芽吹きー34
無事に何事もなく王城から馬車でオーキッド公爵家に着きました。私の部屋に着くと同時に、髪も目も元の色に戻りました。すぐさま、ソルに抱きしめられましたー。照れるー!
「私のプリムラ。18歳の君はくらくらする程、魅力的だ。私もキスをしてもいいのか聞いてしまうよ。」
「許可が無くても、いつもすぐキスするのに、なぜ今は聞くの?聞く必要はないと思うの。ね、キスして。」
「ああ、もちろんだ。」キスをした。ぐぅーとお腹の鳴る音がした。
「身体が大きいとすぐにお腹が空くのね。」お腹がペコペコだー。
ソルが笑っている。「ワゴンを入れてくる。」と言って、夕飯の載っているワゴンを部屋の中に入れた。
2人で晩ご飯を食べた。食べ終わったら、ドレスや下着、布やその他の荷物をソルの部屋と内側で繋がっている扉から、私の部屋に運び入れた。中身を取り出して確認する。頼んだ数はあるか、きちんとした物かどうかを見て確認しなくちゃと見ていたが、何となく、ふと顔を上げたら、ソルが真っ赤になっていた。
はて?何かしたかしら?あ、下着か、サイズが無くて新たに作ったからねー。大人の下着がどうなっているか知らなかったし、じっくり見ていただけなんだけど。そっかー、私は今、18歳だったねー。男性は女性用下着を知らないかー、目の前で広げられたらそりゃ、赤くもなるか。
「大人のってどうなっているか知らなかったから、つい見ちゃってました。見てみますか?」
「いやいやいや、遠慮します。」慌てて自分の部屋に逃げて行ったソル。
婚約式で大人の私もドレスを着るなら、ドレス用の下着も必要か、いっちょ下着を作ってみよう。ドレスが赤色だったから赤い布も買ったし、サイズを紐で測って作ろう。その前にこの新品の下着の大きさに合わせて白くて薄い布を切って、同じ大きさの型紙を作ってから、縫い代をつけて布を重ねて切ってから魔法で縫ってみよう、そうやって普通の下着を作ってみてから、ドレス用の下着も作ってみよう。この世界の下着は機能性だけを追求していて、シンプルで可愛さがないんだよね。神様が補正して戻してくれた一般の前世の知識から、可愛いのとか、前世の機能的な下着を知ってしまっている今の私には、物足りないんだよねー。さてと、買ってもらった下着から型紙を作ったので、下着を収納スペースへ入れてから、作るか。
魔法を使って、布をカットしていく。魔法で細い糸をより合わせて丈夫な糸にしてから、縫ってゆく。レースの飾りを付けたり、小さいリボンを付けたりする。レースで透けるように工夫もして、夢中で何枚も作っていた。今夜は作った下着の強度をみるために、身に着けてみよう。朝まで壊れなかったら、そのままでいいかな。10枚の上下セットが出来たけど、寝間着がない事に気付いた。下着1セットはお風呂から出たら着替えるとして、もう1セットは壊れた時用の予備で、ベッド横のサイドテーブルに置いた。残りの8セットの下着を収納スペースへ入れてから、ぎゃー!!まずは今夜の寝間着をどーしよーかと悩んだ。
あ!ソルの着古したシャツで代用出来るじゃないかぁー!!寝間着は明日帰ってきてから作ろうっと。さぁ、お風呂に入る前に用意しなくちゃ。ソルの部屋と繋がっている私の部屋の内扉を叩く。
18歳の姿の私だから、メイドに万が一聞かれたらマズいし、今は扉越しだし、家だからと油断しないで、名前をキチンと呼ばないと。
「ソルベール様ー、起きてます?相談したい事があるんですけどー。」こんな感じで言えばいいかなー。ソルがお風呂とか、トイレでいなかったりしてないよ、ね。
扉の向こう側から声がした。「何かなー。」
「寝間着を買い忘れたので、着古したシャツを寝間着がわりにしたいんですー。申し訳ありませんがお願い出来ますかー。」
「分かったー、探して持っていくー。待っててー。」
ソルが少ししたら扉を開けた。「だいぶくたびれて来て、そろそろ捨てようかと思っていたから、丁度いいと思う。」ソルの手元にはシャツが2枚あった。言う程、くたびれてないけど、なー。着やすそうで生地もいい感じにクタクタして寝間着に丁度良さそう。
「ありがとうございます。」
「マッサージをして、汗でぐっしょりになっても交換できるように2枚にしたんだ。」
「じゃあ、1枚はサイドテーブルに替えとして置いておきますね。」
「自分の部屋で私も風呂に入ってくる。ベッドに入る前に声をかけてくれ。」
「分かりました。お風呂に行ってきますね。」
ソルの目がないのを良い事に着替えをベッドの上において、まずは今日貸してもらったシャツとズボンを取り出してから洗浄魔法をかけて、収納スペースへしまい直す。裸族になって、来ていたドレス一式を洗浄魔法で清潔にしてから、収納スペースへしまった。バスタオルだけを持って、お風呂場へ向かう。
大人になって髪が長くて洗うのが大変だが、私には魔法がある!魔法を補助に使って、スッキリ、サッパリするまで洗えたー。バスタオルを巻いて出る。髪を魔法で乾かす。ドライヤーよりも楽で良かったー。魔法様様!ベッドの上に置いておいたシャツと下着をつけてから、歯を磨きに行った。これで、寝る準備が終わったなー。声をかければいいんだっけー。扉をノックする、「はい。」と返事があった。
「これからベッドに入ります。」
「私も行くから先にベッドへ入っていて。」
「先に入っていますねー。」
ベッドに入ったら、すぐにソルが来た。
「ソルベール様、寝るまで抱っこして。」
「もう、ソルって呼んでもいいよ、いつも通りに。抱っこが好きだね。」
ソルがベッドに入って来た。抱きしめてもらう。
「さっき、神様から、回数に入らないが寝る為に丸薬を1錠飲むようにと、指示があった。丸薬を口に入れるから口を開けてごらん。」
「苦いから好きじゃないんだよねー。あーん。」丸薬が1錠口の中に入れられた。「にぎゃい!」飲み込んだ後に飲む水をソルに取ってもらい、少し水を飲んだ。
「おやすみなさい。」「おやすみ、プリムラ。」ほっぺにキスをしてもらい目を瞑る。疲れていたのかすぐに眠った。
目が覚めた。ソルが巻き付いている。重たいなー。いつもと逆だなー。ソルは眠っている。今は何刻(時)だろう、刻(時)計を見ると、まだ6刻(時)半過ぎだった。丸薬を4錠飲むのは7刻(時)だったな。いつもは私が背の高い木につかまるセミの様だから、今は逆も出来て良かったかもー。今夜、帰宅してから作る寝間着は、どんなふうにしようかなー。着ぐるみでもいいなー。パジャマの上下もいいなー。いろいろ想像して、夢が広がるなー。ん?ソルがもぞもぞ動いてる。起きたかな?
「おはよう、ソル。」
「ん、ぉはよう。プリムラ。たまには甘えてもいい?」
「いいよ。」ソルをきゅうっと抱きしめた。
「もうすぐ薬の刻(時間)になるから、薬を出してくれる?」
「うん。今、薬を出すよ。」
出してもらえた薬を飲んだ。苦いのは変わらない。ご飯を食べて、苦さを忘れよう。まずは着替えないと。あー!簡易ドレスも無かったー!それも作んなきゃー!昨日借りたシャツにズボンに着替えればいいかー。
まだ眠いなー。私、まだ半分しか起きてないのかもー。ぼぉーっとしながら着替えて、今日のドレスは何色にしようかなー、緑色のがあったなー。ドレスを出してさげておく。顔を洗ってから、ワゴンを入れてソルと一緒にご飯を食べようとソルを見ると、今朝も固まっていた。
「ほへっ?ソル、どうしたの?着替えてご飯を食べようよ。」
「…あ、ああ、着替えてくるよ。」何だかソルがぐったりしている。今日も書類の手伝いを頑張ろう。
「待ってるね。」
でもソルがなかなか来なかったー、寝惚けてたんだねー。ソルが来たので朝ご飯を食べて、それぞれ部屋で着替えてからソルのエスコートで馬車に乗りました。今日は朝に選んだペパーミントグリーンのドレスです。金色にピンクの石がついているイヤリングとペンダントです。化粧も薄化粧で、口紅は薄いピンク色です。扇子はあえて、黄色のにしました。お兄様はソルベール様がぐったりしている理由が分かったのか、肩を叩いて励ましています。
翌2日目の王城では、お兄様の方で抜けられない仕事があったので、私を宰相室へ送ってから仕事に向かいました。「帰りには迎えに来るから、それまで絶対に宰相室から出るな!」と言い聞かせていきました。
私は、宰相様から新たな仕事を増やされました。昨日の様に計算間違いが無いか、誤字脱字がないかの確認の書類の他に、過去の書類から計算違いと誤字脱字を見つける事でした。過去の書類は紐で綴じてあって、捲り難いし、紐の所から切れそうになっているしと、何かと不便だったので、机の下で文房具にある、書類に使うリングを(カードリング)を沢山作った。紙を使った大きいサイズの箱を魔法で作って、机の上に箱を置いてから、そこにドンドンとリングを魔法で作りながら、箱にリングを入れていった。
それから、秘書官の人に、どうやって書類の穴を開けているのか聞いたらば、キリみたいな道具で地道に穴を開けていると答えました、人力だった。魔法があるでしょーが!!と思ったが、ないなら、作るしかないかとストンと納得して、思ってしまったので、す。
前世の知識から2穴パンチを作る事をイメージして、机の下で魔法を使って、収納スペースに入れておいた金属で10個作りました。プラスチックがないから金属で作ったので、重いし全く可愛気がないけど。作った端から机の上に置く。5人の秘書官の分、宰相様とソルベール様の分、そして私の分と予備2個で計10個。1個だけ残して、残りを収納スペースへしまう。1個はこれから私が使う分だから出しておかないと。
2穴パンチで開けた穴を補強するシール(パンチラベル)もないので、代用になるように、丸く切った紙をパンチで穴をあけてから、糊を付けて穴に貼って補強することにした。だから、紙を沢山もらって、ひたすら魔法で、紙から小さい丸を切り抜いた。切り抜いた紙がどこかへ行かない様に、紙の箱を4つ作って、ひたすら切り抜いた丸を2つに入れた。残りの2つの箱にその丸をパンチで穴を開けた物を入れる。
何をしているのかと聞かれたので、プリムラちゃんから教えてもらいましたと誤魔化すように言って、ソルベール様と宰相様には、あとで説明しますと言って、作業に戻ったのでした。
もう1刻(時間)したらお昼になるなと、刻(時)計を見て確認してから、まだ損傷の少なく比較的、新しめの書類をリングで綴じる所までの1冊分を終わらせた。手作業と並行しながら、魔法でコッソリと作業を進めて倍の速度で片付けたけどねー。これで、1冊だけでも見本が出来上がったー。
お昼になったので、女性の私は隣の控えの間に入らせてもらいましたー。んー!伸びー!っと伸びてイスに座った。扉を叩く音がする。
「はい。」と答えたら、「コンジェラシオンとソルベールだ、プラン今、いいか?」「どうぞ。」と入室を許可した。2人がティーセットを持って、控えの間に入って来た。
「午前中にしていた作業は何だったんだろうと思ってね。」さっき1冊だけ作った見本を宰相様に渡した。
「紐で綴じてあるのに、今は書類が見にくいじゃないですか、綴じた所から紙が切れたりしやすいし、新たに頁を増やすのも今の状態では不便に感じました。あの書類の穴あけが原因かと考えて、古い書類は作った道具で穴を開けて補強してから、紐で綴じればいいかと思ったんです。これは、金属で輪を作っているので、錆がつかない様に5廻(年)位前の書類から新しい書類に使えたらと思って、作りました。」
宰相様とソルベール様の顔付きが真剣になった。
「さっき作っていた道具が紙に穴を開ける道具なのか、プラン、あれを金属で作れるような加工が得意な領地に任せてみないか。」ああ、これはピーオニー公爵の領地で作れそうだなー。そういう事かー。
「ピーオニー公爵家の領地で作るんですか?」
「そのつもりだ。」ほほぅ、視野に入れてますね、宰相様。
「錆び難い金属で作らないと、紙に錆が付きますから。」注意点は言っておく。
「わかった。」錆びないような加工が出来れば問題ないんだけど。
「出来たら、ステッキや鏡と違う場所で、道具用の工房を作ってもらえれば、また何かを思いついた時に頼みやすいです。ダメですか?コンジェラシオンお父様に、ソルベール様。」この先も何かを思いついたら作りますからねーと意味を込めて、微笑んでみせた。
「プランは、おねだりが美味いね。新たに道具用の工房を建てて作ろう。また思いついたら頼むよ。ソルベール、プランの話し相手になってやってくれ。」
「はい、話し相手になります。」
「では、私は席を外す。気付かれない様に注意しろよ。」宰相様が2人きりにしてくれましたー。
「ええ、気を付けます。」ソルベール様がそう返事をすると、宰相様が部屋を出て行った。
「鍵をかけてきます。この部屋って、盗聴防止魔法はかかっていますか?」鍵をかけに立って、ソルベール様に聞いた。
「覗き見防止魔法もかかっているから、安心していいよ。さぁ、プリムラおいで。膝の上に座ってごらん。」
「ん、今行きます。ソル、甘えてもいい?」
「いいよ。また仕事を手伝ってくれるだろう。」
「じゃあ、そうするね。」膝の上に座ると、ソルが微笑んだ。
「いつもと違うな。化粧が落ちない様にすると、頬やおでこにキスが出来ない。残りはここだけだ。」キスされた。いつもと目線が違うって、変な感じがするなー。重たくないのかなー?
「ソル、重たくない?」
「重くはない、それよりも重みに幸せを感じているから。」
「お化粧がついちゃうから、いつもよりくっつけなくて、ちょっと寂しいな。」
「その代わりに、こうやってくっつけるんだよ。」ギュッと抱きしめてもらいました。これで、気力を充電しましたー。午後の仕事も頑張れますっ!
収納スペースからスープとサンドイッチを出して、ソルの淹れてくれたお茶を飲みながら食べました。サンドイッチは、甘くないのも甘いのも出したので、ソルは沢山食べていました。この世界では甘いサンドイッチがなかったので、最初は驚いていたけれど、食べたら美味しいし、甘味好きのソルにはピッタリだったようです。また作って欲しいとリクエストされちゃいましたー。
午後は、大丈夫そうな書類はそのままパンチで穴を開け、補強してからリングに通してゆく。破けた書類は書き直してもいいかどうかの許可をもらってから、書き直して穴を開け、補強し、リングに通した。古い書類はパンチで穴を開け、補強してから紐で綴じていった。何冊か出来たところで、溜まっていた書類の計算間違いや、誤字脱字を見つけて直す作業をして、何とか今日の分を終わらせました。ふうっ。2穴パンチや紙で作った箱ごと、収納スペースへしまったし、グラジーお兄様も迎えに来ましたし。
今日も宰相様とソルベール様と並んで、護衛のお兄様を後ろに従えて、馬車に向かいます。でも、何だか王城の中が騒がしい。
「今日は王城が騒がしいですが、何があるのでしょうか。」
「明日、他国の使者が王城にやって来るので、騒がしいだけでしょう。気にする必要はないですよ。」
「気にしない方がいいです、プラン。」
気にしないでいいなら、私には関係ないのだと思って、馬車に乗って帰りました。