芽吹きー6
プレゼントは他に部屋に集めてあるって聞いたから楽しみ!!!えへへっ、なにがあるか、な?
アザレアさんに抱かれて連れてこられた部屋の中へ一歩、アザレアさんと共に入った。そこで私は何にも言えなくなった。
なんじゃこりゃーーーーーーーーっ!!!!!!!ええええええっ!!!!!心の中でだけ、叫ぶ。推定18畳の広さの部屋の中に、ギッシリと大小色々な箱が積みあがっている。これ全部、私宛のプレゼントぉーーーーっ!!!!あ、前世感覚で、和室6畳の部屋3つ分って言えば分かりやすいかな。にしても、外には知り合いがいない、まだ家族と屋敷の一部の人しか知らない私に、何故、こーーーんな大量のプレゼントが届くのぉーっ!!??理解不能過ぎて、頭の中、真っ白。
「…ラお嬢様っ、プリムラお嬢様っ、大丈夫ですかっ?」はっ!アザレアさんが心配している。
「あい。だーじょーぶ。」固まって動けない私に驚いたようだ。何ともないと分かって、アザレアさんがホッとした表情になった。
「今日のお披露目パーティーへ参加される貴族、商会の会頭、マンサク大旦那様が魔法省長官なのと、ストック侯爵様が魔法省筆頭補佐官なので。また、その繋がりで、平民の魔法省職員からも届いています。」
「あいっ。」うへーっ、二人とも偉いんだーーっ。んで、家が侯爵家と。何気にすごいわ。
「そして、その繋がりで、国内の学者や研究者、近隣諸国の魔法省長官や、学者、研究者からも。」えっ、近隣諸国?そんな所からも来てるの?えっ、えっ。
「デルフィニウム前侯爵夫人の調薬依頼で繋がりのある、国内外の方々。その国外の方々の中には、王族も含まれます。他国の王族の参加となると色々と不都合があるので、カードだけとか、カードとプレゼントだけになります。イリス侯爵夫人のお付き合いある貴族や、イリス様のご実家からも届いております。」
「あ、あいっ。」他にものんびり、ゆっくり平凡生活を脅かしそうな繋がりが…。どこに危険に繋がる導火線があるのか、分からんっっ!!!よしっ!兄様と姉様に押し付けようっ!!
「デルフィニウム大奥様の調剤や薬草関係で、近隣諸国の商会や産地とも繋がりがあり、その方々からも頂いております。…プリムラお嬢様がお生まれになった時も、国内外へ瞬く間に情報が伝達されましたねぇ。あの時は、気の早い方々が婚約したいという書簡が次々に舞い込みました。」ウットリ顔のアザレアさん。
ウットリする要素なんてどこにもないのに、やめて----っ!!私の気力をガリガリ削らないでよっ!!
「もちろん、ストック様が治めている領地からもお祝いが届いております。」あ、今度はキリッとした表情で言い切った。案外、この人、お茶目かも。
「プリムラお嬢様宛のプレゼントに危険なモノが紛れていないかチェックが済むと、ここに運び込まれます。ですから、ここにあるものは安全です。」ニッコリ。
「…あいっ。」私は1歳児。今日誕生日の1歳児。危険も安全も分からない振りしなくちゃ…。頑張れ私。
「ちなみに隣の部屋もこの部屋と同じで、プレゼントやカードが積まれています。」ちょ、ちょっと、最後に爆弾発言混じってなかった!?もう一部屋あるのっ!!全部、中身を見終わるのはどんだけかかるんだい…。1歳児だから、飲み食い昼寝に遊びしかしていないから、何にもないんだけど、このプレゼントの山掛ける2倍は、いつ見終わるかな…。私の義務だよね、たぶん…。
ごちゃごちゃ考えていたら、アザレアさんの前に誰かが来た。抱っこされてるから、見えにくい。…あ、あれっ、エリシマム兄様だ。支度しに行ったんじゃないの?
「プリムラ、来ちゃったよ。着る服の確認をしたらすることなくってさ。」
「にぃ、きたー!」いらっしゃいませー!私の安心を支える兄様ーー!!
「プリムラやアゲィみたいに昼寝しないから、昼食も遅いし、着替えて髪を整えるだけだしさ。」そっかー、男の子は支度が早いんだー。楽でいいなぁ。じゃあ、私のプレゼント山の見学にでも来たの?うふふっ、凄いでしょう!
「あーいっ。」さぁ、見るがよいっ!!兄様っ。
部屋の中を見回してから、アザレアさんと「私の分は何部屋分だったか」話した兄様が言い放った。
「なんだ、2部屋か。それで済んで良かったじゃん。俺の時は、4部屋分あったって聞いたよ。アゲィは2部屋と半部屋分のプレゼントがあったよ。」
「えうえっ、にぃ、しゅごっ!」凄いわ、エリシマム兄様。さすが次代の侯爵だわ。プレゼントが4部屋か…。ま、負けた。……私はこれでも少ないんだ…。でもでも、片付けが早く済みそうだからいいんだもんっ。
「俺の誕生日プレゼントの中に、女物の服生地や、レース、リボンが届く事もあったからな。もし、プリムラ向きでないのがあったら、俺の仕舞ってあるのと交換しよう。好きなのを選んでいいよ。結構あるんだ。」でも、何で男の兄様に女物が?
「その土地の産地ならではの特産品を送ってこられる方々も結構いらっしゃいます。状態固定もしくは状態維持魔法のかかっている保管庫で保管しているので、刻経過による劣化や壊れ、腐敗などを防ぎます。だから、いつでも新品同様です。果物とか野菜とか肉とかの食料品は屋敷内にて消費しますが、それ以外の生地、装飾品雑貨等々、その他の物が保管対象になります。保管庫は20廻(20年)に1回メンテナンスすればいつでも出し入れできる便利なモノなんです。だから、エリシマム様が将来の婚約者様にと、その中から選んでプレゼントも出来るんです。プリムラ様も、将来の婚約者様にとっておきたいものは、保管庫内にてそのままで。」
「でも、なー、沢山ある中の1つぐらい交換しようよ。」んー、何があるか分かんないからなー、どうしようかなー。
「保管庫内に入れられた物には個人専用タグが付きます。本人以外は保管庫から出せなくなります。エリシマム様がプリムラ様に来たプレゼントを勝手に出し入れできないのはそのためです。プレゼントの入ったこの部屋と隣の部屋にも状態維持や状態固定の魔法がかかっており、(仮)保管部屋になっております。もちろん、個人専用タグもついています。」
「そ、だからプリムラの許可がないと、この部屋の物は全て、俺には触れないんだ。ほら、こんな風に。」
兄様の身近にあった箱に兄様の手が触れそうになったら、箱が半透明になり、兄様の手がスカッと箱を通り抜けた。うええっ、なんだこりゃ、一瞬、手品かと思ったが、よくよく冷静に考えると、箱が半透明化して、手を透過して触れなくしたと。
「な、分ったか。」何故に自慢げなんだ、兄様よ。
「本人が許可した代理人なら、取り出せます。血縁で常識のある成人した方になら。プリムラ様ですと、ストック様かイリス様にプリムラ様が許可した場合、可能です。」
「とーぉしゃま?、かーしゃま?」あれれっ、じゃあ、この部屋に用意できたことに矛盾が…。
「例外があります。子供が誕生し、1歳になるまでは、両親が本人の許可がなくても代理人になり、取り扱えます。ですが、プリムラ様は今日をもって1歳になられたので、今日からは代理人とてプリムラ様の許可なく、プレゼントには触れません。プリムラ様の許可が必ず必要になります。」
この後もアザレアさんの解説が続き、ぐったりしながら聞いていた私は、エリシマム兄様がいつの間にか居なくなっているのに気付きませんでした。
ようするに、アザレアさんの説明によると、代理人の許可が切れる誕生日前日までは両親が目を光らせているから危ないプレゼントを避けられる。だから、誕生日前日までの外からのプレゼントを受け取れる。誕生日当日は本人承認に切り替わるから、家族や屋敷の者からだけ、プレゼントを受け取る。招待客は当日、手ぶらでお越し下さい状態。当日にプレゼントを寄越すのは、常識も弁えない非常識者と判断されるか、(誕生日を迎えたばかりの1歳児が危険物を判断出来ないのは誰にでもわかる。)そんな状態の1歳児に当日にプレゼントするのは、亡き者や失脚等を狙った悪意ある贈り物と解釈され、犯罪と勘違いされてもおかしくはないと。余程の事情でなければ例外は認められない、のがこの世界ならではの常識になっている。
で、兄様は、最新の本や、オモチャ、珍しい物がただ欲しかっただけと。
「にぃ、ほちかったの?」そうアザレアさんに聞いたら、少し困った顔でエリシマム兄様の話をしてくれた。
嫡男の兄様は、将来、ワガママな侯爵様にならぬよう、簡単に物を買ってもらえない。勉学や、生活するのに必要な物はすぐ買ってもらえるけど、自分の嗜好品は、成績が良かったり、誕生日に欲しいと父様や母様に前もって交渉しないと手に入らない立場であるそうで。でも、欲しい物を手に入れるために、その相手をみて、どうしたら上手く交渉して欲しい物を手に入れるかを考え、交渉しながら色々と工夫して交渉を重ね、それによって手に入れるのは推奨されていると。
あー、英才教育かっ、今から交渉の仕方の実地訓練ですか…ご苦労様です。
アゲィ姉様のプレゼントの類は、父様、母様、爺様、お婆様の4人で代理人となっており、勝手に本人がプレゼントを取り出せないようにしていると。その上、保管庫の出入り許可をアゲィ姉様に出さないように細工して…、の二段構え方式をとっていると。
うわーっ、そんなに厳重なんだ。他に何をしたんだろう…。聞きたいような聞きたくないような。何かしらの対策をするには聞きたいけど、聞いたら逃げられなくなりそうなイヤーな予感がするから、聞きたくないような、私の明日はどうなる、いや、今日のお披露目パーティーの無事を願うっ!!
あれ、話がとんでしまった。元に戻そう。
そうなると、兄様が交渉してもアゲィ姉様からは手に入らない。あの姉様じゃ、ビックリ箱よりも危険そうだし、うっかりやら、何気ないやらかしが激しそうだ。万が一、上手く何か手に入っても、引き換えに何かをさせられたり、物を壊される可能性が高そう。でも、私ならアゲィ姉様よりおとなしそうだし、交渉も大丈夫そうと兄様が判断して、私に提案しに来たのか。兄様、普通の人認定をありがとうございます。アゲィ姉様みたく、フルーツポンチには突っ込みませんので。て、か、ダイブしたくない。
でも、私の乳母で、(私に関して)責任ある立場のアザレアさんをみて、今は無理そうだと判断して逃げたんだなー。ふうーん。
そして、そんな私がこれからの事について色々考えている間に、昼食、昼寝、支度が済み、私のお披露目パーティーが開始される刻になった。