2-3話 一人ぼっちの職人
水神の名前が間違っていたので前回あたり一斉に直しました。正しくは水神アマです。
本日は晴天なり。 ダンジョン攻略にはもってこいの天気である。 風も気持ちいいし周りもはっきりと確認できる。 あとはこのチームメンバーがどうにかなれば文句がない。 というよりアイナを外すか私が外れたほうがいいと思う。
「なぁ、アイナもう町を出てるし、ここら辺は獣がでるから警戒したほうがいいぞ」
「大丈夫ですお兄様。ここら辺には獣はいませんよ」
そういってアイナはさっきから私の近くから離れないだけでなく、何かあるたびに話しかけてくる。 周りから見ればピクニックに行くカップルとみられてもおかしくはないくらいである。
ちなみに獣が出てもおかしくない場所なのに獣が出ないのはアイナがいるからである。 アイナは年齢や見た目からは判断できないほど強いのである。 ここら辺の獣はみな尻尾を巻いて逃げてるので、とろいやつ以外は出てくることはない。
「お兄様、あれは何ですか?」
「紫イチゴだね。見た目とは違って毒はないし甘い上に水分も多いので遠征などの途中でよく摘まれるものだよ」
「ならちょっととってきます」
そういって彼女は列を離れ取りに行く。 ちなみに彼女は学校で団体行動は習ったといっていた。 習ったらしっかりとやってほしいというのが私の考えである。 ウルカナさんはいつものことだからか気にしてない。 ほかの3人はまたかという顔をしている。
そんなこんなで迷宮入り口に到着した。
「これが入り口か?」
「そう。ここにこれを入れて引っ張ると取っ手が出る」
そういって私はアイナから1.5尺棒を受け取る。 そして取っ手を取り出す。
「クレナさん。罠があるかもしれないのでこういうことは勝手にやらないでください」
「あ、ごめんなさい。入り口を降りた先の広いホールまでは罠も隠し扉もないと聞いてたので」
もしここが発見されたばっかの迷宮ならばエリスさんの言う通りで、扉を開ける前に罠探知するのが普通である。 しかしこの迷宮は攻略されてないだけで攻略しようと挑んだ人は少ないがいる。 その人からの情報をギルドが買っていたので、それを顔合わせ前に仕入れておいた。 1尺棒ではなく1.5尺棒を買ったのもここの扉のとってを出すのには1.5尺棒じゃないと難しいと聞いてたからである。
1尺棒や1.5尺棒といった罠探知棒のもともとの使い方は罠探知のために使うのである。 棒を壁や床を叩きながら移動することにより自分達が罠にかかる前に罠を発動させ被害にあわないようにする。 しかし1尺や1.5尺ではさほど遠くまで叩けないのでこの使い方はあまりされず、手が入れにくいほど細いスキマなどに突っ込んだり、高い場所のものを落とすのに使われることが多い。
事前情報通り何もなく入り口を開け、そこにある梯子で下まで降りる。 万が一に備え簡易梯子もおろしておく。 梯子を降りると少し広いホールに出た。 壁は前世のアスファルトのような感じである。 これはタイトと呼ばれる人工石で、腐らないし耐熱性も高い。
「クレナさん。事前情報で調べたことをすべて教えてくれますか?」
「そうだね。今わかってる範囲の地図と共に説明するよ」
エリスさんの意見にうなずいて、私は一枚の紙地図を取り出しみんなに見せる。
「ここは第一の広間ってところで、入り口が開くとこの先のドアにロックがかかる仕組みらしい」
「つまりは入り口を閉めないといけないってこと?」
「いや、もうしまっている。梯子にどうやらセンサーがついているらしく、梯子のセンサーが一定時間働かないと勝手に閉まるらしい。入り口が閉まってから一定時間後にドアのロックが解除される仕組みらしい」
「じゃあしばらくはここで待ちぼうけだね」
アイナがお話ししようって顔して私に言ってくる。
「結構速くドアは開けられるようになるらしいからこの先のことを少し言っておく」
アイナの顔がふくれる。
「この先はすぐにまたここと同じ大きさの部屋になるらしい。この部屋に入るためのドアにはドアに触れると電流が流れるから注意するように言われた」
「ここのドアだね」
「そう。で、その部屋には4方にドアがあり今わかっているのは入って右側にあるドアの先にはガーディアンがいるってことがまず一つ」
ガーディアンとは神々が戦争していた時代に神から知識を得た生物が作ったロボットである。 現在はその作り方などが失われたためこういった迷宮から発掘するしか入手方法はない。 強さ的にはピンからキリまであるので何とも言えない。 ちなみに今起動しているのは持ち帰れないため、壊すしかない。
「左のドアの先はたくさんのドアがあるらしいのだがどのドアも罠がついているから調べてないようだ」
「罠解除してはいればいいのになんではいらなかったんだ?」
「罠が全部にかかっているところを調べるよりほかの扉を調べることにしたらしい」
「なるほど」
「最後に正面の扉の先には石でできた大きな扉があるのだが、そこの開け方は不明である」
「鍵がついてるの?」
「さらに罠もついてる。罠は扉の向こうからつけられてるのでこちら側からは解除できない。ちなみに鍵明けをしようとしたら、鍵明けをしている人の上からものすごい速さで鉄球が落ちてくる。その人は即死したらしい」
そういうとエリスさん以外は顔を強張らせた。 エリスさんは迷宮が初ではないみたいで慣れてるみたいだったが、ほかの人たちは初めてである。 ちなみに私もこの話を聞いたときにみなと同じ反応をした。
「さて、どこから手を付ける?」
そういってアイナのほうを見る。
「ガーディアンにはなるべく近づかないほうがいいから罠のついたドアがたくさんある方から調べるべきだと思います」
ウルカナさんがいうとエリスさんもうなずく。
「ガーディアンの種類は分からないのか?」
「情報提供者が見たことがなかった種類と言っていたらしい」
「なら一度ガーディアンを見に行ったらどうだ?」
そうエドガーが提案する。
「ドリーさんはどうおもう?」
アイナが質問する。
「私もエドガーの意見に賛成だ」
どうやら男2人は血の気が多いみたいである。
「お兄ちゃんは?」
「逃げるにせよ闘うにせよ周りにトラップが少ないほうがいい。だから先にトラップドア群生地帯からの攻略かな」
誰が書いたか知らないが、地図にはトラップドア群生地帯と書いてある。
「じゃあトラップドアを開けながら情報収集かな」
トラップドア群生地帯につながる扉のドアを開けると8つのドアが確認できた。 ドリーが床に罠がないか探知しながら進むと8つ目のドアの先は右に通路が曲がっていて奥がまだあるようである。
「先に奥まで行くか?」
ドリーがアイナに聞く。
「奥まで行くとその他のドアが全部開いて戻れなくなると屋だから先に手前のドアから解除していこう」
そうアイナが決め、エドガーが一番手前の罠を解除し始める。 無事に終わり中に入ると中には10個ほど魔力石(マナが詰まっている石で、体内の魔力を回復できる)があった。
「魔力石か」
そういってエドガーが近くにあったやつを取り上げる。
「まて、とるな」
私がそういったが遅かった。カチッという音が鳴り天井から大量の水が降ってきた。 びしょ濡れになる程度だったがみんな濡れてしまった。
「エドガーさん。扉の罠を解除したからって仲間で解除できてるとは限らないので不用意に手を付けないでください」
そう私が言うと白種に怒られたことが癇に障ったのか舌打ちしてそっぽを向いた。
「あんた何様のつもり?自分のミスを指摘されたのにその態度は何なのよ。」
アイナが怒る。 さらに髪の色が赤くなり始めている。
有角種はベルセルクというスキルを持っている。 これは自分の能力をすべて上げる代わりに赤、青、黄、緑の魔法に弱くなる。 これを発動すると体中の毛が赤くなり、瞳も赤くなる。
「アイナさん。やめてください。エドガーさんも下手したらトラップで全滅だったかもしれないのですよ。ちゃんと反省してください」
ウルカナさんがアイナを止める。私もアイナとエドガーさんの間に立ち、アイナからエドガーさんを見えなくする。
その後ぎくしゃくしたなかでもそれぞれがしっかりと自分の仕事をしたためか次々に罠を解除し部屋に入る。 中にはガーディアンの部品や剣ややりが数個入ってる部屋、ベットがある部屋などであった。 8個目の部屋に入るとほかの部屋より小さく、家具は本棚が一架と机と椅子が一脚あるだけである。 罠探知後本棚や机を調べると日記が見つかった。
日記は古代カルデリア語で書かれていた。 カルデリアとは第一の始祖神の名前であり、この神を信仰しているものが共通で使う言葉がカルデリア語である。 ただし、神々が生きていたときは神と話すために古代カルデリア語という言語が共通語であった。 神々の戦争が終わった後は神官や王族だけが神と話せるようにすることで地位を得ようとしたため今使われているカルデリア語ができたとされる。 ちなみにこのチームの中で古代カルデリア語の読み書き会話ができないのは私だけだった。
日記はアドリーが書いたもので、この建物が第二の始祖神率いる軍勢と戦うために造られた拠点であることや、大群が押し寄せてきてこの拠点も見つかればただでは済まないだろうからトラップを張り巡らせ少しでも長く時間を稼ぎここから部下や物資を運ぶことにしたなど書かれている。
日記の最後のほうにはアドリーが時間を稼ぐのと、ここから持ち出せなかったあるものを守るためにここにのこり様々な罠を作り続けたことが書かれている。 なにが残されているのかは書かれてなかったがとても重要なものらしい。 そしてたくさんの罠を作っては付けを繰り返した結果食料と水が底を突きもはや歩けなくなったとも書いてあった。 そのページの最後には遺書らしきものが書いてあった。
「私は一人の騎士として守りたいものがあった。だがそれは守れなかった。何もかもなくなった私にただ一つの生きがいをくれたのはここを守るもののを守ることだった。私は騎士をやめ、ここを守るものを守るために職人になった。第2の人生を歩んだようだった。灰色だった世界が一気に鮮やかになった。実にすばらしい世界だった。もしこの日記を読んでる者があの憎き邪神を倒すために集まった者なら、あれを持っていくといい。あれはこの世界の希望でありこの世界を救う手がかりになる。そして必ずあの邪神を封じてほしい。それが私の願いであり、そして私という職人が生きたあかしになる。」
そして最後のページには
「なおこの日記は自動的に消滅する」
と書かれており、赤く光って燃えて消えた。
アマ「次回は「アドリー迷宮より[自主規制]」をお送りします」
アマ「あ…あれ?クレナちゃんは?」
アイナ「お兄ちゃん古代カルデリナ語読めないの?じゃあ私が読んであげるね」
クレナ「ありがとう。とても助かるよ」
アイナ「えへへへへ。じゃあ読むね」
アマ「クレナちゃんの浮気者ーーーーーー!」




