乙女ゲームのヒロインに転生しましたが、ざまあが怖いので地味に生きることにしました
少しの時間で読めます。
「痛っ!」
その頭痛は、私が寝ようとした瞬間にやって来た。
激しい痛みに悶える。これじゃあ到底寝られそうに
ない。
「あぁぁ!」
雷に打たれたかのような衝撃の痛みを最後に頭痛は
収まった。その時ー…
「…私の、前世の記憶…?」
(有田七海31歳。ブラック企業に勤めていて、死因
は過労死。そして、私七海の転生先はー…)
「乙女ゲーム『薔薇色に色付いた私の青春』の、
ヒロイン メリー…?」
そう呟いた途端、私は気づいた。
「転生…乙女ゲーム…ヒロイン…これ、小説によく
あるやつじゃん?」
(そして、小説でこの展開は……私が悪役令嬢に
ざまあされる!!)
「どうしよう!今は王子ルートを攻略中、完全に
小説のテンプレ通り!あ゙あ゙ーー!」
私は、痛みとは関係ないことでまた悶え苦しむこと
になったのだった。
「ここがあのゲーム機の中でしか見たことなかった
学園…!『薔薇色に色付いた私の青春』の聖地でも
あり地獄でもある…!」
メリーは目をキラキラ輝かせる。
「まずここでやることは…地味に過ごすことね!」
今にも踊り出しそうな気持ちを抑え、教室へ向かう
(うっ…そういえば王子と席前後だったんだ…。
なんか視線を感じる!怖い!緊張する!)
「…あのさ、」
「ひゃいぃぃぃ!」
(うわぁびっくりしました王子様ぁ!変な声出た)
「この126ページの6問目、解き方わかる?」
「えっと…」
(えーと えーと えーと えーと…ああもうやばい脳が
パンクしそう!前世の記憶と今世の記憶が…)
「…ごめんね、女の子に頼るなんて。俺が駄目
だった。もう大丈夫!」
「え、はい…。」
私は頼りにならないのかな、とメリーは落ち込む。
王子は一応七海の推しなのだ。
「…あ、6問目は、ここの6から0.4を引いてここ
から8をかけてこれで割ったら答えが出ます…。」
蚊の鳴くような声だったが、王子にはしっかり
届いていたようだ。
王子は一度メリーに微笑んで、また教科書に目を
落とした。
(…笑ってもらえた…。)
推しに笑ってもらえる。それが幸せでメリーは顔
を少し赤らめた。
(次、教室移動…こっちで合ってるよね。…って、
あれ?あれは…)
「あ―ら ご機嫌ようメリーさん。」
「…あ…ラディー様…。」
(悪役令嬢だ!ヤバい顔が綺麗…!)
「では。またね。」
「え…?」
(悪役令嬢のイベントが起きない?…なんで?考え
られるのは…ラディー様も転生者?)
これが一番しっくり来る。
(彼女も小説のテンプレ通り動いてる…てことは)
「私がざまあされる可能性100%行ったぁー!!」
昼休憩中、メリーは中庭で叫ぶ。
「そもそもここに転生した時点で私はもう…。
ああ〜!!」
ここを誰かに見られていたらメリーは不審者決定
だったが、幸いにもここ周辺には誰もいなかった。
「うん、そうだよ!私は地味に生きることを決めた
んだ!」
(気合を入れなおさなきゃ!…まぁ、この場合気合
と言っていいのかはわからないけどね。さーて、
お昼ご飯食べるか!)
…このお昼ご飯を食べに行くことが、メリーを
さらに困らす事態になるとは誰も知らなかった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
メリーがお昼ご飯を食べに食堂に行って定食を
買った時、それは起こった。
「きゃっ!」
「ラディー様!」
お茶が服にこぼれたラディーに取り巻きがハンカチ
を渡す。
「…メリーさん、酷いです!王子の婚約者の
ラディー様が羨ましいからって、こんな…。」
「え?どういう事?」
(…はっ!これは小説のあるある!これで私にお茶
をラディー様がかけないということはやっぱり
私…!)
「とぼけても無駄よメリー!貴方、いい人だと
思っていたけれどやっぱり…。これはアルフォンス
様にいただいた服なのに…。」
(アルフォンス…王子のことだ!そして2人は婚約者
ドレスをラディー様に贈ってもおかしくない。)
「わ…私、知りません。やってません。」
「目撃者はこんなにいるのよ!それでもまだとぼ
けるつもりなの!?ねぇ、アルフォンス様…?」
そこに偶然立ち寄ったアルフォンスにラディーは
上目遣いで同意を求める。
「…ああ。こいつは酷いな。」
「そうですよねっ!ですよねアルフォンス様!!」
ラディーはアルフォンスに救いを求めるような仕草
で手を出す。
パチンッ
乾いた音が食堂に響いた。
「お前の言うことは酷いな。嘘ばっかりだ。…はぁ
誰が触ってもいいと言った?」
「なっ……酷いです!嘘ではありません!」
「それに、お前は今までもこのような事を繰り
返していたようだな。証拠はそろっているんだ。」
(…え?確かに、ゲーム上ラディーはメリーを虐めて
いたよね。)
「ラディー、お前なんかとは婚約破棄だ!…俺は」
アルフォンスはメリーの手をとって…
「メリーと婚約する!」
「へ?」
メリーは呆気にとられる。
「そんな…アルフォンス様…。冗談ですよね…?」
「冗談じゃない。」
「私は!転生者ですのよ!なんで!?なんで小説の
ようにいかないのです!?」
王子と悪役令嬢がそんなやり取りをしているのを、
メリーは全く見ていなかった。
(は?え?婚約?なんで??テンプレ…ぶっ壊し…)
「…連れて行け。」
「はっ。」
騎士がラディーの腕を掴む。
「なんで、なんで!?私は、信じていた…。」
ラディーの声が遠ざかっていく。
「…さっきの話の続きだが、メリー、婚約して
くれるか?」
「私は……婚約しません!!!」
「は…!?」
「推しと結婚するのはまた違うんです!では、私
そろそろお昼ご飯食べますね!」
「…」
今度はアルフォンスが呆気にとられるが…
(今日の日替わりランチ、ミートパスタっ♪)
メリーはもう、違うことを考えていた。
「メリー…。絶対に俺のものに…。」
…アルフォンスがそんなことを考えているのも、
メリーは全く知らなかった。
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