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クインテット。ナイツ 日常編  作者: 恵/.
N―好かれる。ナイツ
9/36

お誕生日クエスト 一の巻き


 ……別の日。


「プレゼント、ですか?」

 昼休みの教室にて、紗佐が疑問の声を上げた。

「敬語」

「す、すいません……」

 一片に指摘され、縮こまる紗佐。別にいいだろうに。ごちゃごちゃ言うなよ。

「飾闇代の誕生日が八月らしくてな。まだ早いとは思うが、今のうちから考えておこうかと思ったんダ」

「そう……なんだ」

 敬語にならないよう、気をつけて返答。

「でも、何でまた?」

「もう知ってるとは思うが、俺と飾闇代はあまり仲が良くない」

 闇代と一片が狼の家に下宿している事実は(主に氷室によって)クラス中に知れ渡っている。しかし、一片と闇代が口を利くところを見た者がいない。そのため、二人が不仲(それも、闇代が狼にべったりで嫉妬しているためなどと言う理由で)なのではと噂されている。

「とはいえ、この現状を維持し続けるのはよろしくないと思うわけダ」

「なるほど、それで誕生日プレゼントを」

 まあ、物でどうにかなるとは思えないが、いい案には変わりない。

「そう思ったんダガナ……。生まれてこの方、人に物を贈ったことがない」

「だから、私に相談を?」

「まだ、気軽に話せる人間も多くなくてな」

 それは単に人と係わろうとしないヒッキー型だからだろう。

「……」

 気のせいだろうか……今、物凄く睨まれた気がするんだが。

「気軽に……」

 一方の紗佐は、一片の言葉を反芻している。

「分かりました、頑張ります!」

 そして突然、両手でガッツポーズをする紗佐。何だか無駄に気合が入ってるな。

「敬語」

「あぅ……」

 出鼻を挫くな。

「そ、それはそうと、闇代ちゃんって何か好きなものとかあるのかな?」

「好きなもの?」

「プレゼントはその人が好きなものだとより効果的だから」

「飾闇代が好きなものと言えば……向坂狼ダナ」

 確かにそうだ。

「ということは、あいつへのプレゼントは向坂狼にすればいいのか?」

「いや、それは色々と問題ある気が……」

「そうか」

 大体どうやって渡す気だ。ロープで縛り付けて簀巻きの状態でプレゼントか。

「しかし、向坂狼の私物でもいいみたいダカラナ……。あいつの衣類でも何着かくすねるか」

「そ、それもだめじゃないかと……」

「むう」

 一旦、狼から離れろ。

「しかしそうなると、何を贈ればいいのやら」

「だったら、向坂君に相談したらどう?」

「向坂狼か?」

「向坂君が闇代ちゃんと一番一緒にいるし、色々知ってるんじゃないかな」

 つまり、紗佐に相談する時点で間違いだということか。

「確かに、飾闇代の誕生日を突き止めたのも奴ダ」

「俺がどうかしたか?」

 そこへ偶然、狼が通りかかった。

「こ、向坂君……!」

「丁度よかった。お前に聞きたいことがある」

「何だよ?」

「飾闇代はお前以外に何が好きなんだ?」

「は?」

 口を開いたまま硬直する狼。紗佐が事情を説明すると、狼も一緒に考え出した。

「まあ、あいつは意外と何貰っても喜びそうなんだけどな」

「そうなのか?」

「けど、子ども扱いされたり、体格のことを言われたりすると怒るから、子供っぽいものとかは止めたほうがいいな」

「子供っぽいのは駄目、と……」

 丁寧にメモを取る一片。案外几帳面のようだ。

「ああそれと、贈るならアクセサリーとかは避けたほうがいいかもな」

「何故ダ?」

「あいつの親父がそういうの作ってるらしくて、安物だとすぐにばれるからな。かと言って高いの買っても、あいつの好みに合わなきゃ意味ないしな」

「なるほど。アクセサリーも駄目、と……」

 メモがどんどん増えていく。

「候補に上げるなら菓子だろうな。それもとびきりうまいの。もしくは芳香剤とか。そんなにきつくない奴な。ラベンダーとかのアロマオイルだと安眠効果が期待できてなおいいかもだ」

「ふむふむ」

 参考になる意見はあっただろうか。

「ま、後は自分で考えなよ。まだ二月はあるしな」

 そう言って、狼はどこかへ行ってしまった。

「それで、これをどうしたものか……」

 自分で纏めたメモ書きを見て呟く一片。狼が色々な意見を次々と言ってったので、乱雑な状態になっている。

「まだ時間もあるし、じっくり選べばいいかと……」

「とはいえ、目星くらいはつけておきたい」

 物凄く意欲的だ。アグレッシッブ過ぎる。

「手を抜いては、意味が無いからな」

「でも、焦らずゆっくり検討したほうが、いいものが見つかると思うよ」

「……それもそうか」

「決まるまで、私も手伝うから、ね?」

 噛んで含めるように言い聞かせる紗佐。相手との信頼度で、ここまで対応が変わるのだろうか。

「では、厄介になるとしようか」

「はいっ」

 一片の、プレゼント選びクエストが、今ここでスタートした。

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