!!プロローグもどき!!(爆音)
深い緑の茂る薄暗い森の中、典型的な冒険者姿に身を包んだ4人の若人が、多足をその身にびっしりと生やす巨大な蟲型のモンスターと対峙していた
「くらいやがれぇ!!必殺ッ超絶無敵最強エ○スカリバーーァッッ!!」
黒髪の青年が長剣を比較的柔らかそうな巨大なモンスターの腹部に突き刺さんとし力任せに下へ振り下ろす、しかしその一撃はモンスターの肌を優しく撫ぜただけだった
「ああもう…そこ私の魔法の射線通ってるんだからさっさと退きなさいよ"ジロウ"!」
後方から紫に光る紋章が入ったローブを纏う茶髪巻き毛の少女が長杖の先から火球を幾つか放ち、モンスターの甲殻の表面で轟音と共に爆ぜる。
……今度はモンスターの殻にヒビを与えているがこの程度では相手のヘイトを買った程度でしか無かった。
至近距離で避けきれるわけもなく、その魔法の爆発に巻き込まれて吹き飛ばされ仰向けになった黒髪の青年"ジロウ"が腰を擦りながら起き上がり、剣を拾うよりも先に茶髪の少女をビシッと指さす
「だッから!俺がいるのに撃つな…ってモンスターそっち向かってんぞ"アルパ"!!」
指を指された茶髪の少女"アルパ"が反応するよりも先にそのモンスターはその巨体と短い脚に見合わない速度で突進していた。
アルパには魔法障壁を張る暇すらなく、できたのは精々これから起きる衝撃に備える事と、後で労災が降りるかを祈る事だけだった…が
「――オレの存在を忘れてくれては困るな」
横から巨大な盾を前に構え、アルパを背にモンスターとの間に身体を割り込ませた頭部の寂しい巨漢"デナン"が足を地面にめり込ませながらも踏ん張りモンスターの突進を受け止める。
鉄と鉄の打ち合うような鈍い音と共にデナンは後方に数M押されたものの、アルパに届くギリギリで止めることに成功した。
巨体の衝撃を真正面から受けノーダメージではないだろうにデナンは苦悶の表情を一切見せず後ろを振り向く
「早く体勢を立て直せアルパ。…"イザク"、突っ込んで行った馬鹿に回復、あとアルパには魔力回復の祝福もだ早くしろ」
アルパよりも後方、その先でデナンが視線を向けた灰色髪の丸メガネをかけ聖典を開き詠唱をしている"イザク"と呼ばれた黒と白の修道士姿の青年が溜息をつきながらも慣れた顔で前方に手をかざす
「貴方達が僕の立てた作戦通り動いてくれれば間に合って……って、そんな事言ってる暇もありませんね」
詠唱が終わりイザクの持つ聖典から緑と橙の光が漏れ出したと思うと、緑がジロウに、橙がアルパに注ぎ込まれる。
それと同時に腰を痛めつけ、剣を杖代わりに使い脚を産まれたばかりの小鹿のようにブルブル立っていたジロウの足腰が自立できるようになり、先程の火球の魔法で消耗していたアルパの内からも再びエネルギーが溢れ出した。
「チィッ…やっぱ俺達が連携するしかないのかッ」
吹き飛んだ位置からそそくさと皆の所に戻って、モンスターに対して格好だけは一丁前に長剣を構える。
「次はオレが囮になる、その隙に一斉攻撃だ」
盾を構え直したデナンが一歩前に出る。
「フンッ、結局私の魔法の火力が無いとダメなんだから大人しくそうしていなさい……別に信頼してるって訳じゃないんだからね!」
ツンデレの片鱗が垣間見える言動をしながらもアルパの後方に魔法陣が展開される。
「はぁ…、本当このパーティーにいると一秒たりとも飽きる事はありませんね」
イザクがジト目で皮肉を吐きながらも聖典から溢れる淡い光が全員を包み込む。
蟲の巨体もとぐろを巻き再び突進の予備動作を始める。
ジロウは武者震いと呼ぶだろうただの脚の震えをしながらも目は真っ直ぐ前を見据え、口角がニイッと吊り上がり、前を見ながら背中を預ける仲間達に声をかける
「俺達は魔王を倒す……あの夜そう誓って、その為にここまでやって来たんだ。俺達に不可能は無い、だからこそt――」
――テレレレッレッテッテー♫!!(超絶爆音)
(爆音) 〚!ジロウのレベルが1上がりました!〛(爆音)
その時遥か上空からなんの脈絡もなく、どこかで聞いたことあるような合成音声で爆音でレベルアップ時のファンファーレが流れてきた。目の前でとぐろ巻いてるモンスターですら複眼で上見てるし
森の中は先ほどまで激戦を繰り広げていたとは思えないほど、シーンと静まり返った。
「…………空気読めや世界ッ!!!!!」
さっきまで決め顔でかっこいい決め台詞を言おうとした空虚な異世界人の勇者の雄叫びだけがそこに残った




