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砂糖細工の船に乗って  作者: 酒田青
第二章 子供
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子供…甲板・10

 三毛は困った。おそらくこの船で一番変人のこの老人の前では、もはやなす術は無かった。

 この船が幸せの船? きっと老人にとっては本当にそうなんだろう。

 三毛は腹を立てながらそんなことを考えた。きっと彼だけは本当に幸せなんだ。

 突然、寝ているはずの老人の感情がじわりと三毛に伝わってきた。

 悲しくて、重苦しい気持だった。

 老人は夢を見ていた。顔をひどくしかめて、唸っていた。

 三毛は腕の力の緩みに気付いて、布団の外に出た。老人の胸の上に立って、老人を見つめた。

 老人は苦しんでいた。眠りながら、悲鳴を上げていた。三毛が恐怖にかられるほどの声だった。

 三毛は老人を起こそうと、髭の上に前足を載せた。首を伸ばして、乾いた鼻を舐めた。老人は唸った。

 三毛は前足の爪を立てた。何としても起こさなければ、三毛が恐ろしかった。

 この夢から伝わってくる感情の苦しさから逃れたかった。

 爪が老人の頬に軽く傷を作った。その時――。

「おじいさん! 来てください。大変なんです」

 老人は飛び起きた。声は廊下から聞こえてきた。松子夫人だ。

 三毛を布団の上に落として、部屋の入り口のドアを開けた。

 松子夫人は取り乱して何かをわめいていた。老人が落ち着いた、しかし尋常ではない様子で部屋を出ていった。

 取り残された三毛は、急いで寝室を出た。老人の部屋から出ようとしたら、幸いドアは開けっぱなしだった。三毛は老人と松子夫人を追った。


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