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薄紅色の花が咲いたら  作者: 巻乃
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芽吹きー12

 こんにちはー!!呼ばれて来ましたよー!私が君を転生させました「この世界では『神』と呼ばれている」ある種の生命体ですっ。

 それとも、うむ、私が君を転生させた『神』である。明確な存在ではないが一番近い言葉で表すなら、ある種の生命体である。

 えーと、こんな感じでどう?神様らしい感じ出てる?

 どっちがいいかな?あ、そう、気楽な方がいいと。ふんふん、君の今の状況は、と、私の使いから、あ、伝令役が居るんだけど、その役目から報告されているよ。転生させたばっかりだし。えーと、転生前の記憶が思い出せないと。ぼんやりな感じでもどかしい。ふんふん、何をしに転生させたのかと。


 君に「何かを()()()ために転生させた」訳じゃないよ。「君が何を()()()見守るためだけに転生させた」というべきかな。あくまで、君が人生を全うさせるのかどうか見たいだけだ。転生前は、人生を全う出来なかったから。だから、使命も目的も何もない。あまりにも前が良くなかったから、少しは前と違って良くなるように、色々付けて転生させただけ。ただそれだけ。深い意味も策略もなーんにもない。


 好きに生きていいんだよ。ただ、責任とか立場とかは付いてくるけど。それは大人になれば当たり前のことだから。人生を全うさせる手伝いは、私の使いからアドバイスとか、何とかするからさ。君がどんな人生を送ってもいいから、死に際に「人生を全う出来た」と思わせられれば、転生させた私の面目が保てるんだ。他にも、私と同様なモノがいてね、そのモノに対しての私の体面が守られるんだよ。そう言えば、分かるかな?


 他に聞きたいことは?んー、それについてはまだ教えられる年齢に達していないとだけ答えておこう。もう少し大きくなって、前の自分自身にあった事や、起きた事に耐えられるようになったら、ね。そうだなー、10歳越えて、うーん、15歳じゃ間に合わなくなるか。んー、10~12歳になった頃に、また話そう。そうしたら、君がどう進みたいか、この先どうしたいかが具体的に出てくるんじゃないかと思うんだー。


 あ、そうそう、転生前の一般的な知識を、今までのようにその都度思い出すのではなく、知識として思い出せるようにしてあげよう。今のままだと、この世界の知識の勉強をするのにも礼儀作法を学ぶにも不便だろうし。専門的なものは、んー、過去を話す時に将来に役立ちそうなのを選べるよう、そう、その内容の量とか質とかをどのくらいにするか決めようかー。うーん。あとは何かあったかなー。


 あー、使いの(伝令役の)クンツァイト君の気力がもう限界か、そうかタイムリミットか。もう1人、君には後で専属の使い(伝令役)を付けるよ。もうちょっと君に気楽に伝言や話が出来るように。でないと、クンツァイト君がキツイし気力が保てないからねー。何か大事な事を伝言するときの『神託』の有難味と威厳が減ってしまうと困るし、ねー。『神託』を得る()()()の地位が低くならないようにって気を配るのも私の役目だし。君も神様からしょっちゅう何か言われたくないだろう。くすっ。


 では、タイムリミットみたいだ。クンツァイト君が今回の事については何も覚えていないから。クンツァイト君経由で君に意識を繋いだだけだから。君は『神様に転生させられた。異なる知識は、この世界の知識と生活を学び覚えて大きくなった後に、私(神)と考えようと言われた。手出し無用。余計なことをしたら、その国には神罰下すよ。』と答えておけば大丈夫だ。


 んじゃ、また。それまでには元気に大きくなるんだよ。じゃあねー。


 …文句を言う隙がなかった。私が頭の中で考えたり何かを思い浮かべたりした途端、一方的にその事について話すんだもん。あれが『神様』か。文字通り何も言えなかった。その上、つかみどころがなかった。何とも形容しがたいモヤモヤした何かが胸に残っただけ。


 神託の間(一方的な神様の話の間)は気を失っていたクンツァイト様。神託終了したからか目を覚まして、床から身を起こして立ち上がった。

「今回の神託はプリムラ嬢のためにあったようで、私は何も覚えていない。ただ、「プリムラと話したい。」と神様がおっしゃっていたので。プリムラ嬢と話す為だけに私を介したようだ。」

 王であるジェイド様と、立ち会いの神官省長官のヒューゲルト侯爵様と、私の付き添いのオーキッド公爵のワトソニアお爺様、前フリューリンク侯爵のマンサク爺様、現フリューリンク侯爵のストック父様、そして私。皆に向かってクンツァイト様がそう発言した。そして、次に私にだけ狙いを定めたように私を見て、目を離さないでいる。


「君は『神』と何を話された。嘘をつくと私には分かる。全て話すんだ。さぁ!」クンツァイト様が言う。

 そんな鬼気迫る勢いで、グイグイ来られても…。迫力に圧されて自然と涙目になった私。「怖くて」って泣いてもいいかな、なにこの圧力面接はっ!その途端、私の横やら後ろから冷気が噴出した。怒りの波動も感じる。あぁ、これは、2人の爺様と父様の、併せて3人分の怒気の感情の発露だ。


 よしっ、ここで泣けば状況がこちらに有利になりそう。嘘を()()()()()()いいんだよね。どうせ、もう涙目になっているし。よっしゃー!いくぞー!


 ううっ、ポロポロ涙を零す。そして、ジェイド王とヒューゲルト侯爵と爺様、父様を見る。どうしたらいいの?って思いを込めて見てみる。あえて、クンツァイト様を外して見ないでおく。


 ジェイド様の顔色がサァーッと青くなった。爺様達と父様の冷えた目線の笑顔で。綺麗でも凍えそうな怒りを滲ませた笑顔を受けているジェイド様。幼気な小さい女の子を泣かせた責任があるのは理解しておられるようですね。成人していないクンツァイト様の保護者の1人は()()()、もう一人は、神官省の長官である、今現在、私は付き添いですと()()()()しているアナタだ()()()()()()()()()。ほほぅ、ヒューゲルト侯爵様の顔色も青くなられたようで…。私の留飲も少しは下がりましたわ。不用意な態度をなさるから私の保護者達に睨まれるんですよ。


 さて、クンツァイト様は…と。こちらも青い顔色でい、ら、し、た、の、ね。すかさず、止めを刺して、不利にならない様に釘を刺しておかないと。国外用のストッパー担当の責任を果たしてもらわないと。ねぇ、ジェイド様にクンツァイト様。私が普通に過ごせる毎日か、誘拐、暗殺ゴロゴロの暗澹たる毎日かどちらの生活になるのかの究極の二択が懸かっているんですから。こちらも真剣ですわ。


「神様には、ね。私が転生させた。って言われたの。異なる知識はまだ必要ないから、まだ言葉の理解しやすい普通の子供だよって。この世界で学び、生活なさいと。大きくなったら、また考えようね。と、やさしく教えてくれました。手出し無用とも伝えるようにと。余計な事をしたら、その国には天罰下すから。と、おっしゃられました。」と、神様の神託の内容を伝えた。


 転生前の一般的な知識は、知識として思い出せるようにしてもらったけど、言わなかっただけ。私と神様だけの秘密にしただけ。


「私がビックリしていたから、落ちついて話が出来るようになるまでに刻がかかったの。」長く話したことがバレないように。私の神託の内容を全て言わなくていいように。刻(時間)が長かった理由を言わなくて済むように話してみた。それに私の一生を、王国の好き勝手にされては溜まらない。私に好きに生きなさいって神様も言ってくれたから。


「私がいつものように神と話しながら、プリムラ嬢と話をするのかと思っていたんだ。大人げない態度をとってしまって、すまない。」クンツァイト様が謝罪をされた。私の保護者達の冷気の勢いと怒りが少し、弱まった。

「そ、そうだぞ。まだ小さい女の子なんだ。気を付けないと、な。あはははは…。」

「クンツァイト様も小さい女の子が身近におられないから、加減がおわかりになっていないのですよ。神殿ばかりでなく、もう少し、王宮にいらしても。」ヒューゲルト侯爵様は、フォローしつつ、要望も混ぜてるなぁ。しっかりしているというか、ちゃっかりしているというか、ま、いいか。


「嘘は言っていないようだ。神からも了承の返事が来ている。」ぽそりと私の発言を肯定された。神様、ナイスフォローをありがとう。寝る前に、届くかどうか分からないけど感謝の言葉を伝えよう。


 父様が、私の涙をハンカチで拭いてくれた。ありがとう、父様。

「ジェイド陛下、いつもそんなだから、エレガント王妃がうちのイリスに愚痴をこぼすんですよ。(わざわざ私の妻に、愚痴を言う程の不満を()()()王妃に溜めさせているのにも気付かない朴念仁。)」サクッと父様がジェイド王を仕留めにかかった。私を泣かせた意趣返しのようだ。見事にジェイド陛下が萎れてる。さすが、学院の元同級生。今日の事は、母様にもしっかりと報告がいくんだろう。


「そうそう、独身主義でも、女の子の扱いが悪い男はどこに行っても大した立場はありませんなぁ。なにせ、王国の半分は女性ですし。奥方様、令嬢様達の情報網も馬鹿に出来ませんですしねぇ。(神に仕えるから独り身を宣言しているが、甥しかいないから、女の子の扱いが()()()に出来ないんだろう。そのうち、女性達の情報網からアナタがまともに女性の相手も出来ない出来損ない扱いされても仕方ないですね。)」父様が言った。私を泣かせた本家本元のクンツァイト様には、悪辣な意趣返しだ。爺様達もニヤニヤしてクンツァイト様を見ている。今日の事は、この様子じゃ確実に、お婆様達にも報告されるな。で、後日、うっかり、でも、しっかりとした内容の噂が流されるんだろう。この王兄弟の。


 ヒューゲルト侯爵様は、と、うわ、顔色が青色じゃなく白いわ。王様や王弟でも容赦ない父様が、同じ侯爵であるヒューゲルト侯爵に対して(公爵であるお爺様も付いているから)どうでるのか分からず、戦々恐々としているのね。


「ヒューゲルト侯爵、後日、改めてお話ししていただけますか?(アナタの最新情報を仕入れて出直しますね。)」と笑顔で圧している。「有意義な話が出来るのを楽しみにしています。(話し合いが良くなるか悪くなるかは、そちら次第ですよ。)」父様、かっこいい。守ってくれて、ありがとう。

「私も参加します。」「もちろん、わしも参加する。(私達2人も参加するんだから生半可では済まさないぞ、若僧。)」爺様2人も参加するんだ。


 まだ貴族としての言葉遣いを覚えていないから、その言葉通りでしか分からない私。その私と違って、言葉の裏にある意味を理解している大人達と王弟は、やっちまったんだろーなー。そんな雰囲気だ。あー、もう用事が終わったなら、家に帰りたいなー。

「父様、お爺様、爺様(じじさま)、用事が終わったなら、家に帰りたいと思っています。もう帰ってもよいのですか?」

「あぁ、もういいんですよね、ジェイド陛下。」

「そ、そうだな。」

「クンツァイト様、もう神託はよいのですよね。」

「神託は滞りなく。」

「ヒューゲルト侯爵殿、これで帰ってもいいんですよね。」

「神託の公式な立ち合いをしたと、この立ち合い宣誓書類に署名をしていただければ終わりです。後日、今日の神託の内容報告の確認書類に私以外の皆様が署名すれば、終了です。私は今さっき署名しましたので。」


 『立ち合い宣誓書類』とは、

 「神託の立ち合いをしました。神託の内容は国から許された範囲以外は誰にも話しません。その事には嘘、偽りがない事を宣誓します。」という契約の魔法がかかっている書類だ。その書類に署名すると契約が成立して、神託の内容の、国で許可された所だけしか話せなくなる、書けなくなる、らしい。聞いた神託の内容は忘れないけれど。


 私には、別の契約書類があった。「神託は一切、他言無用。」となる『神託沈黙書類』といい、この書類に署名した途端、神託の事を誰にも喋れなくなる。私自身が神託を受けた事も、その内容も喋れない。だから、神託を受ける前と変わらない。でも、神託の内容は本人だけが知っている。この措置を講じるのは、私の安全を守るために必要なのだそうだ。


 私は神託の内容は喋れないけど、書ける。手出しすると神罰が下るから、脅されたりして書かなくて済むだろう。神様が、転生前の一般知識を知識として思い出させてくれたから、日本語で書きとめておける。これなら私も忘れないし、他の人が読めないから安全だ。


 私は神託沈黙書類に署名した。父様、爺様2人、ジェイド様、クンツァイト様は立ち合い宣誓書類に署名した。


 今日の神託は、クンツァイト様がだいぶ前、丁度、私が生まれる前辺りに「神からのギフト持ちがこの王国に生まれる。」と神託を得ていた。でも、それは今日の神託まで秘匿されていた。


 もともと、その確認をするために私が呼ばれて、クンツァイト様が私のスキル持ちを神様に確認する話だったのだ。今日はその確認をしただけなのだ。だから、魔法の契約書類のおかげで、私自身が神様と話したことは一切、漏れない事になった。


 大神官であるクンツァイト様は、初めて神託を受けた時すぐに、神様が許可したことしか喋れないという神様との契約がされている。だから、今回の神託は知らないから喋れないという状態で、立ち合い宣誓書類に署名しても問題ないそうだ。もちろん、クンツァイト様に手を出すと天罰が下るので、私と同じで、手出し無用になっているそうだ。


 結論。今回の神託は、ギフト持ちか確認するために大神官であるクンツァイト様が私に会った。立ち合いに王と神官省長官、私の保護者が選ばれた。私はギフト持ちであるが、まだ普通の子供であるとの神のお墨付きがついた。()()()()()()()(ここはただ大きくなった時か、成人した時なのかを明言しないでおいて)、また周りを見て考えようと神がおっしゃった。私に手出し無用。余計な手出しをしようものなら、その国には神罰を下すとおっしゃった。見守れない国は、神がお許しにならないだろうと。


 そうして、ジェイド陛下が大陸全土に書簡を送るのと同時に、王国内に流布して周知徹底を頑張ってくれたので、私は、まだ普通の生活を送れています。


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