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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

黒い腕の化け物 起

作者: 岸山

この施設に連れて来られて一体どれだけの時間が過ぎたのだろう。


もう、どんな理由で連れて来られたのか、自分の名前はなんと言うのかさえ、おぼろげだ。


ただ、何をされたのかはしっかりと覚えている。

来た頃は、苦い薬の投与が毎日あっただけだった。

それから、いくらか時間が過ぎ、苦い薬にも慣れたころ、突然部屋から出され、身体を切り開かれた。

それで、何をされたのかは分からないが、身体に何かされたのだろう。

それから薬の投与と一週間のに一回のペースでの手術をされた。

手術が始まるも俺以外にもいた実験動物が一人、また一人と死んでいった。


そして最後には俺一人となった。


そして今では酸素を送り込む装置を口元につけられ、水槽に溜め込まれた液体のなかにだだよっている。


研究者たちは俺を見ながら、なにかをメモしている。話し合っている。


「これから新薬『SD-00』の投薬実験を始める。」


ある研究者はそう言うとボタンを押した


そしてここから俺の運命を変える。


プシュッといったなにかが注射される音が聞こえる。

その瞬間、身体が突然熱く痛みを発しし始める。


ボコボコと水中で溺れる人間みたいにもがき苦しむ。


痛い、痛い、痛い、痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い


まるで身体が何か別の物に変わっていくような感覚に陥る。


意識は困酔し、身体は激痛を発する。


これ以上はもたない。


半分意識が消えかける。


どうでもいい事だが、外の研究者達が騒がしい。水槽越しに聞こえてくるのは、実験中止やらなにやらだ。


今更、足掻いたところで、もうどうしようもないのに


どうでもいい事なのに、身体は激痛が走っているのにそんな事を考えている自分に驚く

これが死ぬという感覚なのだろうか?いや、死ぬ寸前で何かしらを悟ったのだろうか

だが、不思議と恐怖はなかった。むしろやっとこの苦しみから解放されると喜びすらあった。



だが、一度だけ願いが叶うなら、こいつらに、俺や俺と同じ実験動物だったやつらの怨みをぶつけてやりたいなぁ



その瞬間、俺の意識は消えた。



研究者サイド〜〜〜〜〜


今日は、新薬の実験だ。

私は今日という日をどれだけ待っただろうか。


ここの研究所は表向きには海洋生物の調査をしているが裏向きは軍事用の特殊薬の製造や、生物兵器の製造などを国主導でしている。


今回の実験は軍事用の特殊薬のテストだ。


始めは何処からか攫ってきたり、闇ルートで買った子供を今回は合計158人ほど集めて、新薬の投薬にも耐えられる様にする薬の投与だった。これが、一番退屈だった。何せ、薬を飲ませて、経過観察するだけだったからな。

当然、全く、何とも影響がない者もいれば、時間が経つと身体に拒否反応を示し、ガクガクと震えている者もいたが、なぁに死ぬことはない。


投薬を始めてから一年、今度は肉体の物理的な改変だ。


これまでの研究成果によるとやはり薬の投与だけでは新薬には耐えられない。

死体を切り開いて原因を探ると、直ぐに分かった。この新薬は摂取すると身体の臓器だけが縮小を始めてしまう副作用を持っていた。そして行き場を失った血液が逆流や、血管の破裂を起こし、死んだと言うことが分かった。


ならばどうするか?

簡単だ、臓器を全て人口の臓器に変えてしまえばいい。人口の臓器は機械であるから縮むことはないだろう。

取り出した臓器が健康なら売っぱらうこともできる。


だが、いくら若い子供達とはいえ、一日で全ての臓器を人口臓器に変えることは出来ない。せいぜい2〜3箇所が限界だ。


これまた時間がかかる作業だ。

だが、これでも問題が起き出した。人口臓器では人間の臓器ほどの能力はなく、薬の投与での死者が出現し始めた。


だが、資金や時間などを考えるとこのまま続け、成功させるしかない。でなければこの実験は中止と同時に凍結が決定。その後、俺たちのようなこの実験に関わった奴らは皆、殺されるだろう。


全ての臓器を人口臓器にする前に一人、また一人と死んでいく。


俺たちは減っていく実験動物と同じ様に焦燥に駆られていった。


そして、幸か不幸か、最後の一人だけが残った。そいつは薬に反応を示さず、手術後の投与も正常のようだった。

だが、度重なる手術により、もはや自分で立つことすら困難になっていた。

これではいつ死ぬか分かったものではない。


そして今日、新薬の投薬実験が始まる。一応、こいつのおかげである程度の有用価値があると報告書を読んだ国の役員は思ったのか、視察にも来ている。


待ち望んでいたことではあるが、正直、胃が痛い。これが失敗した後の事を考えると余計に。


「これから新薬『SD-00』の投薬実験を開始する」


この研究の責任者が水槽に浮かんだ実験動物を背に実験の開始を宣言する

ちなみにSDというのはシャトー・ディフと呼ばれる。別に深い意味はないらしいが、なら効果などの頭文字を取れ言いたい。


そして、投薬が開始される。


直後、薬を投薬された実験動物は突然もがき苦しみ始める。

そして、手術により切られた部分が開き始める。と同時に水槽が血で汚れていく。


やはりダメか、俺たちの始末が決定した。


実験中止の合図が響く。だがもうすでに投薬は終えており、そこから効果を抜き去るなどはできない。


私は実験動物の生命活動を示す、画面を見る。すると一時期、ものすごく弱っていたメーターが正常値を出していた。


私は、責任者にこれを報告。

責任者も、もはやこれまでと思っているのだろう。

中止を取り下げ、実験を続行する。

水槽の水を新しくして中身を見てみる。

すると、そこには、なんということだろうか。左肩から下がウネウネとした黒い何かに変化しており、五本の触手の様なものが開いた傷に入り込み、人口臓器を摘出する。

そして、新しい臓器がつくられ、傷を一瞬で癒した。

全ての臓器が同じ様に取り出され治っていく。


そこにいた誰もが同じように唖然となっている。


バイタルの確認をすると正常値をだしており、実験動物を確認すると意識は失っているが、左肩から下は黒いが元の腕の形になっている。


実験は成功した。


その場では一瞬、静まり返り、そして大きな歓声が巻き起こる。


手をがっしりと握手する者、抱き合う者と様々な者達がいる。

私はホッと一息ついていた。これで殺されることはなくなったと、仕事に戻ろう声をかけようとした時に、何かが割れる音、水のようなものが流れる音、そして何かぎ潰される音がした。


そちらを見ると先ず、目に入ったのは黒く、大きい手だった。

そして、実験動物が水槽を破り、外に出てきていた。


そして黒い腕は潰してた場所から手をどけると、そこにはさっきまで喜んでいた研究者がプレスにかけられた様に潰されていた。


喜びから一転、絶望へと変わり、阿鼻叫喚の場所へと姿を変えた。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜


暴れる。


暴れる。


暴れる。


本能に任せて暴れる。


彼の者は怒りに身を任せて潰していく。


自身をこの様な化け物にした者を、それを命じた者を、力の限り、潰していく。


ある者は引き裂かれ、ある者は上と下をネジ切られ、ある者は黒い腕に圧殺される。


銃を撃たれる。

黒い腕は風になびく布の様になり、身体を護り、なぎ払う。もはやその死体が誰だったかわからないほどに粉々に


同じように化け物にされた自分とは違う生物と対峙する。

黒い腕は大きな顎姿を変え、喰らう。喰らう。喰らう。


爆撃が建物ごと化け物を襲う。

黒い腕は繭の様になり、自身の身を護る。そして開いた空、そして周りを囲む軍隊。


彼の者は潰して行く。

戦車の砲撃を受け止め、ヘリのミサイルを喰らい、爆撃機の爆弾から護りながら、黒い腕はウニや、栗のように身を黒い繭に包むと、そこにはいた全てに突き刺さる様に針を一瞬で伸ばし、殺す。


ようやく静かになった。

火薬や人の焼ける匂いが立ち込めるが化け物にとってはそんな事はどうでもいい。


さぁ、ここからだ。


自身が産んだ化け物に殺される覚悟はいいか?


それから2ヶ月後、最も科学が栄えた国は滅んだ。

ただ一匹の化け物によって


その化け物の行方を知る者は誰もいない。


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