3-2話 聖剣ザ・サード・アガペー
過去作の訂正はもうしばらくお待ちください。
アーリアさんはさっきから暴走してもう手が付けられなくなっていた。
ハクは恐怖で涙目になっていた。
その顔のかわいさは、アーリア暴走特急の燃料になっていた。
「あのー…アーリアさん…」
「ハク君。今日から家にすまない?」
「…あのー…」
私の声も届いてない。
私が途方に暮れていたその時、後ろから女性の怒鳴る声が聞こえた。
「アーリア!!!」
ギルド内が静寂になる。
部族内の地位と家を示す独特のフェイスペイントを入れた女性が受け付けに歩いてくる。
その顔は鬼も逃げ出すほどの恐ろしさだった。
彼女は数日前から依頼を受けて出ていた冒険者で、今帰ってきたらしい。
「アーリア」
彼女はゆっくり息を吐きながら静かにけれどしっかりとした言葉を発した。
「お…おねえちゃん…」
アーリアさんは今にも泣きそうな顔していた。
「仕事をさぼって何しているのだ?」
アーリアさんのお姉さんであるオーラツムさんは話を続ける。
「ただでさえ人がいないのに、あなたが遊んでいるとはどういうことだ?」
「えっと…あの…」
アーリアさんは答えられなくなっていた。
「クレナすまないな。出来損ないの妹で」
オーラツムさんが私に向かって謝りながらハクを取り上げ、私に返してくれた。
「君も大丈夫だったか?」
「あ、ありがとうございます」
ハクがお礼をする。
オーツラムさんはそれを見て笑顔を見せた後、恐ろしい顔してアーリアさんのほうを見た。
「ぁぅ…ぇぅ…」
何か言おうとしてはいるが、何も出てこないアーリアさん。
「ここは素直に謝っておくべきだと思うよ。ハクとオーツラムさんに」
私がマーマン語で話しかける。
マーマン語は発音が難しい…というより発音しているかもわからないような音で発せられる。
このためマーマン以外で話せる人は少ないうえに、マーマン語を理解できる人も少ない。
このギルドはトップがマーマンということもあり、受付嬢はみなマーマン語は理解できる。
オーツラムさんは冒険者で、マーマン語は分からない。
このためオーツラムさんにばれずにアーリアさんにアドバイスができる。
ちなみに私は聖剣を手に入れた後、様々な文献を読むため様々な言語を読めるようにした。
現在会話および読解ができるのは、カルデリナ語・旧カルデリナ語・コボルト語・マーマン語・ドラゴン語・ハーピー語である。
「ハク君ごめんなさい。おねえちゃんごめんなさい」
涙目になりながらアーリアんさんが謝る。
オーツラムさんの目頭が軽くひくつく。
「クレナさんごめんなさい」
「…」
オーツラムさんはジードも謝る対象だと思っていたらしいが、ここでドロッスさんがオーツラムさんの肩をたたきながら
「オーツラム。そこらへんで許してやれ」
「ドロッス。しかしだな…」
「そいつはアーリアを口説いてただけだし、問題ないだろう」
そういってドロッスさんがジードをにらむ。
「ふむ。そうなのか。にしてもここらで見かけない顔だな。こいつもそっちの白犬も」
そういってジードとハクをみる。
「は…初めまして。アマ神殿で働いていますコボルトのハクでしゅ」
緊張のあまりかんだ。
「ハクは冒険者登録しに来たんだ。一応これから2人でゆっくりと依頼をこなしていく予定さ」
私が言うとオーツラムさんが少し驚く。
しかしすぐに顔を戻し
「私はオーツラム・ウルルだ。私とアーリアはケーナ司祭が院長をしている孤児院で育った姉妹だ」
そういって手を差し出す。ハクが手を握り返すと
「なかなかさわり心地のいい肉球だな」
そういって肉球をぷにぷにし始めた。
アーリアさんがおねえちゃんだけずるいという顔で見ている。
肉球さわりもほどほどにしてジードのほうを見た。
「わ…私はジード・ラジアータ。アドド国の冒険者ギルドからきた」
そういって手を差し出す。
オーツラムさんはその手を強く握る。
「いててててててて。イタイイタイ」
「なんだ。アドド国から来たから強い者かと思ったらそうでもないな」
アドド国は海に面している国で、この大陸の第一の神信仰国最後の砦とも呼ばれる。
ここを落とされるとこの大陸からの脱出が難しくなるのでそう呼ばれている。
そのためアドド国は騎士や冒険者の育成を重点的に行っており、アドド国は大陸最強の騎士などが生まれやすい。
「確かに、オーツラムごときの握力でここまで痛がるとは軟弱だな」
ドロッスさんがオーツラムというところを強調して言う。
「今なんて言った。この脳筋」
「君の弱い握力で痛がるなんて貧弱ヤローだといったんだ。このなんちゃってドラゴン」
2人の間で火花が入り始める。
周りの冒険者が急いで机をどかし、紙とペンと缶を用意する。
私は喧嘩が始まりそうな2人を無視してアーリアさんに手続きをお願いする。
「おい、クレナ」
ハクの冒険者登録とパーティ登録が終わるのを待っている私に、冒険者の一人が私に声をかけてくる。
「なんですか?」
「お前はどっちにかける」
そういわれてみてみるとドロッスさんとオーツラムさんが自分の剣に手を当てている。
「うーん…ドロッスで」
そういって10†を冒険者に投げる。
「了解。ちなみに賭けではドロッスのが劣勢だな」
「うーん…この前の負けてたから仕方ないさ」
あの2人の喧嘩という名の決闘はこのギルドの娯楽の一つである。
本来ならギルド内での決闘は禁止だが、彼らだけは許されている。
なぜなら、彼らの決闘の賭けにギルドマスターが参加しているからである。
「またですか。クレナさんできましたよ」
そういって奥からハクとアーリアさんが出てきて話しかける。
本来完了まで冒険者は奥に行く必要がないのだが、アーリアさんがどうしてもハクをつれていきたい(抱いていたい)といったので、ハクの許可の元連れて行っていた。
ハクが戻ってきたのを見つけた冒険者が
「ギャンちゃん。犬っころが帰ってきたぞ」
「なぬ。本当だ」
そういうと、さっき賭けを持ちかけてきた冒険者が来て
「わんこうお前さんはどっちにかける」
「???」
ハクの頭には?がいっぱいあった。
「ドロッスとオーツラムどっちが勝つかだよ」
そういうとハクに回答を求めた。
「あの2人の喧嘩はここ冒険者の娯楽の一つだよ」
私がそういうとハクはカバンから10†出して
「クレナさんと同じほうで」
「2人は仲がいいな。ではドロッスだな」
そういって10†を缶にいれて笑いながら元の位置に戻っていった。
ギルドの隅で賭けの声がかからないことをいらいらしながらジードが待っていたが、現時点でこのギルドの人の多くが彼を敵視しているため、省かれていることは明確であった。
ドロッスさんが決闘の勝利ポーズを決めるころにはマスターたちが帰ってきて(マスターが賭けに間に合わなかったことを悔しがっていた)、冒険者ギルドは通常業務に戻った。
私とハクは簡単な依頼を受け出発した。
「ふ~んふんふんふふん」
楽しそうに鼻歌を歌いながら青いロングヘアーの髪の少女が寝っころがっていた。
手には本とおちょこが握られている。
一見すると子供だが、飲んでいるものはどう見ても熱燗であろう。
少女の隣にいるゴーレムがおちょこにお酒を注いで、少女が一気に飲み干すということを繰り返している。
ぱっかぱっかぱっか
どっかから馬の足音が聞こえてくる
「昼間から酒ですか」
金色の鎧をまとった騎士が少女の近くで馬を降りる。
乗っていた馬は青白い炎で、馬の形をしていた。
「あっれ~?エリアスちゃんどうしたの?」
少女がちょっと赤くなった顔をエリアスと呼ばれる騎士に向けた。
騎士はかぶっていた金色のクローズドヘルムを外す。
ヘルムの下からは金色の短髪が流れるようにゆれた。
その顔は美しく、目は鋭い戦乙女である。
後ろから傷だらけのコボルトも現れる。
「お久しぶりですアマ様」
コボルトが頭を下げる。
「ガース君ひっさしぶり。元気にしてた?」
少女はお酒のせいか、陽気な受け答えをする。
「アマ様。ご命令通り白種のコボルトをクレナ殿に合流させました」
「うん。確認したよ。あなたのようになるんだって意気込んでいたね」
そういって少女はおちょこのお酒を飲む。
「アマ様。一つお伺いしてもよろしいですか?」
エリアスがそう質問すると
「一つだけかな?」
少女は真剣な顔をして聞き返す。
「今日は一つだけです」
「ふふふ。いいよ」
「何故クレナに聖剣を与えたのですか?私はまだ早すぎると思います」
「早くても扱える人が居たから渡しただけだよ。そうのんびりとしてられないしね」
「まだ先なはず…何をそんな急いでいるのですか?」
エリシアは一歩足を踏み出して少女に問いかける
「2つ目の質問だよ」
少女はそういってエリシアをにらむ
「申し訳ございませんアマ様…」
「シャドーが起きそうだからね…」
「まさか…」
「そうなったらあとはもう時間がないから、急げるときに急ぐしかないよ」
エリシアと少女はともに無言になった。
「エリシア。彼に渡したザ・サード・アガペーはまだ未完成品なんだよ」
「知っています」
「あの剣を完成させるには魔剣をもつあの子も必要なの」
「分かっています」
「…悔しい?」
「神になったのに…何もできない自分が憎いです」
そういってエリシアはかみしめる。
口からは血が少し流れ出ている。
「クレナちゃん。この世界を救えるのはあなたしかいないの」
少女は下に見える海を見ながらつぶやいた
アマ「クレナちゃんが実はすごい指名を受けていたことが発覚」
クレナ「…なんですか世界を救うって」
アマ「あれだよ、あれ」
クレナ「?」
アマ「なんか危険なものが起きると世界の危険が危ない!世界の平和を防ぐために立ち上がれクレナちゃん!ってやつだよ」
クレナ「それいろんな意味でやばいです」