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『厄』という存在 1

 枕に顔を埋めながら考える。明日の事を考えると正直眠れる気がしない。

 

 第九十二期飛竜士士官候補生、識別番号15番であるトラ=リドルは、たった今巨大な人生の山場を迎えていた。

 地獄のような飛行訓練と座学を乗り越え、王国が認める竜士の称号、飛竜士の資格を受け取れるかどうかは明日の是非にかかっているからだ。

 

 大雲海の中を、記憶した複雑なルート辿りながら国境まで飛行して帰還する。だが、今までの個人試験と違い今度はチームでの資格試験となるのだ。


 いかに美しい編隊を崩さす、予測不能の事態を対処しながら目的地まで辿りつけるか。それは、編隊の先頭である部隊長の指揮の実力にかかっているだろう。

 

 第四班、チームネーム・C-ダイヤモンドの隊長。

 今までの成績と、個人実技の高さから教官に指名をされた役職は、彼の双肩に深く深く食い込んでいる。

 呑気な奴、例えばルルットなんかは、隊長指名は既に合格のだだのと言っていたが、そんな事は一切ない。むしろ逆だ。


 隊長として責務を果たせず、規定時間外帰還や帰還不可能状態にチームを陥れれば、これまでの個人実技の成績を爆撃するかのように木端微塵に砕け散る。

 トレーニングの時のような、交代制で隊長をしていた時と違うのだ。同じ釜の飯を食った、仲間達の全ての未来がかかっている。


 今年の夏に18歳になったばかりの餓鬼に、そのプレッシャーは重すぎた。まるで、物理的ななにかが背中にでもへばりついているかのようだ。


 「眠れねぇ…」


 こんな調子なのでは明日は危ないのだが、そうは言っていられない。

 消灯時間はとうに過ぎているが、トイレにでも行って用でもたして来れば少しは安眠出来るようになるだろうか。


 男子寮であるこの部屋は三人部屋で、入学式での適性検査からチームメンバーが割り振られ卒業まで固定となる。

 全てのチームは、男子三名女子二名の五人編成となっていた。


 男子寮では、二段べットが二つ用意されているが実質使われているのは三つのみだ。

 鼾が聞こえた、どうやらルルットは爆睡しているようだ。

 楽観的でマイペース、彼の性格が明日も維持されているなら皆の緊張を解く良いムードメイカーになってくれるだろう。


 扉を開け、暗闇の中を歩く。

 明かりは必要ない、既に眼球には明かりに頼らなくても、僅かな光から暗闇を見通す処置を受けていた。


 ネコの眼には輝板タペタムと呼ばれる層が網膜の下に備わっている。

 この層が光を反射するため、入射光と反射光の両方の光が網膜を通過することになり、わずかな光でも物を見ることができるのだ。

 人類はこの輝板と呼ばれる生態機関を、人工的に人間に応用出来る技術を既に開発している。

 

 だが、暗闇と明るみで瞳の大きさが変わると不都合が多い。

 よって学生は、昼夜問わず瞳を猫の目のように変化しない処置を強制的に受けさせられるのだ。

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