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薄紅色の花が咲いたら  作者: 巻乃
35/56

芽吹きー30

 ううん、温かい何かに抱き込まれている、「ソル?」「ん、起きた?」「ん、んっ、起きたぁ。」

「寝なくても、居眠りは出来るし、居眠りするから、一緒にいれるよ。」

「んにゃ、わかったぁ。」「いい()だね。」ほっぺにキスが来た。へにゃって笑う。

「今、何刻(時)頃?」「まだ1刻(時間)経ったぐらい。」「そっかぁ。」頬ずりされた。

 あー、目が覚めてきた。ソルがクスクス笑っている。よっぽど寝惚けていたんだろうなー私。寝ている間は人格も自覚もありません!って、逃げてみる。ちょっと、赤面しちゃった。


「荷物はまとめたから、ゆっくり出来るよ。」それはよかったー、ゆっくり休んでー。

「ソルの分のケークサレを作ったんだけど、食べますか?」収納スペースに入れてあります!

「楽しみにしていたから、いただこうかな。」

「用意するね!」あれ?靴はどこ?キョロキョロしたけど、見つからないー。

「靴はあそこだから届かないね。ティーセットを持ってくるよ。」ソルのいじわる!


 ソルがティーセットを持ってきたので、(ティーセットを)置く前に、収納スペースから大きい布を出して、汚れ防止にベッドの上に敷いた。布の表面には防水魔法をかけます。ソルがティーセットを置いてお茶を淹れてくれている間に、ケークサレ何種類かと、バターロールパンと、スープを2人分を収納スペースから出した。アイスは食後に出そーっと。

「沢山作ったんだね。美味しそう。」

「ソルは成人してるし、さっきのサンドイッチだけじゃ足りないと思って。」

「分かっちゃったか。」やっぱり足りなかったんだ!

「食後には甘いのを用意してあるから。」あぁ、そんなに嬉しそうな顔をして、甘味好きだなー。

「いただきます。」

「私はそんなに食べれないから、少しづつ食べます。ソルは沢山どうぞ。」


 ソルはよっぽどお腹が空いていたみたい、私がケークサレをゆっくりと2切れ食べている間に、パンもスープも2人分食べてしまった。

「このパンは塩味なのに噛むと甘みが出る。スープも野菜の甘みと肉の旨味が出ていて、でも臭みがなく良い香りで美味い。もちろん、この甘くないお菓子も頂くよ。」気に入ったみたい。酵母を探すところから始めて、何種類かの酵母を一つ一つ発酵させて増やして、その酵母を順番にパンに使って焼いて試食して、を繰り返した中で、一番おいしいパンが出来た酵母を使って、作ったパンですからねー。

 薬草の勉強と共に、ハーブのように使える薬草の中から見つけた薬草を乾燥させて、スープの臭み消しに使って、野菜と肉をたっぷり入れたスープを作りました。


「甘くないお菓子も見た目がキレイだな、宰相室では味に驚いたからよく見ていなかった。美味しいし、野菜も肉もゴロゴロ入っていていいな。いくつもあるのに、中の野菜や肉を変えて、切り口の見た目も変えているんだね。これが、オーキッド公爵家の特産品になるのか。」

「私が養女になったから、経費が掛かるでしょ、その費用を捻出するためなんですよ。」

「そんな心配をしなくても大丈夫だと思うけど、領地が潤うのは助かる筈だよ。」

「コンジェラシオン様とソルが話す時に、ステッキと小さな鏡は本当はどうだったか聞いて欲しいの。建前ってあるから…。」

「それこそ、心配しないでいいよ、昨日のは本音だから。」「本当に?」

「ああ、本音だよ。お祝いのパーティーの前に、父と職人でステッキを見ながら、目をギラギラさせて話していたからね。」

「それなら、安心したー。」ほー、一安心。


「ふふっ、心配性の婚約者さん、甘味は何ですか?」

「(小さい声で)秘匿されたお菓子を私が作ってコッソリ食べるのは問題ないと、神様にお墨付きをもらいました。ストベリーとミルクの実で作ったアイスです。お茶で作ったアイスもあります。どちらも新しい味です。」

「それは、プリムラの婚約者の私も食べられるってことですか。ふふっ。」

「もちろんです!」そうして、ストべリーとミルクの実のアイスを2人の前に出しました。

「いただきます。」甘味好きめ!なんていい笑顔。私は沢山食べられないからこれだけでいいや。ゆっくり食べよう。

「感想聞かせて下さいね。」美味しそうに食べてるなー。作り甲斐があるなー。

「甘酸っぱいストベリーと甘いミルクの味がいい。」甘酸っぱい果物が好きなのかー、なるほどねー。

「作り甲斐のある婚約者さん、次のアイスはいかがですか?」お茶(紅茶)のアイスを出しました。

「いただきます。次のはお茶(紅茶)の味だっけ。」砕いた細かい茶葉が入ってますよー。

「食べやすいと思います。どうぞ。」

「これは、あっさりして食べやすい。美味しいよ。」

「おかわりもありますから、ゆっくりでいいですよ。」ゆっくり食べて下さいなー。さて、今のうちに汚れた食器とカトラリー(スプーンやフォーク)に洗浄魔法をかけて、収納スペースへしまって、っと。

魔法って便利だなー。

「おかわり下さい!」お茶のアイスを出して手渡す。「はい、どうぞ。」「いただきます!」

男の人は胃袋を掴むといいって聞いた事があるから、私も順調に掴めているかなー。この調子で頑張ろう!


「ごちそうさま!全部おいしかったよ。」よかったー。「お茶を飲みながら話そうか。」「はい!」

そうして、2人で大したこともないけど、あんなことやこんなことがあったとか、楽しく雑談したのでした。


 夕方に差し掛かった時、ソルの部屋の扉が叩かれた。

「ラングでございます。ご当主様が部屋から出てこられました。手土産に頂いた甘くないお菓子のお礼と、婚約式の話をお二方としたいとおっしゃって、お二方をお待ちしておりますが、いかがいたしましょうか。」

「爺、分かった。2人で行こう。部屋に入って、ここの茶の片付けをしてくれ。」

「失礼いたします。」ラングさんが部屋に入って来た。ティーセットを片付けて手に持っている、私は布を畳んで、収納スペースへ片付けた。あとで、洗浄魔法をかけて乾かそう。

「では、ご当主様は執務室にてお待ちです。そこまで、先導いたします。」


 ラングさんの案内で、執務室にソルと私は向かう。途中、他の執事とすれ違った時に、ラングさんの持っていた私達が使ったティーセットと、新たに持ってこられたティーセットとを交換していた。そしてそのまま、ラングさんは一緒に執務室に入った。

「こんにちは。今日は採寸と衣装の相談にお伺いいたしております。」両手でドレスの裾を持って、簡易の挨拶をする。

「いらっしゃい。またおいしい手土産をありがとう。今日は婚約の証の相談と、衣装の採寸の様子を聞きたくて呼んだんだよ。サラベルは衣装の事となると止まらなくてね。さぁ、どうぞ。」あぁ、暴走列車か…。


 着席を勧められたので、ソファーに座った。ラングさんはお茶の準備をしている。

「父上、母上とオーキッド公爵夫人とフリューリンク侯爵夫人、意匠(デザイン)担当の2人も加わって、5人で凄い剣幕になっていました。ラングが話に入れないと言っていたぐらいですから。」

「ええ、話に加われなかったです。その間に、ソルベール様と私は軽食をいただきました。」

「母上もいつもより長く話したままだし、こちらもいい加減待ちくたびれました。その場に居ない父上が羨ましかったですよ。」

「それには、私も同意いたします。」5本の暴走列車は凄かった、です。

「そこまで凄かったのか、それは済まなかった。いつもは程々なんだが、今回は張り切ったのか…。」

「2つの案が出ましたが、見た途端、凄まじくて着るのは無理だと思いましたよ、それを言える雰囲気ではなくて困りました。」

「よく言えば、凝っていると言えなくもなかったですが…。」

「今回は張り切り過ぎたのでしょう。ですが、プリムラが着てみたい衣装の案を出したら、それが採用されました。その衣装の細かい所を母上達が詰めていくと言っていましたよ。」

「昨日に引き続き、プリムラが大変だったね。」しみじみと労わってもらえました。

「私も、母上達の出した案よりもプリムラの案が良かったので、内心、正直に助かったと思ってしまいましたよ。」

「ご当主様、お茶がはいりました。」ラングさんがお茶を並べた。


「昨日のステッキの見本を1本貸して欲しい。私のを職人に見せたら、見本に寄越せと言われてしまってね、困ってしまったんだ。小さな鏡も見本があれば貸して欲しい。」コンジェラシオン様から頼まれた。

「見本は無くなったりしない様に出来るのでしょうか。」我流で魔法を使っているから、よく解っていません。

「見本に借りた物は、私が許可した場所以外に出せない魔法と追跡出来る魔法をかけておくから。」そんな魔法があるのかー。

「私は作りたい物があると、今までは、先行投資でフリューリンク侯爵家に材料や材料費を立て替えてもらって作っていたのです。だから、作った物を失くしたくないのです。すみません。」まだ私自身で稼げないから……。

「そういう事情があるなら、心配になるのは当たり前だと思う。」

「それに、私の見本より、領地の職人の技術で新しい柄や工夫をされたステッキや小さな鏡を見本として、これからは扱って欲しいのです。」

「自分はキッカケになっただけと言いたいのかな。」コンジェラシオン様の尋ねられました。

「はい、キッカケを作れればいいのです。では、見本をお貸しいたします。」


 私が探し出せる様に、私の魔法でステッキとコンパクトミラーにタグを付ける。全く同じものを作って入れ替えても、私の魔法のタグで分かるようにしておく。材料には良い物使っているから誤魔化せないだろうが、似たような安価な物で似たような同じ物を作れるので用心の為に。そうして、ラングさんに手渡した。

「お預かりいたしました。」ラングさんが受け取って、コンジェラシオン様の執務机の上に置いた。


「あの、神様から、この屋敷は日頃から間諜(スパイ)が多いと聞いたので、盗まれてしまうかもと心配のなったのもあります。」それを聞いたのもあるんですー!余計な心配だとは思わないでしょー。

「ははっ、大丈夫だよ。まぁ、その話を聞いたら、確かにそれだけで心配してしまうな。さすがに神様はその理由も知っていらっしゃるだろうし、な。」コンジェラシオン様が言う。どうして大丈夫なの?

「神と名乗っていますから、全てご存知でしょうね。」ソルベール様も同意している。なにせ、お見合いが予定されそうな直前だったから、私との婚約を急いだと神様から聞いているからねー。でも大丈夫な理由はー?なんでー?

「婚約の証はどうするんだ、ソルベール。」あああっ、はぐらかされたままだー。気になるぅー。

「どれも似合いそうだから、迷ってしまって。プリムラの決めてくれた物の中から選んで作ろうかと思います。父上、何に決めたかを婚約式まで内緒にしたいから、念話(テレパシー)で伝えますよ。ラングにも手配を頼むから、念話(テレパシー)する。」「ああ、わかった。」「坊ちゃま、お任せください。」


 3人で念話をしているようだ。私はお茶を飲んで待つかな。でもそれより、お茶を沢山飲みすぎたから、トイレに行きたい。意識すると余計に行きたくなっちゃった、どうしよう。恥を忍んで場所を教えてもらわないと!!

「……あ、あの、トイレはどこでしょう。」恥ずかしいよりも間に合わない方が怖いので、ラングさんにトイレの場所を聞いた。緊急な事を察して「すぐ案内いたします。」と、すぐにトイレに案内してもらえました。


 間に合いましたー!この一言を言いたかったー!

 王城を除くと、他のお家へお邪魔したのは昨日が初めてだったから、トイレまで気が回りませんでしたー!大人よりトイレが近い幼児なのに、緊張で忘れていましたー。これでも、昨日も今日も緊張しています。


 執務室に戻ったら、3歳児だったのを思い出してもらえたのか、何も言われませんでした。でも、ソルベール様の視線が生温かい。すいません!!淑女はトイレに行くのを悟らせないようにしないとならないのに。ううっ、その目付きを止めて下さーいっ!!


「今日はどうする、昨日顔を出したけど、今日も祝いのパーティーに顔を出すか?」ソルベール様の視線を断ち切ってくれた。助かりますー。

「今日は荷物もありますし、早めにオーキッド公爵家へ戻ります。」

「そうか、婚約式の打ち合わせはこれで大丈夫だと思うが、細かい事の修正がまだ必要だ。次は4日後だな。」

「ええ。これだけ決めておけば、問題ないでしょう。4日後で、お願いします。では、オーキッド公爵家へ戻ります。母上に「プリムラが成長途中なので、ドレスの大きさを少し大きく作るように」宜しくお伝えください。」

「伝えておこう。」これで、話は終わったかなー。あ!あの話!あの話の確認!!

ジェイド様の参加は拒否したい!!王家絡みで嫌な思いをしたくない!!今度こそ平穏な婚約式を行いたい!!国王の飛び入り参加を阻止したい!!その事を伝えたかの確認をしなくちゃ!!


「ソルベール様、あの飛び入りしそうな方の、」「父上に伝えておいた。王妃にも飛び入りしない様に手伝ってもらえそうだと聞いた。」

「あのお方は飛び入り参加がお好きでね、護衛がしにくいって近衛騎士泣かせなんだよ。婚約式には来ないで下さいと釘を刺した時に、目が一瞬、泳いだからね、既に関係各所と王妃には相談済みだよ。」

「私、1歳のお披露目パーティーで飛び入りされて、無理矢理2人の王子を紹介されて凄ーく嫌だったのを覚えているので、今度は飛び入りして欲しくないんです!」

「そうか、とうとうプリムラに嫌われたか。」

「それに!王家には嫌な思いしかしていません!神殿に行った時も暴言を吐かれて、思わず泣いてしまったし、昨日の婚約の騒ぎも王家絡みで起きていて、嫌な思いをしたばかりだし、婚約式ぐらい無事でいたいです!」ハッキリ!くっきり!言っておかなくちゃ!

「神殿での神託か、兄弟揃って、これでやらかした事になったのか。王妃の実家リリィ家の親戚であるプリムラの婚約式に飛び入り参加したら、あの兄弟は、ますます王妃や王子達に避けられるだろうな。その上、親友のストック殿の娘の婚約式に飛び入り参加なんかしたら、フリューリンク家一族も今度こそ我慢しないだろうな、そうすると何が起こるか分からない怖さがあるのか。改めて、通達を出すか。ふむ。」

「神殿の神託で泣かされたって、言ったねプリムラ、どういう状況だったんだい?」

「魔球に記録が残っています。その魔球はフリューリンク家とオーキッド家にあります。思い出したくないので、戻ったらお兄様に言って魔球を見せてもらって下さい。」思い出すと嫌な気分に気持ちが支配されちゃうから、思い出したくない。ごめんなさい、ソル。話したくないの。ちょっとソファーに座ろう。


「私達はお茶会の始めにその魔球の記録をみた。小さい子相手に圧をかける王弟とヒューゲルトに腹が立ったよ。ソルベールは途中参加だからみていないのだろう。」

「グラジの友人として招かれていた刻(時間)が元々、父上達と違っていました。お茶会に遅れたのではありませんが、みていませんね。なるほど、若い世代に悪印象を植え付けない為ですか。」

「その線だろうな。結果的に、王家は神のスキル持ちたる黒髪の乙女には嫌われたようだが。」

「3歳の小さな女の子が、王家絡みで嫌な思いをする直接の理由がありません。プリムラ自身のせいでないのに泣かされて、昨日は婚約を楽しみにしていた気持ちに嫌な思いをさせられて、踏みにじられたんですよ、嫌われて当然です。」

「改めて聞くと、3歳の小さな女の子のせいには出来ない事ばかりだな。家絡みでも、王家との婚約を拒否するのは当然か。」

「万が一、婚約出来たとしても、あんな態度の兄弟じゃ、結婚したくなくなるでしょう。すぐに破談するでしょう。」

「さもありなん。」

「坊ちゃまが婚約出来たのは僥倖でありますねぇ。」

「初めて会った時から可愛らしくて、守りたくなるような女の子だったから、私には王弟の気持ちは分からない。婚約して、ますます可愛くて仕方ないのに。」

「さて、坊ちゃま、プリムラ様が緊張しておられたのか居眠りをされていますよ。いかがいたしましょう。」

「大人びていても3歳だからね。私が馬車まで抱いて行く。馬車の用意を。」

「プリムラ様が冷えないようにブランケットを掛けておきましたので。下へ行って馬車の用意をしてまいります。しばしお待ちを。」「急がなくていい。馬車の用意を頼む。」ラングが執務室から出て行った。


「眠っていると3歳のあどけない女の子なんだが、起きていると違って見えてしまうな。」

「ええ。私の為に出来るだけ大人の様に、淑女の様にと、精一杯の背伸びをしているようです。」

「だから、ソルベールに追いつくための成長を神に願ったのか。いじらしいな。」

「私も神と話すようになるとは最近まで思いもしませんでしたし、好きになって婚約した相手が3歳の女の子になるなんて思ってもみませんでしたし。」

「私もだ。婚約の祝いに、妻の念願だった娘を授かる神託をされるとは思わなかったよ。」

「プリムラと関わって、私達も変わってきているのでしょう。特産品を作れば、領地も潤います。」

「プリムラのおかげで、良い風向きになってきた気がする。幸せそうな息子が、ずっとこれからも見られるな。一昨日までは、坦々と仕事をこなしてあまり愛想のない息子だと、正直思っていた。プリムラといるお前は、人間味が出ていて、とてもいい。宰相として当主としては歓迎できない部分もあるが、父としては素直に嬉しいよ。幸せに貪欲になれ。これから先、家族が増えたりすると、もっと幸せになれる。婚約出来て良かったな。」

「父上、ありがとうございます。2人で幸せになります。」

「プリムラが生まれた時の歳の差の神託がされた時点で、王家でない嫁ぎ先とその相手がある程度決まっていたのかもしれないな。」

「今はもう、その相手候補が何人いたかは知りたくありませんが、婚約したからと言っても、領地を潤す案を出し、優しく控えめで、相手の事を考える気配りもあって、作る料理も美味しくて、可愛くて将来も期待出来そうな美しさ、魔力も豊富、スキル持ち、これだけ揃っているんです。横から攫われない様にしないと!!」

「プリムラも昨日、同じような事を私に聞いて来ていたよ。将来有望なソルベール様にお見合いをさせるつもりだったお相手はどんな方だったのか気になりますと。頭も良く、かっこよく、優しくて気配り上手なとか、いくつもお前を褒めていたな。惚気話もお互いに大概にしておけよ。妬み嫉みにも気を付けろ。同性でも迂闊に信用するなよ。」

「分かっています。宰相の息子だと、小さい頃から有象無象が沢山寄って集って来ていましたので。」

「プリムラは国外からも沢山来るだろう。他国の王家からも打診が何度も来るだろうから、その覚悟はしておけ。陛下と出来るだけ跳ね除けるつもりだが、こちらで当たり前な常識が通用しない国も多々ある。手段を選ばない所もあるから、オーキッド公爵家の軍務省の養女になった部分もある。」

「それは十分理解しています。」

「プリムラには4公爵家のうち3公爵家が、軍務省のオーキッド公爵家、叔父にあたる法務省のリリィ公爵家、生家である魔法省のフリューリンク侯爵家、そしてお前が婚約者になったから総務省が背後についている。宵闇の女神の孫で、産業省のビュンター侯爵夫人の親友の娘で、医療省のメーアント侯爵夫人には治癒魔法の次代の使い手と期待されている娘で、4辺境伯を束ねるオーキッド公爵家のご令嬢だから辺境伯も味方になるだろう。だから、外務省のツリーピーオニー公爵家も黙って語らずにいるのだろう。うちを事ある毎にライバル視するあの家が、ずっと黙っているとは思えないが。」

「父上、昨日、私とプリムラに、添い寝が規定数に足りなかったので添い寝が増加した神託の詫びに、神からどんな言葉でも読み書き出来る能力を授かりました。」

「それはまた一興。神も中々味のある采配をなされる。しばらくはそれでしのげそうだな。」

「友人であるロッシュには含むところはありません、ですが、家単位で考えると、あの家がどんな手で来るか分かりません。婚約式に招待したツリーピーオニー公爵家へは、プリムラのおかげで、色の使い方、衣装、手土産で意表をつけると思います。」

「良い婚約者でよかったな。いや、嫁か。」

「私だけでなく、家にとっても良い嫁だと思います。」

「ラングが遅いな。お祝いパーティーの手配もあるから、仕方ないか。間諜(スパイ)には任せられないしな。」

「臨時休暇と言う名の雇い主への報告へ間諜(スパイ)は皆、向かっていますから、今は1人もいないではありませんか。ああ、いなくて清々します。プリムラや身重になる予定の母上、しいては産まれてくる妹の身を守るためにも減らしてはいかがですか。」

「2日間じゃ戻って来れない国からも来ていたから、休暇中に戻って来れなかった辺りで、まずは数を減らしていくつもりだ。屋敷内の仕事をサボって探っているのだから、その辺りも証拠として溜めている。既に職務怠慢だという事実を押さえてあるし、正当な理由で解雇するから抗議は出来ない。徐々に誓約を結んだ心配の少ない身内と入れ替えるつもりでいる。」

「それなら、今よりは安心になりますね。それでは、そろそろプリムラを抱いて連れて行きます。」

「では、また宰相室で。」「はい、父上。また、宰相室で。」

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