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薄紅色の花が咲いたら  作者: 巻乃
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芽吹きー43

 次々とお祝いに来る人達にお礼を告げ終わったら、フルコースの会食が始まりました。音楽は生演奏で楽団の方達が奏でています。流石、貴族の公爵家です。


 会食の途中でケークサレが出てきた時は、ワトソニアお父様から「オーキッド公爵家領地で採れた野菜をふんだんに使って作られた新しい特産品です。後ほどの手土産として、野菜を使ったパウンドケーキとこのケークサレをお渡しする予定でおります。ご家族皆さんでお楽しみ下さい。」との説明がありました。


 コンジェラシオン様からは「宰相室や家には、息子の婚約者であるプリムラ嬢から何度も差し入れされており、大変美味しいです。両家の料理長達もお勧めしております。」と後押しと、お墨付きをしてもらえました。まぁ、ステッキやミニミラ(コンパクトミラー)文房具の穴あきパンチ等の原案を提供したのが私だって知っている宰相様からしたら、オーキッド公爵家の特産品を後押しぐらいはするかと、思ってしまいましたけどねー。それに、今日で、生花を取り扱う貴族に恩を売れるネタを仕入れられたしー。


 やっぱり、イヤーカフには当分の間、認識疎外効果を付けて真似できない様にしよう。今日は、イヤーカフを見ても、記憶に残らない様に魔法をかけておいたけど、さー。


 フルコースの会食は滞りなく進み、デザートの出てくる順番になりました。私の内心はドキドキです。ソルはまだ気付いていないようですが、お絵かきロールケーキが大皿に盛られて出てくると、見当た人達からの声による、さざ波がおきました。誉め言葉だったので、ちょっとだけ安心しましたが、執事のマルスからこのケーキの話がされるのを緊張して待ちました。


「このロールケーキは、ソルベール様の婚約者であるプリムラ様が、昨日自らがお作りになりました。ソルベール様に送る婚約の証だそうです。」あら、やだわ!何だか恥ずかしくて頬が熱い!


 会場のあちこちから拍手がおこりました。その間に、ロールケーキをその場でカットして皿に盛り、フルーツとクリームでデコレーションされた物が配膳されて行きます。私達のテーブルにも配膳されたので、そっとソルを見てみると、素敵な笑顔でいます。


「今朝の厨房へのエスコートの意味が分かったような気がするな。こんな隠し玉を隠していたなんて。」私の顔がますます赤くなります。「えーと、そのー、沢山練習したのでマズくないと思います。」


 ローズヒップティーも一緒に配膳されていっていたので、「色がキレイ」とか「ケーキと合わせても、合う」とか何だか言われています。


「こちらの色鮮やかなお茶の茶葉も、プリムラ様のオリジナルになります。この茶葉は祖母である調剤スキル持ちのデルフィニウム様の承認を受けていると聞いております。合わせてお召し上がりくださいませ。」


 ラングさんの追加の説明で、顔を下に向けたままで上げられなくなりました。隣の席のソルからは食べたり飲んだりしている気配がしているし、「どっちも美味しい。ありがとう。」って言われたけど、赤い顔を上げる勇気が出ません。しばらくそのままでいたら、「プリムラの分も私が貰ってもいい?」って聞かれたので、首を縦に1回だけ振って、頷いておいた。


 ソルが「本当に美味しいね。」って更に褒めてくれたけど、そのまま動けずにいたら、私の両手をソルがとって、顎を持って私の顔を上向きにしたら、唇にキスをしてくれました。驚いた私がその姿勢のまま固まっていたら、『そーれ、今だー!』って神様の声が聞こえたと思ったら、18歳の私になりました。『王子様のキスでお姫様は目覚めるんだよー!』ってまた神様の声がしたけど、会場内のあちこちから悲鳴やら驚きの声が聞こえてきた。


『我が愛し子の婚約を祝おうと、愛し子をソルベールに相応しい18歳の姿に変えたまで。将来の愛し子の姿であるので、驚く事ではない。我からの婚約の祝いとして、3日程、この姿でいられるようにしようと思う。ソルベール、プリムラ、我もそなた達の婚約を祝っている。ではな。』


 この婚約会場の空から、光の粒と花びらが舞っている。地面やテーブルに触れる前に消えてしまうけれど、神様からのお祝いが空から降ってきている。


 その光景を見ながら、私は心の中で、神様にお祝いのおすそ分けとしてロールケーキとワインにリボンをかけて、収納スペースへ入れてあります!どうぞお受け取り下さいと呟いた。『婚約のおすそ分けは確かに貰ったよ。じゃあね。』神様から、受け取った旨の返事が来たので、ソルを見た。


「後で私からもお祝いのおすそ分けをするから、神様に受け取ってもらおうね。」

「私も、もう少しおすそ分けしたいです。綺麗な光景です。」

「ああ、空からお祝いが降ってくる婚約式を見たのは初めてだ。綺麗だな。」


 空からのお祝いと神様からの祝いの言葉で止まっていた演奏が、また始まった。ソルのエスコートで私達はテーブル前のスペースに出て、演奏を聞きながらダンスを踊り始めた。曲が終わり、ダンスも踊り終わると、会場からは割れんばかりの拍手や喝采が聞こえてきた。皆、口々に「こんなに素敵な婚約式に出れて良かった。」「空からのお祝いと神からの言葉が聞けて、貴重な体験が出来た。」「会場も料理も2人のダンスも全てが良かった。」等々、私達の婚約式が上手く終わった事を実感できました。あ、まだ、手土産を渡していないっけ。


「私共の手土産として、ピーオニー公爵家の新しい特産品を皆様にご用意しました。紳士で在られるご当主の皆様にはこのステッキをご用意いたしました。」コンジェラシオン様がそう告げた姿は、ピーオニー公爵家の象徴の芍薬の刺繍のあるマントを付けて、私のプレゼントした芍薬を意匠にしてあるステッキを持っていました。

「淑女の皆様には、ミニミラと言う小さな持ち歩き出来る手鏡をご用意しております。こちらも新しい特産品です。そして、今日、私達家族の淑女方が、生花を使った飾りの新しいおしゃれの仕方を提案いたしました。興味のある方は手土産を受取りましたら、私共がお話し致します。お茶や甘味に軽食を別にご用意してありますので、どうぞ。」


 婚約会場に並んでいた長方形のテーブルが、丸テーブルに変わりつつあり、お茶の支度もされている。さしずめ、披露宴の後の2次会の様相を呈しています。招待客である貴族の方々には、名前を確認してからステッキ、ミニミラ、ケークサレとパウンドケーキの3つの手土産が渡されている。貴族だから、簡易の収納バッグに荷物を入れているので、手土産を貰っても問題ないでしょう。


 あ、当主にはステッキ、当主夫人にしかミニミラが渡されないなら、マンサク爺様とデルフィお婆様、エリ兄様に、アゲィ姉様、ノワール様にグラジーお兄様、ご友人のロッシュ様にラムディース様にメテオーロ様の手土産はどうなるんだろうかと思って、ソルを見た。


「当主夫妻以外には、別枠で手土産を用意してあるから、心配ないよ。」ソルにそう言われたので、一安心。

「ありがとう、ソル。」

「プリムラが綺麗で、今日の婚約式での素敵な姿を見て、くらくらしている私がいるよ。これで、婚約式はお終いだけど、お茶を飲んでから私達の部屋へ帰ろうか。」

「うん!ソル、ありがとう!そうしたいです。」

「では、テーブルまでエスコート致します、婚約者殿。」

「喜んで、お願い致しますわ、ソル。」18歳だもんね、淑女らしくしなくちゃ。


 ソルにテーブルまでエスコートされて、丸テーブルの椅子に座りました。ソルが座ったら、ご友人のロッシュ様にラムディース様、メテオーロ様にグラジーお兄様までが同じテーブルに座りました。


「こんなに美人になるって分かっていたらー、グラジがソルベールに紹介しなきゃよかったのにー。」メテオーロ様が嘆く。

「わたしもここまで綺麗で商才のある方だったら、婚約したかったよ。」ラムディース様、お褒めの言葉をありがとうございます。でも、黙って微笑んで、お茶を飲む事に専念します。ソルにヤキモチを妬かせたくないし。

「逃がした魚は大きかったかー、ちぇっ、残念!」ロッシュ様が言った。

「そりゃ、俺の義妹だもの、美人になるに決まっているだろう。」グラジーお兄様が自慢げに言った。

「私の婚約者は私だけのものだから、誰にも譲らないけどな。」ソルが飄々と受け流す。

「私もソルベール様と今日、婚約式を致しましたの。皆様、ご冗談が過ぎますわ。」私の目にはソルしか入っていませんと宣言しておきます。

「グラジ、プリムラ嬢の姉も来ているんだよね、紹介してもらおうかな。」アゲィ姉様もモテますね。

「ん、紹介だけならいいよ。一応、言っておくけど、まだ8歳になったばかりだからな。」

「王城のお茶会での婚約がまだなら構わない。お願いします!」貴族なら、10歳違いぐらいなら問題ないし。周りの食いつきが違うなー。

「じゃあ、俺は挨拶がてら、こいつらを紹介してくるわ。ソルとプリムラはまだ此処にいるんだろ。」

「暫くはまだ居るかな。」

「グラジーお兄様、いってらっしゃいませ。」

「行ってくる。」


 ご友人達を連れて、グラジーお兄様が移動していった。私は急いで収納スペースの[神様への貢物入れ]へ収納スペースの在庫から、ワインのつまみになりそうなものを入れていった。私からはこれで大丈夫だろう。ソルからのおすそ分けを追加で入れれば、一度にドカッと貢物をされるよりは神様もいいだろうし。


 でも、グラジーお兄様がアゲラタム姉様をご友人に紹介出来たとしても、ストック父様が居るから、婚約までは遠い道のりになると思う。アゲラタム姉様は、私みたいにサクサクと婚約出来ないと思うなー。私的には神様の神託と言う後押しで婚約出来たので、良かったと思う。先に婚約出来たからあの溺愛から逃れられたし、残り1人になったら、なかなか逃がしてもらえないだろう事は元から予想済みだった。


「プリムラは何を考えていたんだい?」

「んー、先に婚約しなければ、あの溺愛しているストック父様から逃げ出せなかったなーって、思っていました。」

「…それは、充分あり得る話だね。グラジが紹介しても、婚約までの道のりが厳しそうだ。」

「その道のりを短くする為には、アゲィ姉様がストック父様の溺愛をぶった切るしかないなーって考えていました。」

「神様からの神託っていう後押しが無ければ、私も婚約を阻止される可能性があったって事か。」

「オーキッド公爵家へ5歳になったら養女になる話が、私が1歳になってすぐ、決まっていましたから、5歳まで待ってもらえれば大丈夫でしたよ。」

「私はプリムラが5歳なるまでなんて待っていられなかったよ、本当なら、まだ3歳だったんだよ。」

「となると、今夜も添い寝してもらわないとならないですね。」

「喜んで、添い寝をしましょう、婚約者殿。」


 今日からはお披露目も済んだ婚約者同士!18歳のうちに、ソルと夜会に参加したいなー。ダンスも踊りたいなー。


「ねえ、ソル。18歳のうちにソルと夜会に参加して、ダンスを沢山したいってワガママを言ってもいいかな?」

「明日の夜の夜会なら、今日の婚約式の話も回っているか、明日の夜会が開かれる場所の招待状を父上に見せてもらおう。」

「ソル!ありがとう!」

「私も婚約式の済んだプリムラを見せびらかしたいからね。」


 ドレスはねー、私が魔法を使って作ったソルの瞳の色で作ってある夜会用のドレスが2着あるし、大丈夫。ソルにも私の色で作った衣装が2着あるし、大丈夫。

「私が作ったドレスもソルの衣装もあるから、大丈夫だと思います。」

「いつの間に作ったんだい。プリムラが専用の裁縫室を作っているから、何を縫うのかと思っていたんだけど。それなら、大丈夫だね。」

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