予約の真意
短編です
大学を卒業してから、レストランを始めて早七年。ワイン好きな俺の、ほとんど趣味みたいな店だけど、存外ワインを好む人は多いのか、店は繁盛していた。
中でもハヤシダさんは、一、二年前から定期的に予約を取ってくれている、いわゆる常連さんだ。紳士という言葉をイメージして作られたみたいな、いわゆるイケオジのハヤシダさんは、店に来ると必ず次の予約を取ってくれる。その際、必ずワインの年代を希望する。だから仕入れがしやすいんだ。料理はその時の気分やお任せを選ぶけど、メニュー以外の料理を無理に注文するようなこともしない。
物腰は柔らかで、優しいし、端っこの席で静かにワインを飲む姿は、まるで俳優のようだ。
今回は1996年もののワインを、との注文が入った。食事は今回はお任せで、との事。ワインも重要だけど、料理にも自信があるんだ。ハヤシダさんがこれから先も足を運びたくなるような店にしたい。
過去の記録を見ると、ハヤシダさんの予約のメモが出てきた。
大体三か月に一回、ワインの年代だけにこだわって注文をかけている。
前回は1998年もの、その前は96年を。過去に4回ほど予約が入っていたけど、大体その辺の年代のワインが多いな。なにかこだわりがあるんだろうか。
ワインの年代を調べても、特筆してその年代が有名とか、出来が良いとかそう言うことではないが、ハヤシダさんには何かこだわりがあるんだろう。できるシェフは、お客さんの事情に深入りしないモノだよな!
ハヤシダさんの予約が入った日、相変わらずおしゃれな装いで現れたイケオジのハヤシダさんは、いつもの席に座った。
「いつもありがとうございます」
「こちらこそ、いつも同じ席を準備してくれてありがとう」
あぁ、やっぱり格好いいなぁ。
「「○○県で起きた連続殺人事件についてです」」
「「被害者の年齢が20代後半から30代に偏っているのが気になりますね」」
「「警察は手口などから同一犯の犯行とみています」」
テレビのニュースで、長く続いている殺人事件の話題が流れてきた。
「怖いですね、△△市って近いですよね。もう一年かぁ・・・」
「そうだねぇ。・・・・この店は何年経ったかな?」
「えぇっと、7年です」
「七年も!?すごいねぇ・・・。君は今何歳?」
「今年で31ですね」
「そうか、若いねぇ。じゃぁ次は、1995年の君が生まれた年のワインで予約を取っておこうかな」
「ありがとうございます!」
やっぱりハヤシダさん、何かこだわりを持ってワインを選んでいるんだなぁ。
予約の日が近づいてきたころ、ワインの注文を済ませ、開店準備をしていると、テレビのニュースで速報が入った。
「連続殺人事件の犯人が逮捕されました。犯人の名前は■■・・・・」
そこに映っていたのは、どう見てもハヤシダさんだった。
——え?——
次の犯行を示唆するメモが見つかったんだって・・・。




