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薄紅色の花が咲いたら  作者: 巻乃
34/56

芽吹きー29

 昨日の反省を生かして、今日は自作の色付きリップクリームです。大人のだと、色が濃過ぎるんです。色は抑えめで、唇の発色の良さを活かす薄い色付きのリップクリーム。これなら、飲食しても色落ちがあまり気にならなくて塗り直さなくても目立たないで済むし、はっ、また考えに夢中になってしまった。チラッとソルを見る。大丈夫そう。むしろ、膝の上にいる私を撫でていて機嫌良さそうにみえるから、良かったー。セーフ。


 んー?観察されてる?ラングさんに。ソルベール様も気付いたみたい。

「ラング!見ると減る!」

「減りません、坊ちゃま。」減りませんからー。

「じゃあ、減る気がして気分が悪くなる!」

「婚約者様は気にしておられないようですが?」

「私は、ソルベール様の膝の上でご機嫌です!とっても嬉しいですよ。ソルベール様は違うんですか?」上目遣いでソルベール様を見る。

「そんな事はない!」ちょっとだけ赤くなってる。かわいいなー。

「じゃあ、一緒ですね。(ニコニコ)」幸せでーす。

「見ていると、お幸せそうで、和めます。」

「うううっ、確かに幸せだ。」

「こんなに小さい淑女なのに、色々と大人顔負けとは思えませんね。」ん!探りに来たかしら?他の話題へ!

「サラ大姉様は今日はお元気ですか?」それしか話題がないからなー。

「サラベルナール様は起きてからずっとソワソワしていて、坊ちゃまの婚約者様がおいでになるのを待っております。」今日は、逃げたいです。

「母上…。」

「お元気ならいいんです。飲みすぎたり食べ過ぎたりしていないなのなら、よかったです。」社交辞令を。

「ただ、ご当主様が少々飲み過ぎたらしく、寝室から出てきません。」


 ソルベール、飲み過ぎじゃないよー。ちょっと調子に乗ってはしゃいだだけだよー。口にしなくても伝わるから言わなくても思えば伝わるよー。執事のラングも知らないからねー。

「なっ、」

「どうしたのですか、お坊ちゃま。」

「何でもない。」


 か、神様、そんな事情は知りたくないです。


 知らないと、君がうっかり用事を思い出して呼んでしまうかもしれないじゃないか。今はまだ寝てるよー。奥方は美容によくないと朝になる前に早々に引っ込んで寝ていたけどー、当主は朝まで飲んで憂さ晴らししたら、楽しかったんだろうねー、だから、今寝てる。起きるのは夕方じゃないのー?用事があれば、夕方にするといいよー。って言いに来たー。それから、プリムラに、夢の件と、専属の件は片付けておいたって伝えてよ。あー、今夜から添い寝を連続するんだったねー、君も飲み食いして頑張ってねー。丸薬は10刻(時間)空けたら次を飲ませてねー。それだけは忘れずにー。じゃあ、またねー。


 10刻(時間)ですね。分かりました。


 プリムラによろしくー。


「今、私に伝言があった。10刻(時間)空けて飲むようにと。それから、夢の件と専属の件は片付けたと伝言してくれと言われた。」

「あの方は横着ですね。」1回で済ましましたかー。

「気軽さに拍車がかかっていた気もするが…。」

「私には最初からそうだったので、それが普通かと思っていました。」最初は私もビックリしたし。

「そうなんだ…。」ソルは順応が早いなー。

「婚約を早めたのも、1花月(かげつ)(月)後には何人かの方とのお見合いを用意されていたから、私との婚約を急いだと言われました。」

「それは初めて聞いた。ラング、私が婚約しなかったら、お見合いが用意されていたのか?」

「はい、坊ちゃま。候補は3人まで絞られており、来週には打診の書簡を当主の名で出すつもりでございました。婚約されなければ、政略結婚の道を選ばざる得ませんでした。」

「ギリギリだったのか、危なかった。」

「間に合ってよかったです。」ほんとーに、間に合ってよかったー!!

「もうすぐピーオニー公爵家へ着きます。坊ちゃま、サラベルナール様に婚約者様をとられないようにご注意ください。」

「分かった。母上から、守る。」

「屋敷の者一同、昨日はご挨拶出来ずに悔しがっておりましたので、是非ともソルベール様に頑張ってもらい、屋敷の皆の挨拶をしたいという願いを聞き届けて欲しいのです。」アクが強いのは昨日で理解しましたー。ソルから離れないようにしよう。宰相様は飲み過ぎで動けないし。


 昨日の再来かと思う、待ち構えていたサラベルナール様の出迎え抱擁を避け、屋敷の使用人の出迎えにソルと2人で挨拶をした。サラ大姉様も昨日程はしつこくしてこなかったし、逃げれて良かったー。


 執事のラングの案内で、屋敷の中の1室へ案内された。採寸だなー。すぐ大きくなるから、意味ないと思うけど。しゃーない。ソルは私をエスコートしながら、何かを考えて歩いているみたい。


「こちらの部屋で、採寸と意匠を選んでいただくようになっております。」執事のラングが扉を開けたので、部屋の中へソルベール様と私が入った。部屋の一角に衝立(ついたて)が2カ所に立ててあって、採寸を同じ部屋でしても見えない様に配慮されている。採寸するのが婚約した男女のソルと私だから、採寸する人にも男の人も女の人もいる。私がドレスを作る時は今までずっと女の人しかいなかったので、男の人に採寸されるのはイヤだな、ソルを見る。

「どうしたんだい?」

「私の採寸は女性ですよね。」

「そんな心配をしなくてもいいよ、そうだよ。」

「私が子供だから、微妙かな、って思ってしまって。今までドレス作りに男性が同席したことが無くって。」

「私の衣装を作る者が男性なんだよ。だから、同席しているんだ。心配ないよ。」

「そうなんですか、少し不安だったので、聞いてしまいました。」

「仲が良くて何よりですが、先に採寸をしていただきます。」ラングさんに言われてしまったー。


「お嬢様はこちらへどうぞ。」「ソルベール様はこちらへ。」それぞれ2カ所の衝立(ついたて)へ呼ばれて採寸することになった。


 私の呼ばれた衝立(ついたて)の中には、フリューリンク家でも見かけた事のある女の人達がいた。

「お嬢様、ご婚約おめでとうございます。」「おめでとうございます。」「こんなに可愛らしいから早いと思っていましたが、すんごく速いんですもの、びっくりしましたわー。おめでとうございます。」「ではこれから採寸いたします。」

「ありがとうございます。採寸お願いします。」ペコリと小さくお辞儀をする。

「キャー!可愛いー。」「これ!これ!どっかの高飛車ワガママな令嬢じゃ、採寸するのにも一苦労なんです。」「その点、お嬢様は採寸しやすくて可愛いし、素直だし、私達の癒しですわ!」「希望の色を伺っておりますので、後ほど意匠などをお話いたしましょう。」ワイワイしながら、採寸しましたー。いつものおねーさん達で良かったー。いつもなら、肌の色艶まで話すけど、男性がいるから配慮したんだろうなー。


 採寸が終わって意匠(デザイン)担当のおねーさん以外は、別室で、ソルベール様の採寸をした男の人達とお茶をして、待つのだそうだ。ウキウキした採寸のおねーさんの1人が教えてくれた。ほー、出会いの場ですか。


 私の方が採寸が終わるのが早かったので、執事のラングさんが淹れてくれたお茶を飲んで待っていた。何だか部屋の外から鬼気迫る気配がするんだけど、ゾクッとするというか何というか。

「プリムラちゃん!今日の衣装決めに欠かせない方々を連れてきましたわー!」サラベルナール様がやって来た。案の定、イリス母様とクリナムお母様だ。やられた、このためにいそいそと支度して出かけたのか、クリナムお母様。そして、私で抑えてくれと言いたいのだなワトソニアお父様、謀ったなー。だから、お兄様も今朝は2人して何も言わなかったんだー!!やられたー!!この2人が揃ったら、私1人では抑えられませーーーんっ。


「今日はお招きいただきまして、ありがとうございます。サラベルナール様。」

「私も今日の意匠の相談を楽しみにしておりましたの!我が家には女の子がいないので!」

「私もお招きいただき、光栄ですわ。何と言っても婚約式の衣装ですもの!」

「そうですわよね!希望の色はもうプリムラちゃんから聞いているので、本人たちも一緒に相談出来ますわ!」ああ、暴走列車が3本走り始めたー!!!ワトソニアお父様、グラジオラスお兄様、酷いです。


 ソルベール様でも抑えられないだろうな、ソルベール様はまだかなー。ある程度、決まるまでは放っておこう。あー、お茶が美味しいなー。お昼がまだだからいつ食べられるかなー。


 3人に私のドレス担当のおねーさんも加わって、燃えているー。あー、ソルベール様の担当も加わったー、白熱してるー、あははははー。5本の暴走列車だー!

「プリムラ、暫くして納まるまではこのままで待とう。ラング、私にもお茶を。」

「背後に炎を背負った大人が沢山いますねー。(棒読み)」

「あー、気持ちは分かるが、かわいそうに。」

「この熱意は凄まじいです。私でもうっかり参戦出来ません。」ラングさん、参戦しなくてもいいです。

「爺は参戦するつもりだったのか。」

「私も楽しみですから。」

「サラベルナール様の衣装も新しく作るんですよね。」

「それはもうお二方が来る前に既にお決めになっておりますので、ご心配なく。」決めてたかー。

「お茶のおかわりをお願いします。しばらくかかりそうなら、何か食べたいですね、ソルベール様。」

「爺、何かあるか?」

「サンドイッチをご用意してあります。今、持ってまいります。」

「食べて、のんびり待とう。」「そうですね、ソルベール様。」


 執事のラングの持ってきたサンドイッチをソルベール様と、はむはむ食べて、ゆっくりしました。そろそろ落ち着いた、もとい、ある程度の意匠(デザイン)が決まったようです。意匠(デザイン)担当のお2人はやり切った感がありありと出ています。3人の母達は満足げにしています。


「こんな感じでどうかしら?」提示された2つの意匠(デザイン)がありました。片方は王子様お姫様を連想させるレースやフリルを沢山使った可愛くて派手なもの、もう片方は大人っぽさを前面に出したシンプルだけど、衣装にはそこはかとなく色っぽさが漂うもの、どちらかを選べと言っているのです。どっちも一長一短だなーと思った私は、2つを組み合わせたらどうかなーと考えた。ソルにも聞いてみよう。


「ソルベール様はどうですか?」

「うーん。」これはどっちも選べないと見た!

「ねえ、この意匠(デザイン)には私の好みも反映されますか?」

「着るのは貴方達ですもの、どうぞ。」

「新しい紙とペンを渡していただけますか?」


 まずはソルベール様の黒の衣装、ジャケットは立ち襟をベルトで留めるベルトカラーでベルトを赤にアクセントにして、肩章をショルダーループにして、飾緒は銀糸で、刺繍は全て銀糸でボタンも全て銀色で、袖口をギンプカフスにして赤い別布をつける、ズボンも同じで、中に着るシャツは白。靴は複数のボタンで留め上げるショートブーツタイプで黒色、っと。


 私のドレスは赤色で、ドレスはハイネックで黒いリボンでアクセントをつけて、オープンショルダーにして、刺繍は全て銀糸で、ドレスのスカート部分は上にフィッシュテールスカートを重ねた形にして、下の生地を黒色のフリルスカートにして、首周りをカットアウトしてもいいな。後ろに共布の大きなリボンを付けてもいいかな。靴はストラップで固定して脱げない様に厚めの靴底で、踵は低い黒い靴のパンプスで。


 宝石を濃いピンク色の石で、金属はシルバーか銀色の物で統一したらいいかな。ふぅ、出来た。


「ソルベール様、こんな風にしてみました。どうですか?」あんまり上手じゃないけど描いてみた。

「これでいいんじゃないかな。皆さんも見て下さい。」ソルが賛成してくれた。

「刺繍やパイピング(かがり縁)は、どんなのがいいか分からないので、こんな感じで、す。」


 意匠(デザイン)担当の2人が目を見つめて頷き合った。3人の母親達も頷いた。


 疲れたー!ソルベール様とイチャイチャしたいー。納得したなら、開放してくれー!!

「疲れちゃったので、休みたいです。」

「そうですね。プリムラがまだ3歳なのを忘れないで下さい。」ソルベール様、ありがとー!

「ではいかがいたしますか?」ラングさんが言う。

「私の部屋にお茶の用意を。しばらく2人でいます。父上に婚約の証の手配を相談したいので、夕方には父上も具合がよくなられるだろうし、部屋からも出てこられると思うので、その時は知らせてくれ。」

「分かりました。」

「どうせ、持っていく荷物もまとめないとならないからな。」

「そうでございましたね、では、先にお茶の支度をしてまいります。」ラングさんが部屋から出ていった。

「では、これで失礼いたします。」「失礼します。」2人で皆に挨拶をした。

「衣装は奥様方ともう少し詰めますので、今日はありがとうございました。」「私もやりがいある仕事で、楽しみです。どこかで、仮縫いを致したくご都合をつけて頂きますよう、お願いしておきます。」

「2人もありがとう。私達で、もう少し話をするわ。」「楽しいですもの。」「ええ。話も尽きないわ。」


 無事解放されたようだ。2人して、ゆっくり歩いてソルの部屋に向かった。


「あの情熱は分からない訳ではないんですが、迫力に圧されてしまいました。」あー、凄かったー。

「私も得意ではない。必要な事だと思っているんだが、母上が凄まじくてね。」うんうん。

「でも神託の通りなら、被害が減りますね。」

「そうなると助かるかな。ノワールも喜びそうだ。」

「今日もノワール様はいないんですか?」

「いても一人だけ祝いに参加出来ず、のけ者になるから、母の実家に行ったままだよ。」

「そうですか。私も兄弟が気になります。エリ兄様とアゲィ姉様はどうしてるかなーって。」

「グラジの心配はしないの?」

「今日は、グラジーお兄様に差し入れを持って執事のマルスが近衛騎士団まで行っているので、大丈夫です。」

「なるほど、私は疲れたプリムラの心配をしたいな。」

「あ!手土産を渡しそびれてる!どうしよう、ソル。」

「後でラングに渡せばいいよ、大丈夫。渡さずに帰ったわけじゃないし。」

「そうですよね、よかったー。」ふぅ。焦ったわー!


 ソルベール様の部屋に着くと丁度、ラングさんが出て来た所だった。

「爺、プリムラが手土産を渡しそびれたと、気にしていたんだ、受け取っておいてくれ。」

「ケークサレって言って、甘くないお菓子です。今朝から料理長に手伝ってもらって作りました。切り分けて皿に盛って下さい。5本あります。足りるか分かりませんが、宜しくお願いします。」

「それは、ご丁寧にありがとうございます。」

「まだ温かいのですが、冷めてもおいしいです。オーキッド公爵家の領地で採れる野菜を沢山使ってあります。」

「これはこれからオーキッド公爵家で特産品になるのですね。」

「はい!」

「そうですか、早速、奥様方にも出します。」

「ラングさんも一切れ、味見で食べて下さいね。」毒見ともいうかなー。

「ご相伴に与らせてもらいます。では、ごゆっくりどうぞ。」

「私も前に食べたが、美味いぞ。父上もまた食べられるなら、喜ぶだろう。」ソル、ありがとー。

「では、コンジェラシオン様の分は別に取り分けておきます。」ラングさんは5本のケークサレを持って行った。ソルの分は私の収納スペースへ入っています。


 ソルの部屋に入った。昨日も来たなー。ソルに持っていく物をまとめているから、昼寝をするか聞かれたので、はい!と返事をした。アクセサリー類を外してもらって、ベッドをお借りした。緊張していたのか眠気はすぐにやって来た。

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