船の人々…一〇二五号室・1
砂糖で出来た船は、海を、時代を流れながら多くの人々を拾う。彼らは全てどこかおかしなところを持っている。彼らが安らかに居続けているのは、果たして正しい場所なのだろうか。
三毛。絹子、繭子、松子、スチュワート、少年、老人。
彼らはどこにいるのだろうか?
太陽が、さんさんと輝いていた。
甲板の白いテーブルセットの小さな陰にいた子猫が寝返りを打った。暑かった。
子猫は少し険のある鋭い目つきの三毛猫である。テーブルセットだけでなく、床や壁や船体など全てが白いこの船では、子猫の漆黒の目と、体の上半分を覆う茶系の模様はひどく目立つ。猫は、潔癖なまでに白い船の、一点の猫形のマークのように見える。
波が船に打ち付けられる。水の音が涼しげだ。
爽快なまでにくっきりとした空と海の青、入道雲の白。
微風が子猫の柔毛を優しく逆撫でる。
それでも暑さは和らがない。
子猫は甲板が嫌になってしまった。強い日差しのせいで毛は燃える寸前だ。瞳は極端に細くなって、子猫の顔をますます愛想がないものにしてしまっていた。
砂糖菓子ホテルに戻ろう。
子猫はのろのろと立ち上がり、船体の後部にそびえ建つ白い建物に向かった。
砂糖菓子ホテルからは、今日も甘い香りが漂ってくる。
「絹子さん」
「なあに? 繭子さん」
「お花が枯れてる」
「あらほんと」
「それに、薔薇の砂糖漬けもなくなっているわ」
「そういえばそうね。壺の中が空っぽ」
「どうしましょう。私達あれがないと……」
「大丈夫だわ。もうじきに陸に着くから、その時にお花を買うの。砂糖漬けもたくさん作りましょ」
「でも……、本当にすぐ陸に着くかしら?私……、心配で……」
「あらあら、泣くことないじゃない。大丈夫だって言っているでしょう」
「お花がないと……」
「もう、繭子さん。泣かないで。あなたの心配症には困ったものね……、あら、三毛」
三毛は間の悪いときに来てしまったと思った。三毛は一刻も早く涼むために、船の右舵に開いた出窓に何の心の準備もなく飛び乗ってしまったのだった。
一〇二五室の姉妹は美しい香りがするところが三毛のお気に入りだった。二人は三毛を親切にもてなしてくれるが、厄介な所があった。
艶のある長い黒髪を背中に垂らした絹子が、優雅な手付きで三毛を抱き上げた。
「さあ繭子さん、三毛があなたを慰めに来てくれたわよ」
高く結った髪にキラキラしたかんざしを着けた繭子は、うれしそうに三毛を抱き寄せた。涙で少し化粧が崩れた目元を気にすることもなく、繭子は三毛に顔をすりよせる。三毛は諦めてそれに身をまかせた。
「三毛、三毛、三毛ちゃん。私怖いの。不安なの」
繭子がしどけなく着崩した赤い浴衣の袖を、腕の中の三毛に巻き付ける。三毛は愛想よくニャーンと慰め声で鳴き、繭子と目をあわせる。