12月【後半】
2013年12月16日から31日までのtwnovelです。
一年間を物語と共に振り返りながら迎える年明けはいかがでしょうか。
来年もよろしくお願いいたします。
12月16日〈紙の記念日〉
ぺらぺら薄くて、びりびり弱くて、でも、僕らをつないでくれる。手紙は君の思いを載せて飛ぶ。本は君の物語を記し残る。今となってはいくらでも手段はある。けれど、紙面の暖かさは液晶画面では代われない。君が触れたぬくもりは、確かに、ここに。 #twnovel
12月17日〈飛行機の日〉
遠距離恋愛。ドラマや小説でよく見かけるヤツ。まさか、自分が当事者になるなんて思ってもみなかった。空港で彼を見送る。キスもハグもしなかった。でも、握手をした。彼の大きい手のひらに触れた。見上げた青空には、薄く伸びてゆく飛行機雲。少しだけ滲んだ。 #twnovel
12月18日〈国連加盟記念日〉
日本史の小テスト、私は9点だった。合格ラインのギリギリ下。国際連合を国際連盟と書いてしまった。それさえ合っていれば追試は免れたのに…!聞いた話だと、隣のクラスには「国連」と書いてマルをもらった人がいたようだ。まさかそんな抜け道があったとは。 #twnovel
12月19日〈日本初飛行の日〉
はじめて空を飛んだ時、その人はいったい何を思ったのだろう。初めて昇る高さを恐れただろうか。それとも、飛行の成功喜んだだろうか。自分の行いに対する周囲の反応を想像したかもしれない。私は、ただ、空の青さと吹き抜ける風を感じていたらいいと思う。 #twnovel
12月20日〈シーラカンスの日〉
生きている化石・シーラカンスが発見された。絶滅したと思われていたそれは、実はまだ生きていた。誰にも気づかれず、静かに種を残していた。そして現代に現れた、その異質な姿に人々は目を奪われる。海はまだまだ広く、深い。世界は未知に包まれている。 #twnovel
12月21日〈クロスワードの日〉
ねえ私のことどう思う?
夕日もえてた、帰り道。
君を愛してるよ、と
抱きしめた。
過ぎてしまっても、
消えることは決してない。
待合わせしよう、交差点で。
ほら。そこに僕らの愛がある。
#twnovel
12月22日〈冬至〉
一番長い夜をどう過ごそうか。早く寝てしまうのは味気ない。ゆっくりと読書でもして夜を更かそうか。柚子の香りで部屋を満たして準備万端。気に入りのかぼちゃ色のブックカバーを手にとった。今晩は、爽やかな香りと活字。それから睡魔と共に。長い夜ははじまったばかり。 #twnovel
12月23日〈テレホンカードの日〉
携帯電話なんてなかった頃。右手に使いかけのテレホンカードを握りしめた。家でかける勇気は出せなくて、狭いガラスの部屋に入る。褪せた緑色の受話器を手に取って、脳内で反芻しながら7つの数字を押す。ピ、ピ、ピ……。君への第一声の準備をした。 #twnovel
12月24日〈クリスマス・イブ〉
クリスマスを楽しむのに
リゆうはいらない。
スんだ冬の空の下、
マち中を彩るイルミネーションの光。
ステキな夜は、すぐそこにある。
イっしょに歩こうよ、輝く街を。
ブーツを履いて闇夜に踏み出す。
#twnovel
12月25日〈スケートの日〉
あどけなさの残る少年は、氷の魔法で変身する。華奢な身体にはしなやかな美しさを、無垢な瞳には鋭い強さを備え、王子様となって世界中の人々を魅了した。羽の生えたような軽快さと、結われた弦のような凛々しさ。氷上で、彼もまた人々を数分間の魔法にかける。 #twnovel
12月26日〈プロ野球誕生の日〉
野球部の彼に恋をした。話しかける話題なんて野球しか見つからない。でも、ルールもほぼ知らない私が、彼と野球の話なんてできるわけない。だから、今日からがんばって覚えるの。毎晩お父さんの横で中継を観る。待ってて、貴方のホームグラウンドに行くから。 #twnovel
12月27日〈ピーターパンの日〉
同級生たち次々とが大人になっていく。親も先生も大人になれと言う。でも、大人って、何?子どもたちに未来を強いるのが大人?劣ってる人に同情と嘲笑を向けるのが大人?だったら、私は大人になんてなりたくない。窓際で泣く夜。ピーターパンは、現れない。 #twnovel
12月28日〈煤払い〉
年越しに向けて掃除をしていたら、引き出しの奥に懐かしいものを見つけた。少し黄ばんだ古い手紙。封筒の端は擦れて今にも破けそうだ。宛先を見ると「わたしへ」の文字。今よりもだいぶへたくそな文字が幼い文章をつくる。不意にこぼれた涙は心から煤を洗い流した。 #twnovel
12月29日〈国際生物多様性の日〉
地球上には様々な生物がいる。そして、皆生きている。人間だけでなく、絶滅危惧種だけでなく、どんな生物の命も平等で、決して無闇に奪ってはいけないはず。大切にしなければならないと思う。でも、ただ……。"ゴ"から始まるアイツだけは勘弁して!! #twnovel
12月30日〈地下鉄記念日〉
一本逃してもすぐに次がくる地下鉄。僕は待つことがちょっと苦手になった。東京に来る前は、電車を逃してホームに30分、なんてこともあったのに。だからかな。君をただ待ったあの雪の日が、なんだか妙に懐かしく思えたんだ。ねえ、東京の冬は少しだけ寒いよ。 #twnovel
12月31日〈大晦日〉
来る者があれば去る者もまた。
年の変わり目は
ものがたりの章の区切りの様。
よみがえる一年間の記憶。
ろくでもないことばかりでも、
しあわせはきっとあったはず。
くつひもを結び直し次のステージへ。
#twnovel