表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/13

2月【前半】

2014年2月1日から15日までのtwnovelです。

真っ白な雪景色に垂らした一滴のインクはストーリーを生み出した。

2月1日〈ニオイの日〉

風の匂い。草の匂い。水の匂い。鼻をひくつかせるとわかる。何もないように思えても、いろいろな匂いに溢れた世界。私が一番好きなのは、夕暮れ時にする匂い。「あ、今日もするなあ」ぐるるる、お腹がなる。どこかの家の夕飯。お腹を空かせるカレーの匂い。 #twnovel



2月2日〈頭痛の日〉

目が覚めると、頭が頭痛で痛かった。昨日の昨晩、散々に泣き散らしたことを思い出した。ケータイを開くと、昨日のメールの文章の文面があった。返事を返信する途中で中断してやめた。今更交わす会話もない。『ごめん。君の言葉遣いに頭痛がして、不安になるんだ。』 #twnovel



2月3日〈英雄の日〉

僕は英雄。人々が皆そう呼んだ。残虐な王よりこの国を民を守った英雄。救った命は数知れず、そしてまた、殺めた数も計り知れない。それでも僕は英雄だった。僕は今日も正義の歌を唄う。全身に塗れた血を拭い、晴れ晴れとした笑みを浮かべ。僕は今日もまた正義を叫ぶ。 #twnovel



2月4日〈西の日〉

僕は歩く。夕焼けの沈むその先へ。西の果て、世界の果てを目指して。ただ、歩いた。目指した光は、気づくと僕の後ろにあって、けれどまた僕を追い越した。何度も何度も、勝ち目のない追いかけ合いの繰り返し。いったいもう何回目だろう。僕は白い光の中にいた。 #twnovel



2月5日〈ふたごの日〉

私には姉がいました。よく似た姉が。私たちはいつも一緒でした。洋服も持ち物も、何もかも。ある日、姉は恋人を手に入れました。けれど、私には恋人がありませんでした。どうして?私たちは同じなのに。

私は昨日、姉を失いました。けれど、恋人を手に入れました。 #twnovel



2月6日〈海苔の日〉

暗い海の底で揺られていた。ある日、水の外へ出て、光を知った。熱い日差しに晒され、どんどん乾いていく苦しい日々を味わった。体をばらばらに切り刻まれる喪失感を味わった。気づけば、黒くて薄っぺらい姿に変わり果てていた。それでも、僕は僕のままだった。 #twnovel



2月7日〈オリンピックメモリアルデー〉

今年も始まる。戦いのステージに火が灯る。遠い世界の出来事だと思っていたけれど、この国でも開かれたことがあったなんて。16年前、ここにあった世界を私は知らない。燃えていた闘志を知らない。けれど今感じる熱は、確かにここにある。 #twnovel



2月8日〈郵便マークの日〉

「アイ、仕事だよ」「今回は何だ、ティー?」「感謝の気持ちを、この番号まで」「了解」「だいぶ慣れてきたね」「当たり前だろ。お前と違って要領がいいんだ」「そうじゃなくて、嫌がってたのに。郵便屋」「別に。いい仕事じゃねえかよ。想い、届けんの」 #twnovel



2月9日〈風の日〉

昨日は雪の日。今日は風の日。凍った路面はつるつると滑って危険だ。足元を見ながら慎重に進む。不意に顔を上げると、丁度突風が吹き付けた。そのまま彼は風に押されるままに道を滑る。え、なにこれ、楽しい!

後に彼がスケーターとしてデビューしたのは、別のお話。#twnovel



2月10日〈蕗の薹の日〉

蕗の薹の天ぷらを初めて食べた時、可愛らしい外見とは裏腹のあまりの苦さに驚いた。作ってくれた彼女は人が悪い。わざと黙ってて、驚く僕を見て笑った。さくり。一口かじった蕗の薹はやはり苦い。だけど、君の笑い声はもう、聞こえない。甘くて、苦い日々の思い出。 #twnovel



2月11日〈干支供養の日〉

白い蛇の体をそっと土に横たえる。抜け殻のようにもう動かない体に、硬い蹄で慎重に触れる。壊してしまわないように。鼻先を近づけて、わかれの言葉を告げる。爪先で丁寧に土をかけた。背を向けて「明日」に向かい歩き出す。また会おう、12年後に。 #twnovel



2月12日〈ブラジャーの日〉

「ちょっと聞いてー」「何?怖い話じゃない?」「違う。脱衣所にブラの落し物があったみたいなの」「どんなの?」「確か、Dで、黒とピンクのひらひら」(え、そんなの着けてる人いるの…)「それで、持ち主が主任の高山先生だったの!」((えっ、怖い話!)) #twnovel



2月13日〈名字の日〉

「同じ名字になりませんか」なんてプロポーズがあるらしい。お気楽で羨ましくなるよ。俺はそのせいで悩んでいるってのに。俺は権田原。こんなゴツい名字、彼女は嫌がるだろうな。でも、俺の名字を変えると俺は木村拓哉になってしまう。それだけは避けたいんだ……! #twnovel



2月14日〈バレンタインデー〉

もしも、雪が降ったら、渡そう。外は一面の銀世界。降ってしまった。渡す勇気なんてないのに。雪の中出かけるなんてムリだよ、なんて自分に言い訳する。目に入るのは新品の傘とブーツ。そうだね、使わないとね。私はついついそそのかされて、彼の家に向かう。 #twnovel



2月15日〈春一番名付けの日〉

つまらない日常に嫌気が差した。何かいいことないかな、慢性的に思う日々。乗り込んできた一つの横顔に目を惹かれた。思わず釘付けになる。斜め向かいの座席に彼が座る。ふと上がった目線が私とリンクした。高鳴る胸。冷えきった日々に、春一番が吹き抜けた。 #twnovel

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ