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10月【後半】

2013年10月16日から31日までのtwnovelです。

老若男女、時には人外の視点から世界を見つめて。

10月16日〈ボスの日〉

日頃の感謝の気持ちを込めてボスにプレゼントをした。昨日見繕ったハンカチを手渡すと、ボスは照れ隠しなのか不自然に機嫌を悪くしながら、奪うように受け取った。翌日会社へ行くと、僕の机の上には缶コーヒーが置かれていた。まだ温かいその缶に僕はクスッと笑った。 #twnovel



10月17日〈貯蓄の日〉

毎日毎日、一枚ずつ、百円玉をちゃりん。ペットボトルの貯金箱に入れる。これは、君と白いヴェールと祝福の下で結ばれるために、貯めるんだ。毎日の貯金は何本ものペットボトルを満たしていく。資金は十分に貯まった。さて、今度はまだ見ぬ「君」を見つけに行こうか。 #twnovel



10月18日〈冷凍食品の日〉

「こんな冷凍食品ばっかりのお弁当もうイヤ!」その日はひどく苛立っていて、母親に当たってしまった。明日から買い弁確定だな。後悔した翌朝、台所には空っぽの弁当箱。ダイニングテーブルでは母が寝息を立てている。「……ごめんなさい」絆創膏の指に謝った。 #twnovel



10月19日〈バーゲンの日〉

装備よし。体調よし。コンディションは万全だ。「よしっ」入念な靴紐の結び直しを終えて、立ち上がる。今日こそは負けられない。これは、歴戦の勇者たちへの挑戦でもあるのだ。私はドアノブを捻った。

さあ、行こうか戦地ーーそう、開店セールへ。 #twnovel



10月20日〈リサイクルの日〉

神様は魂のリサイクルを始めた。天に帰ってきた魂を創り直して次の世代に引き渡すらしい。

だから僕は、今日も君を捜す。姿形は変わっても、魂の根本は変わらない。ならきっと、僕にはわかるよ。君の魂を見分けられるよ。だから、ねえ、早く出てきてよ。ねえ。 #twnovel



10月21日〈あかりの日〉

世界から、灯りが消えた。街灯に信号機、自動販売機。夜になっても、窓からこぼれる灯りはない。真っ暗な街は、異様なほどに静かで寒い。人々は皆、分厚い雲に覆われた真っ黒な空を見上げた。ただただ、懸命に見上げた。わずかな星の光を求めて。 #twnovel



10月22日〈パラシュートの日〉

ここは、上空2000m。航空機の開いた扉からは風の音がする。ごくり。唾を飲んだ。今だ、飛べっ!ふわり。足は地の感触を失い、体は完全に宙に舞った。突然の急降下。ばさり。開いたパラシュート。ここからは空の旅。見たことのない景色が見えた。 #twnovel



10月23日〈霜降〉

霜降。朝夕の気温が下がり霜が降り始める頃。しかし、まだまだ霜など降りそうにない。涼しくはなってきたが、それは単に長い夏が明けただけ。

冷たい空気。こげ茶の地面に降りた霜柱。冬の朝を想像しながら歩く。と。ざくざく。どこからか聞こえた音に私は耳を澄ました。 #twnovel



10月24日〈文鳥の日〉

大好き。大好き。大好き。私は誰よりも近く、君の耳元で届かない愛を囁き続ける。そしてたまにキスするの。頬に耳に鼻に。だけど鈍感な君はくすぐったそうに笑うだけ。それでもいいの。私にしか見せない表情。ただそれだけで、私はずっと君のトリコ。君だけのコトリ。 #twnovel



10月25日〈世界パスタデー〉

パスタが評判のお店。メニューはただひとつ「シェフのきまぐれ」。それを注文すると、周りの客席にちらりと視線をやる。トマト、クリーム、それからオイル。カラフルに並ぶ。本当にきまぐれで作っているのか?「お待たせしました」目の前に置かれたパスタの色は #twnovel



10月26日〈柿の日〉

赤く熟れた柿。懐かしい。幼い頃、悪友たちとつるんで柿を盗んだっけ。皆、それに気づいていても笑って許してくれた。あの頃は。ああ、本当に懐かしい。できることならもう一度、無邪気だったあの頃に戻りたい。ふと見上げた夕焼けはあの頃よりも少し色褪せて見えた。 #twnovel



10月27日〈文字・活字文化の日〉

ワタシ、本の虫。貪るように文字を追い、活字を餌に生きていく。家の中には本、本、本。しかし、いつの間か本は白紙に帰る。それでもまた、本の山を築く。気付けば、慢性的な満腹感。

ワタシ、本の虫。貪るように文字を追い、活字を餌に生きていく。 #twnovel



10月28日〈群馬県民の日〉

馬の群れが駆けてきた。押し寄せる馬の波に、僕らは咄嗟に道を開ける。建物の二階へ上がり地上を見下ろすと、道という道を埋め尽くすように、馬。怒涛の勢いで駆ける馬。奴らは皆、同じどこかを目指していた。奴らの鼻の先、視線の先。目的の地は、そう。群馬県。 #twnovel



10月29日〈おしぼりの日〉

ラーメン屋のカウンターで俺がラーメンを啜っていると、隣の席にオッサンが座った。オッサンはおしぼりを取ると豪快に顔を拭き始めた。俺は引いた。こんなオッサンにはなりたくない!

今、俺がいつものようにおしぼりで顔を拭くと、隣に顔をしかめた若者がいた。 #twnovel



10月30日〈初恋の日〉

独りきりの旅でした。暗い暗いトンネルでした。ある日、光が見えました。導かれて、私はトンネルの外に出ました。光はもう、消えていました。いつしか、ふたりの旅を始めました。今度はずっと明るくて暖かでした。でも、何故でしょう。私はまだ、あの光を捜しています #twnovel



10月31日〈ハロウィン〉

こんなにも静かなハロウィンは初めてだ。毎年開いていたパーティも、もう開けない。ガタが来た体は誤魔化せない。上手くやってるだろうか。代理を頼んだ息子を思う。

来年、あいつはどんなハロウィンにするだろう。……その時、俺はまだ、ここにいられるだろうか。 #twnovel

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