表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クインテット。ナイツ 日常編  作者: 恵/.
P―繋がる。ナイツ
11/36

何か初っ端から重苦しい

 今回は本編のOから少し後の時間です。新キャラが出てきたり色々してますが、あまり気になさらぬようお願いします。

 ……赤い。赤が見える。いや、紅いというべきか。

 紅い海。骸の島が点々と浮かぶ、紅の海。砂の大地を侵食し、その紅を拡げていく。

 右手には、母の形見の小さな鎌。左手には、同じく形見の鏃。地面には、柄のない槍、前方後円墳のような鈍器、二つの円錐が連なった物体がそれぞれ転がっている。どれも、海の紅に濡れている。

 それと共に、他の感覚も戻ってきた。

 海の温度を感じる触覚。

 誰かの泣き声を聞き取る聴覚。

 生臭い匂いを嗅ぎ取る嗅覚。

 そう、俺は、


 こいつらを、殺した……。


  ◇◇◇


「……最悪の目覚めだ」

 狼は、よろよろと起き上がった。

 彼は先程まで、夢を見ていたようだ。

「最近、闇代が鬱陶しいからな……」

 思い出して、顔を顰める。

 そして狼は、着替えを始めた。



 ……一方その頃。


「……最悪の目覚めね」

 上風はむくりと起き上がる。どうやら、狼と同じ夢を見ていたようだ。

「何で、今になって……?」

 頭を振って、脳内の映像を振り払う。

「さっさと支度しよ」

 上風は、手早く着替えを済ませた。




 ……時を同じくして。


「……んっ」

 少女は身を捩り、ゆっくりと起き上がった。

「……」

 そして無言で、ベッドから出る。少女は手早く着替えを済ませ、部屋を出た。


「おはよう、あかり」

 台所から、女性が振り返る。少女の母親だろうか。

「……」

 少女は無言で食卓に着く。母親によると、名前はあかりというらしい。

「おはよー、おねーちゃん」

 あかりの隣から、可愛らしい声が聞こえてくる。この声の主は、あかりの妹だろうか。

「……」

 しかしあかりはそれにも応じない。

「おはよ、姉貴」

「おはよう、ねーちゃん」

「おはよう、あかねえ」

 彼女の弟妹と思われる少年、少女たちが次々と席に着くが、あかりは一切反応しない。

「おはよう、あかり」

 今度は男性。彼女の父親なのだろう。

「……」

 だが、あかりはやはり応じない。

「みんな、もう揃ってるな」

 最後に、初老の男性がやってきた。彼女の祖父だろうか

「おはよう」

「おはよ」

「おはよー」

「おはようございます」

 皆、口々に朝の挨拶を述べる。

「みんなおはよう」

 そしてそれに、笑顔で答える祖父。

「……おはよ」

 あかりは、ぼそりと呟く。

「おはよう、あかり」

 彼はそれにもしっかり応じる。

「あかりの学校は今日から再開みたいだけど、十分に注意するんだぞ」

「……ん」

 再開、というのは、暫く学校が休みになっていたからだろう。先日の某事件によって、念のために休校、となっていたのだ。事件の原因となる二人は既にこの町を出ているので、別に注意する必要はないのだが、事件に係わっていない彼らがそれを知る由も無い。

「結構大きな事件だったからな」

「近頃物騒、なんてもんじゃないわよね」

 両親の会話を聞き流しながら、朝食を黙々と口に運ぶあかりであった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ