表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
薄紅色の花が咲いたら  作者: 巻乃
50/56

芽吹きー40

 エリシマム兄様とアゲラタム姉様を待たせていたらと思って、急いで歩きました。でも、小さい方の応接室へ着いて部屋の中を見ても、誰もいませんでした。兄様と姉様はまだでしたー。あー、先に来れたー。


 一応、私とグラジオラスお兄様がホスト役(招いた側)なので、先に来れて良かったです。ホッとした私は、お茶の用意とお菓子と軽食の用意を確認しました。これで、大丈夫。

 のんびりと、ソルとグラジーお兄様と私でお茶を飲みながら、2人を待つことにしました。


 お茶を飲みながら、グラジーお兄様が呆れたような声で呟きます。

「大方、孫可愛さの父上と母上に捉まって動けないでいるんだろうな。」

「デルフィお婆様は、明日の講義の準備があると早々に夕食後に退散していましたのに。」

「あれは、見習いたい撤退(おいとま)の仕方だったな。隙も暇も見せずに、ひたすら微笑んで早々に撤退していったあの手腕、マンサク殿が嫁が最強で、儂では嫁には敵わないと常々、言っていたのが分かったような気がする。」


 爺様、お婆様最強説を何処で語っているのですか、これがバレたら、お婆様に締められますよ!


 どうしてそういう状況になったのか理由は知らないが、お婆様の真っ黒な笑顔から、怒りの波動を受けて、真っ白な顔色をした爺様がひたすらに謝罪をしていた姿を過去に一度だけ見た事のある私。それを思い出した私は、ブルっと身震いをした。


 身震いをした私を不思議に思ったお兄様がどうしたのか聞くので、私の過去に、こういう姿を見たと話をしたのでした。お婆様の前で爺様の言っていたお婆様最強説を迂闊に漏らさない様に!と、お兄様に口止めをしたかったのだ。それを分かってもらえるように、詳しく話をしたのだった。お兄様にもヤバい気配は伝わったようで、話を聞いたグラジーお兄様は、「わ、分かった。言わない。」そう返事をしてくれたので、大丈夫だろう。はぁ、取り敢えず、口止め出来て良かったと溜め息を吐いてしまったのだが。


 2人がなかなか来ないので、ちょっと待ちくたびれてしまって、ソファでウトウト居眠りをしていました。ソルとグラジーお兄様が何かを話しているようですが、居眠りが気持ち良くてそのままでいました。


「今日の夕食はどうでした?」

「あぁ、プリムラが出迎えと夕食で、いつもより、はしゃいでいたな。よっぽど嬉しかったんだろう、今になって居眠りをしているしな。」

「そうだな。兄弟に会うのはしばらく振りだと昨日聞いていたし、楽しみ過ぎて、昨夜は中々プリムラが寝付かなかったな。」

「添い寝も大変だな。色々ときつくないのか?」

「私的には、全然大変じゃないけれど、歳相応のプリムラが見れたよ。まぁ、歳が離れている婚約者だから、キツイと言えばキツイけど、一緒に居れるから耐えているよ。」

「婚約式も直ぐだしな。ソルベールは今、仕事も準備も忙しいんだろう。」

「忙しいけど、楽しみがあるから頑張れるってとこかな。」

「それならいいか。そうそう、明日から3兄妹で鍛錬なんだよ。鍛錬している所を一度でも覗き見してみるといい、フリューリンク家が武闘派(まほうきし)の家だって分かるからさ。姉上の強さにストック義兄上が惹かれたって前に語っていたから、ソルベールも一度ぐらい見てみればいいかと思ったんだけれど。その気があるならさ、3人から見つからない様に覗き見出来る場所に、マルスが案内するように手配しておくけど、どうする?」

「そうだな、一度ぐらいは見ておこうかな。」

「明日朝で、いいか?」

「頑張って、起きるよ。」


 暫く話していても、あの2人が応接室へ訪ねて来ないので、従僕に「プリムラが眠ってしまったので、部屋に戻る。また後日に。」とエリシマムとアゲラタムに伝言するようにして、ソルベールがプリムラを抱き上げて自室へ引き上げた。


*****

 メイドさん達にお風呂へ入れてもらって、着替えさせてもらったようです。気付いたら、ベッドの中で寝間着を着て寝ていました。いつも隣で添い寝の筈のソルがいなかったので、部屋の中を見回すと、ソルが灯りを小さくして、机でカリカリと何かを書いている音がします。私を起こさない様に書類を片付けているようです。


「ソル?」小さく呼びかけてみました。

「あぁ、起きた?」

「ん。目が覚めちゃった。お風呂も着替えも済んで、ベッドで寝ていたからちょっとだけビックリしちゃった。」

「婚約式がもう直ぐだし、婚約式の後に休暇が取れるようにさ、ちょっとだけ前倒しで仕事をしているんだ。あと少しでキリがいい所まで終わるから待ってて。」

「はい。歯磨きしてきます。」


 ソルが終わるまでに、磨きそびれた、歯磨きしてこよう。そうして洗面所で歯磨きをしてから、ベッド横のサイドテーブルにあったピッチャーからグラスに水を入れて、飲んだ。ベッドに上がって、横になってソルを待っていると、ソルが来た。


「寝る支度は済んだ?」

「うん。」

「じゃあ、丸薬を飲まないとね。」

「はーい。」やっぱり飲み慣れても、苦いから苦手なんだよねー。少しだけ憂鬱になりながらも、丸薬を飲んだ。そうして、いつでも眠れるようにベッドに横になった。

「婚約式の後に3日だけ休暇を取ったんだ。」ソルが私の頭を撫でながら、話してくれた。

「じゃあ、婚約式の後にソルは少しだけでも休めるんだね。」

「ここの所、忙しかったから、息抜きも兼ねているけど、プリムラとゆっくりしたかったんだ。」

「嬉しいな。あと3日で、婚約式なんだね。」

「18歳用のドレスは届いたのかい?」

「昨日、今の私のドレスと小物と一緒に、18歳用も届いたよー。」

「なら、大丈夫か。足りない物はあった?」

「確認したら一通りの物はあったから、大丈夫。」

「ドレスに合わせた髪形と装飾品は決まったの?」

「ん、一応、髪は少しだけ結い上げて、後は長いまま下ろす事にして、花とリボンで飾るの。」婚約の証が髪飾りでも大丈夫な様に生花とリボンで飾る事にしましたー。

「…じゃあ、大丈夫か。装飾品は?」

「んー、今の所、私が小さいから、爺様から貰った守護のブレスレットだけで、他は無し。」

「それなら、いいんだ。確認したかっただけだから。」婚約の証は、髪飾りとペンダントか、な。

「…眠くなってきちゃった。おやすみなさい。」

「おやすみ、プリムラ。」ソルのキスをほっぺにしてもらい、眠ったのでした。


 翌朝、3人でグラジーお兄様から鍛錬を見てもらい、指導と打ち込み練習をしてから朝食の席に着いた。


「昨夜は兄妹仲良くお茶をする予定だったそうだが、私とクリナムで、久しぶりに会ったエリシマムとアゲラタムを離さなかったんだ。気付いた時にはプリムラが自室へ引き上げた後だった。待ちぼうけをさせてしまったな。」

「ワトソニアお父様、私はいいのです。事情が分かっておりますもの。でも、お兄様兼護衛のグラジーお兄様と婚約者のソルベール様には約束を(たが)えてしまったのです。お二方の刻(時間)を無為に過ごさせてしまわれたのは悪手ですわ。」

「そうだな、2人には私からお詫びをしておこう。孫可愛さに目を曇らせてしまった。」

「クリナムも、これからは気を付けると言うだろう。」

「クリナムお母様は?」

「アゲラタムと一緒に眠った筈。アゲラタムがここいて、何故クリナムがいないのだろう?」

「お婆様なら、イリス母様の所へ朝一番に向かっていますわ。」

「は?」

「イリスが泊まるように説得したいのですわ!と気合を入れて、お婆様は朝食前に出掛けて行きましたわ。」

「まぁ。私が居ない分、親子水入らずで良いのではないですか。私も気兼ねなく朝食がいただけますわ。(私が居ないから、早速、出掛けましたのね。私と朝食の席を迎えたくないから、フリューリンク家で朝食を摂るのでしょう。そこまで、嫌われているとは思いませんでしたわ。)」


 わぁー、デルフィお婆様と朝食を一緒にしたくないから、イリス母様の所へ行ったんだー。


「さっすが、デルフィお婆様ー!かっこいいー!色々しちゃってるから、クリナムお婆様は気まずいだけなんでしょーねー。逃げたって変わらないのにー。」アゲラタム姉様が確信を衝く発言をした。


「クリナムお婆様は、やらかしていますからね、心苦しいのでしょう。」エリシマム兄様も(とど)めを刺す発言をした。ワトソニアお父様とグラジーお兄様が苦笑して無言でいる。孫にまで性格と行動を把握されているクリナムお母様に、お母様が苦手なマルスが肩を震わせて笑いを耐えている。ソルは、素知らぬ顔で朝食を食べているし、私もデルフィお婆様も黙々と朝食を食べている。


 朝食後は、私専用台所と調剤室にエリシマム兄様とアゲラタム姉様を案内してから、エリ兄様アゲィ姉様もそれぞれ各自で勉強、昼食後にアゲィ姉様と私はデルフィお婆様の講義と実習、エリ兄様はグラジーお兄様から剣術指南と魔法の訓練、みっちりと学んだ後に夕食、その後に昨日出来なかったお茶を、イリス母様も泊りになったので、一緒にお茶をしました。


 そこで無事にソルを婚約者だと紹介出来ました!はぁー、良かったー!婚約式の当日にソルを紹介にならなくてー。でないと、婚約式前に紹介出来ない程の()()()()()()()と思われてしまうから、事前に家族へ紹介しておかなくてはならないのに、あのストック父様とマンサク爺様のせいで、ことごとく予定変更されて、家族に紹介する事から逃げられていたのでしたー。


 どうしていいか悩んだ私は、ワトソニアお父様に相談しました。その結果、デルフィお婆様は講義で、エリシマム兄様とアゲラタム姉様は遊びに来て、イリス母様はお茶会のついでと言う理由付けをしなければならなかったのです。


 紹介から逃げたって、婚約式の日も刻(時間)も決まってしまっているのに、往生際が悪すぎます。私の婚約者に悪い評判をたててしまう所だったのだと、4人共、怒っています。だから、婚約式当日までデルフィお婆様とイリス母様とエリシマム兄様とアゲラタム姉様は、このオーキッド公爵家に泊まって、爺様、父様には反省してもらう!のです。寂しい思いをすれば少しは反省するだろうと。反省が見えない場合、オーキッド公爵家にて宿泊が延長されるだけなんですが、ねー。


 そう言えば、イリス母様から婚約式の前日までに刺繍入りハンカチーフを渡しておきなさいと言われたなー。明日は、婚約式の前日で、朝からロールケーキを焼いて焼いて忙しいんだけど。合間合間に刺繍をするかー、マントと合わせられるように刺繍をするかなー。魔石ビーズは付けられないけどねー。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ