忘れないでね
ねぇ、私、ストーカーにあっているの。
私は思い切って彼に相談した。
「いつから?どんな目にあってるの?」
彼の顔に浮かんだ怒りに、私は内心、安心した。
私のために怒ってくれる、その優しさが嬉しかった。
最近のことを話す。
同じ時間、同じ場所で、何度も見かける人がいること。
たまたまかもしれない。でも、どうしても気になってしまうこと。
「気のせいかもしれないよ。でも、心配なら警察に相談した方がいい」
彼はそう言った。
優しい。けど、それじゃ足りない。
次の日、彼と歩いていると——いた。
かれだ。
いつもと同じように、何も変わらない様子で歩いている。
「……あの人だよ」
小さな声で伝えると、彼は少しだけ眉をひそめた。
「すぐにここから離れよう」
そう言いながら私の手を引いて、その場を離れた。
優しい彼に安心感を感じた。
ストーカーのかれについて、せめて名前くらいは知っておきたくて、彼にそれとなく調べてもらった。
彼は少し困った顔をしながらも、結局は教えてくれた。
今度は自分で、しっかり調べた。
帰る時間。
住んでいる場所。
鍵の隠し場所。
少しずつ、少しずつ。
——知っていった。
ただ、ちゃんと知りたかっただけ。
夜、ドアの前に立つ。
鍵はいつもの所にあった。
部屋に入り目を閉じると、かれのことばかり考えてしまう。
ねぇ、忘れないでね。
私のこと。
一生一緒に居ようね。
——約束したのに。
私は今、刑務所の中にいる。




