10月【前半】
10月09日〈世界郵便デー〉
まっさらな紙に君への想いを綴った。それを、丁寧に丁寧に折る。そして、出来上がった小さな紙ヒコウキを空に向けて飛ばした。ふわり、風に乗ったそれは、どこまでも飛んでゆく。気づけば、青空一面に白いヒコウキが。みんなの想いが、届きますように。 #twnovel
10月10日〈缶詰の日〉
巷で人気の記憶の缶詰。缶の中に自分の記憶を詰め、蓋をして密閉するのだ。そして、開封すれば、もう一度だけその記憶を味わえるという。最近ではそれを非常用品と共に保管する人が多いという。勿論食品と勘違いなどしていない。その缶詰、別名を走馬灯という。 #twnovel
10月11日〈ウインクの日〉
ウインクが上手な女性には注意すべし。きっと彼女はウインクキラー。目が合った瞬間ウインクをされたら、僕らに逃げ場はない。すぐさま心を奪われてしまう。だが、本日新たな強敵を発見。上手く出来ずに両目ウインクをしてしまう女性も中々可愛らしいのだ。 #twnovel
10月12日〈豆乳の日〉
豆乳はヘルシーだという。豆乳クッキーに豆乳プリン、豆乳アイス。牛乳に比べて低カロリーなのに、どれもこれも同じくらい美味しい。しかし、体重は減るどころか増えていった。そして、彼女は空き箱の山を見て気づいた。こんなに食べたら意味がないじゃん……。 #twnovel
10月13日〈サツマイモの日〉
庭の枯葉で焼き芋をした。匂いにつられて集まってきた子供の視線に耐えかね、芋をあげてしまった。結局、残ったのはひとつ。残念に思っていると猫がやって来た。焚き火で暖を取りにきたのか、火から少し離れた所で丸くなる。芋はなかったが心が温まった。 #twnovel
10月14日〈鉄道の日〉
列車に乗り込み窓際の座席に腰掛ける。頬杖をついて眺める外の景色は世界の法則を無視してめまぐるしく変わる。なんて呆気ないんだろう。切符を切りにきた車掌に聞いた。「この列車の終点はどこ?」「『メイニチ』駅です」パチン。小気味いい音で切符は切られた。 #twnovel
10月15日〈人形の日〉
年に一度、人形達が動き出す。ボサボサ頭の日本人形に手脚の無い金髪少女、瞳が取れたテディベア。皆一斉にそこを目指して歩き出す。どれもかつては人間に愛され、そして、捨てられた。ひび割れたガラスの瞳はただ暗い炎を映した。人々はまだ、「今日」を知らない。 #twnovel