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異世界転移に巻き込まれた  作者: ももた
2:騎士見習い
26/28

25:魔力と魔法

「私には魔法は使えないんですよね?」

「異世界人で魔法が使えるヤツの方が稀」

「……ですよねえ」


 この世界の魔法は、素質があれば使えるとかそういうものではない。努力でどうにか埋められる部分ではないのだ。非常に悔しいことに。

 この世界に来てから、未だに目の前で魔法らしい魔法が使われる場面に遭遇していない。名付けの儀の時は目を瞑っていたし、気絶してしまったからノーカンだ。

 魔法道具という魔法を利用したものなら日々目にしているけれど、そろそろわかりやすく魔法っぽいものが見たい。


「ユーリッツさんは何の魔法が得意なんですか?」

「水系。魔法はその器官が発達してないと体力の消耗が激しいから、使わないのが基本だけど」


 そう言って、手をぱたぱたと振りながら至極面倒そうにため息をついた。使ってみせる素振りくらいみせてくれてもいいんじゃないだろうか。そんなに消耗するものなのかな、魔法って。

 しかし水の魔法が得意、ということはユーリッツさんは水節(フエンテ)生まれで、水の神様から祝福を受けた可能性が高いってことか。水のように穏やかな気質と言えば聞こえはいい。

 使えない私には全く関係のない話ではあるけれど、魔法なんて心躍る話題に現代人が食いつかないはずがないのだ。


「器官って、空気中の魔力を変換するっていうやつですよね?」

「そう。鍛えようがない部分だから、生まれた瞬間に魔法っていう分野における優劣が決まる。魔法が得意なヤツは大体研究機関に所属してるよ」


 そんなに世知辛い世界なのか、魔法使いって。大多数の人は、魔法は使えるけど仕事にできるレベルではないってことかな?

 正直「何で魔法が使えるはずなのに身体を鍛えてるんだろう」とか思ってたんだけど、強化することができない分野で勝負するよりは、特訓すれば強くなれる肉体的な分野の方が断然いいに決まっている。生まれたその瞬間から優劣が決定されているなんて、ひどい話もあったもんだ。


「その器官は『魔力炉(ゲート)』って名前なんだけど。これが発達してるほど、少しの体力で魔法を放つことができたりする。体力消費すんのは変わらないけど、普通のヤツが1回放つ体力で20回魔法使える、みたいなのもいたりする」

「わかりやすい格差社会…………」

「で、これに当てはまらないのが神子殿達。人に影響を及ぼす魔法って使えるヤツはそういないのに、あの人達は軽々と使うし、何回だって使う」


 また神子か。本当に聞けば聞くほど人の枠組みに嵌まらない人達なんだな。

 悪用するような人はいないけど、というフォローが入れられたけれど、全く安心できない。ただの人間兵器じゃないか、神子って。


「人に影響を及ぼす魔法って、例えば何ですか?」

「治癒とか催眠とか、麻痺とか。身体の内部に影響を及ぼす魔法って言いたかった」

「…………もしかして、それを際限なく使えるんですか? つくづく神子様が敵だったらと思うだけでゾッとしますね」

「まあ、血気盛んな人はいても根っからの悪人はいないから……」


 私はその血気盛んな神子様に助けられているのだから、何も言うまい。他の神子様がどんな人達なのか気になるところだ。そういえば久しく血気盛んな人達に会っていないけれど、仕事が忙しいのだろうか。


「神子殿は色々と特別扱いってこと。神様の力を宿してるんだからどうしても人間離れはする」

「人間離れしてる人が確定で4人いるんですよね……」

「俺達が魔法一つ使って腹空かしてる間に何回でも魔法使うからな」


 ああ、消費される体力ってそういう方向なのか。使えば使うほど寿命が削れていくみたいなリスキーなものではなかった。


「あ、質問いいですか」

「いつも許可なんかとらないだろ」

「じゃあ遠慮なく。魔法についてはわかったんですけど、魔法道具ってどうするんですか? 魔力を溜めるって聞いたんですが」


 確か、街灯は魔力を補充しているとかなんとか。じゃあその魔力の補充ってどうやるの? 魔法を使うみたいにするんだったらお腹空くんじゃないの? とか色々と疑問が出てくる。魔法と魔力の関係とは。


「魔法を放つのと魔力をそのまま外に出すのは別。魔法は途中で変換をする必要があるから体力使うけど、魔力を魔法道具に流すだけなら変換いらないから。受け取った時点でその人固有の魔力にはなってるけど」

「中継地点になるだけなら特に体力はいらないってことですね」

「そういうこと。変換って魔法を使うための術式を魔力で作るってことだから、しんどい」


 しんどいのか、そっかあ。

 この世界の魔法ってそこまで便利じゃないのかな。いや、魔法道具の幅広さによるか。通信ができる道具もあるんだから、探せば空を飛べるような道具もあるんじゃないだろうか。うわちょっと魔法道具が並ぶお店があるなら見に行きたい。すっごいはしゃいでしまいそう。


「……そういえば、異世界の人が魔法を使えるのが稀って言ってましたけど。使えた人はいたんですか?」

「いたよ。俺が知ってる限りでは一人。体内で魔力を生成して、それで魔法を使うっていう自己完結してるヤツが」


 魔力も魔法も自分で作る人がいたのかあ。羨ましい。私も何かの間違いで魔法が使えるようになったりしないかな。魔法道具が使えたら、魔法使い気分を味わえるかもしれないのに。聞いている限りでは魔法道具の使用さえもできなさそうなのがとても残念だ。

 魔法を研究しているという人達に祈る他ないか。頑張って魔法が使えない人間でも使える魔法道具の開発をしてください。

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