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薄紅色の花が咲いたら  作者: 巻乃
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小話ー2

小話ー1から2へ変更します。

『ドレスの中ではガニ股でも大丈夫』


 それは私が2歳半になったある日、呼ばれた部屋に入って行くと、ストック父様とイリス母様が座っていました。そこで父様から言われました。

「プリムラ、そろそろ体力をつけようか。明日から鍛錬を始めなさい。貴族として攫われたり、人質になったり、すぐに逃げだすのにも、長期戦になってその機会を(うかが)うのにも、何があっても、まずは体力が必要だ。魔法を使うにも体力は必要だから。エリシマムは元より、アゲラタムもやっている。」そう説得されました。


 スキル持ちだし貴族だし、どっちみち、何をするにしても体力をつけなくてはならないと思っていたのと、エリシマム兄様とアゲィ姉様が一緒に鍛錬しようと誘ってくれたのが嬉しくて、張り切って鍛錬を始めましたー。


 その翌日、筋肉痛でふつーに動けなくなりました。ううっ、情けない。ギクシャクして歩く姿は自分で言うのもなんだけど、滑稽です。


 私が筋肉痛でふつーに動けない事をメイドから聞いたイリス母様が、私の部屋に来て言ったのです。

「今日は母様の魔法で助けてあげる。大きくなったら、自分で魔法をかけるのよ。」何の事だか最初は分かりませんでした。


 私がまだ寝間着だったので、いつも通りにメイドに着替えさせられました。でも、いつものワンピース型の服ではなく、イリス母様の指示で、足元まで覆い隠すドレスをペチコート(ドレスのスカート部分を膨らます物)なしで着せられました。ドレスの中は筋肉痛でガニ股です。足もプルプルです。母様が魔法をかけると、ドレスが膨らんでペチコートをしているみたいに見える様になりました。それに足元には認識疎外の魔法がかけてあり、靴の先が見え難くなっています。


「これから大きくなって、腹痛や筋肉痛で辛い時には、ドレスを着て、魔法をかけるのよ。そうすれば、誰にもバレずにガニ股でも歩けるの。」私の目から鱗がポロン!と落ちた瞬間でした。


「男の子や男の人には内緒にするのよ。難しい事はまだプリムラには分からないだろうけど、男性の夢を壊してはダメなの。もちろん、アゲラタムも知っているわ。エリシマムやお父様には内緒よ。」素敵な微笑みで圧してきたイリス母様には逆らえず、私は内緒にする事を約束させられました。

「で、でも、アゲィ姉様も知っているの!」とっくに姉様も内緒仲間でしたかー。

「何があるか分からないから、アゲラタムもプリムラと同じころに鍛錬を始めたの、そうしたら、筋肉痛で普通に歩けなくてね、今のプリムラと同じ状態になったのよ、うふふ。でも、筋肉痛を直すと運動したことが無駄になっちゃうから、自然に治るまで待つのよ。」そう言えば、前世でもそんな事を聞いた覚えがあります。筋肉痛を我慢しなければ!


 イリス母様の言う通り、その日は鍛錬を休みましたが、ストック父様やエリシマム兄様にはガニ股で過ごしていたのを気付かれませんでした。エリ兄様とはお昼もお茶もご一緒したのに。ただ、アゲィ姉様がこっちを見て、ぶはっ!とお茶を1回だけ噴き出しましたが、とっさの風魔法で直撃を避けました。危なー!お茶の間の姉様が、終始プルプル肩を震わせていたので、さぞや笑いを堪えて苦しかったでしょうねー。あー、ちょっと悔しかったかも…。


 王城から帰宅した父様を執事のアセボと従僕のジニアと私で出迎えました。父様は、ドレスが可愛いと沢山褒めて、抱っこをしてくれましたー。


 その姿を「微笑ましい」と見ていた執事のアセボの口元が少しだけニヤッとしたので、アセボは何となく気付いていて黙っているようでしたが、従僕のジニアは普通にニコニコとしていて気付いていない様でした。ジニアをチラッと見たアセボの獲物を甚振るのが楽しいというような黒い微笑みが炸裂していましたもの。ジニアも可哀想に…。


 でも、その場を偶然通りかかったデルフィニウムお婆様は、その父様と私のやり取りを見かけた途端、今にも吹き出しそうなのを我慢した顔をして、急いで歩いて何処かへ行きました。あぁ、お婆様も内緒仲間なんだ……。ちょっとだけ遠い目付きをしてしまいました。それにしても、父様、ちょろ過ぎです、母様の手のひらの上で踊ってるんですね…。兄様は子供だから分かんなくてもいいと思うけど。


 同じ様に王城から帰宅したマンサク爺様も、出迎えをしたドレスの私を抱っこして、とってもご満悦でした…。アセボの笑顔にもキレがありました。ジニアが今度は困惑した様な表情でしたが。


 お婆様が何故、吹き出しそうな顔で逃げたのか理由が分かったような気がします。まさかの爺様まで気付かないとは思いませんでした…。母様、夢を壊さない様に、女性には見えない努力が必要なんですね。お婆様は、とっくに内緒仲間でしたの、ね。


 部屋に戻って、暫くは、私もしょっぱい気持ちのままでしたが、アゲィ姉様が訪ねて来てくれて、昼間のお茶を噴き出した事を謝ってくれました。

「エリ兄様が見事に気付かないのと、プーリィがプルプルしているのを見たら、我慢が出来なくて噴き出してしまったの。ごめんなさい。」と。

「姉様、魔法で防いで何ともなかったから、もういいです。次は噴き出さないで下さいねー。」

「私もイリス母様に教えてもらってから練習したの。プリムラも出来る様に練習を頑張ってね。」と魔法で見本をみせてくれました。


 私は、その日からスカート部分を膨らます魔法と同時に、足元だけに認識疎外の魔法をかけるのをこっそりと練習しました。結構細かい魔法調整が必要でしたよー。3歳になる頃には、意識せずに使える魔法の一つになりましたー。

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