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クインテット。ナイツ 日常編  作者: 恵/.
N―好かれる。ナイツ
1/36

日常の入り口

 これは本編のMの続きです。中身はただのサイドストーリーなので、ネタを楽しみたい方に。

 時間は流れ、六月半ばの放課後の教室。『クインテット・ナイツ』の集まりである。ただし、今日の登場人物は少し多い。


「あぁ~疲れた……」

 上風がどさりと椅子に座る。肩に手を回し、凝りを解しているようだ。

「相変わらずオヤジ臭いな、お前」

 彼女の隣の席に座る狼。彼の言葉に、上風はカチンと来た様子。

「うっさいわね。それもこれもあんたのせいでしょ」

「お前の仕事が多いのがか?」

 なるほど、『クインテット・ナイツ』の仕事だったのか。だがしかし、『クインテット・ナイツ』という大仰な名前の割りに、その仕事内容はとても地味だ。そもそも、ここ私立証耶麻学園に『クインテット・ナイツ』という制度が設けられたのは、頻発する校内暴力やその他風紀の乱れを是正するためである。一時期ほど校内の荒れていない今(しかも、狼が五月冒頭に引き起こした某事件によってクラスの殆どが大人しい状態で)それほど荒々しい内容の仕事があるわけない。従って、彼らの仕事と言えば主に雑務。それもクラス外のことばかりなので、狼とは何の因果関係もない。閑話休題。

「それもだけど―――」

「何々? 何の話?」

 にも拘らずそれを肯定した直後、氷室が首を突っ込んできた。

「あんたに話の腰を折られたんだけど」

「ごめんごめん」

 まったく反省していない様子で謝る氷室。彼はこれがデフォルトなので、今更誰も指摘しないが。

「ったく。あのね、狼のせいであたしがオヤジ臭くなったって言おうとしてたの」

「何でだよ」

 心外だ、と言いたげな狼。

「当然でしょ? 小さい頃からあんたの世話ばかりしてたから、こんな品の無い女に育っちゃったんじゃない」

「えっ、お前らそういう関係なの?」

「勘違いすんな」

 ずれた印象を抱きかけた氷室に、釘を刺す狼。

「こいつはただの幼馴染で腐れ縁だ。それと、こいつに品が無いのは最初に会ったときからだ」

「最後のは余計でしょ」

 いつも通りの放課後、そのワンシーン。今回は、こんな感じで進んでいくようだ。

「ねえねえ、何の話?」

 ここでようやく闇代のご登場。いつの間に狼の頭に乗っかっていた。

「乗っかるな」

「えー、いいでしょ」

「黙れ」

 首を振って闇代を振り落とす狼。振り落とされた闇代は恨めしそうに狼を見上げていたが、狼が無反応だったので諦めたようだ。仕方なく、彼の隣に座る闇代。

「で、何の話してたの?」

「こいつに品が無いって話だ」

「違うでしょ?」

 上風は鋭い目付きで狼を睨む。

「最後の部分はそうだろ?」

「ああもう、何でこんなに生意気になっちゃったのかしら?」

「さあな」

 上風は諦めたのか、以後それについては口にしなかった。



 ……数分後。話題は、狼達の昔話になっていた。


「へぇ~。そんじゃあ、お前らは五歳からの付き合いなんだ」

 感心する氷室。

「まあな」

「確か、あたしが最初に見たあんたの顔は、泣き顔だったわね」

「品が無いのはその頃からだったけどな」

 二人の張り合いは継続中。いい加減にすればと思う。

「その頃からこんな感じなの?」

 闇代は興味津々のようだ。狼のことを、もっとよく知りたいのだろうか。

「昔はとっても可愛かったのに、今はこんなになっちゃって」

「皮肉っぽいとこは相変わらずだけどな」

「多分、そうだと思う」

 口論に夢中な二人に代わって、氷室が答えた。

「ふ~ん。何かいいなぁ、そういうの」

「「よくない」」

 狼と上風の息のあった台詞。完全にユニゾンしてたぞ、今の。

「要は、喧嘩するほど仲がいいってことか」

 氷室にしては、比較的まともな解釈をしたようだ。

「やっぱりいいなぁ」



 ……更に数分後。


「あれ、紗佐ちゃんに戸沢っちじゃない? どこ行ってたの?」

 氷室の目線の先には、紗佐と戸沢がいた。二人とも、今し方教室へ入ってきたようだ。

「単なる雑用さ。それよりも」

 戸沢は眼鏡の位置を直しつつ言うと、

「これは、何の真似だい?」

 彼の目線の先には、床に横たわる狼、そしてその上に伸し掛かっている闇代があった。いつものパターンだろうか。

「そう思う前に助けて欲しいんだが」

 狼は恨めしく戸沢を睨む。しかし、彼は狼を蔑むように一瞥した。

「こんな昼間からそんな破廉恥な行動に、しかもこんな所で行う輩は、先生に報告しなければ」

「だそうだ。と言う訳で、さっさとそこをどけ」

「やだ」

「おい」

 彼女の何かに火がついたようで、今にも描写が(レーティング的な意味で)躊躇われるような行動に移ろうとしていた。

「だいじょうぶ、安心して。優しくするから」

「やめろって!」

 狼は今すぐにでも逃げ出したいのだが、霊術で体が強化された闇代には敵わない。実際、闇代に力ずくで押さえ込まれたせいで今の状況に至ったのだ。

「全部わたしに任せてくれればいいから」

「良くないっての」

 さて、ここからの描写をどうするか……。困ったものだ。

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