子供…ロビー・7
「それは、どういうことなの、絹子さん」
繭子が長く濃い睫をしばたかせながら絹子を見据えた。相当驚いたようだ。
「だって何だか面白そうじゃない」
絹子は赤い唇の端をにっと上げてそう言った。繭子は怪訝な顔付きだ。三毛は絹子の考えることはどうしても理解できない。
「私は分からないわね。だってあんな狂ったような、乱暴な……」
「面白いわよ」
絹子はてのひらをテーブルに載せる。
「何とか仲良くなりたいわ」
絹子は本当に楽しそうだ。微笑みが絶えない。
「あなたは変わっているわ」
繭子が呆れて溜め息をつく。
「そうかもしれないわ。でもね、繭子さん」
絹子は繭子の方にすっと白いしなやかな手を差し出す。繭子は当たり前のようにその手に自分の小さな右手を載せる。両方が美しい手だ。繭子の薬指には柔らかな光を放つピンクサファイヤの指輪が光る。
「あの子には何か妖精のような妖しげなところがあるのよ……。あの野獣性の下に、隠れているものよ」
繭子が困ったように眉をひそめる。
「そうかしら」
「そうよ。あなた、あの子が暴れまわって狂人のように叫ぶのを見たでしょう」
「それはそうだわ」
「私はそれを見て、何か神秘性を感じたの。不思議な、神がかった妖艶さというか」
「分からないわよ」
繭子が手を離そうとする。すると絹子は絡み付くようにその手を握る。
「次第に分かってくるわよ。あなたは私の妹だもの。それに、あなたはあの子の突飛な行いを見て、他の愚鈍な連中のようにがっかりしたり怖がったりしてはいないでしょう?」
「びっくりしたわね。それだけだわ」
「すぐに分かるわ。彼の魅力を」
絹子の目は気味が悪いほどに爛々と輝いている。
「絹子さん、そんなにあの子を気に入ったのなら、あの子を連れていくのを手伝えば良かったんじゃないかしら。あのおじいさんは少し可哀想だったわ」
繭子が小首を傾げる。絹子は急に興味を失ったように表情を変え、切れ長の目をよそに向ける。