1-5話 討伐
午前中に書いたものが消えてしまって書き直す羽目になりました><
※評価してくださった方、お気に入りに追加してくださった方ありがとうございます。
「どうしてこうなった…」
ゴースト五体に囲まれて、私は心の底からつぶやいた。
「大丈夫。お兄ちゃんは私が守るから」
私の一言を勘違いしてとらえた妹が大剣を構え答える。
「…本当にどうしてこうなった…」
~数日前 王都 冒険者ギルド~
「ほらできたよ。確認しておくれ」
エリさんができたてほやほやの依頼書を見せてくれる。
それを受け取り確認する。
-討伐依頼書-
期限:なるべく早く(本日から10日以内なら追加報酬あり)
討伐対象:ビルダー
場所:南の森 ゴースト発生地
内容:呪いを行使しているビルダーを討伐してほしい
補足:南の森の他の魔物を討伐してくれるとうれしい
「最後の一文以外は問題ありません」
そう言ってエリさんに戻す。
最後の一文は私からの依頼にはなかったはずだ。
「あぁこれかい?これは冒険者ギルドからの依頼でね。報酬はこちらで出すから一緒に書かせておくれ」
エリさんが申し訳なさそうな顔して頼んでくる。
「新たに依頼書を作ったほうがいいのでは?」
「これ単体の依頼書ももちろんあるさ。けれどもやれそうな冒険者が今少なくてね。別々にやるにはちょいとばかし効率が悪いのだよ」
「逆を言えばそっちを受けている人に一緒に受けてもらうでもいいのか…」
「そう言うと思って実はもうできてるのだよ」
そう言って、もう一枚の討伐依頼書を見せてくる。
私が許可しなかったらこれをどうするつもりだったのだろうか?
「まぁこれで後は受けてくれる人を待つだけですね」
私はそう言って水を飲むのに使っていたコップを洗いに行く。
このギルドでは依頼書を作っている間、水をただで飲めるのである。
しかし使ったコップは自分で洗って返すのがルールである。
「そうだね。あんただけじゃ討伐は無理だからねぇ」
何か嫌なことが聞こえた気がした。
「…疲れているのかな…」
「なにいってるんだよ。若いもんが。私が若いころは3日寝なくても問題なかったよ。馬鹿なこと言ってないで討伐しに行く準備しておいで」
私の耳は正常だったらしい。エリさんがついにぼけた
「…エリさん。私は知識以外オールGの白種ですよ」
「ほぉ知識があると思ったが、やっぱりG意外だったか」
エリさんはわざと驚いたような顔をしていた。
ギルドカードは特定の場合以外は見せる必要はない。
これは製作したところも同じである。
冒険者ギルドでは難しい依頼などを受けるときに提示が求められることはあるが、私のように門を出てすぐのところに生えている植物を採取するだけならば開示を求められることはない。
そのためエリさんにはギルドカードの名前、種族、年齢(この3つはギルド保管の帳簿に記載するため見せる必要がある)以外は見せたことがない。
「ええですから知識以外がオールG、しかも盗賊も倒せないような白種の私がいっても足手まといでしょう」
「それも一理あるが、今ここにいるものでビルダーとゴーストを見分けられるものはいないよ」
そう言ってエリさんはため息をつく。
私は普段よりにぎやかいギルドの中を見る。
いつもに比べて未成年もしくは成人したての若者が多かった。
まぁ私も成人まだそんなたってないけどね。
「今日は国立第一騎士学校の実戦試験の依頼受付日でね。普段いる連中たちはみな出て行ってしまったよ」
王立第一騎士学校の実戦試験は卒業試験の実践試験の一つである。
冒険者ギルドか騎士団に依頼される実際の討伐任務におもむき、解決するのが目的である。
評価は学校の先生や騎士、冒険者がついて採点する。
依頼破棄は有無言わず失格になる。
この試験が行われると若者がだらだらと依頼掲示板前に張り付いて離れない上に、運よく取れても貴族の子供の生徒が「あれは俺がやろうとおもっていたのに」などというので、一般の冒険者には不評である。
冒険者からの意見もあり、冒険者ギルドは生徒が任務を受けられる日日と時間を決めたのである。
そのため多くの冒険者はこの時間をさけるのである。
エリさんが生徒をかき分け、新たにできた討伐依頼書をはって、生徒からの質問に答えて帰ってきた。
質問していた生徒はなぜか顔を青くしていた。
「この中にはこの依頼を完遂できる者はいないのに見に来るなんて、実力も知らないお坊ちゃんしかいないんだねぇ」
そう言ってエリさんはため息をつく。
「まぁ実際受けるっていって聞き分けがないのであれば問題ないのでは?」
私がそう言うとエリさんは首を振ってこたえる。
「どいつもこいつもいざ受けるとなるとビビッて前に出られないだけさ。そのうちでてくる北の森に出る野良犬退治の依頼を待っているのさ。実力のある者たちはもう皆でていったしね」
因みにアイナは西の森(この付近では一番強い魔物が出る)に出るレッサーオーガの討伐におとといから行っているらしい。
「あんたもこんなところで座ってないで、さっさと支度しておいで。早ければもう少ししたらこいつら討伐できそうな生徒が帰ってくるから、その子たちが帰ってきたら出発だよ」
そう言ってエリさんは私を外に抛り捨てた。
神殿に戻ってそのことを伝えると司教様は
「そうでしたか。では私からこれを貸しましょう」
そう言って透明の手袋(装備するとスキルを使わない限り魔物からは発見されなくなるアイテム)を貸してくれた。
逃げ場を絶たれた私は盗賊退治の報酬(アイナが女性を助けた分を受け取らないとお兄ちゃんから離れないからといって、くれたもの。うけとったらなぜかさびしそうな顔をしていた)を使って装備を買いに行った。
「革の防具セットとメイスで2000†になります」
代金を冒険者ギルドの隣にある雑貨屋の店主に払い、冒険者ギルドに戻った。
冒険者ギルドに入るとエリさんと話す黒髪に黒い角をツンと尖らせた見慣れた後ろ姿を発見した。
「ん?」
「どうしましたアイナさん?」
「お兄ちゃんの気配」
そう言って後ろを見て私を見つけたアイナは
「お兄ちゃん!」
そう言ってこっちに走ってきた。
「ぐぇ」
訂正しよう。あの時以上の衝撃で私はその場で意識を失った。
「トニック」
私の周りに青い魔方陣が展開し私は気が付く
「目が覚めたみたいだね」
エリさんが顔を覗き込んでくる。
体を持ち上げて横を見るとエルフの女性と落ち込んだアイナがいた。
《トニック》の魔法はこのエルフの女性がかけてくれたようだ。
「ありがとうございます」
私がそうお礼を言うと、エルフの女性は険しい顔をして
「もう立てるはずです。さっさと立たないと通行の邪魔ですよ」
そう言って受付の方に歩いて行った。
「お兄ちゃん大丈夫?」
「ああ。あの子はアイナの友達かい?」
「うんウルカナちゃん。学校でもかなり優秀な子だよ」
そう言ってウルカナさんを紹介してくれる。
そんなやり取りをしているとエリさんが
「さぁ起きたんならビルダー討伐に行っておいで。」
「エリさん。あと一人来ていませんが?」
「なにいってんだい。さっきあんたが起こした白種が最後の1人さ」
そう言ってエリさんはウルカナに最後のチームメンバーを紹介した。
「えええええ。お兄ちゃんはあぶないよ」
「あんな奴は足手まといです。危険です」
そう言ってアイナとウルカナさんはエリさんに抗議する。
そうすると私たちの後ろからきいたことのある声がした。
「なるほど。敵を鑑定できるものってのは坊主だったか」
ガドロフさんが近づいてくる。
「先生からも何か言ってください」
ウルカナさんはガドロフさんに抗議する。
いいぞもっと言ってやってください。
「坊主の知識は大したものでねぇ。腕っぷしはいない方がましだが、今回はスキルさえ使わなければ敵からすればいないのと同じになれるから問題ないだろう」
そう言うと私の手についている手袋を指さす。
アイナはなるほどーといってはいたが、納得できてないみたいである。
「しかしこいつがもし間違って攻撃したら意味がないです。この前も勝てないとわかってて盗賊に挑んだって聞きますし」
「あれは一刻を争う事態だったからなぁ。そんな事態がなきゃ問題ないだろう。それにもう受けちまったんだからここでやめれば依頼破棄になるぞ」
そうガドロフさんが言うとウルカナさんは難しい顔をした。
卒業がかかっているから依頼破棄だけは避けたいようだ。
「お兄ちゃんが危ない目に合うのなら依頼破棄のがいいです」
アイナが迷いもなくいう。
さすがに彼女の私的感情でウルカナさんを巻き込むわけにもいかないので私はアイナに向かっていった。
「アイナが依頼破棄しても私は別の人たちと行くことになるだけでなんも変わらないよ」
そう言うとアイナがそうだったと顔をした。
そのあと少し考えてなぜか照れて
「しょうがないなぁ。お兄ちゃんは私が守るね」
そう言ってきた。
何か勘違いしてるような気もするがここは無視しておく。
「まぁアイナもこういってるし、嬢ちゃんも諦めな」
ガドロフさんがそう言ってウルカナさんの首を縦に振らせた。
数日後、私たちは南の森の目的地に着いた。
途中黄緑草の群生地を発見し採取したり(ウルカナさんが間違えて大量に猛毒を持つ偽黄緑草を積んでいた)、グリーンウルフ(一般的な魔物は白→黄→青→緑→赤→黒の順で強くなる)の群れを倒したりしていたので予定よりも少し遅れて到着した。
「霧がかかってますね」
ウルカナさんがそうつぶやく。
「ただの霧ではありません。これは瘴気です」
私がそう言って注意を促す。
瘴気とは魔物の力を高める空気である。
その反面、知的行動が少し抑制されて狂暴化する。
もともとはこの世界とは別にすぐ近くの平行世界(第二の始祖神が生まれたとされる世界)である魔界の空気だといわれている。
第一の始祖神を信仰する者にとっては害になるが一定レベル以上であれば問題ない。
ちなみに私は第一の始祖神の信仰者ではないので問題ない。
「これが瘴気か…」
アイナはそう言って瘴気を吸い込んでみる
「アイナ。いくらきかないからといって多量に吸っていいわけではないよ」
因みにアイナも水神信仰のため多量に吸ったからといって問題はないわけではない。
有角種とライカンスロープは信仰と関係なく種族固有スキル(その種のみ使えるスキルで条件さえ満たせばいつでも使える)である《バーサーク》や《ベルセルク》が発動してしまう。
「えへへ。ごめんなさい」
そう言ってアイナは舌を出して謝る。
「さすが坊主だな。これが瘴気だと気が付くとはな。見たことあるのか?」
瘴気は基本霧と見分けがつかない。
上級動物鑑定士Lv10で覚える自動発動スキル《妨害結界鑑定》がなければ見抜くことが難しい。
一応狂戦士(傭兵の上級職)Lv10で覚える常時発動スキル《戦場の感覚》を覚えた後1回でも瘴気を経験していれば2回目からは分かる。
「私には《妨害結界鑑定》があるので」
そう言うとウルカナさんは驚き、ガドロフさんはやはりなという顔をした。
「まぁここで出てくるゴーストとかには注意してください」
そう言って注意を促した途端ウルカナさんの横からゴーストが襲ってきた。
ウルカナさんは素早く攻撃をかわし腰に差してある短剣を抜いて応戦に出る。
「ゴーストは物理攻撃がほとんど聞きません」
私はウルカナさんに注意を促すが、ウルカナさんは無視して攻撃を繰り出す。
ゴーストは一刀両断される。
「ふん」
そう言ってウルカナさんは敵に背を向けたまま帯刀しようとする。
しかしゴーストは再生をはじめウルカナさんに襲い掛かる。
「アイナ赤魔法。すぐに使えるやつ」
大剣を抜いて援護に向かおうとするアイナに命令をする。
アイナは詠唱破棄して《ファイアーボール》を12個作り出す。
「いっけー」
そいってファイアーボールをゴーストの一点にめがけては放つ。
魔法を一点にめがけて放つのは魔法クリティカルというもので、一個上のランクの魔法と同等の威力が出せる(ファイアーボールの魔法クリティカルはフレイムボールである)。
実際のゲームではタイミングよくボタンを押すので、慣れてくると常に出せるもので、バランス崩壊をよく起こした。
そのためゲームが開始してからある程度するとこのクリティカルはなくなった。
しかしこの世界では存在している。
勢いよくゴーストは燃えて、跡形もなく消えていった。
火が消えた後ウルカナが乱れた服装を直し
「アイナさんありがとうございます。助かりました」
「お兄ちゃんが教えてくれたからだよ」
「いえ、実際撃ったのはアイナさんです」
そう言ってウルカナさんはアイナだけをほめようと頑張る。
「クレナの忠告がなきゃアイナも大剣で戦闘しようとしたしな。今回はクレナの知識に助けられたな嬢ちゃん」
ガドロフさんがウルカナさんに忠告する。
「確認しておきますが、ゴーストとビルダーには物理攻撃がほとんど聞きません。しかし弱点である赤魔法はかなり効くのでこれからは赤魔法中心に攻撃していってください。」
さすがお兄ちゃんといってアイナは尊敬のまなざしで私を見てくる。
「期待しないが、クレナは赤魔法使えるのか?」
「すいませんガドさん。一部の神官魔法以外は使うだけの魔力がないです」
そう言って私が答えるとガドロフさんはやっぱりなという顔をする。
途中中級者のレベル上げに使うと思われるゴーストも多量に狩りながら、奥の方に行くと瘴気が一段と濃い場所に出た。
「あれ?」
アイナが前方に何かを見つける。そこにはゴーストが20匹以上、ビルダーが3匹いた。そのうち1匹が今回の討伐目標である。
「まずいな。あの中に今回の目標がいます」
私は3人に向かっていいうと、アイナが
「あいつ?」
といって当たりの1匹を指す。
そうとうなずくとアイナはよーしと気合を入れて1歩前にでる。
あれ?アイナさん、相手はたくさんですよ、一歩前に出ると見つかってしまいますよ。
ゲームでは1つの戦闘画面で最大15キャラまでしか配置されない(例外もある)。
理由は処理落ちしたりすると困るからである。
しかしこの世界には処理落ちということがないので戦闘に参加してくる敵キャラの制限はない。
敵は多いし、ただでさえゴーストを狩りすぎているのでそろそろ狩るのをやめないと中級者の冒険者から苦情が出るかもしれない。
「大丈夫お兄ちゃん。あいつらなんて簡単に倒せるから」
アイナとウルカナさんなら本当にできそうで(ガドロフさんは採点者なので基本手を出さない)怖いのである。
あぁ中級冒険者さんごめんなさい。
そう心の中で私は謝っている最中に、彼女たち2人はゴーストたちの群れに突入するのであった。
「どうしてこうなった…」
ゴースト五体に囲まれて、私は心の底からつぶやいた。
「大丈夫。お兄ちゃんは私が守るから」
私の一言を勘違いしてとらえた妹が大剣を構え答える。
「…本当にどうしてこうなった…」
途中仲間のピンチを嗅ぎ付け参戦した多くのゴーストたちごと目標を駆逐し、残った五体も今神のもとに旅立った。
アイナはいとも簡単にゴーストを滅ぼした(ウルカナさんは結構ギリギリっぽい)。
出発前にこっそりアイナに作らせた上級ポーションをウルカナさんに渡し(本人は嫌がったがアイナが飲むことを進めたため受け取った)、目標撃破を確認してガドロフさんがいった。
「さて、目標も討伐したし戻るか」
「まってください。瘴気が出ている穴がちかいのでついでですからうめちゃいましょう」
もともとこの場所に瘴気が出てること自体がおかしいのだが、調査のためにこのままにしておくとそっちの方が被害が大きくなりそうなので提案してみる。
「クレナはふさげるのか?」
「私では無理ですが、アイナの《ストーンレイン》を穴に向けて放てば埋まります。穴の場所もわかっていますからちゃっちゃとやって戻りましょう」
アイナがさっさと穴をうめて、呪いにかかっているミラルダさんも心配なので帰還の指輪でさっさと戻った。
~某国~
???「う~ん」
???「浮かない顔してどうしました?」
???「"北の森"にはった瘴気がつぶされたのよ」
???「まさか。第一の始祖神を信仰するものでは瘴気の穴を発見するのは難しいはず」
???「たぶん裏切り者たちの仕業ね。まぁ計画に大きな支障はないし、多少は成果もあったから良しとしますか」
アマ「次回のクレナちゃんはついに自分の力が解放され世界でで一番強い冒険者になり、第二の始祖神信仰国に攻め入ります。そこで何が待ち受けているでしょうか?」
クレナ「お姉さま。真面目に次回予告してください。」