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薄紅色の花が咲いたら  作者: 巻乃
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芽吹きー37

これから暫く何話か暴力的な表現が続けて出てきますが、話の内容の上であり、暴力等を推奨するつもりは一切ありません。宜しくお願い致します。


 皆で、移動して隣の部屋に入っってから、ざっと部屋の中を見回した。クンツァイト様が見た事のない大人2人といた。変な魔法の痕跡はなさそうだ。魔法で気持ち悪くなったりしていない。でも、目を合わせたらマズい感じがするし、この国の大人の許可が出るまで、一言も話さずに黙っていよう。皆で用意されたイスに座った。私はストック父様とソルベール様の間の席になった。護衛の2人は私の後ろで立って帝国の皇弟に睨みを利かせている筈。


「今日は帝国からの皇弟がスキル持ちのご令嬢との面会もしくは面談を望んで、我が国にいらした。」陛下が口上を述べた。

「スキル持ちのご令嬢が産まれてから、ずっとご令嬢の様子を教えて欲しいと催促の書簡を、何度断っても、しつこく何度も「スキル持ちの子孫だから知りたい」という理由で送られて来ましたが、こちらからは毎回毎回そんな理由では教えられないと返事をしています。それでも一向に治まらずにいる。スキル持ちの子孫がいるのは帝国だけではないので、これからも教えられないと返答しておきましょう。」宰相のコンジェラシオン様が言い切った。

「そちらの紹介はまだか。」皇弟が催促をする。

「紹介は出来ません。話すことも出来ません。」ストック父様が言った。

「勝手にされては困ります。ここは帝国ではない。スキル持ちが生まれるまで、何故間が空いたのか帝国では知っていらっしゃるでしょう。」ソルベール様も加勢した。

「そのご令嬢が話したら発動する魔法契約を解除しないと面会は中止になります。」ストック父様が言った。


「そんなものはない。」白を切るつもりか、魔法の専門家の父様が言うなら、それは本当だ。

「では、そちらの従者がお持ちの契約書は何でしょうか。」なおも父様が追及する。

「『今、処分する』とおっしゃられた。『ついでに魅了魔法も解除しておこう』ともおっしゃられている。」クンツァイト様が神様からの言葉で、加勢した。

「ほほう、異性にだけ発動する魅了魔法までとは。相変わらず汚くて卑怯なやり口ですね。」同級生だけに、父様はイリス母様の分も含めて言っているんだ。


「では、何が真実で、何が嘘なのか話しましょうか。大神官殿、頼みます。」ジェイド陛下が言う。


「神からだ。『スキル持ちの子孫ではない帝国の皇帝には、スキル持ちを好き勝手にはさせない。何故、200廻(年)も次のスキル持ちが生まれるまで間が空いたか帝国の皇帝と皇弟であるお前たちは知っている筈だ。皇弟のお前に子供が出来ないのは、お前がスキル持ちを苦しめた元凶の生まれ変わりだからだ。皇帝にも皇子は1人しかいないであろう。それが未だに続く天罰の一つである。』」


「まだあるんですよ、お聞きなさい。」ワトソニアお父様が怒りを露わにした。


「『お前は帝国の力で、この国へ留学していた頃、暇つぶしに子爵家の次期当主を唆し、裏で手を回し、何人もの女生徒を苦しめた。お前の尻尾を掴めないように証拠をもみ消したのを知っている。不定期に入れ替わる側妃も、お前が帝国の力で無理矢理に娶っているのも知っている。お前が目を付けた貴族の娘は何とか逃れているが、昨日も宰相にしつこく、あのご令嬢を寄越せと脅していたな。婚約者がいると断っても婚約破棄をさせて、帰国の際に連れ帰るのを当たり前のように、影に指示して捜させて探らせていたな。』」


「娘も婚約者に助け出されて間に合ったが、娘だけでなく、孫にまで手を出そうとするとは、万死に値する。貴様は暇つぶしに人を弄ぶクズよ。」ワトソニアお父様から、殺気が漏れている。後ろの護衛2人からも殺気が皇弟に向いている。両隣からも怒りが漏れているわ。


 クンツァイト様が続ける。

「『それだけではない。スキル持ちを魔法契約と異性だけに発動する魅了魔法をスキル持ちにかけようとした。婚約破棄をさせて、帝国に連れ帰り、帝国至上主義を教育して飼い殺しして、15歳になったらお前か皇帝の皇子かの正妃に据える為に娶って、スキル持ちが不幸になるように国家ぐるみの犯罪を起こそうとしているとここにいる皆は知っている。帝国にはこれからもスキル持ちは絶対に産まれない。子孫でもない者がどうして嘘を語るのを神である私が赦さなければいけないのか。赦す筈がないであろう。』」


「幸せそうにしている家族の幸せを壊そうとは人間扱いしたくないですね。この歳になって幸せそうな息子の幸せを見れた父としても、宰相としても許したくありません。陛下はどう思われていらっしゃいますか。」コンジェラシオン様からも怒りが漏れている。

「私の妃が貴様の暇つぶしに危険に晒されそうになっただと。スキル持ちを不幸にして当たり前の、その下種な考えも行動も全てが、学院時代から我は貴様が気に入らなかった。貴様と皇帝、その子孫親類がこの国へ立ち入る事をこれから一切禁ずる。入国禁止にする。帝国の皇家とは交流も今後も一切しない。」ジェイド陛下はそう宣言した。


「兄上、『国家での取引を停止するように』神が求めています。『理由はこれから話す』と。」


「では、神から求められているので、帝国とは国家間での取引を一切停止することも宣言する。」


「『帝国は怒らせてはいけない国を怒らせた。では、私の神託を続けて大神官から伝えよう。ジェイド、クンツァイト、ストック、他の者も心して聞くように。』」


「大神官、続きを。」


「兄上、覚悟をなさって下さい。『では、神の私が知る事を伝えよう。前国王夫妻は事故ではなく、現皇帝の指示により事故に見せかけて殺された。その際、そこのクズも皇帝とその方法を考えたのだ。留学していたからこの国の様子を知っていたので、計画に加担していた。前国王夫妻も生きていれば、おぬし達には双子の妹が生まれる予定がされていた。事故の時点で、前側妃の腹にいたのだ。おぬし達は4人もの家族を殺された。国家間での取引を停止させただけでは手ぬるいだろう。ヒューゲルト侯爵はいるだろうか。』」


「はい、こちらに控えております。」部屋の端から、セイクリッド様がやって来た。


「『セイクリッドよ、妻が言っている、元気でいてくれて、ありがとう。子供達を大きくしてくれて、ありがとう。でも、無茶や無謀な事はもうしないでね。力を使い切ったので、輪廻の輪に入らなくてはならないの。次はもう見守れないの。ごめんなさいと。』」


「はい、はい。」セイクリッド様が泣いている。


「『ヒューゲルト前侯爵を唆して、闇で出回る得体のしれない魔力増幅石をセイクリッドに使わせたのが前皇帝と現皇帝だ。ジェイドの命を狙ったのは帝国の皇家だ、リモナ前王妃の命を短くした原因の石を流したのは帝国の表の商人だ。ヒューゲルト前侯爵の兄は、侯爵になり替わろうとして前侯爵一家を処分する相談を皇帝としていたのだ。分かるか、帝国は真っ黒だ。この国には必要ない。だが、帝国の平民には罪はない。移民は犯罪を起こさないように契約魔法で縛ってから、各国で受け入れるように。』」


「誰か!!この犯罪者を!!前国王を殺した犯罪者に縄をかけよ!!」ジェイド陛下が叫んだ。

「今すぐに!」ストック父様とグラジーお兄様が皇弟とその従者を捕縛し、魔法を使えないようにした。


「『まだあるのだ。ストックの弟を暗殺した実行犯はそこにいる2人だ。ヒューゲルト前侯爵は自滅したが、まだ魔法の侯爵家の力を殺げていないと、前皇帝と現皇帝、皇弟で計画立案したが入国できず、まだ成人前の皇弟とその従者が観光目的でお忍び入国したのだ。実際はスキル持ちを手に入れられなかった皇家の恨みも混じってはいたが、フリューリンク侯爵家の力を殺ごうとしてヒューゲルト家が失敗したからだ。神殿の神官を自害に見せかけて殺したのが皇弟、内部分裂を狙って細工した。そっちの従者はただ神官を追いかけまわして殺して楽しんでいた。ストックの弟を暗殺したのは、皇弟だ。神殿に寄付しに来たと思わせてストックの弟に面会した皇弟が、ストックの弟に「あなたの兄上と同じ歳です。私にも兄上がいるんです。」と話しかけて、暗殺した。死にゆく彼に、「私の兄上は私が退屈しない様に工夫して、この神殿の皆殺しを命じて下さった素敵な兄上なんです。」とくだらない言葉を吐き捨てた。』」クンツァイト様が震えている。


「ストック、私の代わりに死なない程度に殴って良い。セイクリッドも私の代わりに殴ってくれ。」

「御意。」

「承知いたしました。」

「兄上、私も殴っても良いでしょうか。」

「大神官も神の言葉を伝えた駄賃に殴って憂さ晴らしをしてくれ、許可する。」

「ジェイド陛下、私も叔父の無念を晴らす手伝いを許可願います。」私が発言すると、怪訝な顔をした陛下。

「何をするのか。」

「各国に送られる映像が見苦しくならない様に殴る手の瞬時の治癒と、汚い血を見る気は一切ないので、全身の皮膚一枚だけの治癒を繰り返して血を見なくて済むように、内部のダメージは治さないようにするという状態にしたいのです。もちろん、私には出来ませんが神の力を借りて私が行いたいと思います。」


「兄上、神が『愛し子のカワイイ細やかな、わがまま位きいてやろう。』とおっしゃっています。」


「許可しよう。」

「では皆様、私が神の力を借りて魔法をかけます。しばしお待ちを。」


「マルス、私の横に、護衛を宜しく。」「承りました。」


「叔父上が兄のいない神殿で兄の役に立とうと頑張っていた心を踏みにじって、その気持ちが分かる大神官様がどうして震えていたかをあなたは一生理解できないでしょうね。あなたに頭のてっぺんから足の先まで嘗め回すように何度も見られて、凄く気持ち悪かった。人として扱えない最低なモノ!!言いたい事は沢山あるけど、最後に一つだけ。王妃があなたが帝国をスキル持ちを攫いに出たと知って、昨夜自害した。あなたの足かせにならない様に、罪の軽減を願って。側妃ももう誰もいない。半数は今日にも修道院へ、残りは王妃と共に神への嘆願をしてから自害した。」


「では、魔法をかけます。神様、宜しくお願いします。」


 その後は、泣きながら殴る人、怒鳴りながら殴る人、坦々と無言で殴る人、笑い声をあげて殴る人、文句を言いながら殴る人、バリエーション豊かな殴る人が見れた。何かしらの関係者だったのだろう侍従まで殴るのに参加していた。

 その場で殴らなかったのはジェイド陛下とソルベール様だけだった。私も殴らないでも蹴っておけばよかったかと思ったが、はしたないから我慢した。ジェイド陛下が私に話しかけてきた。


「神様から、全部聞いていた?」

「自分の事だけしか聞いていません。3歳児じゃ受け止められないです。」

「そっか。そうだよな。神様にお願いしたのはプリムラちゃんだよね。」

「はい。叩けば叩く程何か出そうな気持ち悪い目付きだったから。3歳児にあんな変な視線を向けてくる奇妙さと残虐性がありましたし。」

「長年の靄が晴れてきた。弟もストックも悲しさは無くならないが、理由がハッキリした分、自分で動けるようになるだろう。」

「ジェイド様もでしょ。早く王妃様とも王子様達とも仲直りしてね(ニッコリ)」


「宰相が羨ましい。」

「神様も長年、悩んでいらしたのでしょう、とっても良い笑顔でやり切るとおっしゃっていましたよ。」

「神様までもか。ソルベールは幸せだな。」「今も既に幸せです。当り前です。」ソルったら。

「でも、この殴った映像まで、各国に送るんですか?」

「皇弟は元々、この国を訪問した後に、順々に各国を訪問する予定だったんだ。皇弟は各国でやらかしているから、たぶん、あっちこっちの国で回してボコボコにされてから、帝国に戻されるんだろうな。」

「あ!『魔法の力を全て奪ってから、剣術他、反撃出来ない様その鍛錬も封印する。皇帝も皇家にも同じ様な処置をする』と神様から神託が来ました。」

「国家間の通達はすぐに采配するからさ。」

「でも、3歳児でもいいなんて気持ち悪いですよね。父様と同じ歳で、寒気がします。」

「俺には分かんないかな。エレガントがいるから。」

「しっかりジェイド様も惚気ていますね。」


「そうだ!私の婚約式には絶対来ちゃダメです。その日に神様から今日、殴らずに頑張った陛下に嬉しいご褒美があるそうですよ。その日頑張れば、クンツァイト様と2人分のご褒美を更に用意しているって。良かったですねー。」

「神様から?」「私が、陛下とクンツァイト様にだけ、ご褒美が無かったと言ったんです。ヒューゲルト侯爵セイクリッド様は今日で、ご褒美が2回目だったし。1回目は私が頼んだんですけどね。」

「え?1回目?」「神様が見せてくれたでしょう。ヒューゲルト侯爵家の家族団らんを。」

「あれって、プリムラちゃん発案なの?!」

「そうでーす。」

「まったく、いつの間に。」

「ソルもいたよ、聞こえなかっただけで。」「あの時か!」

「ソルも神様と仲が良いんですよー。私の婚約者だから。」

「な、何をバラしているんだ…。」「次期宰相の足場固め!」

「プリムラちゃん、しっかりしている所がイリス夫人に似ているね。」「親子でーす。」

「しっかりしている…。」

「皆、疲れてイスに座り始めましたね。そろそろ片付けましょうよ、ジェイド様。次は貴族当主や次期当主を集めての上映会をしませんか。ここにいなくても関係者はまだいっぱいいると思います。神様がこのまま魔法を維持してくれると思いますので、明日の午後にでも上映会をして、その映像も付けると、各国の皆さんも自由に出来ると思いますけど。」

「そうだな、私達だけじゃ、マンサク殿もご不満を晴らせないだろうし。」

「前国王の時に現役で苦労された臣下の方もご招待したらどうでしょう。でないと、爺様が参加できないし。」

「すぐ手配しよう。」ジェイド様が国王の顔になって言いました。


 私は婚約者様がそのまま宰相室へ仕事に行くのを見送って、(約1人、「久々に会えたのにー」と嘆くストック父様を引きずって行った侍従の方、申し訳ありません!)護衛のグラジーお兄様とマルスと一緒に、オーキッド公爵家へ帰宅しました。


 お兄様は、まだ皇弟の影がいるので、私の護衛を続けています。マルスは執事服に戻ってから、屋敷全体を見張るそうです。


 お昼ご飯をお兄様と食べて、厨房で料理長から、食品の鮮度、良い物の見分け方第2弾を教えてもらった。それから、公爵家の領地で採れる野菜を摩り下ろしたり、甘く煮て細かくして入れたり、果物と組み合わせたりした、パウンドケーキを沢山、沢山焼きました。料理長には屋敷の皆に心配をかけたので、そのお詫びに、休憩のお茶の時に食べて欲しいと話し、ワトソニアお父様は疲れて帰ってこられるだろうから、夕食のデザートにして欲しいと頼みました。私は料理長と味見と称して沢山食べました。


 グラジーお兄様とマルスには、よく出来たと思うパウンドケーキにリボンをかけて、私からお礼として渡しました。2人共、喜んでくれました。


 ジェイド陛下の命令で、帝国から来た罪人2人は、貴族用の牢に入れられたと帰宅したワトソニアお父様から聞きました。

「貴族当主、次期当主、前当主並びに帝国に関わりのあった貴族、王城で勤めている者は皆、帝国からの罪人の罪をひけらかすので明日午後の13刻(時)に何があっても参加するように。」という王命を速達扱いの書簡で通達したから、明日は忙しくなるぞ、懐かしい顔にも会えるはずと、お父様は言っていました。


 明日の上映会には、大神官のクンツァイト様とヒューゲルト侯爵セイクリッド様がいれば神様の神託を受けられるし、明日1日私の出番はないだろうと、元の身体に戻った日常を満喫するべく明日の予定をたてたのでしたー。


 そうそう、私専用の台所も調剤室も出来たのですが、料理長と話しながら作るのが楽しくて、ついつい厨房を使ってしまってますけど。明日、私用の食材が厨房に運ばれてきます。本当なら、私の台所と調剤室に直接、運ばれるはずだったのですが、一応、まだ帝国の影や皇帝の手先(商人他、貴族など)を警戒しているためです。調理器具に、計量器具、調剤器具に普通の食材と調味料、薬草に珍しい物、この国では使わない食材、調味料も運ばれてきます。


 明日が楽しみです。夕食後寝るまで、勉強をして縫物をしてから寝る支度をしました。ソルも久々に今夜は睡眠がとれるので、丸薬を飲まない添い寝で、2人して早く寝ました。

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