佐をしている従僕フットマンのジニアです。」

「はじめまして。ジニアと申します。宜しくお願いいたします。」父様に下ろしてもらい、ワンピースの裾の端を掴んで、ペコリ。

「プリミュラともーしましゅ。こちらこしょ、よーしくでしゅ。」ジニア少年が驚いてる。うふふっ。


 アセボがジニアに下がるように指示したので、ジニアは部屋から出ていった。何だかアセボが楽しそう。


 挨拶が終わったので、父様にまた抱っこして欲しいと両手をのばすと、父様がマンサク爺様を見る。つられて私も見ると、マンサク爺様の満面の笑み付きで抱き上げられた。そのままソファーに座った爺様の膝の上にいる。テーブルの上には、ケーキがある。爺様を見上げると、うん、うん、と頷く。


「プリムラ、昨日食べ損ねたケーキだよ。」ウインクしながら、マンサク爺様の隣に座っているワトソニアお爺様が言う。

 もしかして「誕生日ケーキ!!!」ケーキに釘付けな私。そうだ。と思いつき、ワトソニアお爺様をじーっと見る。「ケーキっ!!」と一言だけ言って、おーきく「あーん」と口を開けて待った。


「これは爺泣かせの策士だねぇ。」ワトソニアお爺様は笑いながら、ケーキを小さく切って私の口に入れてくれた。マンサク爺様の向かいのソファーに座っている父様も、父様の隣でグラジオラス叔父様も笑っている。「晩ご飯に差し支えるから、一杯はダメだよ。」と父様に、釘を刺されてしまったが。念願の誕生日ケーキだもの、一口だけじゃイヤだ。せめてあと、何口か食べたい。2口目をもらう為に父様に狙いを定める。「と-しゃま、ちょーらい。」あーんと口を開けて待つ。笑いながら仕方なさそうにケーキを口に入れてもらうのに成功した。3口目は、叔父様!「おじしゃま、ちょーらい。」首を傾げてニコニコ待つ。「ぶふふっ、強敵だな。」叔父様はそう言ってケーキをくれた。4口目は、マンサク爺様で。「じーじ、あーん」と言いつつ、上目遣いにねだってみる。よっしゃー!ケーキを一口もらえた。1歳児だとまだ胃が小さいから気を付けないと。そろそろ自重しよう。でも、まぁ、今日の昼も食べれず、昨夜のご飯も食べれてないから、これくらいなら晩ご飯は食べきれるか。


 ミルクを飲んで、父様達も落ち着いたかな?と、見回したら父様と目が合った。父様が何か呟くと部屋の中が薄い膜で覆われた。その薄い膜をキョロキョロ見ていると「さすがだな。見えているようだ。」マンサク爺様が呟いた。


「神からのギフトとは、中々お目にかからない一種の特別なスキルの名称なんだ。魔力量のあるなしにかかわらず。でも、100廻(100年)に一人出ればいい方で、ここ200廻(200年)の間、出ていなかった。」父様の説明は続く。


「200廻前の神からのギフト持ちは、魔力の全くない帝国の平民だったそうだ。その平民をその当時の帝国の皇帝が無理矢理、王太子の婚約者にしたが、王太子である第1皇子は女癖も悪く、全てにおいてだらしない奴だったと。だからだろう、そのギフト持ちの平民が早々に逃げ、しばらくして、その平民と密かに結婚したのが第2皇子だった。帝国を私物化しそうな第1皇子はいつの間にか排除され、賢いうえに神のギフト持ちの平民と結婚した第2皇子が後に皇帝になった。帝国の周辺の小さい国々が飲み込まれ、帝国の国土が一気に拡がった。今ある帝国の国土は、その時拡がったままで維持されている。」


「神からのギフト持ちというのは、この世界にない知識を持って生まれてくる()()()()のギフトなんだ。」


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