最近忙しいので短めにしときます
◇
……そして学校。その校門。
「うー、るー、ふー、きゅーん!」
闇代の十八番、愛情たっぷり渾身のダイブ。何故登校直後に? とか思ってはいけない。これぞ闇代クオリティ。
「……ふん」
「きゃっ!」
そしてそれを軽く躱す狼。流石に慣れたのだろうか。
「い、痛いよぉ、狼君……」
「知るか」
額を摩る彼女を、狼は冷たい視線で見下ろしている。
「もう、最近すごく冷たいよ? 狼君」
「お前がそこまでアホじゃなかったら、少しは違うんだがな」
そう言い放つと、彼はその場を離れた。
「待ってよぉ~」
闇代はそれを、必至になって追いかける。
……二人が教室へ着いた頃。
「あっ、狼に闇代ちゃん」
上風が、二人に気づいた。
「よう、上風」
「おはよう上風ちゃん」
「あんた達、ほんと仲いいわね」
「どこがだ?」
「いやあ、それほどでも」
まったく正反対の意図で、二人はその言葉を否定した。
「息もぴったりじゃない」
クスクスと笑う上風。対して狼は、心外だとでも言わんばかりに顔を顰める。
「お前、性格がどんどん婆臭くなってるぞ」
「そりゃどうも」
笑顔のままで、額に青筋を浮かべる上風。絵としては、とても恐ろしい。
「ったく」
狼は溜息混じりに自分の席に着いた。
「そんなに照れなくてもいいのに」
闇代も、自分の席に着く。
……数分後。
「……」
あかりが、教室に入ってきた。
「あっ、天野さん。おはよう。久しぶり」
それに、上風が気づいて、あかりに声を掛ける。
「……」
しかしあかりは、その傍を無言で通り過ぎようとする。
「どうしたの? 今日はいつもより早いみたいだけど」
「……」
上風は構わず話しかけるが、あかりは全力でそれを無視。自分の席に着くと、携帯電話(小型で高性能、大容量のスマートフォン)を取り出し、それに繋いだイヤホンを耳に挿して、音楽を再生し始めた。
「ま、いっか」
上風はそう呟くと、自分の席に戻っていく。どうでもいいのか? 妙にしつこかったのに。
「……」
あかりの目は伏せられていて、彼女の心は読み取れない。だが、その表情が少しだけ寂しそうに見えたのは、ただの錯覚だろうか?