2-4話 トラップ「ふははははは。ひっかかったな!」
なんか思っていたより2章が長くなりそうです。
「あぶねぇ日記だなぁ」
エドガーさんが燃えてる日記を見ながらつぶやく。 私もこうなるとは思っていなかった。 オンラインゲームではこの日記をとると右側の通路にいるガーディアンの位置が変わり、広い所で戦うようになるためプレイヤー側に有利になる。 そのために必ずとるのだが、とった後には日記は消えてしまったと出るだけでどうやって消えるかが書いてないのである。
さらにこの部屋には謎な現象が起きている。日記の内容とオンラインゲームの内容の記憶が正しければここになくてはならないものがないのである。 私がそんなことを疑問に感じていると、アイナが指示を出した。
「えっと、日記は燃えちゃったけどほかの本があるから調べよう」
その時部屋にアラームが鳴った。
「室内で火災を検知しました。消火作業に入ります」
上から水が落ちてきて、本日2度目のずぶ濡れイベント発生である。
「どういうことだ。罠は解除したのではないのか?」
ドリーさんがエドガーさんに問い詰める。 エドガーさんも反論する。
「君こそこの部屋にもう罠はないといったのでは?」
「やめなさい見苦しい」
エリスさんが鎧の中にたまった水を出しながら注意する。 アイナが私に聞いてきた。
「お兄ちゃん。私も罠探知できなかったけど罠探知できない罠なんてあるの?」
「私は聞いたことがありません」
アイナの疑問にウルカナさんが答える。 エリスさんも同じ意見のようだ。
「私も聞いたことないが、罠探知できるのは罠だけであるということは知っている」
「そんなの当り前でしょうが」
私の答えにウルカナさんは呆れた顔して答える。 しかし、アイナには私が言いたい意味でとらえたらしい。
「つまりはこれはトラップではないと?」
エリスさんも気が付いたらしく、確信に近い問いを聞いてきた。
「そう。この水を出した装置はスプリンクラーといい、火が起きた時に消すようになっている設置物で、神々の戦争時代には一般家庭にも普通についているものだ。つまりスプリンクラーはそこにある本棚と扱いは一緒である。今回は部屋の罠探知はしたが、日記の罠探知はしてなかった。日記の罠は解除されてなかったために発動し、それによって火がついたために一般の罠ではない設置物であるスプリンクラーが発動したということ」
今の説明でみんな納得したらしい。エドガーさんとドリーさんはお互いに謝っている。 その後は本棚の本を調べ罠がないことを確認しいくつかの本を確認する。 この罠があるためか、本棚には防水の魔法がかかっており、本は濡れていない。
驚いたことにこの本棚の本は様々な言語で書かれている本が入っているためアイナ以外は全員すべての本が読めなかった。 このためアイナにタイトルだけ読んでもらってめぼしいものだけを確認することにした。
「えっと。これは『戦争で使える指揮官知識集 実践編 初期』だね。こっちが『盗撮技術からひも解く光の速度と屈折』だって。変なの…」
アイナが読み上げていく本のタイトルはおかしいものばかりである。 中には『火を使わない安全な料理の仕方 魚の塩焼き編』とか『真の漢になるために 古代絵画から学ぶ美しい肉体』とかもあった。
みんなここにはもういい本がないと思いかけてた時、アイナが古臭い本を2冊取り上げて驚く。
「これもしかしてすごい本かも。『天地創造と2大始祖神の横暴』って本と『飛空艇全書 第3巻』だって」
飛空艇とは神々の戦争時代に造られた空飛ぶ乗り物で、現在は作り方が失われたものである。 そのため現在飛んでいる飛空艇は迷宮にあったものを修理などして使っている。 その修理の仕方などは『飛空艇全書』にのっている設計図から『リペアラー』系の職業を持つ人たちが行う。 『飛空艇全書』は1巻と8巻がいくつか発見されているだけでそれ以外はほとんど見つかっていない。 この国も8巻しか持っていない。
問題なのはもう一つの本である。 始祖神の横暴について書いてある本で、間違いなく禁書に分類されるものであろう。 今はこれをどうするか皆で話し合っている。
「この本はもしかしたら意外な事実がのってるかもしれないから読むべきだ」
アイナ隊長の意見
「神を冒涜するようなものは速攻処分すべきだ」
エリス副隊長の意見
「我々がふれてはいけないものだから読むべきではない。しかし、これは持ち帰って騎士団に提出すべきだ」
エドガー罠解除担当とドリー罠探知担当の意見
「我々は発見者なので読む権利はあるはずだ」
ウルカナ警戒および斥候担当の意見
「中を読みたい」
クレナ足引っ張り担当の意見である
話し合いの結果「隊長は私なんだから私の意見に従うべき」と職権乱用したアイナの意見が通った。 エリスさんは最後まで反対したため読みたい人は読み、その後の処分はガドロフさんに任せることで意見がまとまった。
しかし、本を開くと皆内容が知りたいためか全員覗きこんだ。
『天地創造と2大始祖神の横暴』の内容は次のようなものだった。
無の中に3人の神が生まれる。 神はそれぞれ自分の世界を作る。 第一の始祖神カルデリナは天界を、第二の始祖神グリゴリアは魔界を作る。 我々が住むこの世界はカナリナが作った。 カナリナは第三の始祖神である。 始祖神はそれぞれ神を作り神は生物を作った。 第三の始祖神カナリナは自分の作った世界が安定しているのを確認し、あとは他の神に任せ自分は魂の循環をつかさどる異次元に封じた。 第三の始祖神が封じられてからしばらくして第一の始祖神の世界と、第二の始祖神の世界に異変が起きた。 神々のシステムに異常が起き、自分たちの世界のバランスが崩れたのである。 焦った2大始祖神は第三の始祖神が作った大地に一部の生物を移すことでバランスを保つことに成功した。 しかしそのバランスも第二の始祖神が作った神により崩される。 それがいま起きている戦争である。 さらに我々第一の始祖神が作った神につくられた私たちは第三の始祖神が作った神に造られたものたちと共に戦いを挑んだのに、今は第三の始祖神側が我々に攻撃を仕掛けてきた。 この世界は三つ巴の戦争大陸となった。 もし第一の始祖神と第二の始祖神が自分の作った世界でしっかりしたシステムを維持していたのなら、このようなことは起きなかった。
この本を読み終えた後皆が皆何かを考えているようだった。しばしの沈黙の後、私は皆にいった。
「この内容については本当かどうかは分からないが、他言無用にしよう。下手に言いふらし罪に問われたら大変だからね。この本は最初決めたようにガドロフさん任せよう」
皆静かにうなずく
「いつまでもここにいても意味がない。一応この2つの本を持ちかえれば間違いなく依頼は終了する。しかしまだ迷宮は攻略できていない。今後どうする?」
私が今後のことを聞くとエリスさんが答える。
「たしかに任務の最低条件は満たしたが、すべて終わってない。このまま続行すべきだ」
しかしほかの人はまだほんのないようにショックを覚えているみたいである。
「君たちは騎士になるのであろう?世界には秘密になっていること、消された真実などたくさんある。騎士と冒険者はその内容を見つけやすい者たちだ。常に自分の考えを持ち、気持ちを整理できないと今後きついぞ」
エリスさんが後輩たちにきつい一言をいう。
「真実かどうかは分からないけど、ここにいても答えは出ないし次いこう」
アイナがそういって皆をたたせる。 皆も気持ちを整理し立ち上がる。
部屋を出ておくの曲がり角を曲がると先にレバーがあった。 このレバーは中央の扉を開けるカギの一つである。 罠探知をして罠があることを確認し解除を始める。 ここにきて私はやっとこの罠のことを思い出した。
「罠解除をいますぐやめるんだ」
私がそう叫ぶが遅かった。罠解除をしている最中に罠が発動し私は目の前が暗くなった。
「…ちゃ……きて。お兄ちゃんおきて」
私が目を開けると、アイナが顔を覗き込んでくる。
「よかった。ほんとよかった。」
私が体を起こすとアイナが泣きながら抱きついてくる。
「大丈夫か?」
エリスさんが飲み物を渡しながらきいてくる。
「大丈夫です。ありがとうございます」
「君は知っているみたいだったが、さっきの罠は何だったのだ?」
エリスさんが私が平気なことを確認すると聞いてきた。
あの罠はオンラインゲームでここがトラップ迷宮と言われる原因の一つである。 迷宮の扉や部屋などに罠を張るのは当たり前のことなのだが、個々の罠は一味もふた味も違う。 実はこのレバーまでの部屋にはすべて罠が発動すると上から水が落ちてくるか、最終的に濡れるように罠が仕掛けられている。 先ほどの部屋も最終的にスプリンクラーが発動するようになっていた。 これらの罠すべてはこのレバーについている罠のためである。
「このレバーの罠は、今まで罠ばかりだった部屋で得た知識を逆手に取った罠なんだ。今までいたるところに罠がかかっていたので、当然このレバーも調べる。そして調べると罠があるから解除しようろする。これこそが罠なのだ」
ここで一区切りし周りを見回すと皆あたまに?を浮かべていた。
「このレバーの罠の発動条件は『罠解除を行うと発動する』なんだ。だからここはスルーするのが正解なんだ。私もすっかりこいつのことを忘れていた。」
この罠の嫌なところはこれだけではない。この罠は発動すると手前の一定範囲に電流が流れる。電流は水にぬれてるものには2倍のダメージを与える。つまりここまで散々濡らしてきたのはこれを発動させたときに惨劇を起こさせるためである。
「どうしてこんな大切なことを忘れていたのだ!」
エリスさんが怒ってくる。
「本当にすまない。昔何かの本でちらっと読んだだけだから忘れていた。本当にすまなかった」
私は謝るしかなかった。 この姿を見てエリスさんも言い過ぎたと思ったらしく少し顔をそらす。
実は本で読んだというのは嘘である。 これは前世のオンラインゲームの知識で、前世もこれがあることを知っていたからこのレバーは普通に何もせず発動させていた。 そのためレバーに罠がついていることを忘れていたのだ。 かといって本当のことを言うこともできない。 前世の記憶と違うところも数多くあるのである。
「さて、一度戻ったほうがいいか?皆も結構今の罠でやられたしね」
エリスさんがアイナに問いかける。
「これを使えば大丈夫でしょう」
そういって取り出したのは上級ポーション。 アイナに作らせたものである。
「そんな高いものをつかうなら戻って一度体制を立て直したほうが…」
「全員使ってもまだ余裕はあるよ」
ウルカナさんの意見を、アイナが止める。その言葉に驚いてエドガーさんが聞いてくる。
「そんな高いものをどうやってたくさん仕入れたのだ?」
「企業秘密です」
アイナ君。君は企業かい?と突っ込むと負けた気がするのでやめといて話を進める。
「これを使って先に進でいいのか?」
「それでOK。さ、お兄ちゃんものんで」
そういって便を開け、無理やり入れてくる。すべて飲んだ後に、
「アイナ。今度からは飲めるから渡してくれるだけでいいよ」
そうアイナに告げておく。
入り口から2つ目の広い部屋に戻り、中央の扉を調べるが、開いてないのを確認した。 そのあと入り口側から見て右側の扉を開けガーディアンがいる通路に行く。
「情報と違うみたいだな」
ドリーさんがいう。 情報だと入ってからしばらくするとガーディアンが出る。 そのため戦闘態勢の上警戒しながら進んだのだが一行にガーディアンが出てこない。 ついにはつぎの扉まで来てもガーディアンは現れなかった。 ここまではオンラインゲームの知識通りである。 となればこの扉の先にいる可能性は高い。
「扉には罠はないがどうする?」
ドリーさんがアイナに聞く。私はアイナに
「扉の先にガーディアンがいるかもしれないから、調べてみたらどうだ?」
アイナはうなずいてウルカナさんに聞き耳させる。
「アイナさん。中から金属音がします」
「お兄ちゃんの指摘した通りかもね。みんな支援かけてから突撃するから、すぐ戦闘する準備しておいて」
アイナの指示で、アイナとウルカナさんとエリスさんは皆に支援をかける。 そして扉を開け中に入ると
「侵入者発見。侵入者発見。迎撃ヲ開始シマス。」
そういってガーディアンが襲ってきた。
アマ「ねぇねぇアイナちゃん。」
アイナ「何でしょうアマ様?」
アマ「何でクレナちゃんにポーション飲ませるときに口移しにしなかったの?」
アイナ「…。しまった、そうすればよかった。お兄ちゃんもう一度気絶して」
クレナ「やだよ」




