3-5話 山狩り
予定ではこれ入れてあと2話で3章終わりです。
また、おまけは来年入れる可能性が高いです。
山狩りを開始してから3時間。
この3時間で私がやったことは
黄ゴブリン(Lv100くらいで倒せるモンスター)から逃げる。
赤目子鬼(Lv150くらいで倒せるモンスター)から隠れる。
薬草を見つけて摘み取る。
ホワイトウルフリーダー(Lv70くらいで倒せるモンスター)をぎりぎりで倒す。
赤い爆裂玉(実がつぶれると爆発する危険な木の実)を見つけ大量に採取。
である。
「おい。クレナ本当にそれ危なくねぇよな」
沢山の爆裂玉をさしながらドロッスさんが10分おきぐらいに聞いてくる。
爆裂玉はアルコール水(旅をするときに使うもので、水より多少腐りにくい)につけてある。
アルコールが3%以上のアルコール水に漬けると爆裂玉は爆発しない。
さらにアルコール水は実の成分が溶け出し、その実の色と同じ魔法が一定時間威力が上がる。
この調子なら1時間つければいい魔法薬になるだろう。
「大丈夫ですよ。むしろこれにより魔法薬ができますから」
「でもなぁ」
また何かドロッスさんが言いかけたところで
「ドロッス。右に何かいる」
オーツラムさんが言う。
ドロッスさんは条件反射のような素早さで右のほうに特攻している。
今までの敵との遭遇からして慣れたが、オーツラムさんが敵を見つけ、ドロッスさんが特攻するのがこのPTの戦い方らしい。
「倒れろこのデカブツが!」
ドロッスさんがホワイトトロールに強い一撃をかます。
その周りにいたレッドレッサートロールはリューゲさんとオーツラムさんとジードさんが行く。
残った私は物陰に隠れてハクは護衛として私の近くにいる。
「なんとかなったな」
ジードだけが息が上がっていた。他の3人は汗すらかいてない。
「にしてもホワイトとはいえトロールですか…」
「トロールくらい普通にいるだろう。それともクレナは何か引っかかるのか?」
この山はレザースターがある山脈の一つってこともあり、トロールは普通に表れる場所ではある。
しかし今回みたいにレッサートロールとトロールが一緒に行動することは珍しい。
「はぐれトロールならまずレッサーと一緒には行動しません。そこから考えられることは、レッサーのいる場所に何らかの異変があったか、このトロールがレザースターから来たものかのどちらかになります」
「確かにこの山でレッサーと一緒に歩いてるトロールは珍しいな」
ドロッスさんが私の指摘にうなずく
「リューゲさんはこの状態をどう思いますか?」
「…少なくてもこのトロールははぐれではないであろう。武器が良い状態のものだしな」
「うげぇ。魔軍もいるのかよ…」
ドロッスさんが言った魔軍とは第二の始祖神信仰国の軍団のことを意味する通称である。
さて、問題はなぜ魔軍がいるってことかである。
このあたりは、産業的にも軍事的にもあまり意味がない場所である。
現に王都に近いとはいえレザースターと王都の距離とくらべると2倍近く離れている。
また道は石っころだらけで整備もされてないので大軍を率いるのは難しい。
ゲームでもここは経験値の悪い野生のトロールが出るくらいでほとんどの冒険者が寄り付かなかった。
来るとしたら爆裂玉をとりに来るくらいだろう。
「まあ考えてもわからないものはわかからない。警戒を強化しつつ行こうか」
オーツラムさんの一言で皆出発した。
「何であんなのがいるのかねぇ?」
ドロッスさんが私に聞いてくる。
私たちが隠れてる前にはオーガが1匹、レッサーオーガが4匹いる。
ハクとジードはさっきから震えている。
「あのオーガの背中を見るとレザースターから来たことが一目瞭然ですね」
「あの模様は『暁の解放』だったか?」
「『明けの解放』です。しかもあのオーガは5番隊隊長でしょう」
『明けの解放』とは第一の始祖神の洗脳を解き、生物を開放することを目的とした第二の始祖神信仰国にある傭兵軍団である。
傭兵団としてはとても有名である。レザースター防衛戦では全隊長が集結したため敗北したとまで言われている。
なのにオーツラムさんみたいに暁の解放とよく間違われる。
「どうやら黒いドラゴンを探しているみたいだな」
リューゲさんが一言いう。
さっきから黙っていると思ったらどうやら妖精の聞き耳を使っているようである。
妖精の聞き耳は緑の高位魔法で遠くの音を聞くことができる魔法である。
上級者が使えばほとんど気が付かれることなく会話を盗み聞くことができる。
「この前出たのは黒ではなかったはずだから、ほかにいるってことか?」
「それを調べるのが今回の任務でしょうが」
ドロッスさんの質問に突っ込みを入れるオーツラムさん。
この状況でも落ち着いています。
「向こうもただの証言らしい」
「個人的にはただの証言ごときに隊長が出てくるとは思えません」
「クレナの言うとおりだな。向こうも証言とはいえ何かつかんでいるに違いない」
「まぁここは引くのが妥当だろう」
オーツラムさんの提案に皆頷き、撤退しようとする。
「うわっ」
焦って動いたジードさんが滑って落ちた。
「くそっ」
ドロッスさん、オーツラムさん、リューゲさんは戦闘態勢をとる。
ハクは気が付かれたことにビビッて動けなくなっている。
「ほう。こんなところにゴミがいたとはおもわなかった」
レッサーオーガの1匹が近づいてくる。
「まて、お前だけでは無理だろう。後ろの雑魚はともかく前の3人はかなりのやり手だ」
隊長オーガが武器を持って立ち上がる。
「ほう。敵とはいえ隊長に褒められるとは嬉しいねぇ」
ドロッスさんが武器をしっかり構えなおしながらつぶやく。
「ただのバカではなさそうだ。さて、仕事が残っているからとっとと片づけさせてもらおう」
そういってレッサーオーガ4匹が突っ込んでくる。
「リューゲさん」
そう叫んでリューゲさんに漬けておいたアルコール水の1本を投げ渡す。
受け取ったリューゲさんを見た後、急いでジードを起こしに行く。
後ろではレッサーオーガ4匹に対し、オーツラムさんとドロッスさんが応戦している。
私も急いでつけたアルコール水を飲む。
体の内側から熱くなるのを感じてカンテラを出す。
「わが魔力を食らい、形を作れ。わが火の守護獣よ、姿を見せろ」
召喚獣を呼ぶとそこには青い炎のイノシシがいた。
うり坊ではなく立派なイノシシだ。
「行け」
召喚獣に命令を出す。
イノシシはものすごい勢いでレッサーオーガに突っ込む。
「この。邪魔しよって」
レッサーオーガの1匹がイノシシを思いっきり叩くと、イノシシは煙を出して消えた。
「よくやったクレナ。空間を燃やせ!天界の守護獣よ」
リューゲさんの詠唱が終わると空から大きな火の鳥が現れる。
守護獣の中でもトップクラスの守護獣で、リューゲさんがチートといわれる原因になったものである。
リューゲさん自体は上級魔法使いのため、上級のプレイヤーでも太刀打ちできるのだが、彼の召喚する召喚獣がほぼ彼と同じ強さである。
さらに召喚獣は魔力がある限り呼べるので、彼は召喚獣を3匹呼ぶのである。
「現れろ大地の神獣」
大きなモグラが勢いよく地中から出てきた。
「岩を砕け風の旅人」
突風にのって馬が走ってくる。
召喚獣3匹とオーツラムさん、ドロッスさんがレッサーオーガと戦う。
「どうやら俺の敵はお前らみたいだな」
オーガがリューゲさんと私をみながら突撃してきた。
アマ「クレナちゃん絶体絶命の状態。どうする」
アイナ「次回クレナ大勝利」
クレナ「…!?」
アマ「ネタバレ注意です」




