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黒の計り事

遡ること一時間前。


仮面をつけた男が崖の上に立っていた。目の前に浮かぶ水晶玉に話しかけている。


「首尾はどうだ?」

『上々です。卵はあと半刻もしないうちに孵るかと』

「そうか。それは何よりだ」


男は眼下に視線を移した。

視線の先には円形の壁に囲まれた都市が見える。その光景に薄く笑みが零れる。


水晶が明滅すると、再びグリエラの声が聞こえてきた。


『ところで、この卵は一体何の卵なのですか?』

「そうか。まだ言ってなかったか」


水晶の向こうでグリエラが息をのむのが伝わってくる。

男は静かに言った。


「ドラゴンの卵だ」

『ドラゴン!? そんなもの、大丈夫なのですか?』


グリエラが驚くのも無理はなかった。

ドラゴン自身は危険な存在として広く認識されているが、ドラゴンの卵もまたS級危険物に指定されている。

それは飼育が極めて難しく、成長すると手に負えなくなるためだ。今までドラゴンの飼育を試みて命を落としたものは数多くいる。

ドラゴンの飼育と調教に成功したのは、今も昔も魔導士の始祖と呼ばれるユルグ・グノースのみと言われている。


そんな危険なものを渡されたことにグリエラはひどく動揺していた。

その心を見透かしたように仮面の男は言う。


「安心しろ。ドラゴンの卵が危険物であるのは確かだが、生まれて直ぐの雛は大したことはない。ただの人間には手に余るだろうが、魔導士であるお前なら問題はない」

『そうですか。でしたらあなたの言葉を信じますわ』


男はグリエラがその言葉を信じていないことが分かっていた。しかし今となってはどちらでもいいことだ。

どうせ卵が孵れば、グリエラと会うことは二度とないのだから。


「検討を祈る。その村を破壊し、我らの悲願を叶えようではないか」

『御心のままに』


水晶玉が光を失うと、それきり声は聞こえてこなかった。

男は宙に浮いた水晶玉を引き寄せると、それを手のひらに掴む。音もなく水晶玉が姿を消した。

仮面の男はそのまま石の上に腰を下ろした。


後ろから人の気配が近寄る。


「遅刻だ」

「わりぃわりぃ。ちょっと道に迷っちまってな」

「何を言う。貴様が途中で糞など垂れるからだ」

「ちょっ! なに人を貶めるようなこと言ってやがんだこの野郎は!」

「ほらほら。ライブラの前ですよ? お互い矛を収めて」

「……」


姿を現したのは四人の男女。

茶色の髪を逆立てた男と眼鏡をかけた物静かそうな男。二人は言い争いながら仮面の男に近づいていく。

それを止めに入るのが純白の衣服に身を包んだ男。なぜか胸に赤いバラを刺していた。

そしてその後ろから三人を眺めるのは黒髪の女。


「だからあそこで右だって言ったんだよ俺は。それをお前が逆方向が正解とかいうから」

「何を言ってるんだ糞垂らし。君の目は糞でできているのか? 僕のように澄んだ瞳で物事を見つめたらどうだ。あぁ。糞だから汚れきっているんだったな。気づいてやれなくてすまなかった」

「はぁ!? てめぇ殺してやろうかっ!!」

「まぁまぁ。抑えて抑えて」


男の仲裁も全く効果を見せず、二人の言い争いはますますヒートアップする。

すると仮面の男が背中を向けたまま底冷えするような声音で告げた。


「ヴィラード。もういい。私が二人を殺せば済む話だ」

「「!」」


二人の顳顬を汗が伝う。その一言で、二人はそれ以上何も言わなくなった。

ヴィラードと呼ばれた男もその様子にホッとする。


「お久しぶりです。ライブラ。作戦の守備はいかがでしょうか?」

「問題ない。陽動が成功すれば、すぐにでも始められる」

「それは良かった」


ヴィラードはにこりと微笑んだ。


ライブラはゆっくり立ち上がると、四人へと向き直る。


「皆、よく来てくれた。いよいよ我が大願成就の一歩を踏み出す時が来た」


四人は一様に膝をついて頭を垂れる。

しかし仮面の男、ライブラは四人の行いを制した。


「頭を上げろ。お前たちは私と志を同じにする者だ。私に遜る必要はない」


その言葉を聞いて四人は頭を上げた。しかし膝はついたままだ。

すると茶髪の男が何かに気づいたのか、あたりをキョロキョロ見回した。


「どうした?」

「ライブラ。あのいけすかねぇ女は、今日は来てねーのか?」

「ふむ。グリエラの事か? あいつには陽動を任せている」

「陽動?」

「そうだ。村の方でドラゴンの卵の孵化を任せた」


その言葉を聞いて男は眉間に皺を寄せ、急に機嫌が悪そうになった。


「なんだよ。あいつだけ楽しようってのか? それなら俺にその陽動任せてくれりゃあよかったのによ」

「そうか。ならお前に任せればよかったな。だが卵が孵化した後は、親ドラゴンがもれなく呼び寄せられる手はずになっているがな」

「……」

「同志を失うのは残念なことです。できれば、これ以上の犠牲が出ないといいですね」


ヴィラードが言った。他の三人も胸中は同じだった。

ただ一人、ライブラだけを除いて。


「ところでよ。なんだってこんな回りくどい陽動までしなきゃならねーんだ? グリエラも含めて俺たち六人でかかれば、王都の制圧なんて簡単じゃねーか」

「グリモス。いくら王都の国力が帝国や共和国に劣るとは言え、仮にも一国の軍が控えているのです。たった六人で何とかしようなどと、驕りがすぎますよ」

「ヴィラードは卑屈過ぎるんだ。僕たちの力は、もっと過大評価されるべきなんだよ」

「シラーまで……」


二人からの言葉攻めにヴィラードはたじたじだった。

元来自分の意見を強く言うことが苦手な彼にとって、二人の相手は心労が溜まるのだろう。


「そう攻めてやるな。ヴィラードの意見も尤もだ。お前たち二人はもう少し冷静に物事を判断できるようになれ」

「グリモスと一緒にしないでくれ。僕は十分冷静だ」

「てめぇ……」


グリモスはしかし、それ以上何も言わなかった。ライブラの無言の圧力が、言葉を続けさせなかった。


「そもそもだ。今回の計画を振り返ると、目的は王都の制圧ではない。あくまで王都を使っての儀式の完遂が目的だ。そこをはき違えるな」


ライブラは四人を順に見た。特にグリモスとシラーは念入りに。

しかしグリモスはそんなライブラの意に介さず言葉を返す。


「だが目的が儀式の完遂なら、王都の人間ぶっころしゃいいことじゃねーか。そうすりゃ何も問題ねーだろ?」

「貴様はもう少し理解することを覚えろ。今回の儀式には生贄が必要なのだ。それも大勢の人間の命がな。先に殺してしまっては意味がないだろうが」


ライブラは仮面越しに溜息をついた。

はっきり言ってグリモスは馬鹿だった。それでも彼を使うのは、彼がそれだけの力を持っているからである。その分負担は大きくなるわけだが、有事の際は余りある成果を上げるのだ。


「なら殺さず王都を制圧しちまえばいいんだろ? 俺たちなら問題ねーじゃねーか」


グリモスは悪辣な笑みを浮かべた。眼前に上げた手が炎に包まれる。

圧倒的な熱量が周囲を包んだ。

しかし顔色を変えるものはただ一人もいない。


ライブラはグリモスを制すると言葉をつづけた。


「王立軍だけであれば問題ないだろうな。だが問題は、王都にいる怪物たちだ」

「怪物?」


グリモス以外の三人も、その言葉に反応する。

王都にいる怪物となると、一人しか心当たりはない。しかし今の言葉、怪物たちとライブラは言った。四人はどういうことかわからず、ライブラの言葉を待った。


「王都には三人の怪物がいる。怪物とは言っても比喩だがな。一人はニナ・アルヴェイユ。史上最年少で七賢人になった魔導士だ。今はグリエラの向かったラウルホーゼンに滞在している」

「おいおい。そんな奴がいてグリエラが計画成功できるのかよ」

「戦闘になればまず勝ち目はないだろう。大丈夫だ。グリエラにはやつに近づかんよう言ってある。もう一人は貴様らも知っているはずだ。剣聖オーギュスト・カーマイン。こいつの説明は不要だろう。そして三人目。こいつが一番厄介だが、七賢人最強と言われているゴルタス・ブルード。そいつらがいる限り、儀式を成すことはおろか、王都の制圧すら不可能だろうな」

「七賢人最強と剣聖か。その二人だけが厄介なら、五人で問題ないんじゃないか?」


シラーは冷静にこのメンバーの実力を分析していた。

二人同時にであれば厄介だろうが、剣聖であれば一人で同等、二人以上で対処すれば問題ないだろう。剣聖流の高弟もいる可能性が高いため、残りはその迎撃に当たれば十分お釣りが来るレベルだ。

もう一人の七賢人はどれほどの力かわからないが、五人いれば問題ないはずだ。


しかしライブラの感想は違った。


「無理だな。剣聖は何とか対処できるかもしれないが、ゴルタスは私でも抑えるのがやっとだ。あいつにとって数は関係ない。全員でかかれば、間違いなく貴様らは殺されるぞ」

「そこまで強いのか? そのゴルタスってやつは」

「ああ。何せ単騎でドラゴンを倒せる数少ない人間だ。剣聖やニナ・アルヴェイユとは比較にならん」


その言葉に全員が息を呑む。

ドラゴンは恐怖の象徴であり、災害とまで言われる抗えない力の権化だ。それを倒せる人間がこの世にいること自体驚愕だった。

それは力を持った彼らでさえそうなのだ。


「だが、グリエラがうまくドラゴンを呼べれば、ゴルタスが動かざるを得ない。何せ、やつしか王都でドラゴンを相手できる人間がいないのだからな。我々はやつが王都を離れた隙に、王都の人間を使って儀式を実行する。剣聖も共にドラゴン討伐に出向いてくれれば儲けものだが、そういかない場合は戦闘も覚悟しておけ」


グリモスは手のひらに拳をたたきつけ、嬉しそうな顔をした。

シラーはその様子に溜息を吐くと、眼鏡の位置をそっと直した。

ヴィラードはそんな二人を見ておろおろする。

そしてもう一人の同志、リズリーは最後まで無言だった。


ライブラは四人を見据え、再び王都を見据える。

そして仮面の下で凶悪な笑みを浮かべた。


「さぁ。宴を始めようか」





ラウルホーゼンからほど近い山の裾野。数本の木々が遠慮がちに立つやや小高い場所に、グリエラと黒服たちは身を潜めていた。

光の消えた水晶を眺め、グリエラはため息を吐いた。


どうにもあの男、ライブラは信用ならない。同志という言葉を使って上下のない関係を築いているものの、実際の関係性は全く違ったものだ。

他の同志は彼に傾倒しているか、自分の目的が合致しているため気にはしていないだろうが。


しかしグリエラにとっては違う。彼の目的と自分の目的は決定的に乖離しているのだから。


今まで数度会ったことはあるが、ライブラは自身の腹の底を見せたことがない。重要なことを隠したまま計画に従事させる。

だからこそグリエラはライブラへの疑念を拭うことができなかった。

そして与えられたドラゴンの卵。

この一件で、ライブラへの不信感は許容できないものとなった。


グリエラはこの計画を最後に、ライブラの元を離れる決意をしていた。


「グリエラ様。ラウルホーゼンのやつらに感づかれた様子はありません」

「そうですか。ならこのまま卵が孵化するまで待ちましょう」

「分かりました」


黒服は再び村の様子を探りに配置に戻った。


グリエラは何の卵かは黒服たちに伝えなかった。

黒服たちは魔法を使えるわけでもないため、ドラゴンの雛であっても相手をするのは難しい。連携するか、単騎で相手できるとすればビッグ・トムくらいだろう。

この卵の正体がドラゴンであると伝えれば、皆の動揺を誘ってしまう。あえての判断だった。


しかし一つ気になることがあった。自分に与えられた任務が、この卵を孵化させるだけということだ。

そこから先はライブラから何も言われていない。この卵を孵化させてどうするか。孵化させることでどうなるか。それ以上は何も言われなかったのだ。


グリエラの胸中に不安が広がる。

ライブラが自分の思う通りの人間であれば、この計画の裏には何かある。


恐らくライブラは自分の事を信用していない。自分だけではない。誰も信用などしていないだろう。彼はそういう人間だ。

初めは信用を置けないから自分にこんな任務を与えたのかと考えたが、もしこれが自分を切り捨てるためだとすれば……。


本当にこの卵を孵化させることがいいのか、グリエラは迷っていた。


グリエラはラウルホーゼンを見た。


以前に見た時より飛躍的な発展を遂げている。相当な努力をしてきた事が垣間見えた。

それを潰すことは自分がされたことと同じ行為ではないのか。


周囲の黒服たちを見る。

彼らはグリエラが貴族であったときに屋敷にいた元使用人たちだ。

他の貴族の策謀によりお家取り潰しとなって以降も、グリエラの事を支え続けてくれた。まだ幼かったグリエラを抱えて逃げ、両親が死んでもグリエラの側に居続けてくれた。

今日ここに来なかった者たちも含めて、グリエラには彼らを守る義務がある。


その為に今まで汚いことも散々やってきたのだ。例えライブラが何を考えていようと、今更引くことはできない。それを乗り越えお家再興を行う。

例え他者を踏み潰しても、それは変わらない。

グリエラは覚悟を決めた。


その覚悟に呼応したかのように、グリエラの足元にあった卵が光を帯び始めた。


「!」

「グリエラ様!?」


その光が明滅し、次第にその間隔が短くなる。ピシィ! という音と共にひびが入り、その隙間から光が漏れる。凄まじい光量が当たりを包み込んだ。


光が収まると卵の殻は粉々に割れ、その中心に一匹の子竜がいた。

小型犬程の大きさで、しかし背中には翼、口には鋭い牙がついていた。ずんぐりした体の体表に鱗は見られない。一瞬ドラゴンかと見紛うその体系に、しかし面影は確かにあった。


ドラゴンの雛は当たりをキョロキョロ見回し、グリエラを見て視線を止める。

グリエラはドラゴンから目が離せなかった。この雛がどんな動きをするかわからなかったからだ。


暫くそれが続くと、雛はちょこんと立ち上がりてくてくとグリエラへと近づいていく。

グリエラは少し後ずさりし、その距離を開ける。雛は先ほどまでグリエラが立っていた位置に来ると少し止まり、再びグリエラに向かって歩を進めた。


この雛に危険性がなさそうなため、今度はその場から動かなかった。

やがて雛がグリエラの元へたどり着くと、足に縋りつくように顔を擦りつけてくる。恐らく自分を親だと思ったのだろう。刷り込みというやつだ。

グリエラはその雛を抱き上げた。ずっしりした重みが両腕に掛る。


「これは……。ドラゴン、ですか?」


グリエラの腕に抱かれた子竜を見て、黒服の一人が顔を引きつらせて言った。


グリエラもドラゴンの雛を見るのは初めてだ。そもそも成獣のドラゴンでさえ幻と言われるほど希少な存在だ。姿かたちは似ていても、これが本当にドラゴンと断定できる者はその場にいなかった。


「一応そうらしいですわ。あの男もそう言ってましたから」

「あの男というと、ライブラとかいう怪しげなやつですか?」

「ええ。あの男からはこの卵を孵化させるよう言われましたが、後の事は何も言われていません。一応これで任務は完了したことになりますが……」


とは言え、やはり不安は拭えない。これで終わりとはずいぶん呆気ないことだ。

腕の中のドラゴンを見る。円らな瞳でくぁと喉を鳴らした。


このドラゴンの雛を使って村を混乱に陥れろということだろうか。しかしどう見てもこのドラゴンにそれほどの脅威はないのだ。

黒服達でも十分対応できそうだ。ましてあの魔導士たちであれば、片手間でも問題にならないだろう。


「グリエラ様。いかがいたします?」


黒服の言葉にグリエラは考える。このドラゴンをどうするべきか。

このまま放置して、ここから離れるべきか。


すると遠くから何かが聞こえてきた。グリエラ達は村の方へ視線を向ける。

村に変わった様子はない。先ほどと何ら変わらず旅人や商人が往来していた。


しかし一点、今までになかったものが増えている。

村の外、はるか遠方に、太陽に紛れて一つの黒い点があった。その点が徐々に大きくなる。

その点が大きくなるのに合わせて時折耳を突く程の大音量が聞こえてきた。

それが咆哮であると分かるのに時間はかからなかった。


『ごぁぁぁぁあぁぁぁあぁっぁぁぁあぁぁぁっぁあぁぁ!!!!!!』


村の少し離れた位置から咆哮が届く。

それが聞こえる前に、グリエラ達はその正体がなんであるか気づいていた。


太陽を反射する赤い鱗。見るものを射殺すような凶悪な瞳。歯型すら残らないだろう巨大な口と獰猛な牙。

そして全長より大きく伸びる巨大な翼。


グリエラは腕の中の子竜を見る。やはりこれはドラゴンの雛だ。

レッドドラゴン。ドラゴンの中で最も一般的と言われ、しかしその凶暴性は非常に高い。おとぎ話に登場するドラゴンは大抵これだ。


そのドラゴンが、今目の前に迫っている。


「そういうことですか」


グリエラはライブラの意図に気づくと同時に、絶望を覚えた。

どうやらこの雛を孵すことで親ドラゴンが引き寄せられるらしい。どうやったかわからないが、そういうことなのだろう。


つまりあのドラゴンはこの雛を求めている。

グリエラ達を屠っただけではおそらくその怒りは収まらないだろう。成程、これは敵ながら妙案と言うほかない。邪魔者の始末と村の壊滅。その二つを一度にやってのけるのだから。

更に陽動と言っていたことから、このドラゴンを餌に王都を動かし隙を突くのだろう。まさに一石三鳥だ。


グリエラは心底ライブラの智謀に感嘆した。と同時に怒りが湧いてくる。

やはり自分を活かすつもりなど初めからなかったのだ。


「あなたたち。今からここにドラゴンが来ます。直ぐに逃げなさい!」

「ですがグリエラ様は!?」

「私なら大丈夫です。それより、あなたたちは魔法も使えません。ドラゴン相手では為す術がないですわ。早く、できるだけバラバラに逃げなさい!」


グリエラの強い言葉に、黒服たちは従うしかなかった。残ることで足手まといになると分かっていた。

黒服たちは直ぐに方々へと逃げていく。


ドラゴンが来るまでそう時間はかからない。

自分にできること。それはあのドラゴンが黒服たちを狙わないよう、できるだけ注意を引き付けること。


グリエラは足元に雛を下ろした。

そして自分を親だと思っている雛に、にこりと微笑みかけ喉を撫でてやる。

雛は気持ちよさそうに喉を鳴らした。


立ち上がり、こちらに迫るドラゴンを見据える。


「さぁ来なさい。私が相手になりますわ!」


そして、グリエラはドラゴンを迎え撃つための呪文を唱えた。

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