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クインテット。ナイツ 日常編  作者: 恵/.
P―繋がる。ナイツ
23/36

ちょい短いけど、きりがいいのでご勘弁


 ……男性客が帰宅した。


「ただいまー」

 彼の声に、家の奥から家族が次々と姿を現した。

「おかえりー」

「おかえりなさい」

「おかえり」

 出迎えたのは、夫婦と数人の子供たち。しかし、その中にあかりの姿はなかった。

「……あかり、まだ寝てるの?」

 彼の言葉に、出迎えた女性―――あかりの母は小さく頷く。

「ご飯も食べてないし、全然起きてこないの」

「そうか……」

 呟くように答える声は残念そうだったが、分かりきっていたことだからなのか、特に気落ちすることなく家に上がる。そして彼の向かう先は、やっぱりというかあかりの部屋だった。

「あかり、起きてるかい?」

 扉をノックし、部屋の主に声を掛けるが返答はない。無理にでも入ってしまおうかとも考えたが、もう夜なので寝てしまったのかもしれないと思い、結局彼はそのままあかりの部屋を後にしたのだった。



「あかり、起きてるかい?」

 部屋の中に、男性の声が響き渡る。

「……」

 しかし、あかりは布団を被ったまま出てくるつもりがないらしい。やがて、部屋の前にいた人が去っていくのが、気配で分かった。恐らく諦めたのだろう。また部屋に踏み入られなくて良かったと安堵する一方、少し寂しく感じてしまうあかり。天邪鬼なのは重々承知しているが、乙女心は複雑なのよと、誰にでもなく言い訳している。

「……寝よ」

 そう呟き、目を閉じるが、昼間も眠っていたせいか、中々寝付けないあかり。そんな中、頭を過ぎるのは、そろそろ行かないと授業日数が足らなくなるんじゃないかという、なんとも今更な心配だった。



  ◇



 ……閉店後の居酒屋『虹化粧』にて。


「ったく、結構うまくいかねぇもんだな……」

 テーブル席を布巾で拭きながら、狼は落胆したように声を漏らす。因みに、現在店内は彼と優の二人だけだった。闇代と一片は奥に引っ込んで、既に休んでいる。後片付けは色々面倒なので、慣れている狼が手伝うほうが楽なのだ。

「どうかしました?」

 故に、なのか。はたまた、久々に親子で二人っきりだからなのか。優は嬉しそうに、狼に問いかけた。

「ん? ああ、ちょっとな」

「もしかして、天野さんのことです?」

 さすがは子煩悩な親。我が子の考えることは全てお見通しらしい。

「折角アシストしたのに、天野さんには遠慮されちゃいましたけれど」

「やっぱ、気づいてて言ってたのか」

 狼も分かってたのね。……やっぱり、親子だな。血は繋がってないらしいけど。

「……まだ、関わるつもりですか?」

「ああ」

 優の問いに、狼は間髪入れずに答えた。それを聞いて、優は呆れ気味に溜息を吐く。

「我が子ながら、お節介が大好きなんですね」

「それもあるけどな」

 狼は布巾を畳むと、それを優に手渡し、続ける。

「なんかむかつくんだよ」

「むかつく?」

 さすがの優も、その言葉は理解出来なかった様子。狼は補足するようにこう言った。

「親も、兄弟も、孫思いの爺さんもいるのに、それが気に食わないみたいだからな。贅沢にも程があるだろ」

 それは、狼に血の繋がった家族が居ないからか。皮肉などではなく、本心からそう言っているかのようだった。

「そうですか」

 優は、それ以上何も言わず、坦々と後片付けを続けるのだった。

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