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 飛竜士の装備は、第一条件として軽装である事が求められる。

 常に気を張る空中では、些細な事が騎乗者や竜のストレスになりやすく、長距離運搬時以外では必要最低限の装備で纏められる事が推奨されている。

 まず一番重量がとるのは、各々の武器であり防具であろう。命を護るのに必要な物なので、これは外す事は出来ない。

 飛竜の背にとりつけられた鐙と、専用の命綱も同様だ。不要な落下死を防ぐ為には、必要不可欠だからだ。

 鐙には特殊な巻き上げ装置が取り付けられており、いざという時はボタン一つで命綱を巻き上げ、吊るされた飛竜士をすぐさま騎乗状態に戻す事が出来る。

 これがあるとないとでは、生存確率が大きく変わってくるので重量を無視してでも取り付ける必要があるのだ。


 背中の荷物は、飛竜の種類や役割から上下するが、一般的には制限としては30㎏以下が推奨されている。

 気温が低く体力が奪われやすい空では、濡れながら飛行する事は命に関わるので簡単な着替えと下着類にタオル。

 不時着した時にどんな環境でも生き残る為の、ナイフと緊急医療パックと固形燃料。

 配給されている食料は、Kレーションと呼ばれる、身体を温める高タンパク質の食糧と、飛竜と人間どちらでも食せるカロリーが高いビター風味のチョコがついた飛竜士用の戦闘糧食である。

 カイロと排泄物を処理するビニールや紙類、後は双眼鏡や予備の備品とバッテリーの類だ。

 その他は、各々の役割に従い独自の兵器や兵装を持ち込んでいる。


 一番特異な兵装なのは、防壁装置を扱うメーレが頭に被った近未来的な補助演算装置が装着された兜だ。顔をスッポリと隠した兜は、視界はカメラで補っている。

 防壁装置とは、ちょっとした武装と分厚い鉄板が装着された小型のユニオンと呼ばれる無人ユニットの一種だ。

 普段はオートで編隊の周りを飛行し、敵対勢力を感知する探索ユニットとしての一面も持っている。

 本職の探索屋には負けるが、交戦が始まればユニットを自動制御にして仲間を護る防壁として機能させる事も可能だ。

 思考と操作のタイムラグをなるべく零にしなければ、敵の果敢な攻撃は防ぐ事は出来ない。

 そのタイムラグを緩和する為に、あの兜の演算装置が助けになっているのである。

 誰にでも扱える訳ではなく、適性と専門訓練が必要な専門職だ。

 

 また、メーレは医療系のスキルも持っている為医療道具も主には彼女持ちだ。

 すぐには使わない道具を、あまり重量制限が厳しくないロットに託してなるべく自分の竜の負担を減らす。


 「装備良し!武装良し!鐙良し!命綱良し!点呼!1!」

 「2!」「3!」「4!」「5!」

 「点呼良し!第三班C・ダイヤモンドより本部SBRに伝達!現在時刻零九零八!出撃許可を願いたい!」

 『本部よりC・ダイヤモンドに伝達。出撃を許可する。気負わずやれ』

 本部からの無線が全員に伝わり、各々が頷いた。誰もが適度に緊張しているのか引き締まった良い雰囲気を感じる。

 「出撃許可良し!第三班C・ダイヤモンド!これより出撃する!」


 矢印の先端のような編隊を組んで、五人の飛竜士が空に向け飛び立った。

 試験監督は本部のモニターと、どこからか肉眼で監視しており、編隊を崩さず美しく飛ぶ事も意識しなければならない。

 三月に一度やる祭典では、飛竜士達は僅かも乱れない編隊飛行や曲芸乗りを一般人に披露して楽しませることがある。

 『連携が取れるくらいある程度で形が整ってれば…』なんて飛び方は減点対象になるのだ。

 同一種の飛竜で飛ぶなら難度は低いが、バラバラの飛竜種で美しく飛ぶのは難度が高い。だからこそ、成功すれば加点も大きいのだ。


 眼下で家々や商家が小さく見えなっていく。

 中には屋根によじ登り、此方を眺めている小さな子供の姿もあった。

 ロットとメーレと俺も、過去にはああしてポイントAから飛び立つ候補生を憧れと共に見送ったものだ。

 似たような視線を送られているとしたら、尚更無様な飛行は見せる事は出来ない。

 可能であれば、一番に帰還して良い所を見せたいものだ。

 この試験は時間制限があるだけでレースではないのだが、一番早く帰還出来たら、ナコルのいる第五班を迎える事が出来るかもしれない。

 焦るのはよくないが、試験が上手くいった喜びを分かち合えたならなんと素晴らしいことか。


 そうとなれば安全かつ迅速に、大雲海に存在する小さな浮き島が目印のポイントBに向かう必要がある。

 大海雲のほんの入り口近くだとしても、小型の翼竜が縄張りに入って来た飛竜隊を攻撃してくる可能性は充分にあるだろう。

 勿論これは、それこみの試験であるので、不測の事態とはならず冷静に対処する必要がある。

 戦闘か撤退か、状況をよく見て判断しなければ時間を食うばかりか、減点対象にもなりかねない。

 一番運の良いパターンは翼竜に遭遇しないことだが、余程運が良くなければそのパターンはありえないだろう。

 三年前の候補生の一班が最後に遭遇しなかったグループだというので、期待は最初から薄い。


 取り敢えず今は、こお恵まれた天候に感謝する事だ。太陽が輝き温度視界共に良好。悪天候の中試験をするはめにならずに済んだのだ。

 風雨の日は。アクシデントがおきやすい。対処する訓練は受けてはいるがそれに足をとられすぎると時間制限が重くのしかかってくる。

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