表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
薄紅色の花が咲いたら  作者: 巻乃
41/56

芽吹きー35

 今日で、王城に行って宰相室で仕事を手伝う3日目になりました。昨日の続きですが、ソルベール様に今日から秘書官のお一人が私に付く事になりましたと言われました。私の作業を手伝って覚えて、これから先の書類整理をメインでするそうです。2人だと作業が(はかど)ります。グラジーお兄様は、今日も抜けられない仕事があったようで、私を宰相室まで送ると、帰りには必ず迎えに来るから宰相室から出るな!と何度も言い残して、仕事へ行きました。お兄様は心配性だなーとその時は思っていました。


 お昼はまた控えの間で昼食を済ませて、休憩をしながら宰相様と色々な話をして、(宰相様に)職人さんが作れるように見本として2穴パンチを1つ渡しました。


「キリみたいな道具で穴を開けなくても簡単に出来て、均一で決まった幅に穴が開いていて便利だ。今までの書類は、道具で穴を開ける人によって穴の場所が違っていたので、まとめたりする時に新たに穴を開けなければならなくて、不便だった。」としみじみと言われました。今までの書類を少しずつ書き直して順次入れ替えていくそうです。

「元々、切れて書き直さないといけない書類が結構あったから、手間は対して変わりないんですよ。」とも言われました。それなら、これでいいのかー、まとめやすくなったって事で。

「今日の昼はソルベール様がいないのですね。」と私がちょっとだけ残念そうに言うと、宰相様に微笑ましく見られました。

「昼の間にちょっと違う仕事に出てもらっているので、午後の仕事までには戻ってきますから。」と宰相様に言われました。ソルベール様がいなくて寂しかったのですが、仕事だからそういうこともあるのだろうと、深く考えるのを止めました。


 午後からは計算間違いを見つけて直す事をメインに、合間に書類を綴じる作業をして、今日も頑張りました。業務終了刻(時間)になったので、帰るのかと思ったら、ソルベール様に引き留められました。宰相様とまだ仕事の話があるので、お茶を飲んで待っていて欲しいと言われたのです。丁度、グラジーお兄様が迎えに来たのに、お兄様もその仕事の話に加わると言うので、私は控えの間に入り、中でお茶を飲んで待っていました。しばらくすると、宰相様とソルベール様とグラジーお兄様が来て、一緒に帰りましょうと言われてから宰相室を出ると、3人が速足で歩くので、私も速足で歩いて馬車に乗り込みました。


 今日は王城が静まりかえっていて、何だか気持ち悪かったです。まぁ、馬車に乗って家に帰ってから自室では、ひたすら縫物をしてましたけど。


 一昨日が下着、昨日が寝間着だったので、今日はワンピースを縫います。ドレスから型紙を薄い布でまずは作って、スカート丈を短くしあちこちの補正をしたら型紙が出来ました。ワンピースの生地を縫い代を付けて裁ち、裏地にする生地も魔法で裁ちました。前世のミシンを思い浮かべて魔法で縫います。ファスナーが無いので、代わりにボタンやリボン、紐を使ってみましたー。ワンピースが出来上がりましたよー。試着してみます。うん、着てみて違和感や引き攣れもない、大きな鏡(姿見)で見ても大丈夫そうですー、ふぅ。もう4着作らないと。魔法で出来そうな所は魔法を駆使して、2着は出来ました。


 ワンピースを着たまま一心不乱に縫物をしていたので、途中で、部屋の中へソルが入って来た事も、ソルが声をかけてくれるまで気付きませんでしたー。

「今日も一生懸命縫物をしているけど、何を作ったんだい?」って。

「わわっ!ビックリ!えーと、寝間着からドレスを着るまでの間に着る、普段着を作っていました。」

「今、プリムラが来ている物がそうなんだね。」

「あ!試着したままだった!」

「似合っているから、見れて良かったよ。可愛いね。」

「ソル、褒めてくれて、ありがとう。」

「お礼は頬にキスがいいな。」

「ソルからじゃないの?。」なーんて、イチャイチャしましたけど。だから、2着出来た所で縫物が止まってしまったのです。すいません、バカップルです。残りはまた明日作ります。


 そうして仕事を手伝って6日目が終わった時点で、家では下着の上下を10着、ドレス用の下着を2着、寝間着5着、ワンピース5着、手袋予備を5組、室内履きを4足作りました。私は頑張りましたー。魔法って便利ー!!


 そして明日は最終日の7日目、今日までで大体の必要な物は縫えたし、のんびりしようと思いました。


*****

 毎日毎日、王城に着いたら宰相室へすぐに向かい、夕方まで仕事をしてすぐ王城から帰る生活を繰り返して、今日は7日目の夕方です。最終日です。明日の朝には元に戻れると思って、仕事を頑張りました。秘書官の方達にも手伝ったお礼を沢山言われたし、また手伝いに来て欲しいとも言われました。頑張った甲斐がありましたー!満足げな気持ちのまま、宰相室を出て、今日は最終日なので王城をゆっくりと歩きたいとわがままを言って、3人と私で、ゆっくりと馬車までの道のりを歩いていました。


 宰相様とソルベール様と並んで、色々話しながら、お兄様が後ろで護衛をして王城を歩いていると、宰相のコンジェラシオン様に声をかける人がいました。


「久しいな、コンジェラシオン。」男性の様です。私は目を合わせない様に、ひたすら斜め下を見ます。


「お前たちは先に帰れ。」宰相様の声に緊張が走りました。ソルベール様も真顔になっています。厄介な相手なのでしょう。私の頭のてっぺんから足の先まで嘗め回すように見てきて、その視線がとても気持ち悪い!!宰相様がすぐにあしらえない相手、考える間もなく、さっさと逃げた方が良さそうです。


 そう言えば、18歳になる前の朝の鍛錬中にも、このとても気持ち悪い視線を感じた事を思い出しました。その時はすぐに気持ち悪い視線を感じなくなり、気のせいか通り過ぎに見られただけかと思って、忘れようとしていたのです。その気持ち悪かった視線と同じ視線だという事が鳥肌で、私には分かりました。


「そうします。」ソルベール様に促されている間にも、ますます視線が気持ち悪さを増してき、た。早く逃げたい気持ちで一杯。鳥肌も治まらない…。


「では先に失礼します。」私もそう言って、その場を逃げなくちゃと去ろうとしました。でも、その相手が何も言わずに、私の手を掴もうとこちらに手をのばしてきましたが、ソルベール様が「急いでいますので、ご容赦下さい。」と、その手を払ってくれたのです。後からソルに、お兄様が剣を抜く寸前だった事を聞いて、ソルが阻止してくれて、つくづくよかったと思いました、あんな変な視線の奴で、お兄様の剣が汚されなくて。


 急いでその隙に、その場を離れてから、お兄様が周りの様子を確認しながらで3人で馬車に乗りこみました。ソルが御者に、家とは逆方向の劇場に向かうように指示しました。

「まずは劇場へ向かうように指示したが、次は何処がいいか。グラジ、何処にする?」

「そうだな、劇場前に付いたら、次は山の方へ向かって行こうか。」

「で、山に行く手前で、城下町の商店街へ行こう。」

「そうしたら、今度は河へ向かって橋を渡ったら、家に帰ろうか。」

「それでいい。」


 その間にも私は気持ち悪さが中々とれなくて、無言で自分を抱きしめていた。お兄様は油断なく警戒しているよう。馬車内が緊張した空気です。ソルも何かの魔法を唱えて展開しているようでした。


 あちこちを馬車で走った後、オーキッド公爵家に帰りました。お兄様は私とソルを私の部屋の前まで送ると、今日の帰りの事をお父様に話してくると言って、足早に去っていきました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ