芽吹きー1
温かいな。ゆらゆら揺られて、心地いい。このまま眠っていたい。このままでいたい。ゆらゆら……。
でも何でこんなに体がさっくり動かないんだろう?あれっ?私の手って、こんなに小さかったっけ?まさかまさか、わ、た、し、赤ちゃん???うそっ!!!!!
こわごわと、うまく動かない自分の手を頑張って動かして、もう一度、よーく見てみる。
…ちっせー!!!まじかっ!!!もしかして、自分を認識できなかったのは赤ちゃんだったから、自我が確立する前だったから、食っちゃ寝しか出来なかったんだ。なるほどねー。あーー、開き直るしかないかなぁ。仕方ないか。どーせ、回りも全く分からないし、その上、自分じゃ動けないし。なるようにしかならないしっ!!。えーーーい!!どーーにでもなーれーっ!!アスキーアート(略)
あふっ。何だか眠い…。赤ちゃんだもん。たっぷり寝なくちゃ。……ぐぅ…。
そして、いつの間にか寝に落ちた模様。
それから、目が覚めた私は、緑の髪の女性にミルクやらオムツやら諸々の世話をしてもらい、幾度目かの昼と夜を過ごした。「緑の髪って初めて見たけど、すごーい!」そんな感想しか出てこなかった。
そんなある日、幾人かの話し声で周りが騒がしくなり、寝てらんねーなー、うっせーー!と思い、目を開けると、大人4人とお子様2人がいた。紺に紫に青に…髪の色がカラフルだ。何でもアリなのか。自分の髪の色はまだよく分からないけど。
「アザレア、プリムラの様子はどうだ?」
いつもお世話してくれる緑の髪の女性は、アザレアという名らしい。乳母なのかな?残りの大人3人は私の家族で紺色の髪の父、紫色の髪の母、青い色の髪の祖父かな?お子様達は私の兄弟なのかな、そうすると兄と姉?はっきり言って、悪ガキそうだ。子分扱いされないように気を付けよう。そっと心のメモに書き込んだ。
「ストック様、お健やかに育っておられます。」
家族に向けて、愛想笑いをしてみた。
「まぁ。プリムラが笑っているわ!!」
「おぉ!可愛らしい。イリスに似ているからか、天使のようだ。」
「あなたったら!」
「いちゃつくな、2人とも。私は今日、初めてなのだぞ。」
「コホンッ!ストック父様の親のマンサクお爺様だぞ、プリムラ。」
「あぅー、あーっ。」
まだ喋れないので、これで勘弁、爺様。喋れるようになったら、愛想よくしますので、是非とも悪ガキ兄弟の矛先から守る盾としてヨロシク!!
「よろしくな。小さくってかわいいのぅ。」
デレているマンサクお爺様の指を握った私。それを見てほほ笑むストックお父様とイリスお母様。
「3人も孫がいると賑やかだのぅ。ワシもまだまだ長生きせねばの。ほっほっほっ。」
「プリムラ、兄のエリシマムと姉のアゲラタムだ。」
父様の話している後ろで、ベビーベッドの柵が高くてお子様だとよく見えないのか「どけよっ!」「見ーえーーなーーい!!」「うるさっ!俺だって見えないっ!」と騒いでいたのが濃紺色の髪の長男のエリシマム兄様と、濃紫色の髪の長女のアゲラタム姉様、上から見下ろしてニマニマしている私が赤ちゃんで、髪の色は不明の、次女、プリムラ。3人兄弟のようだ。
私にとっての初顔会わせは、お腹が空いた私が、「ふぎゃーーー!!ふぎゃーーー!!(はーらー減ったーー!!)」と、ぐずって泣き叫んだ所で終了した。
それ以降、私の元へ家族みんなが頻繁に来て、話すを当たり前にするから、家族イコール(何も分からない状態の中での)頼れる人となるには時間が掛からなかった。ただ、毎日、愛想を振りまいて生活するのは、顔面が疲れるのであったが。かーおーが引ーきーつーるー!
アザレアさんだって、私の乳母って言う業務の他にも、兄様、姉様の対応なんて大変なんだろうなぁ。私はそんな乳母の為、変な赤ちゃんだと思われない程度に夜泣きは少なめに、なるべく夜は寝るように気を付けました。はい。小さなことからコツコツと。
今日も今日とて、エリシマム兄様は勉強のサボりに、アゲラタム姉様はイリス母様の礼儀作法の時間から抜け出して、リアル人形扱いの出来る私ことプリムラと、遊ぼうとやって来た。
「プリムラー、今日も兄様は可愛いお前が見たくて来たよー。」
「あーっ。(サボってるとそのうち、痛い目見るぞ!)」
「エリ兄、またせんせーにサボりって怒られるでしょ、めっ!」
「なんだと!アゲィだって母様の礼儀作法を抜け出して来てるくせに!」
「ぶぅ。(どっちもどっち)」
「プリムラだって怒りん坊のエリ兄より、可愛くて優しいアゲィ姉様がいいわよねー。」
「ばぁ。(たいして変わんねー)」
いつもの流れだ。やれやれ。早く静かになんないかな。アザレアさんはミルク作りに行ったばかりだから、すぐには戻ってこないしなぁ、はぁ、五月蠅い。とりとめもなくそんな事を考えていた。呆けながら。
そんな時、エリシマム兄様が私をジッと見ていた。何かを窺うように。
「なぁ、アゲィ、プリムラって俺らの言ってる事、分ってるんじゃないか。」
「まっさかー!きゃははははははっ!!!!!」
「そうかなー?」
「気のせいだってばー!あー!、笑いすぎておなか痛ーい!!」
涙まで流して笑わなくてもいいでしょうに。お兄様が不憫。でも、ドキッとしたなぁ、案外、エリシマム兄様って鋭いのかも。気を付けようっと。メモメモ。
コンコンコン。ノックの後に扉が開く。カチャ。アザレアさんが戻ってきた。ミルクを作り終えたみたいだ。
「プリムラ様のミルクの時間ですので、ミルクを作って来ました。エリ様、アゲィ様、失礼します。」
わーい!ごはん!んぐんぐ!んまい!…げふぅ。うとうと…。
そんなこんなで毎日がのんびりと過ぎて行きました。
私が1歳の誕生日を迎える日に、お披露目のパーティーが開かれる事になったもようです。