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薄紅色の花が咲いたら  作者: 巻乃
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ソルベールー2

26話と繋がらなくなるので、表現を変えた物を投稿します。21話のソルベール側の話です。

 急いで客間に入り、出来るだけ急いで入浴して、出たら髪を魔法で乾かした。速足でグラジの部屋に行けば、もう勝手に酒を飲み始めていた。これ幸いと私は酒を沢山飲む振りをして飲む酒を少量にしておき、グラジの話を親身になって聞く。話を聞いてもらい気楽になってきたのと、酒のせいもあって、気分が良くなってきたようだ。グラジのグラスに、さり気なく強い酒を混ぜたモノを注いでやる。これを何回か繰り返したら、早く酔い潰れた。


 グラジにすまないと思う心と、プリムラ嬢の所へやっと行ける!と喜ぶ心を持ちながら、これまた速足で客間に戻る。酒の匂いを魔法で飛ばしてから、急いでプリムラ嬢の部屋へ向かった。屋敷の者には会わなかったので、プリムラ嬢が人払いをしたのだろうと思う。私もプリムラ嬢も見られたらマズい事をしている、その自覚が私にはある。プリムラ嬢に自覚があるのかは分からないが。私に会えるのが単純に嬉しいと感じているだけなのかもしれない。私はそこにつけこむズルい大人だ。


 扉を小さくノックする。「はい、どなたですか?」「ソルベールです。ご挨拶に来ました。」「今、開けます。」思っていたよりも扉が開くのが早かった。急いで走ってきて扉を開けてくれたのだろう。

「そんなに慌てなくても、逃げませんよ(笑)」「ごっ、ごめんなさい。走ってしまって。早歩きしなくて。」淑女にあるまじき行為…とでも思っているのだろうか。おやすみを言う前に少しでも長く一緒にいたくて堪らない。部屋の中へ入りたい。少しだけ酒が回ったのだろうか、プリムラを抱きしめたいと思った。

「少しだけ中に入っても?」「はい。」少しシュンと萎れている。廊下を見回す。誰もいないようだ。今のうちに!と、誰にも見つからないようにプリムラの部屋へ入る。盗聴防止魔法を使うとグラジが飛んできそうなので、話し声が漏れないように扉を閉めた。一緒に鍵もかけた。これで、2人きりだ。


「怒っていませんよ。少しでも早く扉を開けるために走ったのでしょう。」「はい…。」

「部屋の中まで淑女でいなくてもいいんですよ。私だって、自分の部屋の中での姿は人に見せられませんよ。」そう言ったらプリムラから笑みが零れた。それを見た私も笑顔になる。

「何をしていたのですか?」「書き物を。」「勉強熱心ですね。何を…。」と言いかけて机の上の開いたままのノートを見る。「あ!み、見ないで下さい!!」「もう見てしまいました。」私の好みを把握しようとしていたのか、ノートに書いて忘れないようにしてくれるとは。慌てている姿も可愛い、どうしよう。酒のせいで気持ちに素直な行動に出てしまう。減っている理性を繋ぎ合わせておく、嫌われたくないので。


 だが、胸が苦しい。楽になりたい。だから、プリムラをギュッと抱きしめるんだ。女の子特有の柔らかさがある。頭の芯がクラクラする。「いい匂いがしますね。」「え、と、お風呂に入ったので。」髪の匂いを嗅いだ。甘くて、でも爽やかな香りがする。「この香りの洗髪剤は好みです。」プリムラの首の辺りに自分の顔をくっつけて匂いを嗅ぐ。体臭も混じっていて気分が高揚感に支配される。「体からもいい匂いがしますね。」「わ、私の好きな花や薬草を混ぜた石鹸を作って、使っているので。髪にもです。」真っ赤な顔になって答える。まだ一緒にいたい。その理由を考えなくても口から如何にもな理由が紡がれる。これなら、拒否できないぞ、と。


「ノートを見たお詫びに寝るまでついていてあげます。」抱き上げて寝室に移動する。そのままベッドへ運び、プリムラをベッドに寝かして毛布と薄い布団をかける。イスをベッドのすぐ横に置いて座った。プリムラの小さい手を握る。その手に頬ずりをしそうになったので仕方なく、話をする。とりとめのない話をしていて、眠りかけているプリムラに気付いた。「おやすみなさい。」と声をかけたら「おやすみなしゃい。」と眠気で口が回らない、その仕草にプリムラを可愛く、好きに思う気持ちが溢れた。「忘れずに、寝る前の挨拶を。」取って付けたような理由で、プリムラの顔のあちこちにキスをする。啄む様なキスについ物足りなくなり、深くキスをしてしまった。プリムラの許容量を超えたみたいで、そのまま気絶したかのように眠ってしまった。どうせグラジは明日の朝まで起きないだろう。だから私がもう少しここにいてもいいだろう。


 いつの間に転寝(うたたね)していたのかと、周りを見回す。真っ白で、ひたすら広い部屋の中にプリムラと2人でいる。プリムラは驚いてはいないようだが、ここは一体どこだろう。どこからか男性の声が聞こえた。


「好きな人が出来たんだね。愛し子よ。」神様?これは神託なのか?

「そなたがプリムラの好きな人か。」プリムラが瞬時に真っ赤になった。可愛い。

「は、はい。」プリムラが照れている。男らしく「私もプリムラ嬢を慕っております。」と言えた。両想いです。これだけはハッキリ言っておかねば。神には勘違いされたくない。

「夢の中にいた、そなたら2人を呼んだのは、相談したいことがあったからだ。」何を相談?

「相談とは何でしょうか?」思い当たらない。

「そなたらの歳の差を縮めようとして呼んだのだ。」今の15歳差を縮められると!!

「そんな事が出来るのですか?」神なら出来るだろうが、一体どうやって?

「ただし、おぬしはあまり苦労しないが、愛し子が大変な苦痛を味わうだろう。」プリムラだけがキツイのか。そんな…。私には出来る事は無いのか。神よ!

「…そんな…。」歳の差よりもプリムラの方が大事だ!と、言い切れない自分がいるのだ。分かっている。

「私は構いません!!」プリムラの答える声にハッとした。私と一緒にいるために苦痛を味わうのにもかかわらず、その力強い声に励まされた。

「本人の了承があったので、先に話をする。」この小さな身体の何処にこんな勇気を隠し持っているのだろうか。あぁ、私は弱い。彼女も弱い。強くないはずなのに心が震える。何かが溢れる。


「この先、7廻(年)間、愛し子は半廻(半年)に1歳、1廻で2歳の成長をする。反対におぬしは、2廻(年)に1歳しか歳を取らぬようにする。」

「7廻後にはプリムラが17歳、おぬしは21歳と半廻(半年)になる。」それなら、13廻(年)も待たずに結婚出来る。

「私の場合は、急激な成長痛を伴うのですね。」あえて理解しての答えを出すとは、成長痛は痛い。激痛の時もある。私に何か出来ないのか。

「通常でも痛みはキツイのだが、その倍はきつくなる。そうすると日常生活に支障が出るであろう。それを緩和するために、おぬしは3日に1度、愛し子と添い寝をするのだ。」へ?添い寝?

「ま、待って!!どーして?」「それは!いきなり何を!」2人して慌てた。貴族の常識だと、共寝や添い寝はグレーな領域になるから普通は出来ないはず。

「通常の勉強も生活に必要な常識を学ぶ刻(時間)も歳に合わせて、単純に考えても2倍にしなければならない。だから、私の力で、3日に1度だけの通常の、夜に寝て朝に起きる睡眠でも動けるようにする。日頃は、日常の生活を妨げない成長痛にして、睡眠時に激痛を伴う成長痛になるよう調整する。その激痛を添い寝して和らげるのがおぬしの役目だ。」私に出来る事が!!

「一体何をして、和らげればいいのですか?」

「コ、コホン。おぬしの頭の中に方法を伝授する。」頭の中に流れてきた方法。それは私が赤面してしまう事だった。確かにうかつに口に出す事は出来ない。全身マッサージするんですか、でも恥ずかしいと逡巡するが、いいじゃないか…と思ってしまった。

「………。」ぶわっ!と顔に血が上る。熱い。「そ、それしか方法がないのであればそれに従います。」殊勝に答えたが、頭の中ではマッサージの方法をひたすら考えていたのだった。


「方法は添い寝するそやつに伝授したので、私からは日常の痛みを緩和して、成長を助ける丸薬を授けよう。添い寝する前に飲むのだ。いいか、必ずな。飲み忘れに気付いたらすぐに飲むのだ。何かあれば、私を呼ぶがよい。対処しよう。」

「はい。」

「愛し子よ、思った通りの場所に入れておく。」

「そちらのそやつには、まだ注意事項があるゆえ、プリムラよ、しばし待て。」「はい。」

「では、おぬしには先ほどの様に丸薬の注意事項を頭の中に伝える。」「はい。お願いします。」


 丸薬を服用すると翌朝までの諸々がプリムラの記憶には残らなくなる。その上、プリムラの歳にプラスされた実体を伴う幻に触れる事が出来る。今は3歳だが、幻ではおぬしに抵抗がない11歳のプリムラの姿が見えて、触れる事が出来る。5歳になると12歳のプリムラの幻が、7歳で13歳のプリムラの幻、9歳で14歳の、11歳で15歳の、となり、12歳からは丸薬での記憶の消去だけになる。ま、何かプリムラに変調があっても私が駆けつけるから大丈夫だ、丸薬に悪い作用はないから安心するがよい。成長痛を緩和するのはおぬしのマッサージだけだから、しっかり朝まで頑張れよ。そうだ、今夜から始めてもらおう。今日のは特別に効き目が早い丸薬だ。3日に1度の丸薬はもう少し緩やかに効く。おぬしのマッサージを受けている間のプリムラは苦痛がなくなる。それに、記憶に残らないから、マッサージで間違って触って嫌われる心配もないから問題ない。ま、寝なくても若いから大丈夫か。


「…。…うっ、………は、はい。」今夜から!?!動悸が激しい。記憶に残らない?


「用心の為に伝えただけだ。2人共、丸薬は他人に譲ってはならない。あくまでプリムラに合わせた特別な丸薬なのでな。夜も更けたばかりだ。今から丸薬を服用するがよい。」そう言われたら、プリムラが目の前に浮いていた1粒の丸薬を飲んだ。プリムラが飲んだ、丸薬を飲んだ。飲んじゃったよ。

「では元の場所に帰す。しっかりするのだぞ、ソルベール。」

「はい。」と頷いた。次の瞬間にはプリムラのベッドの上に2人でいた。


「丸薬を飲んだら、しばらく待つそうだ。痛みが始まったら、私に教えて欲しい。」「はい。」と返事をした途端、プリムラの表情が真顔になった。痛みが急に襲って来たようだ。「い、痛いです。すぐ効く特別製、で、す。いたっ、痛い。」痛がっているが、丸薬が効かないと。「神様から伝えられた方法で和らげるから、何があっても信じてくれ。お願いだ。」「はい。信じ、ます。いた・た…。」


 キスをした。そして、そこからは幻の11歳のプリムラと触れ合った。幻が見えているという事は記憶が残らない状態になったのだ。なんだかんだで、私にとっては大変ラッキーな刻を過ごせた。


 プリムラの方が先に目が覚めていたのか、私を見ながらくるくると表情を変えて、赤くなっていた。朝から可愛いとは堪らないな。

「おはよう。朝からプリムラの百面相がみれて、幸せだ。」


 朝食の席では、グラジに祝いの言葉を言われた。どうやら神託による婚約周知がされたようだ。2人で神から聞いた、神による采配で7廻(年)間限定の成長に私の添い寝が必要な事をグラジに話した。そして、私の部屋を用意して欲しい事をグラジに頼んだ。ただ、私もプリムラも皆にされた神託の内容を知らなかったので、朝食の後、その内容を私がグラジに尋ねた。。


「たしか、「愛し子に相思相愛の相手ができたので、神である私の立ち会いの元で昨夜、婚約した。2人の仲を裂いてはいけない。私の立ち会いで婚約したのだから、不埒な事をしようとする有象無象には個人での天罰をすぐさま、与えてやろう。」って内容だった。」

「そこまで言って下さったのか、私も突然の事で、婚約した事しか頭になかったんだ。」

「で、どうして婚約までの話になった?」

「寝る前に挨拶に行ったときに、立ち話をしたんだ。そこで、私から告白して両想いになって、そうしたら神に呼ばれたんだ。昨夜はお前が早々に酔い潰れたから、試しに寝る前の挨拶へ行ったら、プリムラがまだ起きていたんだよ。」すまん、グラジ。だが、本当の事は言えない。言ったらボコボコにされるのも分かっているし、夢を壊したくないのもあって、言わないんだ。そのかわり、プリムラ嬢は大事にする。

「じゃ、俺のおかげだな。」

「そうとも言えるな。私だって、3歳に告白するのは勇気が必要だったんだ。少しぐらい酒の力でも借りないと出来なかった。」

「そうだな、状況を考えるとそうかもな。」

「これで、友人の私がずっと側にいるんだぞ。何かないのか。」からかってやる。

「文字通り、義兄弟になるのか。心境としてはちょっと複雑だけど、他のやつだったら納得できなかったかもしれないな。」嬉しい事を言ってくれる。私はこれでも照れ屋なんだ、ハッキリ返す言葉が浮かばない。

「それはお互い様だ。」これで、精一杯だ、伝わるだろうか。

「将来の宰相と軍務省長官の最強タッグが出来たな。」

「勝てる奴なんているのか?」

「プリムラの兄のエリシマムなら仲間入りしそうだから、魔法省長官も加えて、超最強タッグでも目指すか。」

「グラジが言うとありえそうで、何と返答しようか悩むな。」

「そうか、ありえそうか。ま、これからも宜しく、義弟殿。」

「こちらこそ宜しく、義兄上殿。」

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