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薄紅色の花が咲いたら  作者: 巻乃
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芽吹きー4

「プリムラお嬢様、今日はお披露目で準備が沢山あるので、いつもより早くお起こししました。」


 アザレアさんと、よく部屋の中でも見掛けるメイドの1人に起こされた。窓の外を見ると、まだ薄暗い。ふああああっ。まだ、眠い。二度寝したいなぁ…そんな気持ちの私を置いてきぼりにして、朝ご飯が用意された。


 やる気なしなので、もそもそと食べていると、何故か今日もテンションMAX(いじょう)のイリス母様がやって来た。アザレアさんとメイドに指示を出しにきた来たついでに、今日の主役の私の様子を見に来たようだ。指示する声もいつもより高てく大きい。目も血走っていないが、ギラギラしている。ちょっとだけ、怖い。獲物を狙う獣のよう。背中がゾクゾクする。


 ストック父様まで様子見に来たようだ。あぁ、こっちもテンションMAX(いじょう)で、浮かれているみたい。キラキラ目が輝いて、頬が紅潮している。こっちは夢見る少女かっ!


 食後のミルクを飲んで、一息ついていると、エリシマム兄様とアゲラタム姉様がやってきた。2人とも、まだドレスアップしていないみたい。普段着のようだ。


「プリムラ、お誕生日おめでとう。」


 ニコニコなエリシマム兄様がお祝いの言葉とともに、淡いピンクのカードと紫色の乙女桜の小さな花束(ミニブーケ)をプレゼントしてくれた。プレゼントが可愛い。選んでくれたんだろうか。うれしいな。


プーリ(プリムラ)、お誕生日おめでとーー!私の目の色とお揃いのリボンなのっ!!あげるっ!!」


 朝からテンション高めなアゲラタム姉様が、ニヤニヤしながら薄い紫色のカードと青紫色のリボンをプレゼントしてくれた。テンション高めなのは母様似なのだろうか?血の繋がりを感じる。カードもリボンもうれしかったが、気になってしまった。私も将来、テンション高めの人生を送るのだろうかと…。ちと、不安要素がちらつく。そんなことを考えていたら、エリシマム兄様がボソッと小声で呟いた。


お前(プリムラ)だけだ。俺の大変さを理解し(わかっ)てくれるのは。アゲィの大変さを…。」


 たまたま聞こえてしまった私。エリシマム兄様と目が合った。何かを悟ったか、諦めて達観したような穏やかな目をしていた。まだ他にも言いたそうに見えるがこれ以上、聞きたくないよ。だから、私はエリシマム兄様から目線をそらしてしまった。


 それに、何?その不吉な予言、もしくは不吉な前触れは…。いーやぁー!何か起きる予告よぉーーっ!!そんなの要らないっ!つかまり立ちしか出来ない1歳児に、多大な期待はしないでぇーーーー下さい。

私がもう一回、エリシマム兄様に縋るような目付きをして見てみると、フッと息を吐き、首を横に1回振った。……俺にも止めらんないよ…そんな意思表示を。


 アゲラタム姉様が私と兄様のやり取りに気付いていないか、そっと盗み見ると、部屋の中にあるオモチャで遊んでいた。アゲラタム姉様は、今も気の向くままに独自な我が道を進んでいるようだ。


 私がすごく不安そうな表情をしていたようで、兄様がキョロキョロ見回すと、丁度、マンサク爺様が部屋の中に入ってきた。その後ろから、もう一人、濃紺色の髪をした年配女性が入ってきた。皆の話通りなら、デルフィニウム婆様だ、たぶん。


「お爺様、お婆様、おはようございます。」さすが兄様、そつなく挨拶している。

「おはようございますっ!」姉様はやっぱりテンション高め。

「エリシマムにアゲラタム、おはよう。」爺様は恵比須顔で、挨拶している。


 私を見ると、更にニッコリした爺様が

「プリムラ、おはよう。お誕生日おめでとう。」

「あいっ。おあようごじゃいまひゅ。ありあとでしゅっ。」ううっ、早くまともに話せるようになりたい。

「まぁ、プリムラは挨拶が出来るのね。もっと早く会いたかったわ!!プリムラ、はじめまして。あなたのお父様のお母様、デルフィニウムお婆様よ。おはよう。そして、お誕生日おめでとう!」

「あじめましってっ。ありあとでしゅっ。」早く、ううっ…。

「これはあなたのお母様と約束していたお披露目のドレスに合わせた靴よ。忙しくて、他に用意出来なかったの。ごめんなさいね。」


 お婆様は、申し訳なさそうに眼尻を下げながら、赤いリボンのかかった小さい箱を差し出してきた。私は受け取って抱えた。うふふっ、中味はどんな靴なんだろう?可愛らしいのが良いな。


「お爺様、プリムラではまだアゲィを止められないので、何かあったら宜しくお願いします。」


 エリシマム兄様がペコリと、頭を下げてお願いしていた。お爺様もしっかりと頷いた。


 に、兄様!!ありがとうございますっ!!あなたは天使かっ!!お爺様、あなたは神様ですっ!


「えーーーっ、わたし、何にもしてないよぉーーっ。」


 ぷーっと頬を膨らませて、不満顔のアゲラタム姉様が言った。


「エリシマムの誕生日に呼んだ珍しい動物のペウィングィンを追いかけまわして、何処かに逃がしてしまい、屋敷中皆で大捜索。見つかったのは3時間後で、ペウィングィンが隅で震えて固まったまま動かず、飼育係がペコペコ謝りながら、帰っていった。」渋い顔をして、爺様が言った。


「アゲラタムが1歳のお披露目の時に、フルーツポンチの入った大きな器の中に飛び込んで、笑っていた。それを見た大人達が青い顔をして、助けていたのを見ていた。僕はこうなるまいと、心に刻んだ。」


 兄様が何かを悟った目をしながら、しみじみ言った。


「私もイリスも気を付けているんだけど、何故かアゲラタムは泥だらけになるのが特技なのよねぇ。」


 お、お婆様、とどめを刺しに来ないで下さい。やらかすのか、何かやるのかアゲィ姉様…全力で、遠慮致します。


 私の誕生日は色々な意味で雨模様だ。晴れてくれれば、少しは憂鬱な気分も減ってくれるかと思ったのに。ちぇっ。一番はアゲィ姉様が何かを仕出かすかどうかなのが不安だ。

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