芽吹きー16
日常の中に恋愛要素が入るので、恋愛メインではありません。と書いてみる。
今回は流れで長くなってしまいました。
お茶会の最中だった!!ぼんやりしている場合じゃないのを思い出して焦った。NOぼんやり!
目の前に来た人の1人は、優しそうな雰囲気のタレ目気味の目が可愛くて愛想がありそうな人だ。その男の人を【私の友人達には今日、家名を名乗らないで欲しいと頼んであるんだ。紹介するよ。】と、グラジーお兄様から念話が来た。
「紹介するよ。私の近衛騎士仲間のラムスだ。これでも貴族なので、機会があれば王城で見かけるだろう。」グラジーお兄様とあまり変らない歳ぐらいかな。
「こんにちは。はじめまして。わたしはラムディースです、グラジとは近衛で一緒になって以来の腐れ縁です。なっ!グラジ!」
「まったく…。社交の仮面を最後まで被れよ、ラムス。」こいつはいつもこんななんだ。という表情のグラジオラスお兄様。ん、気を許してるんだ、仲が良さそう。私もお兄様呼びに慣れてきたみたいだ。
「家名を名乗らないからいいじゃないか。仕事場ではキチンとしているし。グラジのお友達兼仕事仲間のラムジです。どうぞよろしく。」
「ラムディース様、はじめまして。プリムラです。今日はお茶会に参加いただき、ありがとうございます。グラジオラスお兄様共々、これからよろしくお願いします。」カーテーシーでシメる。これでいいかな。
「なんだよ、聞いていた話より普通で、良い感じじゃないか。アノお母上様や、アノお姉様よりも普通で良かったな。15歳下の妹か。」いやだわ、背中がぞわっとしたわ。過去に何をしたんだアノ2人は…。
「長く耐えた甲斐があった…。」グ、グラジーお兄様、過去に一体何があったんですかー。普通認定されない時点で、アノお婆様とアノ母様がやらかして迷惑をかけて後始末までさせたんだと理解した。
「はじめましてー。ボクも紹介してよー。グラジ。」新たなお兄様の知り合いかっ!ショタ枠かっ!私はショタ好きではない!…あ、あれ、れ、私の方が小さいんだった。あ、は、は。何だ今の違和感は…。
「プリムラ、こちらは私の騎士仲間で後輩の、メテオだ。」いくつだろう?エリシマム兄様(10歳)ぐらいかな。エリ兄様は落ち着いているから実際よりも上に見えるけど。
「メテオーロです。よろしくー。14です。君は知らないと思うから話すねー。何廻(年)か前にアノお二方が作った差し入れが、軍務省から何故か騎士団へ回って来たんだってー。その差し入れの味が大層奇妙な味と食感の謎物体だったそうで、でも上官にあたる軍務省から回ってきた差し入れだからと我慢して、無理矢理食べたんだそうでー。そうしたら、食べた騎士達が次々とトイレに行列し始めてさー。腹痛が酷く、並んで待っているのが地獄、トイレから出てもまた腹痛が襲い、並びなおす地獄が続いたんだそうだよー。それで騎士団が行動不能に陥った『地獄の行列の悪夢』と先輩騎士達からは呼ばれていてー、ボクはその後に騎士団入りしたからさー、良かったよー。」うわわーっ!!!なにしてんだよー!!ある意味、最終兵器を作ったのかぁー!!お爺様ー!!、知っていて騎士団に回したと見たわー!!!……犠牲者多数、語り続けられるほどのやらかしだった…。納得できる理由だわ。他にも何かしていそう…。あ、挨拶をしなければ。
「はじめまして。プリムラ、3歳です。グラジーお兄様の妹になります。宜しくお願いします。」で、カーテーシーを、と。あえて、アノ2人の事には触れないでおこう。私はその娘と孫娘だから。
「ボクには3歳の姪っ子が居るんだけどさー、うるさいしー、わがままだしー、話を聞かないし通じないしー、その上、言うこと聞けってすぐ泣くし生意気だしー、同じ3歳なのに全然違うよー。10歳の妹もいるんだけどさー、生意気でわがまま放題で可愛げがないんだー。帰っても疲れるから、さー、訓練も大変だしー、家には(騎士の)宿舎からなかなか帰らないようにしているんだよー。」あー、典型的な貴族のワガママな姪と妹にウンザリしているのかぁ。姪がそうなら、産んだその姉もワガママの可能性が高いなー。訓練で疲れて余裕が無いから、余計に辟易してるんだ。
「忙しくて帰れないんですね。でも、私もわがままいーっぱい言いますよ。」いろいろお疲れさん、甘い物がいいかな。丁度いいのがあるから、あれを出すかな。
ドレスのポケットから出す振りをして、私専用の収納空間場所(神託の後、寝る前に、神様に話を合わせて下さってありがとうございます。とお礼を言って眠ったら、私の夢の中に神様が出てきて、お詫びにくれました。ラッキー!!とまた次の日の寝る前に、収納空間のお礼を言ったら、何故かご機嫌な神様で「面白いことが起きそうで楽しみ!!」と言っていました。)からクッキーの入った小さな包みを出した。
この収納空間には、まだ慣れてないし、試したいことがいっぱいある!!ので、後日、色々やってみるんだー。
昨日作った試作品のクッキーで、細く赤いリボンで縛って、薄ピンクの紙ナプキンで可愛くラッピング済み。前世で言うとアイスボックスクッキー、この世界では見かけない少し変わったクッキーなんだー。そのクッキーが5,6枚入っている小さな包み。私の瞳の色にあわせたラッピングをして、私を連想させるようにしました。試作品を作る手伝いをしてくれた料理長も、スキル持ちの私の意図を汲んで、作り方諸々を内緒にすると約束してくれた。料理人としての矜持と、小さい子からレシピを取り上げないという大人の常識を料理長は示してくれました。いつも美味しい料理をだしてくれる料理長を、私個人は凄い人だと思っています。
まぁ、侯爵家で長年働いている信頼ある料理長。その料理長は約束を破る人ではない。可能性は全くないけれど、前世の知識を使ったレシピ、その内緒にする約束が破られたら私に害をなすとみなされ、天罰が下る。天罰って何が起こるか分からないから怖いのもあると思うし。
この世界ではどうした方がいいか、まずは様子見の小手調べで。保護者の居るうちに、誰がどんなふうに食いついて来るのかとか、どれくらいしたら不味いのか、どこまでなら許されて大丈夫か、の見極めをしないと。何かあった時の逃走資金も稼ぎたいし、教えてもらえることなら何でも挑戦して身につけたい。それに、一般市民では出来ない、貴族になったから出来る事、したいこともあるし。話が脱線しちゃったけど、メテオーロ様に取り出したクッキーを渡そうと思う。疲れた時は甘い物がいいんだよね。
「メテオーロ様、これは私が昨夜作ったクッキーです。疲れた時は甘い物で癒されますよね。甘い物が平気でしたら、どうぞお受け取り下さい。料理長に味見をしてもらっていますので、大丈夫です。安心して食べてください。」
「わぁ!甘い物、好きなんだー!ありがとーございますー!」
「よかったです。どうぞ。(ニコニコ)」
メテオーロ様はクッキーの包みを受取ると、かわいらしいねー。と感想を言って、包みを開けてクッキーを見た。凝っているねー。凄いなー。と食べ始めた。2,3枚食べてから、そっと残りのクッキーをドコかに仕舞って、あとで残りを楽しみに食べるねー。と満面の笑顔。すごくおいしかったよーと私に感想を言ってくれた。そのまま、グラジーお兄様の方を向き、真剣な顔付きになったと思ったら…。
「グラジ!!凝ったクッキーが作れる!!キチンとした挨拶が出来る。うちの妹と交換して下さいーー。お願いしますー!!」ガバッと、グラジーお兄様へ頭を下げた。
「何言ってんだ、メテオ!!」疲れ過ぎて優しくされたから、メテオーロ様のどこかのツボに入ったのかな?わっはっはー!!
「嫁の件は万が一言い出したら、この先絶対に嫁にもらえなくなるのは知っているから、今は言えないし言わない。だけど、妹を交換して欲しいと思った気持ちは本物だー!!」あら、結構本気かしら。保護者がいるから大丈夫だけど。今ここにいる保護者の、グラジーお兄様の様子を見ていよう。
「ちょ、何を先走ってんだ、よ。」ラムディース様が仲裁に入った。
「ラムスも食べれば分かる。それしか言えない。」
「プリムラちゃん、私にもわけてもらえるかな。」ラムディース様にクッキーの包みを渡す。
「一杯作ったので、グラジーお兄様のご友人へおすそ分けして、感想を言っていただこうかと思っていました。丁度良かったですわ。」ニコニコ笑顔で渡してみた。グラジーお兄様の方にも差し出して、
「グラジーお兄様の感想も聞きたいですわ。」と言ってみた。ラムディース様もグラジーお兄様もクッキーをしげしげと見てから、食べ始めた。
「プリムラちゃん、お店を出さないかい?メテオ、言い出した理由がわかった。」
「ラムジ!!今度はおまえか!!」
「このクッキーの展開できる可能性について考えた結論だ。」高評価!ありがとうございます!
「確かに、このクッキーは凝っていて今までなかった見た目だ。味もいい。だが、店を出すのはお前じゃない。私の妹だ。私の方が権利も保護責任もある。」
「フリューリンク家のお披露目パーティーでの宣言は有名だ。この歳で、これだけの物が作れる、キチンと話も挨拶も出来る、年齢差を感じない聡明さもある、可愛いし、愛想もいい。魔力もスキルも関係なくても、将来良妻になる可能性が高い。有望だ。だから、出店して縁を繋ごうと。」
「は?ラムジ、肉食系女子に疲れたからって、何を口走っているんだ?」頑張れお兄様!出資者は欲しいけど、結婚相手はまだまだ決めたくないですっ!私はまだ3歳なんです。
「いいなぁ。俺も混ぜて欲しい。混ぜて、混ぜて。」また新たなお兄様のご友人が。クッキーの包みを渡してみる。紹介されるまで暇だし。口パクでどうぞ、と。相手も口パクでありがとう、と。クッキーの包みを受け取ってくれて、すぐ食べ始めた。
「ちょうだいなっ!!」こちらの方もそうみたいだ。クッキーの包みを渡す。笑顔での目線をくれた。それで、無言のお礼をいってくれたみたいだ。早速食べている。グラジーお兄様は、ラムディース様とメテオーロ様との話がまだ尽きないようだ。
後から来たお二方も「紹介は後でね。」「話してくるね。」と、話に加わった。
私は、控室で見た他の執事や従僕に指示を出していた執事の顔を思い出して、念話を送ってみた。いけー!届けー!!
【プリムラです。急な念話でごめんなさい。グラジーお兄様のご友人との挨拶中ですが、挨拶中にどうしてか、皆さんと一緒に動けなくなってしまいました。お兄様と私、ご友人4人での計6人が座れるテーブルセットはありますか?】【プリムラ様、執事のマルスと申します。お茶会終了後にご当主様から紹介がある予定でしたので名乗っておりませんでした。申し訳ありません。テーブルセットをすぐにご用意いたします。】【出来たら、ポット2つとカップ一式を一緒にお願いします。】【お茶の葉やお湯はいかがいたしますか?】【私が茶葉を持っているわ。お湯も魔法で用意するから、ポットの中は2つとも空で構わないわ。】【了解しました。】
「混・ぜ・な・い!や・ら・な・い!」そんなお兄様の声が聞こえたような気がする。まだラムディース様とメテオーロ様、後から来て増えたお二人も混じって、言い合いしてる。あーぁ、3歳の足で立っているのがキツくなってきた。騎士の皆さんよりも普通な私は更にツライ。そろそろ座りたいなー。早く来い来いテーブルセット!!特にイス!!
「グラジオラス様ご歓談中失礼いたします。テーブルセット一式をお持ちしました。」キター!!!
出来る執事は大好きだっ!私の足も喜んでいる。グラジーお兄様の服の裾を引っ張って、念話してみた。【グラジーお兄様、ごめんなさい。足がツラくなってきていたので、控室で見掛けた執事の方に念話して、座れるようにしてしまいました。】お兄様が理解したようだ。ご友人方も新しくセットされたテーブルとイス、そのイスを執事に勧められて一息ついている。
【ごめん。フォローをありがとう。】【いいえ、お兄様。私のクッキーが発端ですもの。茶葉も用意していますの。執事のマルスに私を手伝うように言ってくださいますか?】
「マルス、プリムラが持ってきた茶葉でお茶を供したいそうだ。手伝いを頼む。」
「承りました。プリムラ様、茶葉をお願いいたします。」ちゃちゃーん!!収納空間場所から、(デルフィお婆様に教わっている調剤の知識を生かした薬草と、前世の知識を使って私なりに工夫したお茶の葉をブレンドしました。デルフィお婆様にも、料理長にも事前に味見してもらっているから大丈夫な)オリジナルブレンドの茶葉を出す。見つかりにくいようにテーブルの下で(茶葉を)出しました。
お湯の温度と蒸らす刻間をマルスに伝えてから、水を軟水に魔法で変え、それを更に魔法を使って適温のお湯にしたものを今、もう1つのポットへ用意した。それをマルスに渡す。それでマルスにお茶を淹れてもらい、皆さんに供してもらった。
「お嬢様のオリジナルの茶葉で淹れたお茶です。どうぞ。」
「グラジーお兄様や皆様の疲れがとれるといいなと思い、今日のお茶会の為に作りました。お召し上がりくださいませ。」
「お嬢様、私もこのようなお茶は初めてです。いただいてもよろしいでしょうか?」マルスに了承の意を込めて頷く。
「プリムラ、マルスはね、お茶の資格を持つほどのお茶好きなんだよ。」マルスは、私のお茶好きにも賛同して、適切なアドバイスをしてくれる、よきアドバイザーになれるかも。しめしめ。飲んだことがないだろうから、お茶の説明をしないと。
「この茶葉は、疲れをとる薬草と緊張を和らげる薬草と、私の考えた工夫をして作ったお茶の葉とをブレンドしたものです。どうぞお召し上がりください。」一応、ラノベにありがちな魔力を注いだりはしていない。レシピを売って、大量生産を目指したものだから。デルフィお婆様でさえ、試飲しても原料が詳しく分からなかったらしい。薬でないから分からなかったらしい。ふふっ。
前もって茶葉は幾つか作っていた。もちろん事前に自分で試飲しているし、デルフィお婆様のお墨付きもいただいている。今出した疲れに効く茶葉1種類。美容に良さそうな茶葉2種類。主に貴族を対象にした茶葉だ。私が普段飲むために作った緑茶っぽい物、ほうじ茶っぽい物、麦茶っぽい物の3種類。普段飲むのは庶民でも買えそうな材料で作っている。製法や淹れる際の注意点などを含めてが、私オリジナルのレシピなのだ。
この世界のお茶はコーヒーみたいなモノと、紅茶みたいなモノの2種類しかない。コーヒー豆みたいなモノの産地が違うだけで、豆みたいなモノの煎り方の違いがなく、煎り方は深煎り、浅煎りもなく単一なのだ。単に産地の豆の味の違いしかない。紅茶みたいなモノの違いもあまりなく、前世のフレーバーティー、ハーブティーがほぼ皆無だ。その事に気づいた当初、お茶好きの私には耐えられないと絶望した。そこから、ないなら作ればいいじゃないと発想を変えてみたのだ。手始めにお茶を作ることにしたのはそのせいです!!自分で資金を作るにしても、気軽に大量生産、大量消費が期待できる品目だし、丁度いいだろうと思い当たったから。皆、お茶を飲んでいる。そろそろ感想が聞けるかな。サンプルは多い方がいいし、口コミも侮れない。
「プリムラちゃん、おいしかった。やっぱりお店を出さないかい。」「待ったっ!!俺が出すっ!!出資するっ!!本当に元気になったよ。」「うちのプリムラだっ。うちで出すっ!私の妹だ。」「だから交換!!」「これだけで王国中に展開するのを考えられるほどだ。」若干名、違うのが混じっているけど、出資者候補ー!!増えてますー!!嬉しー!!
「皆様、気が早いです。グラジオラス様の言う通りでございます。プリムラ様はこの公爵家のご令嬢でございます。まずお嬢様が作ったものを私が毒見をしてから吟味しないと。」
「マルス、一人占めは認めない。プリムラが私の為に作ってくれたそうだ。」クリナムお婆様に振り回されて疲れている、グラジーお兄様が心配になってしまったのが、そもそもの製作動機だったりする。それに、この先養女となる私の、お婆様の脅威からの盾となるお兄様には、これからも頑張ってもらわないとならないし。
「予約も交換も出来ない…うぅっ。」何か聞こえた。あっち(婚約、結婚)の方へ話が行かない様にしなくちゃ。
「あの、グラジオラスお兄様、紹介がまだの方がいらっしゃると思うのですが。お願いいたします。」
「ロッシュにソルベールだ。騎士ではないけど、友人達だ。公爵家にもよく来ている。」
「私はロッシュです。今日は父と関係なく来ているので、宜しく。さっきはクッキーをありがとう。公爵家には息抜きに来ていますっ!」ちょうだいっ!!って来た人だ。中性的な顔付きの童顔だ。お兄様より下に見えるけど、同じ位だろうな。
「プリムラです。どういたしまして。外国の面白い話を聞かせて頂けると嬉しいです。宜しくお願いします。」イスに座っているので、頭をぴょこんと下げてご挨拶。
「グラジの友人で来ているので、家名を名乗っていないのですが。ふーん、これは面白くていいですねっ!」
「ご紹介に与りましたソルベールです。宜しく。私にも先ほどはクッキーをありがとう。私も公爵家には息抜きに来ている。」眼鏡を掛けて頭が良さそうに見えるしっかりした人みたい。俺も混ぜて混ぜてと言っていた人とは思えない。天然かっ!
「プリムラです。いえいえ、ご丁寧なお礼をしていただきまして。つい最近、私が疑問に思った事がありまして教えて頂けますか?あの、この前書類に署名する機会がありまして、ふと思ったのです。書類の書式って決まっているのですか?どんなふうに決めているのかなと。書類仕事の効率化にも興味があります。使っているペンや、紙等の用品も見てみたいです。お兄様共々、宜しくお願いします。」ぴょこんと頭を下げてご挨拶をした。
「(キラン!眼鏡が光った)勉強熱心で向上心もあるとは感心ですね。見学に来たいなら、グラジと一緒に、いつでもいいですよ。」これで、書類関連と文具についても知れるわー!!快適な生活と資金の調達のための開発ー!!
「では、いつお伺いしてもいいか、グラジオラスお兄様経由での書簡を出してもよろしいでしょうか?」この機会を逃さない様に約束を取り付けないとーー!!事前にお伺いが基本だったよね。
「道理も分かっているとは。いいですね。惜しむらくは侯爵家の宣言と歳の差ですね。ふむ。ええ、構いませんよ。」よしっ!許可が出たー!!
「あの、ですね。先ほどお渡ししたクッキーの感想と、お茶の感想を皆様にお聞きしてもよろしいでしょうか?」ここで好感触なら、若い男性でも大丈夫だー。
「あれはどちらで手に入れた物でしょうか?ほろ苦くって甘くっておいしかったっ!」ロッシュ様が言う。ラムディース様とメテオーロ様とお兄様は、心なしかニヤニヤしている。
「そうですね。私もまた食べたいと思いました。」ソルベール様も言う。
「あのクッキーはプリムラが作ったものだ。私もおいしく食べれた。また作ってくれるかい?」
「はい。グラジオラスお兄様。(ニコニコ)」ロッシュ様が驚いた表情で、ソルベール様が固まっている。
ま、3歳でこんな事をする子供は普通に考えたらドコにもいない。ここにいる私だけ。だって、気付いたら赤ちゃんで、思うように動けないし喋れない、もどかしい日々を過ごしていたんだよ。それがやっとやっと解消されたのが最近。動けるし喋れるって素敵!!って赤ちゃん時の反動で、つい、やっちゃったんだもん。身体の歳に引っ張られて、興味のあることをしたくなるとつい、自重出来ないんだぁよーーー!!!私。
「もしかしてオリジナルの茶葉って…。」ソルベール様が言いかけた。
「私、3歳になってすぐから、デルフィニウムお婆様直々に、調剤の手解きを毎日受けているのです。お婆様には薬効の部分の相談と、薬草の知識での手助けをしていただいて、お茶も私が作りました。お婆様には出来上がったモノの試飲をしていただき、効き目も体感してもらいましたの。うふふっ。」この1種類だけで今日は大丈夫そうだから、残りは徐々に出そう。一気に出して、貴重さが薄れない様に。周りの期待値が上がらない様に様子見しなくては。
「これは、見事です。グラジが羨ましい。」「グラジに差し入れついでにわけてもらうよ。」「グラジに会いに来たら、必ずお茶しようねっ。」「交換は見送るけど、グラジの所に遊びに来るねー。お茶とお菓子を期待してるー!」概ね良好の様だ。情報収集は大事。お店を出すとしても人脈は大事。出資者になりそうな方も大事にしなくちゃね。
「私、まだまだ勉強不足で知識が少ないのです。もっと学んで、もう少し成長した暁には、お店を出してもいいのではないかと思っています。それまで、出店の話は待っていてくださいますか?」
あざとく、首を傾げて上目遣いでお兄様のご友人を見る。皆様、笑顔で口々に楽しみに待つと約束して下さった、出資者ゲットだぜ!やったーーー!!!
他の席をそろそろ回らないとならない旨をお兄様の耳元に小声で告げた。次に身体補助魔法を使い、大きい蓋付きのガラスの容器を収納空間からテーブルの下へ出して、よいしょっと掛け声を呟いてテーブルの真ん中に置いた。中にはさっきのアイスボックスクッキーと、オーキッド家の象徴の蘭の花を模った型抜きクッキー、チーズっぽいのとハーブ(料理にも薬にも使う薬草)を練りこんだ甘くない塩味の丸いクッキー、その3種類のクッキーが大量に入っている。もちろん、昨日のお茶会後に大量に作りました。大変でしたが手伝ってくれた料理長様には感謝です。
「3種類のクッキーが入っていますので、皆さんでどうぞ。他のテーブルを回ってご挨拶してきます。今日のお茶会を楽しんでいって下さい。では、失礼します。」カーテーシ-をした。他のテーブルまでは、マルスがエスコートして連れて行ってくれる。お茶のお替りはメイド達が淹れてくれるだろうから、気にしないで済む。さて次はどこのテーブルかなー。次々テーブルを回ってお話しに行かなくちゃ、これじゃ回り切れなくなるわー。
*****
その頃、プリムラの居なくなったグラジオラスと友人の居るテーブルでは、各々、3種のクッキーを食べながら話していた。クッキー美味い。お茶も美味いと。あれだけ大量にあったクッキーも順調に減っている。
「生家から離すのはスキル持ちだから、それだけかと思っていた。軍務省の屋敷に忍び込む馬鹿は他の家よりも少なく、危険が減るからだと単純に考えていた。」
「ああ。少なくとも話を聞いた家々ではそう思っただろう。」
「だが、本人に会うと、公爵家で養女とするのに納得する。」
「王家では他国とのバランスで、政略結婚で他国に嫁がされる可能性が高くなる。本人の意思とは無関係に。王の意向も他国にとっては全く関係がないからな。」
「王や国全体で推奨する恋愛結婚が出来ない。だから、公爵家へ。他国も一貴族なら、その国の王家を飛び越えての手を出しにくいし。」
「…本人の条件は極上。性格も人格も上々。気遣いが出来るし、この先の神託で、専門の知識を手に入れた状態を想像したら、争奪戦は凄いことになるだろうな。」
「家格も良く、この世界の知識を学び、将来的にも期待が出来る容姿。魔力量も申し分ない極上。肉食系にならなくても嫁ぎ先には困らない黒髪で、元々、引く手あまた。スキル持ちでもなくても諸外国が抜け目なく狙う黒髪。その黒髪がスキル持ちなんだ。軍務でないと他国の誘拐から死守するのは無理だろうと推測する。」
「神託で天罰が下ると言われても、洗脳してしまい、本人が天罰を否定するならば、神も手が出しにくい筈と考えるバカも、他国では出るだろう。そうだ。そこが難しい。失敗すれば天罰だが、第三者や第三国を経由すれば可能になると、浅はかに動く処も出てくる。」
「密約で連合して、産む母体として、洗脳後に共有するという考えを持つバカが、出る危険性もある。神自身が、プリムラ嬢を誘拐された時点で天罰を下すだろうが、それにさえも気付かないというバカが、多くなる予想はつく。全くもって油断ならない状況だ。」
「妬み嫉みで、暗殺者を仕向けてくるバカの可能性も国内外からあるし、な。」
「女同士の嫉妬は怖いからな。それに踊らされて動く家もあるだろう。過去のスキル持ちも、妬み嫉みでの暗殺の危険にさらされたからな。」
一旦、話を止め、各々お茶のお替りをしながら、このクッキーが、あっちがうまいなと感想を漏らしながら、軽食コーナーにも行かずにクッキーを食べる。その中で口火を切ったのはソルベールだった。
「そこを過ぎて、本人の意思で選べるようになると争奪戦…。王家主催のお見合いお茶会の婚約が、なかなか成立しなくなったのは、プリムラ嬢を視野に入れた争奪戦の事前準備かと思う。今日ここの高位貴族のお茶会と、王家のお茶会とを同じ日にしたのは王家からの、事前準備はするな!という圧力。そういう意図を読めない、あえて、読まない保護者は多いだろう。スキル持ちについては神託や昔話からの噂しか知らないから。」
「婚約していなくても、学院に入学する歳の頃になったら、子息達での争奪戦になるだろう。」
「生家も養女先の家もプリムラ嬢の意思を尊重する。王家も手放したくないと嫁ぎ先は国内限定を主張し、親戚も国内の嫁ぎ先でないと会えなくなるからと、王家に同意している。全て、プリムラ嬢の意思が優先される。」
「そして、その争奪戦に手が届く範囲に居る私達。ただお茶しただけで、目が離せなくなるとは。」「友人の妹として、知り合ってしまった。」「気位の高いのとか、わがまま放題のとか、いかにも権力狙いの肉食系とかを見慣れているから、さり気ない優しさに弱いな、俺達。」「全くだ。」
「神の定めたプリムラ嬢のお相手の歳の差は、上は15歳差、下は3歳差の男性のみとなっている。スキル持ちがヒヒ爺と政略結婚しなくてもいいように、結ばれた相手と死に別れる確率を減らすためにと定められた歳の差。スキル持ちが生まれる度に各国の王家や神殿、主要貴族へ神がわざわざ神託される。その歳の差を守らないと即、天罰。国が丸ごと消滅の天罰。その後はスキル持ちが100廻ごとに生まれなくなり、前回失態を犯した国はスキル持ちが生まれても、神の介入で絶対に嫁にもらえない上、スキル持ちが全く生まれなくなる。だが、神の神託はスキル持ちが生まれた直後だから、どこの誰だかわかってしまうという諸刃の剣。」
「歴代のスキル持ちのお相手の歳の差を毎回、定めるのは神。そのスキル持ちの好みや性格、将来、幸せになれるかを視て、毎回決定され、神託される。」
「歴代のスキル持ちの中には、同じ歳限定の方、歳が下だけの限定の方、20歳上の歳の差でなければならない方もいたな。」
「今回は、常識的な歳の差だと思った。自分達も範囲にいるけど、関係ないと思っていた。」
「関係ないと言えなくなった。」「そうだなー。」「同意する。」「範囲に入るのに意味があったと、考えられる。」
はーあーっ。大きな溜め息をつくグラジオラス。友人達は苦笑いで声をかける。
「叔父と姪なら結婚できないが、義理の兄妹なら可能と、家の外に出さなくて済むとプレッシャーをかけられているグラジの溜め息か。」
「あー、複雑だよ。何代か前のスキル持ちは、神に心願して、お相手との歳の差を(神に)縮めてもらったとか、血が近くても問題ないように采配してもらったとか、スキル持ちの心からの願いを利いたとかの色々が書いてあった。王家の禁図書に記載があったから間違いない。」
「3歳であの状態だから、誰の目にも触れさせたく無いとか考えて、知り合う相手を限定して、歳の差可能なのを知り合わない様にして、学院入学前に早めに手を打つ、なんて事とかしないだろうか。グラジではなく、公爵が。」
「やりそうな事ではあるが、プリムラの視野を狭めて、本人のやりたい事を我慢させるのは本意ではないと、プリムラに嫌われたくないからと我慢している。」
「グラジは参戦予定なのか?」「そこは重要だな。味方になるか、ライバルになるかの。」
「オレは家の意向で恋愛出来るほど器用ではない。だが、一緒に過ごす刻が多くなればどうなるか…。正直、自分でも分からない。分からないんだ。」
「仕方ないねー、グラジは。」
「黒髪の乙女が子を生せるバランスの魔力量のある高位貴族で、15歳上から3つ歳下までの婚約していない者、結婚していない者での争奪戦か。伯爵家の魔力量ではプリムラ嬢の魔力量とで釣り合わないから、個人的に魔力量の釣り合う伯爵家の者と、家格は侯爵、公爵、大公、王家辺りの高位貴族か。生まれが高位貴族でも魔力量が釣り合わない者は、子が生せないから排除対象と。」
「婚約無効に婚約破棄、結婚無効に結婚破棄は個人限定の天罰対象だから、婚約者の居ない私達は問題ない。抜け道が無いように神も色々配慮されているな。」
「でも、プリムラ嬢の生まれたのが神託で分かって、3歳下までの子供を産むのが目標になった家も幾つかあったしな。」
「動きがあからさまじゃなくても、生まれた直後の神託後、だんだんやせ細り顔色が悪くなる男性がいれば、丸わかりだったよ。」
「あー、あそこの家かな?とか思い当たるのが幾つかあるねー。」
「でもさ、本人を見ると、歳下よりも歳が上の方が話し易そうだったねっ。同じ歳じゃお子様過ぎて、プリムラ嬢と気が合わない可能性が高いよっ。少なくとも、5歳上から辺りが有利とみたっ!」
「相変わらず、観察するのが好きだな、お前。」「情報は外交の肝だからっ。観察するのは大切。」
「なかなかいいなと思う相手に会えないから、いいなと少しでも思ったら動いちゃうよねー。」
「まずは国内の候補者リストを作ってみる。見学に来たいと言っていたから3日後でどうだ?」
「3日後か、刻は書簡を送って決めよう。」
「グラジには遠慮しないで言うが、今日の帰宅後、ツリーピーオニー公爵家からはロッシュが、うちのピーオニー家からは私と弟のノワールが候補として上がるだろう。」
「ん、ラムスとボクも父が侯爵家を継がない兄弟だったから伯爵でいるだけで、母もそれぞれ公爵や侯爵出身だったし、魔力量は多い。多分、候補になると思う。」
「プリムラ嬢だって、誰と恋愛するのかは本人さえ分からない。まさに神のみぞ知る、だ。」
「父の代には、高位貴族でも普通の可愛らしさを持ったご令嬢がいたそうだが、祖父母世代に苛烈なのが多くて、孫に口を出す家が増え、孫は気位の高いのか、権力狙いの捨て身の肉食系、わがまま放題が増えてしまった要因だ。」
「あの子の上の姉も3歳上で、親子だからイリス姉さん寄りだけど義兄さんの血で良くなっている、普通の感覚持ちだ。ノワール君に薦めても問題ない。侯爵家の魔力量はある。」
「いい話を聞けた。感謝する。兄弟で争いたくないからな。性格や感覚がどんななのかわからないから、忌憚ない内部事情を教えてもらえて助かった。」
「姉妹で仲がいいから、一緒に宵闇の女神から調剤の手解きを受けている。姉に合わせてプリムラも手解きを受けるようになったほどだ。プリムラは優しい姉が大好きだそうだ。」
「ほう。フリューリンク家は当たりの家か。」
「あとは、個人の好みの問題だと思う。容姿や仕草の好み、合う合わないの感覚だと思う。」
「メーアント侯爵家のご令嬢も厳しい治癒魔法の訓練で頑張る、健気で素直、夫人譲りの可愛い系の見た目だそうだ。そこも姉妹仲が良くて、夫人の集まりでも話題になるそうだ。」
「グラジはイリス様経由の情報が入るんだねっ。他の普通の嫁候補にも会ってみたいなっ!好みが合えばいいっ!可能性は潰さない。一番合う娘と出会える幸運は逃さないっ!!」
「姉とプリムラが、メーアント侯爵夫人親子をフリューリンク家に呼んで遊ぶ約束をしているそうだ。希望するなら、様子見出来るように義兄に話を通すけど。」
「さすがだ、グラジ。皆で様子見が出来ると、プリムラ嬢の相手候補が減りそうでいいんだが。」
「プリムラの方から一昨日の事を話してくれて、姉様と一緒がいいとイリス姉さんに頼んだと聞いた。多分、あちらも母親と姉妹で来ると思う。」
「いい娘は早く目を付けないと横取りされちゃうからな。ま、こちらも嫁候補は多い方がいいから、手配を頼むよ。魔法省長官宅なんだから、覗き見防止されているのが普通だが、その逆も出来る魔法がかかっているだろう。危険防止を兼ねての記録映像と音声記録が。だったら、見るだけでも出来るはずだし。」
「義兄さんには正直に、他の女の子を見たいと言ってる友人がいると話すよ。義兄さんが結構鋭くて、のらりくらりとかわしそうだけど。姉さんから聞いている出会いをほのめかしたら、強く否定できなくて了承すると思う。」「任せる!」「頼んだぞ。」「頼む。」「楽しみー!」
*****
お茶会では全部のテーブルをお爺様とお婆様のサポートで一回り出来て、やーっと終わったー。お茶会が終わって疲れてぐったり。3歳には高位貴族はきつかった。知識不足で話題についていけないわ。小さいからか体力が付いていかないわ。ほんとーに疲れたー。
座っている私の前のテーブルに、フルーツジュースの入ったグラスが置かれた。出来る執事のマルスだ。
「マルス、お茶の他にも色々、ありがとう。今日のお茶会が実践練習だったの。後で、公爵家で働いている皆に飲んで欲しいから、茶葉を渡します。皆に配って下さい。お願いします。マルスの分のクッキーを渡しておくね。はい、どうぞ。」ポケットからクッキーを出す振りを忘れずにした。受け取ってくれた。茶葉は他の部屋に置いてあるのと言い訳して、大きい袋に入っている茶葉をさも取ってきたように装い、渡した。
美味しそうなジュースを遠慮なく飲む。うーん!おいしい!3歳にはジュースが似合う。お茶も好きだけど、ジュースもいいねぇ。酸味と甘みが疲れた身体と心に染み渡る。
疲れていたので、軽食を摘まんで食べていたら寝落ちしたみたいです。そのまま公爵家にお泊りになったらしい。翌朝、天井やベッドの様子が違うので、寝落ちして泊まったのに気付きました。まだ3歳なのを再度、自覚しました。