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薄紅色の花が咲いたら  作者: 巻乃
23/56

芽吹きー21

 それから、寝る支度を済ませた後、机に向かって考えながら、次に作る物、欲しい物、これから作りたい物を「私の作りたい物専用」と表紙にこの国の言葉で書いてあるが、他の人がこのノートを拾っても盗んでも読めない様に中身を日本語で書いている。


次に作る物ーお菓子で、この世界に前と比べて何があるのかを食べた物出された物で判断していたが、本で調べる。料理はもう少し大きくなってから。

欲しい物ーパスタマシンがあるかどうか。あれば欲しい。香辛料、薬草の購入。採取。

これから作りたい物ーアイスディッシャー、この世界にない茶葉。前にあった便利調理家電の様な物。キャンプ用品。それぞれ市場調査をしてから作る。


 この前使ったノートの表紙には「私が見て聞いた事など」と書いてある、宰相室と秘書官控室で聞いた色々を書きとめてある。他にも用途別に分けたノートが幾つかあるが、この国の言葉で書いてある。


 新しいノートを出す。表紙に「好きな物、嫌いな物」と書いた。ノートをめくり、最初のページに「好きな物、オレンの実を使ったお菓子。甘味全般。甘くないお菓子も好きみたい。気付いた事、弟が可愛いみたい。屋敷の使用人達にも気を配る。社交シーズンにはオーキッド公爵家にはお兄様目当てに夕食、お茶に結構来るみたい。他には何が好きなのかをよく見て知る事。嫌いな物の把握にも努める。」と続けて書いた。他には何かあったかな?書いたページを開いたまま、もう一度、考える。


 うんうん悩みながら考えていると、扉がノックされた。メイドにはもう寝るからと人払いをして、下がらせたから、もしかして。「はい、どなたですか?」「ソルベールです。ご挨拶に来ました。」「今、開けます。」急いで小走りをして、扉を開ける。


「そんなに慌てなくても、逃げませんよ。(笑)」

「ごっ、ごめんなさい、走ってしまって。早歩きしなくて。」淑女にあるまじき行為…。嬉しくて走ってしまった。気を付けないと!生真面目な方だから、こういうのはお嫌いだろうし…。

「少しだけ中に入っても?」「はい。」すぐには立て直しが出来ない私。若干シュンとしている。ソルベール様が部屋に入って来た。盗聴防止魔法を使うと近衛騎士のお兄様に気付かれそうだから、話し声が漏れないように扉を閉めたようだ。


「怒っていませんよ。少しでも早く扉を開けるために走ったのでしょう。」「はい…。」

「部屋の中まで淑女でいなくてもいいんですよ。私だって、自分の部屋の中での姿は人に見せられませんよ。」そう言って笑った。

「何をしていたのですか?」「書き物を。」「勉強熱心ですね。何を…。」と言いかけて、私の机の上の開いたままのノートを見るソルベール様。「あ!み、見ないで下さい!!」「もう見てしまいました。」ぎゃーお!!ど、どうしよう!?!?慌てる私。今日は慌てているだけだわ、私。でもでも!!


 ギュッとソルベール様に抱きしめられた。「いい匂いがしますね。」「え、と、お風呂に入ったので。」「この香りの洗髪剤は好みです。」あわわ、髪の匂いを嗅がれてしまった!「体からもいい匂いがしますね。」「わ、私の好きな花や薬草を混ぜた石鹸を作って、使っているので。髪にもです。」ほらもう、顔が真っ赤っか!!こんな状態に免疫ないのにー!!


「ノートを見たお詫びに、寝るまでついていてあげます。」「は、はいっ。」抱き上げて寝室に移動された。そのままベッドに運ばれ、ベッドに寝かされて毛布と、薄い布団をかけられた。ソルベール様はイスをベッドのすぐ横に置いて座り、手を握ってくれた。とりとめもない話をして、私が眠りそうになったら「おやすみなさい。」と声をかけてくれた。「おやすみなしゃい。」眠気で口が回らない。「忘れずに、寝る前の挨拶を。」ソルベール様のキスが顔のあちこちに降ってきた。啄む様なキスがディープになった。私は許容量を超えたみたいで、そのまま気絶したかのように眠ってしまったみたいだ。


 だって、今、真っ白くてだだっ広い部屋の中に私は居る。ソルベール様も隣に居る。ここは神殿で神託を受けて気が付いたらいた場所かとか、2度目の来訪をしたのかと思うだけだった。多分、夢の中なんだろうな。この前の様な姿が見えないけど、どこからか神様の声がする。


「好きな人が出来たんだね。愛し子よ。」ああ、あの気の抜けた話し方じゃマズいから、神様らしい話し方にしたのか。

「そなたがプリムラの好きな人か。」そんなにハッキリ言うな!恥ずかしい。また真っ赤になりました。

「は、はい。」照れる。「私もプリムラ嬢を慕っております。」実際、両想いです。

「夢の中にいた、そなたら2人を呼んだのは、相談したいことがあったからだ。」私は黙っていよう。この空間では、思った事が伝わるので喋るのはソルベール様に任せよう。

「相談とは何でしょうか?」

「そなたらの歳の差を縮めようとして呼んだのだ。」

「そんな事が出来るのですか?」

「ただし、おぬしはあまり苦労しないが、愛し子が大変な苦痛を味わうだろう。」

「…そんな…。」ここで、私の意思をソルベール様に分かるように伝えないと!

「私は構いません!!」そんな迷子になったような目をしなくても、頑張るからっ!

「本人の了承があったので、先に話をする。」話して!神様!


「この先、7廻(年)間、愛し子は半廻(半年)に1歳、1廻で2歳の成長をする。反対におぬしは、2廻(年)に1歳しか歳を取らぬようにする。」あ、苦痛の原因が分かった…。

「7廻後にはプリムラが17歳、おぬしは21歳と半廻になる。」近くなるのか、最低13廻(年)も待たせなくて済むなら、頑張るしかない。

「私の場合は、急激な成長痛を伴うのですね。」

「通常でも痛みがキツイのだが、その倍はきつくなる。そうすると日常生活に支障が出るであろう。それを緩和するために、おぬしは3日に1度、愛し子と添い寝をするのだ。」

「ま。待って!!どーして?」え、え?「それは!いきなり何を!」ソルベール様も私もビックリだー!!

「通常の勉強も生活に必要な常識を学ぶ刻(時間)も歳に合わせて、単純に考えても2倍にしなければならない。だから、私の力で、3日に1度だけの通常の、夜に寝て朝に起きる睡眠でも動けるようにする。日頃は、日常の生活を妨げない成長痛にして、睡眠時に激痛を伴う成長痛になるよう調整する。その激痛を添い寝して和らげるのがおぬしの役目だ。」

「一体何をして、和らげればいいのですか?」

「コ、コホン。おぬしの頭の中に方法を伝授する。」

「………。」ぶわっ!と赤くなったソルベール様。「そ、それしか方法がないのであれば、それに従います。」

「方法は添い寝するそやつに伝授したので、私からは日常の痛みを緩和して、成長を助ける丸薬を授けよう。添い寝する前に飲むのだ。いいか、かならずな。飲み忘れに気付いたらすぐに飲むのだ。何かあれば、私を呼ぶがよい。対処しよう。」

「はい。」丸薬はあの神様からの贈り物入れに入るのかな。

「愛し子よ、思った通りの場所に入れておく。」確定ですね。

「そちらのそやつには、まだ注意事項があるゆえ、プリムラよ、しばし待て。」「はい。」

「では、おぬしには先ほどの様に丸薬の注意事項を頭の中に伝える。」「はい。お願いします。」

「…。…うっ、………は、はい。」

「用心の為に伝えただけだ。2人共、丸薬は他人に譲ってはならない。あくまでプリムラに合わせた特別な丸薬なのでな。夜も更けたばかりだ。今から丸薬を服用するがよい。」そう言われて、いつの間にか目の前に浮いていた1粒の丸薬を飲む。あんまりおいしくない、苦っ!

「では元の場所へ帰す。しっかりするのだぞ、ソルベール。」最後になって神様に名前を呼ばれたソルベール様が「はい。」と頷いた。次の瞬間には、私のベッドの上に2人でいた。


「丸薬を飲んだら、しばらく待つそうだ。痛みが始まったら、私に教えて欲しい。」「はい。」と返事をした途端、痛みが急に襲って来た。夜中になってしまったから、すぐにでも効くようにした特別製の丸薬だそうだ。そう言っていたな。あ、あ、いたたたた…。「い、痛いです。すぐ効く特別製、で、す。いたっ、痛い。」「神様から伝えられた方法で和らげるから、何があっても信じてくれ。お願いだ。」痛くて堪らないから、つい「はい。信じ、ます。いた・た…。」


 キスをされた。そして、そこからはよく解らなかった。目が覚めたら、いつの間にか朝でした。激痛ではないけど、今の自分に耐えられない痛みではないので我慢しようぐらいの感じ。隣を見ると、ソルベール様が眠っている。わわ!ほんとーに添い寝してる!ひゃー!顔が自然に赤くなる。でも、何故、あんな神託が?神様からのアフターサービス?それともオプションサービス?

「おはよう。朝からプリムラの百面相がみれて、幸せだ。」あの、この甘々な台詞を言う素敵イケメンは?

ソルベール様って、こんなこと言うの?あぅあぅ。


 神様から関係各所に神託による連絡が行ったようで、朝食の席では生温かい視線にさらされた。

お兄様からは「電光石火だな、ソルベール。」無言でいるソルベール様。

「ま、一つ、心配がなくなったからいいか。すぐ婚約するんだろ。」

「婚約出来るの?」初耳です、知らなかったー。

「プリムラの望みなら何歳でも婚約出来る。」これは事実を知られたくなくて、父様、爺様辺りが隠ぺいしたな…。

「そうなんだ。知らなかった。」素知らぬふりをして後で、父様、爺様を母様お婆様と懲らしめよう。

「義兄上達が教えたがらなかったんだろうな。神託による婚約周知だから、すぐ整うだろ。おめでとう、ソルベール。おめでとう、プリムラ。」

「ありがとう、グラジ。」「お兄様、ありがとう。」

「ま、お前の他にも大喜びをしている人がいるだろうな。」


 その日、宰相が屋敷の自室で、喜びの小躍りをしたのは誰も知らない。神様だけが覗き見して笑い転げたようだ。


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