3-1話 冒険者わんこの誕生
気が付けば白の月青週15日になった。
白の月青週1日から、新たな年になる。
アイナも無事に騎士になった。
しかも第六騎士団に配属になった。
ガドロフさんは第四騎士総団長の座から降りた。
新しい第四騎士総団長は美人さんということで有名になった。
さて、私ことクレナは今どうしていいかわからない。
目の前にはコボルトのハクが、冒険者ギルドの人気受付嬢アーリアさんに抱きつかれてオロオロしている。
~白の月青週15日~
「冒険者になりたい?」
朝ご飯の時、ハクが私に冒険者になりたいから、一緒に冒険者として連れて行ってほしいと言ってきた。
ハクは白種だが防御力とHPはかなり高い。
しかし、攻撃面やスピード面ではそんな高くない。
私と組んでもそんなすごい仕事ができるわけではない。
「えっと…ボク、コボルトだし、白種としての生き方をそんなによく知らないし…」
正直言って今の私はどう考えても、初期の白種冒険者の生活してない。
この1か月、何かとガドロフさんに呼ばれてはいろいろやらされた。
ちなみに今、ガドロフさんは新人2名をつれて演習中。
アイナは私が貸し出した聖剣を持って行った。
「えっと…私と一緒に行動はあまりお勧めできないなぁ…」
「大丈夫です。初代はどんな厳しい道でも、仲間のためなら進んだと伝わってますし…」
「初代?」
ハクが珍しく熱弁した。
「はい。初代コボルト英雄です。」
コボルト英雄とは、この世界の歴史の分岐点に必ず登場する伝説上のコボルトである。
この世界は伝説上の生物のためか、多くの人が存在を信じていない。
ゲームでは最強のキャラの1人で、古代ドラゴン種(この世界で古代神以外の神と互角に戦える種)とタイマンし、相打ちになった。
「あぁ、あの色々規格外のコボルトか…」
「知っているのですか?」
「資料がほとんどないから詳しくは知らないけどね」
ハクがつぶらな目を輝かせながら質問してくる。
「アイナさんが言っていた通りです。クレナさんならコボルト英雄のことを言っても馬鹿にしないって」
「ははは…」
アイナには小さいころからコボルト英雄の話はしてやった。
特にアイナは2代目のコボルト英雄の話が好きだった。
「まぁそこまでわかっているなら、私と一緒に行動することに反対はしないよ」
「ありがとうございます」
そういって頭を下げる。
ハクの尻尾をものすごい速さで動かしている。
「それなら今日休みだし、装備と冒険者ギルドの登録しに行きますか」
その後装備を買って、冒険者ギルドに行った。
買い物の時に掘り出し物の中に、『コボルト英雄の籠手』と『コボルト英雄の靴』があり、買った。
この2つは"コボルト英雄シリーズ"というセット装備の一種の一部である。
セット装備とは、ゲームの特徴の一つで、シリーズすべて装備すると何かしら良いオプションがつく。
しかし、シリーズで5つとか装備すると他の装備が付けれないので、結果として弱くなる可能性もある。
コボルト英雄シリーズは、コボルトのみ装備できる装備で、すべて装備すると攻撃速度2倍、上級状態異常抵抗などのオプションがつく。
さらにセットアイテムとしては、ほとんどが市場に出回っており、値段も安い。
コボルト英雄の斧さえ手に入れれば最強クラスの装備と言われている。
ただしコボルト英雄の斧は手に入れるのが難しいのである。
冒険者ギルドに入ると普段なら3人以上いる受付をしている職員が1人しかいない。
しかもその1人も見かけない顔の冒険者の対応をしている。
「で、これがその時採った鉱石さ。青い鉱石と赤い鉱石からできているし、きれいだろ?」
冒険者が本日唯一(?)の受付嬢に話しかけている。
彼が用を終わらせるのを待つため、席に移ろうとすると、席にいるすべての人が受付嬢と話している冒険者をにらんでいた。
特に男は今にも殺してやるという顔をしている。
事情を聴くために、奥のほうで腕を組んで座っている知っている顔の冒険者に話しかけかた。
「ドロッス。今日は受付少ないね」
そう話しかけるとドロッスはこっちを見て言ってきた。
「今朝騎士団の新人が、この近くで、下級ドラゴンを一人で倒したっていう情報が入って出払っている。」
「なるほどね。で、唯一の受付嬢であるアーリアさんと話している冒険者はどなた?」
「あぁ?しらねぇな。少なくても今日まで見たことない」
そういうとドロッスの怒りが強くなった。
そういえば彼もアーリアさんを狙っている男の一人だったっけ。
アーリアさんはこのギルドでも美人TOP3に入るヒューマンである。
冒険者の中には彼女のファンクラブを作ってる人もいる。
話し込んでいる冒険者を殺しそうな顔して睨んでいる者たちは間違いなくファンクラブのメンバーだろう。
ちなみにTOP3のTOP1はエリさんである。
理由はただ単に彼女を頂点にしないといろいろ後が怖いのである。
「周りの反応と彼の会話内容を聞いていると、長い時間彼はアーリアさんを拘束している?」
私がドロッスに聞くと
「ちげぇよ。長い時間口説いてるだ」
「口説きなら止めてもいいのでは?」
仕事依頼などをして彼女を拘束しているならともかく、個人的な用なら仕事を遮ってまですることではないはず。
「ギルドマスターからの命令で、新たな依頼受付はドラゴンの件が片付けてからだとよ」
そういってドロッスさんは緑の炭酸飲料を飲む。
ドロッスは見た目はごつく、傷も所々にあり、いかにも頼れる歴戦の戦士のような体をしているのに、子供が飲むような飲み物が大好きな人である。
さらに彼は元ガドロフさんの仲間で、ガドロフさんが騎士になる時に騎士になるよう誘われたそうだが、冒険者のままでいたいということで断った過去がある。
「そっか…新しい依頼を受けることができないのか」
「まぁあと1時間くらいしたら依頼の受付開始になると思うが、それまであの貧弱ヤローの顔を見てなきゃいけないっていうのが苦痛だ」
「話に割って入ったら?」
「めんどくせぇ」
そういうとドロッスは椅子にもたれかかった。
「おいクレナ。あいつをどうにかしろ」
このヒト私に投げたよ。
「どうにかしたらなんかおごってくれよ」
そういって私はハクをつれて受付まで行く。
「ちなみにこっちのペンダントはこの前手に入れたもので、クオーツ鉱石っていう魔力を帯びている鉱石さ。美しいだろう」
冒険者がそうアーリアさんに言いながら赤い鉱石を見せる。
ちなみにあれはクオーツ鉱石ではなくクル鉱石というクオーツ鉱石と偽って売られている安い鉱石である。
クオーツ鉱石は割るとその魔力を吸収できるが、クル鉱石は割っても魔力は吸収できない。
「は…はぁ…」
アーリアさんも呆れ顔で返事をしている。
「あー。すいません。仕事の話はいつごろ終わりそうですかね?」
私が冒険者の話を遮って話しかける。
アーリアさんが私のほうを見て、ため息をつく。
答えは冒険者が答えてくれた。
「あーそこの白種。貴様みたいのが何の用だ。貴様みたいのが来るところではないぞ」
手であっちに行けというしぐさをしながら言ってくる。
「クレナさんごめんなさい。今、ギルドマスターの命令で新しい任務の受付はできないのです」
そういってアーリアさんが頭を下げてくる。
それを見た冒険者が言ってくる。
「っは。平時でも白種ができる任務なんて肉壁になるくらいだろう。わかったらさっさと帰りな」
「えっと。受け付けてないのは任務の受諾と発行ですよね?」
私がアーリアさんに言うと
「そうだといってるだろう。言葉も理解できないから白種は困る」
周りの人たちの冒険者を見る目が色々と危なくなっている。
「ジードさん。少し口を閉じてもらえますか?」
アーリアさんが注意する。
「君みたいな人がこんな白種の相手をする必要ないさ」
そうジードと呼ばれた冒険者は言葉を返す。
「えっと、こちらとしては仕事を頼みたくて声をかけたから、相手にしていただかないと困るのだけど」
私がそういうとジードという人がにらんでくる
「何のようでしょう」
その顔を見ないようにアーリアさんがきいてくる。
「彼の冒険者登録をお願いしたいのですが」
そういって足元で不安そうな顔をしながら見上げているハクを持ち上げ、アーリアさんに見せる。
その時アーリアさんに何かが落ちた。
「か…」
アーリアさんが目と口を開いてなにかをいいだした。
「か?」
私が聞いた瞬間
「かわいいー」
そう叫びながら私からハクを奪い取る。
「クレナさんこの子どうしたのですか?クレナさんの飼育獣ですか?」
飼育獣とは、職業調教師がスキルによって手に入れた魔物のことである。
調教師に絶対服従で、戦闘とかでは主人と一緒に戦う。
調教師のレベルによって飼育獣にできる種は決まっていて、最高ランクの飼育獣はすべての種を飼育獣にできる。
ただし最高ランクの調教師は現在第一の始祖神信仰国にいない。
「飼育獣ではありません。神殿で一緒に働いている仲間です」
私がそう答えてるとき、アーリアさんはハクを抱いて頬ずりしている。
ハクはちょっとぱにくっている。
「あのー。アーリアさん。彼の冒険者登録を…」
「ねぇ君。ジャーキー食べる?それともミルク飲みたい?」
「あのー。だから彼の…」
「それともブラッシングする?」
ダメだこりゃ。
アマ「クレナちゃんは何気に強気の男の子です」
クレナ「いきなりなんですか」
アマ「そして私は触れるのも憚れる程の美人さん」
クレナ「神を平気で触れる人はいないでしょう」